交通事故で通院6ヶ月|慰謝料計算や相場、むちうちの場合も解説

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

交通事故が原因で6ヶ月通院した場合の慰謝料の相場は骨折・脱臼がある重症の場合は116万円、むちうち・打撲などの軽症の場合には89万円です。

6ヶ月通院した場合には、後遺障害に認定される可能性もあるので、症状が残っている場合には、後遺障害申請を検討されるべきでしょう。

後遺障害に認定された場合には、賠償額も高額になります。

通院6ヶ月の慰謝料の計算方法や適切な慰謝料を受け取るためのポイントを解説します。

通院6ヶ月の慰謝料早見表

以下は、自賠責保険基準と弁護士基準の慰謝料の金額を重症の場合と軽症の場合で表にしたものです。

重傷(骨折・脱臼等がある)の場合

通院期間 自賠責基準 弁護士基準
6ヶ月 77万4000円 116万円

 

軽傷(むちうち、打撲など)の場合

通院期間 自賠責基準 弁護士基準
6ヶ月 77万4000円 89万円

※自賠責基準は、通院期間の半分以上通院している前提で計算しています。半分以下の場合には、通院実日数の2倍の日数 × 4300円で計算します。

6ヶ月通院した場合の慰謝料の1日単価
自賠責保険基準 弁護士基準
1日の単価 4300円 6444円(重症)
4944円(軽症)

慰謝料の基準は、以下の自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)がありますが、基準の高低は、自賠責保険基準<任意保険基準<弁護士基準(裁判基準)の順番であり、弁護士基準が最も高い基準となっています。

通院1日あたりの慰謝料はいくら?

自賠責保険基準の場合

自賠責保険基準では、1日4300円と決まっています。

 

任意保険基準

任意保険基準は、現在は公表されていません。

多くの場合、任意保険会社は、自賠責保険基準と同等か少し上乗せした金額を被害者に提示しています。

 

弁護士基準

弁護士基準は、通院期間によって慰謝料が変動していくため、1日単価も通院期間によって変動します。

例えば、6ヶ月の慰謝料額は骨折・脱臼がある重症の場合は116万円、むちうち・打撲などの軽症の場合には89万円です。

したがって、1日単価は、骨折・脱臼がある重症の場合は6444円、むちうち・打撲などの軽症の場合には4944円です。

 

 

通院6ヶ月の慰謝料の計算方法

自賠責基準の慰謝料計算例

自賠責保険基準による慰謝料の計算式は以下のとおりです。

対象日数 × 4300円 = 慰謝料金額

対象日数は、通院期間の日数と通院実日数の2倍の日数を比較して少ない日数となります。

自賠責保険基準の場合、ケガが重症か軽症かで計算方法に違いはありません。

では、以下の2つの具体例で説明します。

具体例① 通院期間180日(6ヶ月)、通院実日数が100日の場合

100日(通院日数)× 2 = 200日 > 180日(通院期間)

となるため180日が対象日数となります。

したがって、慰謝料金額は下記の計算式のとおり、77万4000円となります。

180日 × 4300円 = 77万4000円

具体例② 通院期間180日(6ヶ月)、通院実日数が70日の場合

70日(通院日数) × 2 = 140日 < 180日(通院期間)

となるため、140日が対象日数となります。

したがって、慰謝料金額は下記の計算式のとおり、60万2000円となります。

140日 × 4300円 = 60万2000円

 

任意保険会社の計算例

任意保険基準は、各保険会社が独自で運用している基準であり、現在は公表されていません。

過去に公表されている統一基準がありましたが、過去の話であり、その基準での賠償額を確認する意味は乏しいため割愛します。

参考までに過去の統一基準の表を以下に載せています。

任意保険基準による入通院慰謝料

 

弁護士基準の計算例

弁護士基準は、通称「赤い本」(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編))に掲載されている基準に従って計算します。

表は2つあり、重症(骨折や脱臼等)の表と軽症(むちうち、打撲等)の表があります。

骨折脱臼など重症の場合に使用する表(別表Ⅰ)
むちうちや打撲など軽症の場合に使用する表(別表Ⅱ)

引用元:当センターの刊行物について(青本及び赤い本)|日弁連交通事故相談センター

よこ列が通院期間で、たて列が入院期間です。

通院のみの場合には一番左の縦列の数字と通院期間の横列が交わる数字が慰謝料です。

入院と通院がある場合には、各期間のたて列とよこ列が交わる数字が慰謝料です。

1ヶ月は30日として考えます。例えば120日は4ヶ月です。

具体例① 骨折を負う重症で、6ヶ月間(入院30日、通院150日)の入通院をした場合

この場合の慰謝料は上記の重症の表から、入院1ヶ月の縦列と通院5ヶ月の横列が交わる「141」万円が慰謝料となります。

具体例② むちうちで、6ヶ月(入院0日、通院期間180日)の通院をした場合

この場合の慰謝料は、上記の軽症の表から、一番左の縦列と6ヶ月の横列が交わる「89」万円が慰謝料となります。

 

端数がある場合は?

例えば、通院期間135日の場合はどのように計算するのでしょうか。

この場合、日割りで計算します。

軽症の場合、120日(4ヶ月分)は67万円で150日(5ヶ月分)は79万円で差額は12万円です。

この12万円を日割り計算するのです。

つまり、12万円 × (15日 ÷ 30日)= 6万円を加算します。

よって、135日の慰謝料金額は下記の計算式のとおり73万円となるのです。

67万円(120日分) + 6万円(15日分)= 73万円

 

 

実通院日数と慰謝料額は比例する?

通院日数が増えれば増えるほど慰謝料の金額が増額されると勘違いされているケースもありますが、そんなことはありません。

自賠責基準だと1日4300円という基準であるため、1日通院するごとに4300円増え続けていくと勘違いされてしまうのだと思います。

自賠責保険基準の場合、治療費、慰謝料、休業損害、通院交通費などの傷害部分の上限額は120万円と決まっています。

つまり、治療費、慰謝料、休業損害、通院交通費などの合計額が120万円になった時点で、それ以上、慰謝料が増え続けることはありません。

また、120万円に達していない場合でも、自賠責保険の基準でも上記で紹介した計算方法から分かるように、通院期間の半分の日数を通院すれば満額の支払いを受けることができますので、実通院日数と慰謝料額は比例するということはないのです。

なお、弁護士基準の場合、通院頻度が少ない場合には通院実日数の3.5倍(むちうちの場合は3倍)に通院期間が修正されることはありますが、週に2、3回程度通院していれば、こうした修正はされません。

このように、通院すればするほど比例して慰謝料の金額が高額になるということはありません。

 

 

慰謝料の適正額がわかる!自動計算機

通院が6ヶ月(180日)きっかりの場合は、入通院慰謝料の相場は89万円です。

例えば178日、183日など半端な日数が出る場合には、日割りでの計算が必要になるなど計算方法が複雑になり、自分で計算するのは大変です。

以下の計算シミュレーターを使用していただくことで、簡単に慰謝料の相場を計算することができますし、他の賠償項目を含めた賠償金を計算できますので、是非ご活用ください。

 

 

むちうちは通院6ヶ月で打ち切られる?

通院期間が長期化した場合、保険会社から一方的に治療費の支払いを打ち切られることがあります。

どの程度で打ち切られるかは傷病名や怪我の程度で異なります。

執筆者の経験上、むち打ちの場合は経験上3か月から6か月程度で打ち切られる傾向です。

そのため、6か月経過していれば、打ち切られる可能性が高いです。

しかし、主治医がまだ治療によって改善の見込みがあると判断しているのであれば、この治療費の打ち切りは不当といえます。

保険会社のこのような措置に対して、交通事故に強い弁護士に相談するなどして泣き寝入りしないようにしましょう。

 

 

適切な慰謝料を受け取るための3つのポイント

医師の指示に従い通院する

これまで説明したとおり、慰謝料の金額は通院の期間や頻度で決まります。

したがって、治療が必要であるのに我慢して病院に行かないのは得策ではありません。

医師の指示に従い治療を継続すべきです。

自分の判断で治療をやめてしまうと適切な慰謝料の支払いを受けとれないばかりか、体に痛みが残ってしまう可能性もあります。

 

治療の打ち切りに安易に応じない

保険会社は事故から一定期間が経過すると治療を終了するよう打診してきます。

その打診の時点で、体が良くなり、医師も治療の終了を認めているような場合であれば治療は終了していいでしょう。

しかし、痛みが継続しており、医師も治療の継続を勧めているような場合には、安易に治療終了の打診を了承してはいけません。

主治医が治療の継続が必要であると言っていることを保険会社に説明し引き続き治療費の対応をするよう交渉すべきです。

安易に治療終了に応じてしまうと、適切な治療を受けられず、また、治療期間が短くなる結果、傷害慰謝料の金額も低額になってしまいます。

 

弁護士に相談、依頼する

治療継続が必要なのに、治療終了の打診を受けた場合には、早めに専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士が交渉することで治療期間を延長することができる場合もあります。

また、慰謝料の示談交渉においては、弁護士が交渉しなければ弁護士基準で解決することはほぼ不可能です。

適切な慰謝料を支払ってもらうためにも弁護士に相談・依頼されることをお勧めします。

 

 

6ヶ月通院しても痛みが残る場合には後遺障害の申請を検討


6ヶ月を経過しても痛みや痺れなどの症状が継続している場合には、後遺障害の申請を検討しましょう。

後遺障害とは、痛みや痺れ、関節の可動域制限によって働きづらくなってしまう程度の障害で、将来においても回復の見込みがない障害のことを言います。

後遺障害に認定された場合には、別途、後遺障害慰謝料を請求することができます

後遺障害慰謝料は等級に応じて金額は決まっており、最も認定されることが多い14級の場合は110万円が相場です。

また、後遺障害逸失利益を請求することができます。

後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残ったことで働きづらくなり減収してしまうことに対する補償です。

後遺障害が残存した場合には、こうした補償があるため、事故から6ヶ月経過しても症状が残存している場合には、後遺障害の申請を検討すべきでしょう。

 

後遺障害申請の注意点

後遺障害の申請には、被害者請求事前認定の2つの方法があります。

被害者請求は、被害者側で申請を行うので、申請に必須の資料でなくても、認定に有利と思われる証拠を追加して提出することができます。

他方で、事前認定は、相手保険会社が申請手続きを行うので、必須書類でない限り、積極的に認定に有利な証拠を提出してもらうのは難しいでしょう。

したがって、事案によっては、手間はかかりますが、被害者請求での申請を検討されたほうがいいでしょう。

申請方法が分からなかったり、負担になるようでしたら、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

後遺障害申請の流れ

後遺障害申請は、自賠責保険に対して申請して、実際の審査は損害保険料率算出機構が審査を行います。

以下は、事前認定の場合と被害者請求の流れのフロー図です。

被害者請求の流れ

事前認定の流れ

より詳しく確認されたい場合には、こちらをご覧ください。

 

後遺障害に認定された場合にもらえる慰謝料

後遺障害慰謝料は、等級の程度に応じて決まっています。

具体的な金額は、以下のとおりです。

等級 弁護士基準
1級 2800万円
2級 2370万円
3級 1990万円
4級 1670万円
5級 1400万円
6級 1180万円
7級 1000万円
8級 830万円
9級 690万円
10級 550万円
11級 420万円
12級 290万円
13級 180万円
14級 110万円

 

 

むちうちで後遺障害に認定される可能性がある

むちうちでも重篤な症状が残っている場合には、14級9号に認定される可能性はあります。

14級9号の認定の判断基準は、事故によって痛みや痺れが残存していることについて医学的に説明できるかどうかがポイントとなります。

その判断にあたっては、通院期間・頻度、症状の連続性・一貫性、事故の規模・態様、治療の内容、神経学的検査の結果、画像所見の有無などを総合考慮して判断されます。

14級9号の認定のポイントについて詳しくはこちらをご覧ください。

むちうちで後遺障害に認定された事例など含めて、以下で紹介します。

 

 

むちうちで後遺障害に認定された事例

事例① むちうちの被害者で弁護士が示談交渉することで160万円賠償額を増額できた事例
主な損害項目 弁護士に依頼する前 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 95万円 108万円
休業損害 40万円 70万円
後遺障害慰謝料 50万円 110万円(裁判所の基準)
後遺障害逸失利益 25万円 82万円(賃金センサス、5%、5年)
結果 210万円 370万円

この事例では、保険会社の後遺障害部分の提示が合計75万円(自賠責保険の上限額)となっており、明らかに不十分な賠償提示でした。

保険会社の提示に対して、弁護士が交渉することで、約160万円を増額することができた事例です。

 

事例② むちうちの被害者が交渉で弁護士基準満額で解決できた事例
主な損害項目 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 89万円
後遺障害慰謝料 110万円(裁判所の基準)
逸失利益 120万円(年収×5%×5年)
過失相殺 10%
結果 275万円

弁護士基準は、裁判で用いられる基準であるため、示談交渉の段階では弁護士が交渉したとしても満額の支払いを受けることができない場合があります。

しかし、この事例では、14級9号の認定も獲得した上で、裁判をすることなく弁護士基準の満額で解決することができました。

 

事例③ むちうちで主婦の休業損害を得た事例
損害項目 弁護士介入後
休業損害 約60万円
傷害慰謝料 約87万円(通院7か月)
後遺障害慰謝料 約100万円
後遺障害逸失利益 約75万円(裁判基準)
結果 約250万円+自賠責保険(75万円)

この事例では、主婦の方の休業損害(主婦休損)を回収できた事例です。

専業主婦で収入がない場合でも、交通事故により家事に支障が出ている場合には、主婦休損として賠償請求することができます

 

 

通院6ヶ月の交通事故慰謝料の知恵袋的Q&A

主婦が交通事故で6ヶ月通院した場合の慰謝料は?

主婦が交通事故で6ヶ月通院した場合に請求できる主な損害項目は、以下の3つが考えられます。

  1. ① 入通院慰謝料
  2. ② 休業損害
  3. ③ 通院交通費
①入通院慰謝料

入通院慰謝料は、これまで説明したとおり、主婦の場合も通院期間で計算されます(弁護士基準)。

6ヶ月通院の場合、入通院慰謝料は89万円になります。

②休業損害

主婦も家事労働をしているので、主婦としての休業損害(主婦休損)を請求することができます

休業損害の1日単価は、賃金センサスで計算します。

令和4年の女性の平均賃金は、394万3500円です。

これを365日で割って1日単価を出すと1日1万0804円となります。(参考:自賠責保険は1日6100円)

この1日単価に基づいて具体的な金額を算出しますが、その算出方法としては大きく2つ考え方があります。

一つは、通院日数をそのまま休業日数とする考え方です。

この場合、通院日数が50日の場合、1万0804円 ✕ 50日 = 54万0200円となります。

もう一つの方法は、時間の経過に応じて、1日単価を減額して考える方法です。

例えば、事故日から50日は60%、51日〜100日は30%、101日〜180日は10%といった割合で計算します。

計算式にすると以下のとおりです。

( 1万0804円 ✕ 60% ✕ 50日 ) + ( 1万0804円 ✕ 30% ✕ 50日 ) + ( 1万0804円 ✕ 10% ✕ 80日 ) = 57万2612円

上記のとおり、算出方法は二通りあります。

いずれの方法をとるかは、事案によりますが、裁判例は後者の方法で計算されることが多い傾向にあります。

注意点
主婦の休業損害は、どの程度家事ができなかったかという観点から判断されるので、事案によって金額は異なり、大きく変動することもあります。上記の金額は、あくまで被害者側としての計算方法であり、実際の合意額は上記金額よりも低額になることもあります。
③通院交通費

通院交通費は、公共交通機関で通院した場合には、その実費(実際にかかった費用)を請求することができます。

自家用車で通院した場合には、病院から自宅までの距離について、1kmにつき15円を請求することができます。

自転車や徒歩で通院している場合には、通院交通費は請求することはできません。

 

 

まとめ

交通事故が原因で6ヶ月通院した場合の慰謝料の相場は89万円です。

6ヶ月通院した場合には、後遺障害に認定される可能性もあるので、症状が残っている場合には、後遺障害申請を検討されるべきでしょう。

後遺障害に認定された場合には、賠償額も高額になってきますので、賠償請求について弁護士に相談されることをお勧めします。

当事務所では、交通事故事件を専門的に取り扱う弁護士が所属しています。

当事務所での交通事故に関するご相談及びご依頼後の事件処理は、全て専門の弁護士が対応しておりますので、安心してご相談ください。

また、当事務所では、面談での相談はもちろんのこと、電話相談、オンライン相談(LINE、ZOOM、Meetなど)でも相談をお受けしており、全国対応していますので、お気軽にお問い合わせください。

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