解決事例
更新日2020年1月21日

むちうちで14級9号の認定、弁護士の交渉で160万円増額した事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)



※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Rさん

受傷部位首(頚椎捻挫)
等級14級9号(頚部痛)
ご依頼後取得した金額
370万円

内訳
主な損害項目 弁護士に依頼する前 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 95万円 108万円
休業損害 40万円 70万円
後遺障害慰謝料 50万円 110万円(裁判所の基準)
後遺障害逸失利益 25万円 82万円(賃金センサス、5%、5年)
結果 210万円 370万円

 

状況

Rさんは、福岡市内で追突事故にあいました。

すぐに病院に搬送され、レントゲン検査を受けましたが、骨折はないとして頚椎捻挫(むちうち)と診断されました。

Rさんはその後、整形外科での通院を行っていきましたが、交通事故から1年近く治療を継続したにもかかわらず、首の痛みや頭痛、左腕の脱力感などの症状が残ってしまいました。

そのため、加害者の保険会社から勧められた後遺障害の手続を行うことにしました。

Rさんは後遺障害診断書を主治医に作成してもらい、保険会社に作成してもらった診断書を提出して事前認定という手続で後遺障害の申請を行いました。

その結果、Rさんに残ったむちうちの後遺症について、14級9号の「局部に神経症状を残すもの」に該当するとして後遺障害の認定を受けました。

この結果通知と一緒に保険会社から示談案の提案がRさんに送られてきました。

交通事故から1年たっても、むちうちの後遺症に苦しむRさんは保険会社からの示談案が妥当なものかどうか知りたくて、当事務所の弁護士に相談することにしました。

 

弁護士の対応

弁護士は、相談時にまずはRさんのこれまでの治療状況、後遺障害の認定資料、保険会社からの示談案を確認しました。

内容を確認すると、専門家である弁護士からすると示談案はRさんにとって不十分であると判断しました。

具体的には、後遺障害の補償が慰謝料と逸失利益をあわせて75万円となっていました。

この金額は自賠責保険の基準と同額の補償です。

Rさんは専業主婦で、後遺障害の補償として100万円以下の補償では到底足りないので、その旨をRさんに説明して、ご依頼をいただくことになりました。

弁護士が依頼を受けてから、保険会社に受任通知を送付し、Rさんがもっていなかった事故資料を一式取得し、詳細な治療状況を確認しました。

その上で、Rさんの事案で保険会社の提案する210万円では到底示談できない旨を伝え、裁判所の基準を前提とした解決案を打診しました。

その際、後遺障害の補償の部分だけでなく、けがの慰謝料の金額や休業損害についても1年間の治療で40万円は低額すぎるとして再考を求めました。

弁護士がついたことで保険会社も当初の金額を再考し、340万円という示談案を提案してきました。

この時点で130万円の増額に成功していたのですが、中身を見ていくと、慰謝料が裁判所の基準の80%程度というのが保険会社の主張でした。

そのため、再度弁護士からこの金額では示談できないと回答し、370万円での解決を提案しました。

この水準は、休業損害が30万円増の70万円、後遺障害慰謝料が裁判所の基準の100%とされる110万円、逸失利益が5%、5年間というむちうちの後遺障害では長めの補償を内容とするものでした。

この弁護士の提案に対し、保険会社も裁判をするよりは示談をした方がよいという判断に至り、無事に示談が成立しました。

当初の提案が210万円でしたので、160万円の増額となりました。

そして、解決期間もRさんにご依頼いただいてから約1か月とスピード解決となりました。

 

弁護士のアドバイス

任意保険会社は、示談修了後に、自賠責保険会社から自賠責保険基準の賠償額を支払ってもらうことができます。

つまり、今回のケースでは、Rさんは後遺障害14級の認定なので、自賠責基準では75万円となります。

その金額を任意保険会社は自賠責保険から支払いを受けることができるのです。

仮に、Rさんが、当初、提示を受けていた後遺障害部分を75万円で解決するという提案で示談していた場合、任意保険会社は後遺障害部分について何ら負担がなく解決できていたことになります。

こうした事情があるので、任意保険会社は、自賠責基準で賠償を計算して、被害者に提示してくることあるのです。

このように考えると、特に後遺障害が認定された事案では、適切な補償を得るためには、こうした賠償の実務のことを少しでも知った上で、提案された示談案は絶対ではないということを念頭にチェックしていただく必要があります。

こうした気づきがなければ、被害者の方とすれば、「保険会社が言うからこんなものだろう」と示談をしてしまう可能性があります。

Rさんは、「示談案が妥当なのか」という疑問をもったため、専門家である弁護士に相談し、その結果、「妥当ではなかった」ということを知っていただくことができました。

保険会社としても弁護士が依頼を受けなければ、裁判所の基準を用いた示談交渉をすることはほとんどありません。

したがって、後遺障害が認定された事案では、交通事故を専門とする弁護士の力が必要だと言えます。

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