誓約書を根拠に高額な未払い婚姻費用を請求された夫Aさん

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
ご相談者Aさん (福岡市中央区)
職業:会社員
世帯年収:2000万円
婚姻期間:20年
子どもあり (2人)
離婚を切り出した

相手:40代パート

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 減額利益
離婚 不成立 成立
養育費 月額40万円 月額35万円 月額5万円
慰謝料 500万円を支払う 100万円を支払う 400万円
婚姻費用 未払い婚姻費用3000万円
月額50万円
未払い婚姻費用0円
月額35万円
未払い婚姻費用3000万円
月額15万円

 

 

状況

Aさんは20年前に妻と結婚し、子ども2人を授かりました。

しかし、10年ほど前から夫婦関係が悪化していきました。

Aさんは、妻からは日常的にバカにされ、「甲斐性なし」「稼ぎがない」などの暴言を日常的に浴びせられるようになりました。子どもたちも妻に同調したため自宅に居場所がないようになりました。

また、Aさんが妻に性交渉を求めても、妻は「汚い。」などと言って応じませんでした。

このような家庭状況の中、Aさんは8年ほど前から、他の女性と交際するようになりました。

Aさんの女性関係が妻に発覚し、Aさんが自宅を出るという形で、別居が始まりました。

別居する際、Aさんは別居中の婚姻費用(生活費)として「毎月50万円を支払う」と記載した誓約書を作成し、妻に渡しました。

Aさんは、別居してから数ヶ月間の間、婚姻費用を支払いましたが、しばらくして、婚姻費用の送金を止めました。もっとも、Aさんは、妻と子どもたちが居住する自宅の住宅ローンとして月額20万円とその他に光熱費、通信費、保険料などを負担していました。そのため、合計すると月額30万円程度を負担していました。

Aさんは、別居から7年も経っていたことから、形骸化した夫婦関係を精算するため、当事務所に相談に来ました。

 

 

弁護士の関わり

弁護士は、受任後すぐに、妻に協議離婚の申入書を送付しました。

すると、妻に弁護士がつき、協議に応じないと回答してきました。

また、妻は、婚姻費用の未払金があるとして、3000万円の支払いを求めて裁判所へ訴えを提起しました(以下、「未払い婚姻費用訴訟」といいます。)。

妻側は、Aさんが別居する際、「毎月50万円を支払う」と記載した誓約書があることを根拠として、別居期間中の未払金を請求してきたのです。

これに対して、弁護士は、誓約書の有効性について争い、そもそも別居期間すべてについて月額50万円の支払いを約束したものではないと反論しました。

また、仮に合意が認められた場合に備えて、予備的に、住宅ローン等を負担していたことから、実質的には婚姻費用の一部を負担していたと主張しました。

また、当事務所の弁護士は、妻に対して、離婚調停を申立てました。

妻は、離婚調停に応じなかったので、調停は不成立となり、離婚訴訟を提起しました。

妻側はAさんに対して、婚姻費用の分担調停を申立ててきました。申立てを行った月以降の婚姻費用として、月額50万円の支払いを求めました(以下、「婚姻費用調停」といいます。)。

弁護士は、未払い婚姻費用訴訟では、早期の和解解決を目指し、慰謝料等を含めた和解案を提示しました。裁判所も妻を説得しましたが、妻は和解に応じませんでした。

婚姻費用の調停では、月額50万円が高額すぎると主張しました。その結果、婚姻費用については、月額35万円で合意が成立しました。

未払い婚姻費用訴訟では、和解が成立せず、当方が全面勝訴し、妻の請求は棄却されました。

離婚訴訟では、離婚条件として、婚姻費用と同額の月額35万円を養育費として支払う旨を提示しました。その結果、離婚については、和解離婚が成立しました。

 

 

補足

本件のポイントについて解説します。

未払い婚姻費用について

本件では、「毎月50万円を支払う」と記載した誓約書の法的有効性が大きな争点となりました。

もし、この誓約書が有効であれば、Aさんは、別居期間中、毎月50万円の婚姻費用の支払い義務を果たしていないこととなります。そのため、未払い婚姻費用の合計額(約3000万円)を支払わなければならなくなるのです。

誓約書は有効と判断されてもおかしくない状況であり、非常に微妙な案件でしたが、当方の主張が認められ、妻側の請求が退けられました。

なお、未払い婚姻費用については、時効も問題になりますが、本件では時効はまだ成立していませんでした。

また、未払い婚姻費用の支払い義務が認められなくても、事案によっては財産分与として考慮される可能性もあります。

本件では、Aさんは、住宅ローン等の支払いを行っていたため、仮に、妻が財産分与を主張してきても、認められない可能性が高い状況でした。

離婚訴訟について

本件では、別居からすでに、7年程度が経過していましたが、仮に判決となった場合、離婚請求が棄却されていた可能性が高い状況でした。

Aさんは、別居直前に他の女性と不貞関係を持っていました。そのため判決では、有責配偶者と認定される可能性がありました。裁判所は有責配偶者からの離婚請求については、相当長期間の別居などの要件を満たさない限り、離婚を認めないというスタンスです。

そのため、養育費については、婚姻費用と同額の月額35万円という、相場よりも少し高い条件を提示しました。この提示が功を奏し、妻を説得することに成功しました。

婚姻費用について、くわしくはこちらをごらんください。

離婚問題については、当事務所の離婚弁護士まで、お気軽にご相談ください。

 

 





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