経営者の妻は離婚しない方がいい?弁護士が解説

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経営者の妻と離婚しなほうがいい?

経営者の妻が離婚しない方がいいかどうかは、ケース・バイ・ケーです。

たしかに、離婚をすると、特に経済面でデメリットやリスクが生じる可能性があります。

しかし、我慢をして結婚生活を続けるよりも、適切な手続きをとって離婚をした方がメリットが大きい場合もあります。

ここでは、経営者の妻の方に向けて、離婚しない方がいいかどうかについて、離婚するメリット・デメリット、離婚する場合の手続き、注意点なども紹介しながら解説していきます。

ぜひ参考になさってください。

経営者の妻は離婚しない方がいい?

離婚しない方がいいかどうかは、ケース・バイ・ケースです。

たしかに、経営者である夫と離婚をすると、特に経済面でデメリットやリスクが生じる可能性があります。

一般的な傾向として、経営者世帯は収入や資産が多いため高い水準の生活を送っています。

離婚をすれば、経営者の収入や資産を頼りに生活をすることはできなくなるため、通常は生活水準が下がり、経済的に不安定になる可能性もあります。

したがって、経済的に豊かな状態を維持することを最も重視する場合は、離婚しない方がいいと言えるかもしれません。

もっとも、一概には言えませんが、結婚生活を続けることに苦痛を感じている場合は、一般的には離婚した方がよい状況にあると考えられます。

特に、夫によるDVやモラハラが原因で心身の安全や安定が脅かされている場合や、子どもに悪影響が出ている場合は、根本解決のためには離婚を考えた方がいいケースが多いです。

また、夫が経営者の場合は、離婚に伴う財産分与などにより、当面の生活費を確保できるケースも多いです。

離婚の手続きを計画立てて適切に進めていけば、離婚後の生活が危うくなるということは、多くのケースで防ぐことができます。

そのため、我慢して結婚生活を続けるよりも、適切に手続きをして離婚する方がメリットが大きいといえるケースは少なくないと考えられます。

 

 

経営者の妻が離婚するデメリットやリスク

経営者の夫との離婚には、特に経済面でデメリットやリスクが生じる可能性があります。

具体的には、

経営者の妻が離婚するデメリットやリスク

などが考えられます。

 

①生活水準が下がる可能性

一般的な傾向として、経営者世帯は平均的な世帯よりも収入や資産が多く、高い水準の生活を送っていることが多いです。

しかし、離婚後は夫の収入や資産に頼って生活をすることはできなくなるため、離婚前と同じような高い水準の生活を維持することは難しくなる可能性があります。

 

②経済的に不安定になる可能性

離婚をして夫の収入に頼ることができなくなると、経済的に不安定になり生活費の心配が生じる可能性もあります。

これまで専業主婦だった方も、生活費を得るために仕事を始めなければならなくなる場合もあるでしょう。

 

③子どもの教育に影響が出る可能性

経営者世帯は、子どもの教育にも十分なお金を掛けることができる場合が多いです。

私立学校への進学、複数の習い事、海外留学などをさせている・計画している家庭も多いでしょう。

しかし、離婚をすると経済的な余裕がなくなり、子どもの教育にも離婚前ほどにお金を掛けられなくなる可能性があります。

場合によっては、転校や習い事の中止などが必要となり、子どもの心情にも影響が及ぶこともあるでしょう。

 

【ワンポイント:デメリットへの対処法】

夫が経営者の場合、一般世帯よりも多くの収入・資産があることが多いため、離婚に伴いもらえるお金(財産分与、養育費、慰謝料など)が高額化する傾向にあります。

そのため、これらの離婚条件をしっかり取り決めることで、当面の生活費や子どもの教育資金を確保することができ、上記のデメリットやリスクを抑えられる場合もあります。

財産分与や養育費などに関する注意点等は、後ほど解説いたします。

 

 

経営者の妻が離婚するメリット

経営者と一緒に生活するストレスから解放される

夫が仕事優先で家庭をかえりみない場合や、仕事上のプレッシャーやストレスが原因で家庭内でもイライラしているような場合、妻には大きなストレスがかかります。

家事や育児の負担が集中して疲弊していたり、夫に気を遣って常に緊張状態を強いられていたりする場合もあるでしょう。

離婚をすれば、そのような状態から脱することができ、ストレスから解放されます。

 

新しい生活を始められるようになる

離婚をすれば、夫の仕事や生活のサポートはしなくて済むようになります。

そのため、自分のために自由に使える時間が増え、新しい仕事を始めたり、趣味を楽しんだりすることもできるようになるでしょう。

 

 

経営者の妻が離婚をした方がいいケース

一概には言えませんが、一般的な傾向として、次のようなケースでは離婚をした方がいいと考えられます。

  • 夫からDVやモラハラを受けているケース
  • 夫婦関係が修復不可能な状態になっているケース
  • 子どもに悪影響が出ているケース

DVやモラハラがあり、結婚生活を続けることで自身や子どもの心身の安全や健康が脅かされているような場合は、通常は離婚をした方がいいと考えられます。

不倫、浪費、性格の不一致などが原因で夫婦関係が悪化し、修復不可能な状態になっている場合も、離婚をして新しい生活を始めることを考えた方がいいケースが多いと思われます。

また、夫婦関係が悪いことが原因で、子どもが家の中で安心して過ごすことができなくなっていたり、両親の板挟みになり苦しんでいる場合も、離婚を考えた方がいい場合が多いです。

 

 

経営者の妻が離婚をしない方がいいケース

一概には言えませんが、一般的には、次のようなケースでは離婚に慎重になるべきだと考えられます。

  • 夫婦関係の修復を望んでいるケース
  • 世間体や生活水準の維持を重視するケース

離婚をすると相手との関係を修復することは非常に困難になるため、一時的な感情で離婚を求めることは避けた方がいいでしょう。

相手に対する愛情があり、関係修復を望む気持ちがあるのであれば、離婚には慎重になるべきです。

また、離婚をすると、経営者の妻という社会的な地位や立場は失われ、生活水準も下がる可能性があります。

そのため、今の社会的な地位・立場や生活水準を保つことを何よりも重視する場合は、離婚しない方がいいでしょう。

 

 

経営者の妻が離婚する場合の手続き

手続きの種類

離婚の手続きには、主に①離婚協議、②離婚調停、③離婚裁判の3つがあります。

それぞれの内容、メリット・デメリットは以下のとおりです。

手続き 内容 メリット デメリット
①離婚協議 裁判所を通さず、当事者間で話し合いを行い、合意による離婚を目指す
  • 早期解決の可能性
  • 柔軟な解決の可能性
  • 負担が少ない
  • 冷静な話し合いが困難な可能性
  • 相手が応じなければ離婚成立せず
②離婚調停 裁判所において、調停委員会を仲介に話し合いを行い、合意による離婚を目指す
  • 相手と顔を合わせる必要なし
  • 柔軟な解決の可能性
  • 解決までに時間がかかる
  • 相手が応じなければ離婚成立せず
③離婚裁判 裁判所において、主張や証拠を出し合い、最終的に裁判官に離婚の可否等について判断をもらう
  • 相手が応じなくても決着がつく
  • 解決までに時間がかかる
  • 柔軟な解決は困難
  • 負担が大きい

※メリット・デメリットは一般的な傾向であり、事案によって異なります。

まずは話し合いの手続きである①離婚協議又は②離婚調停から始めます。

もっとも、当事務所では、最も負担が少なく早期解決の可能性がある①離婚協議から始め、協議で解決できない場合に②離婚調停を申し立てることをおすすめしています。

②離婚調停で話し合っても合意に至らなかった場合は、③離婚裁判を起こし、最終的に裁判官の判断をもらうこととなります。

なお、③離婚裁判は、②離婚調停を経た後でなければ原則として起こせないルールとなっています(これを「調停前置主義」といいます。)。

 

手続きをスムーズに進めるための準備

離婚の手続きをスムーズに進めるためには、事前準備が必要です。

特に次の3つのポイントに注意するようにしましょう。
手続きをスムーズに進めるための準備

 

①離婚条件や手続進行の見通しを立てる

まずは、離婚後の生活や、離婚成立までの道筋について、おおよそのイメージを持つことが大切です。

そのため、離婚問題に詳しい弁護士に相談し、財産分与や養育費などの離婚条件や、手続きの進め方などについて見通しを立ててもらうことをおすすめします。

 

②別居するかどうか検討する

手続きを始めるにあたり、別居するかどうかも検討する必要があります。

別居が必要であるかどうかは状況次第です。

しかし、相手と同居をしたまま手続きを進めるのは通常難しいため、一般的には別居した方がいいケースが多いです。

別居する場合は、タイミングや別居当日の段取り、持ち出す荷物などについて検討し、慎重に準備を進める必要があります。

また、別居後は夫に対して婚姻費用(生活費)を請求することができます。

別居後スムーズに請求できるように、事前に適正額を調べておくなどの準備をしておく必要もあります。

そのため、事前に離婚問題に詳しい弁護士に相談し、必要に応じてサポートを受けることをおすすめします。

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③証拠・資料を集める

離婚手続きの際には、離婚の原因(浮気、DVなど)に関する証拠や、財産に関する資料(夫名義の財産の存在や内容を示す資料)などが必要となります。

これらは、できる限り別居前(同居中)、かつ、相手に離婚の話しを切り出す前に集めておくようにするとよいでしょう。

必要な証拠や集め方などは事案により異なりますので、詳しくは専門の弁護士にご相談ください。

 

 

経営者の妻が離婚する場合の注意点

経営者の妻が離婚する場合の注意点

 

①経営者の妻は財産分与を受け取れる

財産分与とは、離婚する際に、夫婦が結婚生活の中で協力して築き上げた財産を公平に分配することをいいます。

結婚生活の中で取得した財産は、夫の名義で取得したものであっても、夫の収入を原資として取得したものであっても、夫婦の協力により取得したものとして基本的には財産分与の対象となります。

夫が経営者の場合は、収入が多いため一般世帯以上に多額の財産が築かれている傾向にあります。

したがって、経営者の妻は、離婚の際に財産分与として高額の財産を受け取ることができる可能性があります。

 

ワンポイント:夫の財産を把握する

財産分与を適切に行うためには、夫名義の財産を漏れなく把握することが重要なポイントとなります。

 

経営者は、お金(預貯金)以外にも、不動産、動産(高価な時計、宝石などの貴金属など)、保険(生命保険など)、有価証券(株式など)、自動車、退職金、ゴルフ会員権など、幅広い財産を保有していることが多いです。

これらについて漏れなく調査し、リストアップするようにしましょう。

具体的な調査方法などについて、詳しくは専門の弁護士にご相談ください。

 

夫の自社株も財産分与の対象となる

会社経営者は自社の株式を保有していることがほとんどですが、この自社株も財産分与の対象となり得ます。

夫が独りで経営しているような小規模な会社であっても、事業が順調であれば、自社株の財産価値が高い可能性もあります。

そのため、財産分与を請求する際には、自社株も忘れずに財産分与の対象に含めることが重要なポイントとなります。

もっとも、会社が非上場会社の場合、株式に市場価格がないため、自社株の評価(お金に換算すること)は非常に難しくなる傾向にあります。

適切に評価するためには、専門知識や経験が不可欠となります。

そのため、財産分与の対象に自社株がある場合は、一度専門の弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

 

②経営者の妻は高額な養育費を請求できる

離婚後に自身が子どもを引き取る場合は、相手に養育費を請求することができます。

養育費の金額は、一般的には父母双方の年収に基づいて算定されるため、夫が経営者で年収が高い場合は養育費が高額になる可能性があります。

したがって、離婚の際には、養育費の適正額を押さえ、きちんと取り決めをするようにしましょう。

もっとも、夫が経営者で年収が非常に高額である場合は、適正額の算定が難しく、算定方法を巡って争いになる場合もあります。

また、私立学校や習い事、海外留学などで多くの費用がかかる場合は、これを考慮した金額とするかどうかなどについても協議が必要となります。

これらの問題への対処には、専門知識や経験が必要となります。

そのため、離婚問題に詳しい弁護士に相談し、助言を得るようにされることをおすすめいたします。

 

③経営者の妻は慰謝料をもらえる可能性がある

夫の浮気やDV・モラハラなどが原因で離婚に至った場合、それによって受けた精神的な苦痛を償うためのお金として慰謝料をもらえる可能性があります。

慰謝料を請求する場合は、夫の有責行為(浮気やDVなど)を裏付ける証拠があると有利に進められますので、まずは適切な証拠を確保するようにしましょう。

また、慰謝料の金額は、有責行為の内容、結婚期間、被害の状況など様々な事情が考慮されたうえで決められるため、事案により異なります。

夫が経営者であることのみをもって、慰謝料が高額化するわけではないので注意が必要です。

もっとも、収入や資産が多いという点は慰謝料を増額させる事情として考慮される可能性があります。

また、夫が経営者で多くのお金を支払う余裕がある場合は、早期離婚を条件に、相場以上の金額の支払いを受けられるケースもあります。

しかし、あくまでケース・バイ・ケースですから、詳しい見通しについては専門の弁護士にご相談ください。

 

④経営者の妻が夫と別居するときは生活費(婚姻費用)に注意

経営者の夫と離婚前に別居した場合は、ほとんどのケースで生活費(婚姻費用)を請求することができます。

経営者との離婚は、財産分与が複雑化するなどして、解決までに時間がかかるケースが多いです。

それに伴い別居期間が長くなる傾向にあるため、別居期間中の生活費を確保することは非常に重要になります。

そのため、夫と別居するときは必ず婚姻費用を請求し、適正額を支払ってもらえるようにしましょう。

もっとも、金額の算定などについては、養育費の場合と同様に難しい問題が生じる可能性があります。

そのため、専門の弁護士に相談し、適正額や請求方法について助言を得ることをおすすめいたします。

 

⑤経営者の妻は離婚専門の弁護士に相談する

ここまで解説したように、経営者の妻が離婚する場合は、財産分与、養育費、慰謝料、婚姻費用など、お金に関する条件について特に注意を要します。

いずれも金額が大きくなる傾向にあり、離婚後の生活にも大きな影響を及ぼすため、適切に取り決めることが重要なポイントとなります。

一方で、いずれについても複雑で難しい問題が生じる可能性があり、専門知識や経験がなければ適切な対処は困難である場合が多いです。

そのため、離婚問題を専門に扱う弁護士に相談し、慎重に進めることをおすすめいたします。

 

 

経営者の妻の離婚についてのQ&A

 

経営者の妻が離婚前にやってはいけないことは?

  • 子どもを置いて別居すること
  • 自己名義の財産を隠匿すること
  • 他の男性と交際すること

これらをすると、離婚の手続きの際に不利になる可能性があります。

具体的には、親権を取ることが難しくなる、損害賠償(慰謝料)請求を受ける、離婚が認められなくなるなどのリスクが生じる可能性があります。

また、無用なトラブルを招いて紛争を長期化させる要因にもなり得ますので、注意するようにしましょう。

 

離婚と別居はどちらが得か?

ケース・バイ・ケースです。

離婚せずに別居をすれば、基本的には婚姻費用を毎月もらうことができます。

一方、離婚をすれば、財産分与などでまとまったお金をもらえる可能性はあるものの、婚姻費用を毎月もらうことはできなくなります。

そのため、お金の面では別居を続けた方が得であるケースは多いと思われます。

もっとも、早期の離婚と引き換えに、財産分与や慰謝料(解決金)の増額に応じてもらえるケースもあります。

このようなケースでは、離婚した方が得である場合もあります。

また、離婚して経済的に自立したり、他の人と再婚した方がより豊かな生活を送れるようになるケースもあります。

もちろん、お金の面だけでなく、離婚をして自由で快適に過ごせるようになることこそが得と考える方もいらっしゃるでしょう。

このように、どちらが得かはケース・バイ・ケースであり、何を得と考えるかによっても異なります。

 

 

まとめ

以上、経営者の妻は離婚しない方がいいかどうかについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

離婚する・しない、どちらがいいかはケース・バイ・ケースです。

離婚を迷っている場合は、まずは離婚問題を専門に扱う弁護士に相談し、仮に離婚する場合の離婚条件や手続きの進め方について、見通しを立ててもらうことをおすすめします。

離婚に向けて進めていく場合は、財産分与や養育費など、特にお金に関する条件は高額化・複雑化しやすいため、慎重に取り決めるようにしましょう。

適切に対処するためには、専門知識や経験が必要となりますので、専門の弁護士に相談し、サポートを受けることをおすすめします。

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