経営者(社長)の財産分与はどうなる?【弁護士が解説】

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

財産分与とは

財産分与とは、離婚する際に、夫婦が結婚生活の中で協力して築き上げた財産を公平に分配することをいいます。

基本的には、離婚する前に取り決めることになります。

離婚後でも請求することは可能ですが、期間制限(原則として2年間)がありますので注意が必要です。

財産分与でもっとも大切なことは、対象となる財産を洗い出すということです。

財産分与について、詳しくはこちらのページで解説しています。

 

 

経営者(社長)に特有の財産の調査、評価方法

チェックのイメージイラストまず、会社社長等の場合、保有する財産の範囲が広く、かつ、高額化するため、財産分与の対象となる財産を正確に確定し、かつ、適切に評価する必要があります。

通常、財産分与では、以下のような財産が対象と考えられます。

財産分与の対象となる財産

 

会社社長等の場合、一般世帯以上に資産を有していることが多いため、まずは上記の財産を正確に把握することが重要となってきます。

特に、会社社長等の場合、②動産(家財道具等)、⑤有価証券(株式等)、⑦退職金(将来受け取るもの)について、注意が必要ですので、ここではこの点に絞ってご説明します。

動産(家財道具等)

家財道具のイメージ画像

動産は、通常は時価評価額は乏しく、財産分与について、あまり問題となりません。

一般世帯では、問題となったとしても、夫婦のどちらが希望の家財道具(例えば、テレビ、タンスなど)を手に入れるか、というレベルです。

しかし、会社社長等の場合、夫婦の一方が、高価な時計、宝石等の貴金属を保有している場合が見られます。

したがって、これらを忘れることなく、対象財産に含めることが必要です。

そして、これらを適切に時価算定しなければなりません。

 

出資持分

有価証券については、当事者が保有する株式等が対象となってきますが、会社社長の場合、自らが経営する会社の株式も、財産分与の対象となり得ます。

さらに、例えば、夫が会社の代表者で、妻を役員としている会社の場合、夫だけではなく、妻も株式を保有しているケースが多くあります。

このような場合は、夫の株式だけではなく、妻の株式も財産分与の対象となり得ます。

しかも、同族会社等の非上場株式等は、1株あたりの評価額が高額になることもあります。

株のイメージ画像

また、経営者は過半数の株式を保有していることがほとんどであるため、株式だけでも莫大な財産となります。

したがって、経営者の自社の株式については、必ず対象財産に含める必要があります。

また、経営者の場合、ゴルフを趣味とされている方が多くいらっしゃいますが、ゴルフ会員権等も対象となるので注意が必要です。

 

退職金

お金のイメージ画像

会社社長は、あくまで役員であり、従業員ではないことから、退職金がないと誤解されている方もいらっしゃいます。

しかし、経営が順調な会社の多くは、将来、役員が退任するときに退職金を支給するために会社を契約者、社長を被保険者として保険(長期平準定期保険や逓増定期保険等)を掛けていることが多く見られます。

経営が順調な会社がこのような形で保険を掛けているのは、節税目的が大きな理由です。

すなわち、経営状況がよいときに役員報酬として支給するよりも、保険とすれば、その保険料の2分の1から4分の1程度を損金として処理できます。

そして、経営者にとっても、現時点で役員報酬として受け取るよりも、将来、退任するときに退職金として受け取ったほうが税制上有利になります。

したがって、経営状況がよい会社では、経営者に退職金が支給される可能性が高いのです。

しかも、経営者の退職金の額は、かなり高額になります。

そのため、退職金も財産分与の対象とすることを忘れないようにしなければなりません。

弁護士上記のような財産について、その存在を調査したり、評価するには、高度な専門的知識が必要となります。

したがって、離婚問題を専門とし、かつ、財産分与を得意とする弁護士にご相談されることをおすすめします。

その他、財産分与の対象財産の調査方法や評価方法についてはこちらからどうぞ。

 

 

経営者(社長)の財産分与の割合は2分の1か?

共働き夫婦の場合に限らず、妻が専業主婦の場合であっても、財産分与の割合は原則として2分の1です。

実務上、これを2分の1ルールといいます。

では、会社の経営者で、個人の特殊な能力や努力によって高額の資産形成がなされたような場合にも、相手の要求に応じ、財産の半分を渡さなければならないのでしょうか?

弁護士答えは否です。

そもそも、財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持してきた共同財産を、離婚を機に精算・分配するものです(精算的財産分与)。

したがって、共同財産に対する夫婦の寄与の程度、婚姻中の協力及び扶助の状況、職業、収入その他一切の事情を考慮して定めるべきです。

実際の事例においても、2分の1ルールを適用しなかった事例があります。

 

経営者の離婚問題事例

判例 2分の1ルールを適用しなかった事例

アルコール依存症のイメージイラスト妻が婚姻後家計を助けるためにプロパンガスの販売を始めたところ、営業が順調に伸びていき、支店を設けるまでに発展させた。

これに対し、夫は勤めを辞め、この営業に加わったが、やがて酒におぼれ、妻子に暴力を振るうようになり、妻は子どもを連れて別居し、子どもを独りで養育した事案。


妻が長期間忍従を強いられながら夫婦財産を構築してきたその尽力の程度、子の養育に捧げてきた費用等を考慮し、財産の70パーセントを妻に分与した。

【松山地裁西条支判昭50.6.30】

もっとも、2分の1ルールが適用されるか否かは、個別具体的な事情によりますので、くわしくは離婚専門の弁護士にご相談ください。

 

 

経営者(社長)の財産分与の方法のポイント

ba61c59bd16052cab689527e4637d0cb_s一方が会社経営者の場合、他方が会社の株式を保有しているケースが多く見られます。

例えば、夫が会社社長で、自社株の70パーセント、妻は30パーセントを保有しているようなケースです。

このような場合、株式をどうするか、財産分与で取り決めておかないと大変なことになります。

すなわち、株式について、取り決めをせずに、協議離婚を成立させた場合、妻は30パーセントの株式を保有したままであり、会社に対して、議決権や配当請求権等を有することになります。

夫としては、離婚したから妻は株主ではないと考えることが多々あります。

しかし、離婚と会社に対する関係は、まったく別なのです。

妻にしても、夫の会社の経営など望んではいないでしょう。

そこで、このような場合は、株式を財産分与の対象として、離婚協議の中で、妻が夫に適切な時価で買い取ってもらうなどを取り決めておくべきです。

 

 

まとめ

弁護士以上、会社経営者の離婚問題について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

会社経営者の場合、保有資産や役員報酬が高額であることから、財産分与等の問題が複雑化する傾向にあります。

そのため、離婚問題の中でも、特に難易度が高く、適切な解決のためには専門知識が必要となります。

当事務所の離婚事件チームは、会社経営者の離婚事案について、専門知識とノウハウを共有しております。

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