熟年離婚の原因と準備すべきこと【弁護士が解説】

  
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者・3級ファイナンシャルプランナー


熟年離婚とは

熟年離婚とは、結婚してから長年月が経過した夫婦が離婚することを指します。

熟年離婚の場合、ご年配の夫婦が当事者となるため、若年離婚とは明らかに状況が異なってきます。

すなわち、熟年離婚にあたっては、「離婚後の生活を安心して暮らせるかどうか」が最大のポイントになります。

ここでは熟年離婚の原因と準備すべきことなどについて、解説いたします。

 

 

熟年離婚の原因とは

熟年離婚は妻から切り出される?

最高裁が公表している資料によれば、2019年の離婚調停の申立て件数(3万8501件)のうち、男女の割合は次のようになっています。

(2019年司法統計:婚姻関係事件数-終局区分別申立人及び申立ての趣旨別)

引用元:第15表 婚姻関係事件数―終局区分別|裁判所

このことから、男女別で言うと、離婚調停に関しては女性からの申立てが多いということがわかります。

ただ、最高裁の資料では、申立人の年齢が不明なため、熟年離婚かどうかの判断がつきません

 

当事務所は年間700件以上の離婚の相談を受けております(2019年及び2020年実績)。

過去2年間の60歳以上の離婚相談者の性別を調査したところ、男女の割合は次のようになっていました。

(デイライト法律事務所2019年から2020年離婚相談者の男女別割合)

したがって、当事務所の60歳以上の離婚相談者の割合については、女性の方が多いという結果でした。

 

離婚の理由ランキング

当事務所の過去2年間の熟年離婚のご相談では、以下の理由で離婚を決意されたという方が多い印象です。

女性の離婚したい理由トップ5

1位 精神的虐待 27.3%
1位 性格の不一致 27.3%
3位 暴力 18.2%
4位 相手の不倫 9.1%
5位 生活費を渡さない 8.5%

(デイライト法律事務所2019年から2020年の60歳以上の女性相談者)

男性の離婚したい理由トップ5

1位 性格の不一致 27.3%
2位 浪費 18.5%
3位 両親との不和 15.2%
4位 性的不調和 12.1%
5位 その他 10.2%

(デイライト法律事務所2019年から2020年の60歳以上の男性相談者)

 

なお、熟年離婚に限らない場合の離婚の理由ランキングはこちらを御覧ください。

 

 

熟年離婚の実態

熟年離婚を考えた場合、その実態がどうなのか検討しておく必要があります。

離婚後の生活はどうなる?

まず、次のチェック項目を見て、離婚した場合の具体的な生活をイメージされてみてください。

住居をどこにするか
熟年離婚の場合は若年離婚と比べて、実家に戻る方は比較的少ない印象です。
その場合、どこで生活するのかを検討することとなります。
自宅に住み続ける場合は、後述する財産分与が問題となります。
仕事をどうするか
離婚を機に働き始める場合、または、転職される場合は、仕事を探す必要があります。
熟年離婚の場合は、就職先の選択肢が広くないことが想定されるため希望される職種の求人の有無などを見ておかれた方が良いでしょう。
収入・支出の内容と金額と内訳はどうなるか
離婚後の生活が成り立つためには収支のバランスがとれていなければなりません。
収支の内訳を具体的に考え、予測家計表を作って見られると良いでしょう。
合わせて読みたい
離婚後の生活について

 

熟年離婚と子どもへの影響

熟年離婚の場合、若年離婚と比べて子供が自立しているケースが多いのが特徴です。

また、学生であっても、高校生や大学生の場合が多いため、両親の離婚が与える精神面への影響は比較的少ないでしょう。

ただ、子供が大学生などの場合は学費の支払いが懸念点となります。

このような場合は、養育費として検討しなければなりません。

 

熟年離婚のメリットとデメリット

熟年離婚と一口に言っても状況は様々です。

大まかな傾向をまとめると、次のメリットとデメリットが想定されます。

メリット
夫が原因となっている悩みから開放される
  • 家庭内暴力
  • 夫による金銭的な問題
  • 舅、姑との関係
  • 介護
  • 浮気
新しい生活を始められる
  • 冷め切った夫婦関係からの脱出
  • これまでできなかった趣味・生活(旅行など)への挑戦
  • 新しい恋愛
姓を変更することができる
デメリット
世間体が悪くなる
経済的な安定を得づらくなる
働く必要性が高くなる
衣食住の質が下がる
老後の生活が保証されない

 

 

熟年離婚のために準備すべき3つのこと

熟年離婚で後悔しないためにも、特に大切な3つのことをご紹介します。

熟年離婚をしたときの年金を調べる

離婚する際は、年金分割が問題となります。

年金分割とは、離婚する際、夫婦が加入していた厚生年金の保険料給付実績のうち、報酬比例部分(基礎年金部分は対象外とされています)について、多い方(多くは夫)から少ない方(多くは妻)へ分割する制度です。

前述の通り、熟年離婚の後、年齢のために再就職が困難となるケースは多く、安定的な収入として年金が確保できるかどうかはとても大きな問題となります。

年金分割のポイント

年金分割にあたっては、

  • 結婚してからの年金受給期間がどれだけあるか
  • 2008年4月以降の結婚期間がどれだけあるか

という2点がポイントとなります。

2008年4月以前に納付した年金について
2008年4月以前に納付した年金については、厚生年金や共済年金の報酬比例部分に限って分割の対象となり、夫の名前で納めた年金のうち、妻が受給できるのは最大2分の1までです。
また、この分配の割合の決定にはお互いの合意が必要となります。
2008年4月以降に納付した年金について
2008年4月以降に納付した年金については、(専業主婦だった期間に限られますが)夫の厚生年金の保険納付実績を自動的に2分の1に分割することができます。

離婚後の生活プランを立てる上では、以上のような年金分割制度をしっかり理解する必要があります。

合わせて読みたい
年金分割について

 

熟年離婚の財産分与を確保する

前述の熟年離婚のデメリットの中で、金銭に関するデメリットは深刻なものであるといえます。

金銭に関するデメリットを回避する上で一番現実的な方法は、離婚に際してより多くの離婚給付を受けることです。

離婚給付には、財産分与や慰謝料がありますが、相手の不貞行為などがない場合、基本的には財産分与のみが問題となります。

特に、熟年離婚の財産分与においては、夫の退職金が対象となるかが問題となりやすい傾向です。

適正な金額の財産分与を得るためには、離婚を切り出すまでの周到な準備が必要です。

 

離婚したら生活保護を受けることができるか

前述した財産分与や年金分割などを考慮しても、生活が成り立たないような場合、公的扶助を検討する必要があります。

生活保護は、経済的に苦しい人に対して生活費を支給する国の扶助制度です。

生活保護を受けることができる要件は次のとおりです。

生活保護を受けることができる要件
困窮のため最低限度の生活を維持することができない

引用元:生活保護法|電子政府の窓口

家計の収支だけでなく、財産分与で得る資産などを考慮しても生活できない場合は、生活保護を受けることができる可能性があるので、専門家に相談される良いでしょう。

 

 

熟年離婚の流れと手続きについて

どちらか一方が離婚を申し出たあとにたどる道筋はいくつか考えられます。

一般的には、まずは夫婦の間で離婚についての話し合いをして、協議離婚を目指します。

そして、当事者間での話し合いによる合意が無理であれば、次に家庭裁判所に調停を申し立てて「調停離婚」を目指します。

調停が不成立となった場合には、さらに訴訟提起をして「裁判離婚(和解離婚を含む)」を目指すという順になります。

これらの簡単な特長とメリットやデメリットをまとめると下表のとおりとなります。

協議離婚(当事者同士の話し合い)

メリット デメリット
  • 柔軟な解決の可能性がある
  • スピード解決の可能性
  • 負担が少ない
  • 相手が応じないと合意できない
  • 冷静な話し合いが難しい

 

調停離婚(裁判所での話し合い)

メリット デメリット
  • 相手と直接顔を合わせる必要がない
  • 柔軟な解決の可能性がある
  • 時間がかかる
  • 負担が大きい
  • 相手が応じないと成立しない

 

裁判離婚(裁判所による命令)

メリット デメリット
  • 相手が応じなくても決着がつく
  • 柔軟性がない(※)
  • 時間がかかる
  • 負担が大きい
柔軟性についての説明(※)
裁判で判決となると、多くの場合、裁判基準に従った画一的な結果となります。
裁判基準に納得できない場合、裁判離婚は避けた方がよいということになります。

 

 

弁護士による交渉

離婚問題では、弁護士に交渉してもらう方法をお勧めいたします。

裁判所を利用しないため、柔軟な解決の可能性スピード解決の可能性を確保できます。

また、弁護士が相手と交渉するので、依頼者の精神的・肉体的な負担を軽減できます。

まずは弁護士が相手と直接交渉し、納得がいく解決が得られない場合に、次善の策として、調停手続の利用を検討するとよいでしょう。

 

まとめ

熟年離婚においては、なるべく多くの離婚給付を受けられるかどうかが離婚後の生活を左右しますので、一般的な道筋をたどる前に、まず、周到な準備が必要となります。

前述の年金分割についてしっかり把握しておくことや、財産分与を間違いなく受けるための財産保全をしておくことなど、やらなければならないことがいくつもあります。

離婚の手続き、財産の保全に関する申し立て等について、一度法律家に相談することをお勧めします。

この記事が熟年離婚の問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 

「熟年離婚」の解決事例を参考に見る

 

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