養育費と差し押さえ|手続の流れやポイントを弁護士が解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

養育費は、子どもの健全な生活のために非常に重要なお金です。

しかし、残念ながら、養育費の支払が滞ることも少なくないのが現実です。

支払う側としても、養育費の支払は長い期間続くものなので、その間に、収入や健康状態、家族の状態が変化してしまい、払いたくても払えなくなってしまう場合がありえます。

養育費の不払について、父母で話し合って解決できることも多いのですが、どんなに話しても養育費が支払われない場合も実際にあります。

養育費が支払われない場合、最終的には差し押さえなどの強制執行の手続により、強制的に養育費を取り立てることになってきます

今回は、養育費が支払われなくなった場合に差し押さえをする方法、必要な費用などについて解説します。

養育費とは

養育費とは、子どもが経済的・社会的に独立できるようになるまでに必要な生活費、医療費、教育費などの費用のことです。

両親が離婚した場合、子の養育費は、離婚後子どもを直接養育しない親(非監護親)も負担しなければなりません(民法766条1項)。

養育費について詳しく知りたい方は、以下のサイトをご覧ください。

 

 

差し押さえとは

差し押さえとは、簡単にいうと、支払義務を負っている者(「債務者」といいます。)に財産(不動産、預金、給料など)を勝手に処分されないように、裁判所によって、不動産の処分や預金の払戻し、給料の受取り等を制限してもらうことをいいます。

差し押さえができたら、差し押さえた財産をお金に換えていきます

差し押さえたのが預金や給料であれば、預金のある銀行や債務者の勤め先から、差し押さえをした権利者(「債権者」といいます。)に直接お金を支払ってもらいます。

不動産を差し押さえた場合だと、その不動産をお金に換える必要があるので、強制競売を実施することになります。

 

差し押さえをする際の注意点

差し押さえなどの強制執行をすることには、以下のようなデメリットもあります。

  • 養育費の未払いが職場に知られてしまい、相手方の立場が悪くなる可能性がある(その後の収入増加に差し障ったり、最悪の場合、自主退職したり、リストラの対象となることも。そうすると、養育費の減額、免除などになる可能性も。)。
  • 相手方と感情的に対立してしまい、後々臨時の養育費(医療費、進学費用など)が必要となったときの話し合いが困難になる可能性がある。

そのため、差し押さえを実行する前に、他に方法はないか、弁護士に相談する方が良いと思われます

差し押さえをすることのデメリットについて、詳しくは以下のサイトをご参照ください。

 

 

差し押さえの手続の流れ

差し押さえの手続は、以下のような流れで行います。

差し押さえの手続きの流れ図

①債務名義等の準備

差し押さえをするには、債務名義(さいむめいぎ)と呼ばれる書類(強制執行認諾文言付き公正証書・調停調書・審判書・判決書・和解調書等)が必要です。

養育費について差し押さえをしたい場合、養育費に関する記載のある債務名義が必要となります。

債務名義は、裁判所や公証役場で作成する必要があります

当事者同士だけで作成した「合意書」「離婚協議書」「覚書」「契約書」などでは、債務名義にはならず、直ちに差し押さえを申し立てることはできません

債務名義に加えて、執行文、送達証明書なども必要となります。

事前に準備する書類について、詳しくは「差し押さえるために必要な書類」の項でご説明します。

 

②調査など

差し押さえの申立てをする前に、以下のようなことについて調べておく必要があります。

内容 備考
元夫(妻)の現住所
勤め先(派遣従業員であれば、派遣元) 給料を差し押さえる場合
預金口座のある金融機関 預金を差し押さえる場合
不動産の情報(場所、共有の有無、抵当権設定等の有無、差し押さえる建物の敷地又は差し押さえる土地の上の建物の権利者など)、公課証明書 不動産を差し押さえる場合

 

現住所

差し押さえの申立てをする際は、支払い義務者である元夫(妻)の現在の住所が必要です。

現住所が分かっている場合は問題ありませんが、引っ越しをしている場合もありますので、注意が必要です。

現住所が分からない場合、弁護士であれば、住民票、戸籍附票などの公的書類を取り寄せて調査することが可能です

お困りの場合、一度弁護士にご相談下さい。

 

勤め先、預金口座、不動産等

差し押さえを申し立てるときには、差し押さえの対象となる財産の内容についても把握しておく必要があります。

養育費の差し押さえの場合の代表的な例は、以下のとおりです。

給料を差し押さえる場合 相手方の勤め先(派遣社員であれば、派遣元)
預金を差し押さえる場合 預金口座のある金融機関
不動産を差し押さえる場合 不動産の所在、権利関係等の情報、公課証明書

これらの情報は、離婚後何年も経過していたりすると、簡単には分からない場合があります。

これらの情報が分からない場合、裁判所の財産開示手続、第三者からの情報取得手続を利用して調べることも可能です。

財産開示手続、第三者からの情報取得手続について、詳しくは以下のサイトをご覧ください。

ワンポイント

養育費などの支払がない場合に強制執行の手続をしようとすると、上記のとおり、相手方の住所、勤め先などの調査が必要となります。

この調査の手間を省くため、特に養育費の支払がある場合は、離婚の条件について合意する際に、

「○○と●●は、住所、勤務先を変更した場合は、互いに相手方に通知する。」

といった条項(通知条項)を盛り込んでおくことも考えられます。

 

③申立書作成

差し押さえを申し立てるときには、申立書を作る必要もあります。

詳しくは、「差し押さえるために必要な書類」の項でご説明します。

 

④申立て

申立書と必要書類を、裁判所に提出します。

不動産を差し押さえる場合、申立ては,不動産の所在地を管轄する地方裁判所に対してします。

債権(預金・給料など)を差し押さえる場合、申立ては、原則として債務者(元夫・妻)の住所地を管轄する裁判所に対して行います。

ただ、債務者の住所地が分からない場合は,差し押さえたい債権の所在地(差し押さえるのが給料の場合は債務者の勤務する会社の所在地,銀行預金の場合はその銀行の所在地)を管轄する地方裁判所に申立てをすることができます。

 

⑤差し押さえ

申立てが認められると、裁判所が、相手方の財産を差し押さえます

債権(給料・預金など)を差し押さえた場合には、その給与や預金を支払う者(会社・金融機関など。「第三債務者」といいます。)に差押命令が送達された時に、差し押さえの効力が発生します。

不動産を差し押さえた場合は、差し押さえをする旨の決定が債務者(元夫・妻)に送達された時、又は差し押さえの登記がなされた時のいずれか早い時期に、差し押さえの効力が発生します。

差し押さえの効力が発生した後は、不動産については債務者による処分(売却、抵当権設定賃貸など)が制限されます。

債権については、債務者による取立て等と、第三債務者から債務者への支払が禁止されます(民事執行法145条第1項)。

 

⑥養育費の回収(取立て)

債権を差し押さえた場合

給料や預金などの債権を差し押さえた場合、債務者(元夫・妻)に債権差押命令が送達された日から1週間経過すると、支払いを受けることができるようになります。

この場合、債権者が自ら第三債務者に連絡を取り、支払いを受けることになります。

詳しくは、「給与の差し押さえを会社が拒否できる?」の項目をご覧ください。

 

不動産を差し押さえた場合

不動産を差し押さえた場合は、強制競売の手続が進められることになります。

最終的に競売で売ることができれば、支払われた代金は、申立書に記載された未払いの養育費に充てられます。

ただし、不動産に抵当権などの担保権がついている場合、担保権者の方に優先して支払われることとなりますので、注意が必要です。

なお、不動産の差し押えでは、将来分の養育費まで得ることはできません。

 

 

差し押さえるために必要な書類

養育費の差し押さえのために必要な主な書類は、次のとおりです。

  • 債務名義(正本)
  • 執行文(不要な場合もあります。)
  • 送達証明書
  • 申立書

それぞれの書類について解説していきます。

 

債務名義

養育費の差し押さえでよく使われる債務名義
  • 家事調停調書(家庭裁判所で作成した調停調書のこと)
  • 家事審判書
  • 判決書
  • 和解調書
  • 強制執行認諾文言付き公正証書

差し押さえをするためには、「執行力のある債務名義の正本」が必要になります。

既に養育費についての調停・審判・裁判などを行い、裁判所で養育費について決めている場合には、養育費について決まった内容が記載されている判決書・調停調書・審判書・和解調書の正本を用意しましょう。

もし手元で見つからない場合は、裁判所に請求して再発行してもらうこともできます。

調停や裁判をした裁判所に申請するようにしましょう。

養育費について強制執行認諾文言付き公正証書を作成した場合、この公正証書が債務名義となります。

作成した公正証書の正本を準備しましょう。

正本が見つからない場合は、公正証書を作成した公証役場に請求して再発行してもらいましょう。

これらの債務名義をまだ持っていない場合には、調停を申し立てるなどして、債務名義を得なければなりません

支払い義務者が養育費の支払をしない場合に債務名義を得る方法、その他の対処法について、以下のサイトでも詳しく解説していますので、参考にしてください。

 

執行文

執行文の付与を申請する際に必要なもの
  • 申請書
  • 判決の場合は確定証明書(仮執行宣言付きの場合は不要)
  • 債務名義の正本
    (場合によって、他のものが必要となることもあります。)

債務名義の正本に「執行文」(「債権者○○は債務者△△に対し、この債務名義により強制執行することができる。」などと書かれた用紙)を付けてもらう必要がある場合もあります。

執行文を得るには、債務名義を作成したところ(裁判所や公証役場)に申立てをします。

執行文の付与を申し立てる際には、判決については、確定証明書が必要となります(仮執行宣言がついている場合は不要です。)。

執行文付与の申請書も必要となります。

申請書の書式は、裁判所のHPで公開されています。

裁判所のHPでは、債務名義の正本の交付、送達証明、確定証明の申請書等の書式も公開されています。

ご自身で申請を行う場合は、参考にしてください。

参考:地方裁判所及び簡易裁判所への申立て等で使う書式例 | 裁判所 (courts.go.jp)

養育費でよく用いられる債務名義と執行文の要否、申立先を、以下の表にまとめておきます。

債務名義 執行文の要否(要〇、不要×)
判決 〇(判決を出した裁判所に申立て)
和解調書 〇(和解をした裁判所に申立て)
家事調停調書 ×(不要)
家事審判書 ×(不要。ただし、確定証明書は必要)
強制執行認諾文言付き公正証書 〇(公正証書を作成した公証役場に申立て)

 

送達証明書

債務名義が債務者に送達されていることを証明する送達証明書が必要となります。

裁判や調停をした裁判所に申請して、入手しておきましょう。

 

申立書

申立書には、以下の目録等を付ける必要があります。

当事者目録 債権者と債務者(債権差し押さえの場合は第三債務者も)の住所、氏名等を記載したもの
請求債権目録 請求する養育費の内容(未払いの金額、執行費用、将来分の養育費についても差し押さえをする場合はその内容)を記載したもの
差押債権目録(給料や預金などの債権を差し押さえる場合)
*第三債務者が法人の場合、資格証明書(商業登記事項証明書又は代表者事項証明書)も必要。
差し押さえる債権の内容、金額を記載したもの
物件目録(不動産を差し押さえる場合)
*全部事項証明書、公課証明書も必要。
差し押さえる不動産の所在、地番、家屋番号など(登記簿の表示部に記載されている情報)を記載したもの

申立書の記載例は、当事務所のサイトからも無料でダウンロードできます。

ご自身で差し押さえの手続をする場合には、ぜひご利用ください。

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しかし、差し押さえなどの強制執行を行うには、手続に関する専門的な知識が必要となり、一般の方には負担が大きいのが実際のところです。

また、既にご説明したとおり、差し押さえには、相手方の職場での立場が悪くなり収入に影響しうる(収入が減ったりなくなったりすると、最悪の場合、養育費に影響が出る可能性があります)、相手方との対立が激化するといったデメリットもあります。

差し押さえなど強制執行の申立てを行う際には、強制執行をすべきか否かを含めて、一度弁護士に相談することをお勧めします。

養育費が不払いとなった場合の対処法、未払い養育費の回収可能性などについて、以下のサイトもご覧ください。

 

その他

以上のほかに、債権の差し押さえで、第三債務者が法人(会社、銀行など)である場合、その法人の資格証明書(商業登記事項証明書又は代表者事項証明書)が必要です。

商業登記事項証明書・代表者事項証明書は、法務局で入手することができます。

不動産を差し押さえる場合、公課証明書(市税事務所、区役所等の窓口で発行)、債務者・物件の所有者の住民票、不動産の登記全部事項証明書(法務局で入手する)などが必要です。

 

 

差し押さえに要する費用

差し押さえをするには、裁判所に納める申立手数料・郵便切手などの実費がかかります。

手続を弁護士に依頼する場合は、これに加えて弁護士費用も必要となります。

差し押さえに掛かる費用について、見ていきましょう。

実費

債権差し押さえの場合

給料・預金などの債権を差し押さえる場合の実費は、以下のようになります。

申立手数料(収入印紙) 4000円(債権者1名、債務者1名、債務名義1通の場合。)
郵便切手 3495円分
(東京地裁の場合。各裁判所によって異なります。)
内訳
500円切手5枚
100円切手4枚
84円切手5枚
20円切手5枚
10円切手5枚
5円切手3枚
2円切手5枚

これ以外に、資格証明書を発行してもらうための手数料なども必要になる場合があります。

 

不動産を差し押さえる場合

不動産を差し押さえる場合の実費は、以下のようになります。

申立手数料(収入印紙) 4000円(債務者1名、債務名義1通の場合)
差押登記嘱託のための登録免許税 確定請求債権額(1000円未満切り捨て)の1000分の4(100円未満切り捨て)
*国庫金納付書により納付する(3万円以下なら収入印紙も可能です。)。
予納金 80万円~(東京地裁の場合。各裁判所により異なります。)

ほかに、公課証明書、不動産登記事項証明書、住民票などを入手するための手数料なども必要となります。

 

弁護士費用

差し押さえの手続を弁護士に依頼した場合は、以上の実費に加えて、弁護士に支払う費用も必要になります。

弁護士費用には、主として着手金と報酬があります。

 

着手金

弁護士に依頼をするときは、最初に着手金を支払うことになります。

着手金は、一般に、5万~30万円程度となる場合が多いです。

当初は相手方との直接交渉を依頼していたけれども、その後、差し押さえの手続も依頼することになった、というように途中で手続きなどが変わる場合には、再度着手金が必要となる場合があります。

着手金の額は弁護士によっても異なりますし、依頼者の経済力、事案の複雑さ、困難さ、依頼をした段階によっても変わってきます。

 

報酬とは

相手方との交渉や差し押さえの手続などが完了した後に、弁護士に報酬を支払います。

この報酬は、いわば成功報酬であり、得られた経済的利益によって決められることが多いです。

例えば、差し押さえの手続をしたことで200万円得ることができた、という場合には、その200万円の4%(8万円)を報酬としてお支払いいただく、などということになります。

報酬の割合は、着手金同様、弁護士によっても異なりますし、事案の複雑さなどによっても変わってきます。

弁護士に最初に相談した際、着手金、報酬、実費など、支払うことになる費用についても聞いてみると良いでしょう。

弁護士費用について詳しく知りたい方は、以下のサイトをご覧ください。

 

 

養育費と差押えに関するQ&A

給与の差し押さえを会社が拒否できる?

給与の差し押さえは裁判所の命令ですので、会社側が拒否できるものではありません

養育費や婚姻費用については、債務者(元夫・妻)に債権差押命令が送達された日から1週間経過すると、取立権が発生します

取立権が得られると、債権者は、差し押えた債権について、第三債務者(会社、金融機関など)に請求して、自分に対して支払をするよう求めること(「取立て」といいます。)ができるようになります。

取立ては、裁判所からの送達通知書を受け取って、取立権が発生していること(債務者に差押命令が送達されてから1週間が経過したこと)を確認してから実行しましょう。

取立てをする場合、まずは、債権者が、会社や金融機関と直接連絡を取ります。

そして、現金払いをしてもらうか、どこかの口座に送金してもらうかといった、取立ての具体的な方法について決めることになります。

債権者から差し押さえに基づいた請求があったときに、会社などの側が支払を拒否することは、原則としてできません。

差押命令は、法律に基づいた裁判所の命令ですので、会社などの方で勝手に、「給料は社員に払いたい、差し押さえをしてきた人には払わない。」などと拒否することはできないのです。

「差押命令を受け取っていたが、その後社員である元夫(妻)に支払ってしまった」という場合も、裁判所の命令に違反しているのですから、債権者への支払を拒否することはできません。

ただ、

  • 実は元夫(妻)がその会社ではもう働いていない
  • 差押命令が送達される前に給料を支払ってしまった
  • 差し押さえられた預金は、差押命令が送達される前に既に引き出されている

といった事情があれば、差し押さえた給料や預金自体が差し押さえの時には既になかった、ということになりますので、差し押さえは失敗、ということになります。

この場合は、差し押さえをしても、会社や金融機関から支払を受けることはできません。

ワンポイント~相殺を主張されたら要注意

もし、会社側から「元夫(妻)が不祥事を起こし、その賠償金と給料を相殺(そうさい)したから、もう支払いはできない。」「給料の前借があり、(返済義務と給料を相殺したから、)今月分の給料はもうない。」などと言われた場合には注意が必要です。

差し押さえられた債権には、差し押さえ後に取得した債権との間では相殺ができないなどの制限(民法511条)がありますから、場合によっては、会社側が主張する相殺の方が無効である可能性があります。

会社側が給料と他の債権(貸金、損害賠償金など)を相殺した、というようなことを言ってきた場合には、その「他の債権」がいつ、どういう原因で発生したものなのかを確認し、一度弁護士に相談してみましょう。

拒否したときの対処法

会社側が差し押さえをした人への支払を拒む場合、最終的には、「取立訴訟」という裁判を起こし、裁判所の判決によって会社に支払を命じてもらうことになります。

ただ、訴訟をする前に、弁護士に依頼して会社と交渉し、自発的に支払ってもらえるようになる場合もあります。

取立訴訟をするとしても、裁判となると一般の方には手続などが難しくなりますから、専門家である弁護士に相談した方が安心です。

会社から差し押さえた給料の支払を拒否された場合、早めに弁護士に相談しましょう。

 

将来分の養育費を差し押さえることができる?

養育費や婚姻費用に関しては、まだ支払時期が来ていない分(将来の分)についても、相手方の給料などの債権(給料のように定期的に支払われるものに限ります。)の差し押えをすることが可能です(民事執行法151条の2第1項、第2項)。

通常、差し押さえでは、支払時期が来た分についてのみ差し押さえを行うことが認められます。

この原則に従えば、支払期日が来るごとに、何度も差し押さえを申し立てなければならなくなります。

しかし、養育費、婚姻費用等については、特例として、一度の申立てで将来分の差し押さえも行えるようになっているのです。

これにより、一度差し押さえを行えば、その後も月々の給料から養育費を回収することができるようになっています。

将来分の養育費についての差し押さえをしたい場合は、申立書とともに提出する請求債権目録に、そのように記載しなければなりません。

詳しくは、給与差し押さえの申立書のテンプレートを確認してください。

 

差押禁止財産とは?

差押禁止財産とは、生活維持、プライバシー保護等の観点から、差し押えることが禁止されている財産のことです。

婚姻費用や養育費のために給料を差し押さえる場合、給料の2分の1は差し押さえが禁止されています(民事執行法152条)。

通常の債権に基づいて給料を差し押さえる場合は、給料の4分の3の差し押さえが禁止される(=差し押さえられるのは4分の1のみとなる)のですが、養育費などの場合には、差し押さえを禁止される部分が給料の2分の1に縮小されて(=差し押さえられる額が2分の1に増やされて)います。

動産では、生活に必要な衣服、寝具、家具、台所用品、食料、仏像、家系図などが差押禁止財産とされています(民事執行法131条)。

 

役員報酬を差し押さえることができる?

元夫(妻)が取締役など会社の役員をしている場合、会社からは給与ではなく「役員報酬」が支払われていると思われます。

この役員報酬も、差し押えることができます

しかも、役員報酬については、給料と異なり、差し押さえが禁止される部分がなく、全額の差し押さえをすることができます

役員報酬を差し押さえる場合は、申立書に添付する差押債権目録の記載方法が変わってきます。

詳しくは、弁護士にご相談ください。

 

差し押さえを受けた場合はどうしたらいい?

差し押さえを受けてしまった場合、何もせずにいると、不動産が競売にかけられたり、給与や預金を相手方に支払われてしまったりします。

それでも良い、ということであれば結構ですが、もしかすると、まだ話し合いをする余地があるかもしれません。

相手方と連絡を取り、まとまった一時金を支払った上で、残りについても支払い計画を立てて約束するなどの対応をすることで、差し押さえの申立てを取り下げるよう説得できる可能性もあります

ただ、相手方も、相応の手間と費用をかけて差し押さえの申立てをしてきていますので、単に支払いを約束するだけでは納得してくれないかもしれません。

このような場合にどのような提案をすれば説得力があるか、といったことについて、離婚問題に詳しい弁護士であれば、豊富な経験、知識を有しています。

差し押さえを受けたときは、一度弁護士にご相談することをお勧めします。

また、差し押さえが間違って行われている(既に支払済みである、減額や免除について約束していた、など)ということもあるかもしれません。

そのような場合、適切な手続をとれば、強制執行を止めることができる可能性があります。

ただ、強制執行を止める手続は複雑であり、高度な専門知識が必要です。

一度弁護士に相談することを、強くお勧めします。

 

 

まとめ

今回は、養育費による差し押さえの手続、必要な書類、費用、養育費と差し押さえに関するよくある疑問などについて解説しました。

養育費の支払が滞った場合、最終的には差し押さえなどの強制執行を行う必要があります。

しかし、その手続には専門的な知識が必要であり、一般の方が行うのは難しい面があるのは否めません。

差し押さえを行うことで、相手方の職場での立場が不安定になる、相手方が感情的になってその後の関係に悪影響が及ぶ、といったおそれもあります。

ご自身で差し押さえを行う前に、差し押さえをした方が良いか否かを含めて、弁護士にご相談されることをお勧めします。

差し押さえを受けた方も、相手方との話し合いや強制執行を止める手続ができる場合がありますので、一度弁護士に相談してみることをお勧めします。

当事務所には、離婚事件に注力する弁護士で構成された離婚事件チームがあり、養育費が不払いになったときの交渉、養育費の差し押さえについての対応も行っております。

LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談による全国対応も可能ですので、お困りの方は当事務所までお気軽にご相談ください。

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