交通事故の慰謝料で弁護士に依頼するデメリット|損しない方法

交通事故の慰謝料は、弁護士に依頼することで増額できる可能性があります。しかし、どのケースでも必ず得をするわけではありません。
とくに、加入している保険に 弁護士費用特約(弁護士費用を保険会社が負担する制度) が付いていない場合、費用は基本的に自己負担となります。
そのため、ケガが軽い場合や示談金が高額でない場合には、増えた金額よりも弁護士費用が上回り、手元に残る金額が減ってしまうこともあります。
たとえば、ケガが軽い、示談金がそれほど高くない、といった場合には、増えた金額よりも弁護士費用の方が上回ってしまうケースがあります。
さらに、金額面以外でも、
- 交渉が長引くことがある
- 弁護士との相性が合わない場合もある
- 交通事故をあまり扱っていない弁護士を選んでしまうことがある
などの注意点があります。
本記事では、交通事故の慰謝料を弁護士に依頼する際に起こり得るデメリットと、費用倒れを避けるためのポイントをわかりやすく解説します。
「依頼した方がいいのか迷っている」という方は、判断材料としてぜひご覧ください。
目次
交通事故の慰謝料を弁護士に依頼するのにデメリットは4つ!
①費用倒れのリスクがある
費用倒れとは、弁護士に依頼することで増額する示談金の金額よりも、弁護士費用の方が高額になり、結局、手元に残るお金が少なくなることです。
詳しくは、一番のデメリットは「費用倒れのリスク」があることにて説明します。
慰謝料と示談金の違いとは?
慰謝料は、損害項目の1つです。
示談金は、慰謝料、治療費、休業損害、通院交通費、逸失利益などの損害額を合計したもので、最終的に支払いを受けるお金です。
慰謝料は、示談金を構成する損害項目の1つなのです。
②解決まで時間が長くなる場合がある
弁護士が入らず、保険会社からの提案をすぐに了承すれば、すぐに解決します。
しかし、そうした解決で適切な補償を受けることはできません。
弁護士は、加害者側に適切な補償を請求するために様々な資料を収集しまとめていきます。
その結果、時間がかかることはありますが、それは適切な補償を受けるために必要な期間といえます。
もっとも、単に弁護士が事件処理を遅滞しているような場合は論外であり、そうした場合には、弁護士の変更も検討された方がいいでしょう。
③弁護士選びを間違えると不満が残ってしまう
交通事故に注力していない弁護士に依頼した場合、適切な交渉が行われず、無駄に時間を要してしまい、解決に不満が残ってしまう可能性があります。
交通事故事件で弁護士に依頼する場合には、自動車事故に強い弁護士に依頼することをお勧めします。
自動車事故に強い弁護士は、日常的に交通事故事件を取り扱っており、迅速に適切な解決の結果を出すことが期待できます。
④弁護士とのコミュニケーションコスト
弁護士も人間であり、性格もそれぞれです。
したがって、依頼した弁護士と性格が合わない、相性が悪いということがありえます。
依頼した弁護士とは数ヶ月、長い場合には数年にわたり付き合っていくことになります。
これだけ長い間、相性の悪い弁護士と付き合っていくのは苦痛でしかありません。
依頼するにあたっては、弁護士の人間性にも着目して検討すべきでしょう。
また、報告してほしい頻度があるのであれば、依頼のときに伝えておきましょう。
一番のデメリットは「費用倒れのリスク」があること
弁護士に依頼することで、増額する賠償金よりも弁護士費用の方が高額になり、手元に残るお金が少なくなってしまうことを費用倒れといいます。
弁護士に依頼する最も大きなデメリットは、この費用倒れです。
例えば、以下の例で説明します。
前提条件
-
- 弁護士費用特約がついていない
- 弁護士費用 着手金0円、報酬金が22万円 + 回収額の11%
- 怪我がむちうち
- 通院期間が60日で、そのうち実通院日数が25日
- 慰謝料の他に、休業損害が2万円、通院交通費が1万円(既払金の治療費は除きます)
- 過失割合が0(被害者):100(加害者)(既払金の治療費は除きます)
このケースで、弁護士が入らなくても被害者がもらえる慰謝料については、自賠責基準を前提とすると以下のようになります。
4300円 × 50日(実通院日数25日の2倍)= 21万5000円
これに、その他の休業損害と通院交通費を足すと、
21万5000円 + 2万円 + 1万円 = 24万5000円
したがって、このケースで弁護士が入らなくても被害者がもらえる賠償金は、24万5000円となります。
このケースで、弁護士が入った場合の慰謝料は、裁判基準の表の通院期間2ヶ月分(60日)なので、36万円になります。
これに、その他の休業損害と通院交通費を足すと、
36万円 + 2万円 + 1万円 = 39万円
したがって、このケースでは、弁護士が入った場合にもらえる賠償金は、39万円になります。
弁護士が入った場合の賠償金から、弁護士費用を差し引いて、比較をします。
39万円 ー 22万円 ー 4万2900円(39万円 × 11%)= 12万7100円
そうすると、被害者の手元に残る賠償金を最終的に比較すると、
となります。
そうすると、このケースでは弁護士が入らない賠償金の方が高くなります。
こうした状況のことを費用倒れといいます。
弁護士費用特約があればデメリットはほぼ解決
弁護士費用特約は、弁護士に依頼した場合の弁護士費用を保険会社が支払ってくれる保険特約です。
弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用は保険会社に支払ってもらえるため、費用倒れのリスクはほぼなくなります。
弁護士費用特約の支払い上限は300万円ですが、むちうちや打撲、後遺障害14級の障害を残す事案であれば、ほとんどのケースで弁護士費用は300万円以内に収まります。
また、報酬が300万円を超える場合は、重症案件であり、弁護士に依頼することで大幅に賠償金の増額が期待できるケースであり、かつ、300万円までは弁護士特約で支払われるため、費用倒れのリスクは格段に低いです。
したがって、弁護士費用特約に加入していれば、費用倒れのリスクはほぼなくなります。
もっとも、弁護士費用が高額に設定されている場合には、費用倒れのリスクもありますので、依頼する前に弁護士費用について十分に注意しましょう。
費用倒れになりやすいケースとは?
費用倒れになりやすいケースとしては、以下のようなケースです。
全て弁護士費用特約に加入していないことが前提です。
- ① 物損のみのケース
物損には慰謝料がないため、もらえる賠償金が人損がある場合と比較して低くなりがちだからです。 - ② 軽傷のケース
軽傷とは、むちうちなどの捻挫や打撲のような怪我で治療期間が短いほど費用倒れのリスクが高まります。 - ③ 被害者の過失が大きいとき
弁護士が入っても被害者の過失が大きい時は、その分過失相殺がなされ賠償金の額が低くなり費用倒れのリスクが高まります。 - ④ 加害者が任意保険会社に加入していない場合
加害者が交渉相手の場合、お金がないなどの理由で回収が困難なケースも多く弁護士費用のみがかかってしまうリスクがあります。
弁護士費用の相場
弁護士特約がある場合
弁護士特約に加入している場合には、LAC基準という弁護士報酬基準で計算されます。
LAC基準を採用していない保険会社もありますが、基本的には同じような考え方がされています。
LAC基準について詳しくは以下のページをご覧ください。
弁護士費用特約がない場合
弁護士費用特約がない場合には、各法律事務所が設定している弁護士費用を支払うことになります。
着手金
- 着手金0円の事務所も多い。
- 着手金有料の場合の計算方法は以下の方法を取ることが多い。
- 事件の経済的利益の額が300 万円以下の場合 :8%
300 万円を超え3000 万円以下の場合:5%+9万円
3000 万円を超え3 億円以下の場合 :3%+69万円
3 億円を超える場合 2%た明日:369万円 - 着手金の最低額は10万円
交通事故を専門的に取り扱う事務所では、着手金を0円としている事務所が多いです。
着手金を有料とする場合には、経済的利益に応じた金額、あるいは、ざっくり◯◯万円という提示がされることがあります。
経済的利益とは、相手からの「回収額」や、保険会社からの提示額からの「増額分」とすることが多いです。
報酬金
- 着手金無料の事務所の場合、以下の費用体系が多い。20万円 + 経済的利益の10〜20%
- 着手金が有料の場合には、以下の費用体系が多い。事件の経済的利益の額が300 万円以下の場合 :16%
300 万円を超え3000 万円以下の場合 :10% + 18 万円
3000 万円を超え3 億円以下の場合 :6% + 138 万円
3 億円を超える場合 :4% + 738 万円
着手金を0円としている事務所では、固定で20万円と経済的利益の10〜20%の報酬体系にしている事務所が多いです。
着手金を有料としている場合は、上記のように、経済的利益の割合によって報酬金を定めていることが多いです。
自分で慰謝料を請求するデメリットはある?3つの懸念事項
①自賠責基準・任意保険基準でしか認めてもらえない可能性
慰謝料には、自賠責基準、任意保険基準、裁判基準の3つの基準があります。
このうち、原則的に最も慰謝料が高くなるのが裁判基準です。
もっとも、弁護士をつけず個人で交渉すると、保険会社は自賠責基準や任意保険基準でしか認めてくれないのが通常です。
そのため、慰謝料の金額で被害者が損をする可能性が高いです。
②後遺障害があるのに、適切な金額を立証できないおそれ
加害者が車やバイクの場合、自賠責保険に加入しているのが通常なので、後遺障害が残った場合は、自賠責保険に後遺障害申請をすることで、後遺障害等級の判断がなされます。
そして、後遺障害慰謝料は、自賠責保険で認定された後遺障害等級を基礎に算出されます。
他方で、加害者が自転車や歩行者であった場合、自賠責保険のような後遺障害の判断機関がないため、被害者の方でどのような後遺障害が残って、その金額がいくらかが妥当であるかを立証しなければなりません。
この立証については、最低限の医学的知識と、自賠責保険の後遺障害の認定基準を理解していなければならず、一般の方にはとても対応が困難な事柄であると推測されます。
③慰謝料以外の損害を正しく請求できないおそれ
交通事故の損害は慰謝料だけではありません。
例えば、治療費、休業損害、通院交通費、後遺障害逸失利益など様々あります。
その損害の中には定型的に算出できないものもあり、専門的知識を要します。
ご自身で請求される場合は、慰謝料以外の損害も適切に行うことができるかという懸念があります。
慰謝料請求を弁護士に依頼する4つのメリット

①適切な慰謝料を獲得できる可能性が高いこと
上記でも説明しましたが、慰謝料には3つの基準があります。
そして、弁護士が入れば、最も高い基準である裁判基準を前提に交渉をすることができます。
また、慰謝料には裁判例によって増額事由がいくつかあり、その事案にあてはまるものがあれば弁護士は積極的に主張していくことになります。
したがって、弁護士が慰謝料請求を依頼すれば、適切な慰謝料を獲得できる可能性が高いといえます。
②早期解決が実現しやすいこと
弁護士は、常日頃交渉を行っているプロです。
相手が保険会社や弁護士の場合、被害者側も弁護士に依頼すれば、プロ同士で交渉を進めることができます。
プロ同士で交渉するメリットは、争点を明確化させた上で、その争点に必要な立証を行い、早期解決に導くことだと思います。
実際、それまで交渉が滞っていた事案が、弁護士が入ったことで1ヶ月程で解決してしまったというケースもあります。
③相手方・相手方保険会社とやりとりを一切しなくてよくなること
弁護士に依頼すれば、相手方や相手方保険会社とやりとりをしなくてもよくなります。
それまでにひどい対応をされていた場合は、「相手の声すら聞きたくない」という方もいらっしゃるでしょう。
それまで大変だったやりとりを弁護士に丸投げできることは、精神的な負担を軽くすることに繋がります。
④交渉で折り合いがつかなければ裁判等の提起を任せられる
慰謝料等で相手方と折り合いがつかなければ、裁判を提起することを検討することになります。
もっとも、裁判は、訴状の作成、証拠の準備、準備書面の作成、尋問など、労力がかかりますし、専門的知識も必要です。
それらの面倒事を全部弁護士に任せられるということは、被害者にとって負担が軽くなります。
また、当然ですが、個人で裁判を提起するより、弁護士が提起した方が、専門的知識を有しているがゆえ、良い結果も期待できるといえます。
なお、慰謝料だけが争点の場合は、裁判と比べて簡易迅速に進められる紛争処理センターへの提起も検討します。
まとめ
- 交通事故の慰謝料を弁護士に依頼すれば、基本的には増額されるので被害者にとってはお得だが、費用倒れになるケースがある。
- 費用倒れになりやすいケースとしては、①物損のみの場合、②軽傷の場合、③被害者の過失が大きい場合、④加害者が任意保険会社に加入していない場合などである。
- 弁護士をつけず自分で慰謝料を請求する3つの懸念事項としては、①自賠責基準・任意保険基準でしか認めてもらえない可能性、②後遺障害の認定機関がない場合の後遺障害慰謝料の算定を適切にできるかという問題、③慰謝料以外の請求も適切にできるかどうかということが挙げられる。
- 慰謝料請求を弁護士に依頼する4つのメリットとしては、①適切な慰謝料を獲得できる可能性が高いこと、②早期解決が実現しやすいこと、③相手方・相手方保険会社とやりとりを一切しなくてよくなること、④交渉で折り合いがつかなければ裁判等の提起を任せられることが挙げられる。
- デメリットを回避する5つのポイントとしては、①相談時に弁護士から費用倒れの可能性について説明してもらう、②交通事故を中心に扱っている弁護士に相談・依頼する、③複数の弁護士に相談してみる、④簡易計算ツールを用いて概算の賠償金を計算してみる、⑤後遺障害が残っている場合は後遺障害の申請をしてみるということが挙げられる。
慰謝料請求で被害者が損をしないために、費用倒れになるかどうかの判断は非常に重要です。
その判断も間違えないためにも、交通事故に慣れている弁護士に相談するのが一番の近道です。
当事務所は、交通事故を多く扱う人身障害部があります。
様々な交通事故案件を扱った経験豊富な弁護士が在籍していますので、まずは気軽に当事務所にご相談ください。









