交通事故の相手が無保険。被害者がとるべき6つの対応

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

交通事故の相手方が無保険であった場合、保険会社が交渉に関与しないため、相手方本人と交渉しなければなりません

また、賠償金を支払うのも相手方本人であるため、相手方本人がお金を持っていない場合には、十分な補償を受けられなくなってしまう可能性があります。

この記事では、交通事故の相手方が任意保険に加入していなかった場合、被害者としてどのように対応すればよいか解説しています。

この記事でわかること

  • 加害者が無保険であった場合に被害者が困ること
  • 加害者本人以外から補償を受ける方法

 

加害者が無保険であった場合に被害者が困ること

 

交渉相手が加害者本人になる

相手方が任意保険に加入している場合には、示談代行サービスによって、保険会社が窓口となり交渉をすることができます。

しかし、相手方が任意保険に加入していない場合には、相手方本人と直接交渉しなければなりません。

相手方が誠実に対応してくれれば問題ありませんが、当事者同士での交渉の場合、感情的になり交渉が難航することもあるでしょう。

賠償金が払ってもらえない可能性がある

相手方が任意保険に加入していない場合には、相手方自身が被害者に賠償金を支払わなければなりません。

つまり、相手方がお金を持っていないと賠償金を支払ってもらうことができないのです。

交通事故被害者が相手方に対して訴訟提起し勝訴判決を得れば、相手方の財産に対して強制執行することができます。

しかし、相手方が何の財産も持っていない場合には、強制執行も空振りに終わり、お金を回収することができないのです。

 

 

交通事故賠償金計算シミュレーター

相手方本人と交渉する場合、お互いに交通事故賠償実務の知識が乏しいため、賠償金を確定することも難しいでしょう。

以下は、交通事故の賠償金のシミューレーターです。

賠償金の計算の参考にされて下さい。

以下のシミューレーターでは、裁判基準(裁判になった場合に裁判所が使用する基準)での計算になっています。

 

 

被害者のとるべき対応

1.弁護士に相談

相手方が任意保険に加入していなかったとしても、適切な補償を受け取れる可能性があります。

その可能性を実現するためには、以下の、「2.被害者自身の保険を利用する」以降で説明するような方法がありますが、どの方法をとることが、最善の方法であるかは事案によって異なります。

最善の方法を被害者自身で判断することは難しいので、まずは、専門の弁護士に相談に行かれることをお勧めします

2.被害者自身の保険を利用する

加害者側からの賠償が十分でない場合には、自分の加入している任意保険から支払を受けるという方法を検討する必要があります。

その主なものが人身傷害保険です。

人身傷害保険に加入していれば、加害者からの賠償が受けられない場合にも人身傷害保険の限度額まで被害者の任意保険でカバーすることができます。

また、治療費についても保険会社が直接病院に支払ってくれるため、治療費の心配もしなくてよいです(事案によっては治療費を一旦立替える必要がある場合もあります)。

さらに、人身傷害保険を使用したとしても、保険の等級は変わらず、保険料が上がることもありません

人身傷害保険は、相手方が無保険のときに特に力を発揮する保険です。

相手方が任意保険会社に加入していなかった場合には、ご自身の保険を一度確認してみてください。

3.相手方の自賠責保険に請求する

相手方が任意保険会社に加入していなかったとしても、自賠責保険に加入していることは多いと思います。

自賠責保険は強制加入保険で、加入していないまま道路を走行すると刑事罰が課されるため、ほとんどの車両が自賠責保険には加入しています。

自賠責保険では、治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料などについて120万円まで賠償してもらうことができます

後遺障害に認定された場合には、その等級に応じて一定額の賠償金が支払われます。

14級であれば75万円、12級であれば224万円です。

被害者請求について、詳しく確認されたい場合には、こちらをご覧ください。

4.公的な保険を使用する

交通事故であっても、仕事中や通勤中に事故にあった場合には、労災保険が使用できます。

労災保険では、治療費と休業補償を受け取ることができます

休業補償に関しては、休業補償給付で給料の60%分、特別支給金として20%分が支払われます。

また、労災保険の後遺障害に認定された場合には、その等級に応じた一時金や年金が支払われます。

労災保険では、過失割合があっても減額されることなく支給されます。

また、自賠責保険のように賠償額の上限はないため、事案に応じて積極的に活用すべきでしょう。

ただし、労災保険から慰謝料は給付されませんので注意して下さい。

また、労災事故でない場合には、健康保険を利用することができます。

健康保険を利用することで治療費の負担を軽減し、事案によっては傷病手当金を受給することも検討すべきでしょう。

5.相手方本人・その他責任ある者への直接請求

当然のことながら、被害者は、加害者に対して賠償請求をすることができます。

もっとも、上記したとおり、相手方にお金がない場合には、賠償金を回収できないリスクがあります。

こうしたリスクを軽減するために、加害者以外に請求することができる人・会社があるのであれば、そちらにも請求をすることを検討すべきでしょう。

被害者は、加害者以外の運行供用者に賠償を請求することができます。

自動車損害賠償法3条では、自動車の運行供用者責任を定めています。

自動車損害賠償責任 第三条
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。
ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

引用元:自動車損害賠償保障法|電子政府の総合窓口

運行供用者とは、自動車を支配・管理しており、その自動車が運行することで利益を受ける人のことを言います。

運行供用者は、車を実際に運転していた者以外の人も該当します。

例えば、当該自動車の所有者です。

加害者が、友人や家族から車を借りていた場合には、所有者である友人や家族を運行供用者として賠償請求できる可能性があります。

また、車の所有者が会社の場合には、その会社を運行供用者として賠償請求できる可能性があります。

この場合、会社に対しては、使用者責任(民法715条)を根拠に賠償請求できる可能性もあります。

6.政府保障事業の利用

事故の相手方が、任意保険だけでなく自賠責保険にも加入していない場合には、政府保障事業を利用することができます。

政府保障事業は、ひき逃げ事故や盗難車による事故の場合にも利用できます。

保証内容については、自賠責保険と同内容です。

 

 

解決事例

当事務所の解決事例でも、相手方が任意保険に未加入であった事案は多数あります。

ある事案では、人身傷害保険を利用して賠償金の一部を受領し、その後、相手方に残りの賠償額を請求して、最終的に合計425万円を回収することができた事案があります。

この事案では、裁判基準(裁判をした場合の水準)で解決することができました。

詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

まとめ

事故の相手方が任意保険に加入していない場合には、賠償がスムーズにいかず、不安になられる被害者が多いかと思います。

対応方法としては、上記のような方法がありますが、どの方法が最善かを確認するためにも、まず、弁護士に相談されたほうがいいでしょう。

 

 

積極損害


 
賠償金の計算方法



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