交通事故裁判の流れ、費用や期間はどのくらいかかる?

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

弁護士や検察官、裁判官といった日頃から裁判を経験しているわけではない一般の方にとって、裁判というのは未知の世界だと思います。

一般の方の裁判に対するイメージは、「裁判は大変」、「裁判は想像がつかなくて怖い」、「交通事故で裁判までするの?」といったものが多いかと思います。

確かに、裁判は示談交渉に比べて、時間もかかりますし、多大な労力もかかってしまうため、しなくていいのであれば、裁判をしない方がよいと思います。

しかしながら、仮に相手方から満足のいく補償が得られない場合、交通事故にあわれた被害者の方が適切な補償をうけるために、裁判は必要不可欠な手段です。

この記事でわかること

  • 交通事故裁判の流れ
  • 交通事故裁判の期間や費用
  • 交通事故裁判が長引くケース

 

交通事故の裁判のながれ

訴状の提出

裁判を始めるには、まず訴える立場である原告が訴状を作成して、裁判所に提出しなければなりません。

訴状には、裁判を提起する裁判所、当事者の氏名、住所といった記載に続いて、裁判官に判決で認めてほしい請求の内容(請求の趣旨といいます。)とその請求の原因となっている理由(請求の理由といいます。)を記載します。

ポイントとしては、訴状に関しては、あらゆる事実を詰め込みすぎないことが大切になります。

請求の根拠となっている事実を法律上要求されている要件に沿って記載するというイメージです。

弁護士に事件処理を依頼すれば、訴状等の書類は全て弁護士が作成いたします。

第1回期日の指定

訴状を裁判所に提出すると、形式的な不備がないかどうかを裁判所が確認を行います。

その上で、原告が提出した書類を相手方である被告に特別郵便で郵送(送達といいます。)します。

このとき、第1回の裁判期日も決定してその日時の連絡文書も送付をされます。

そして、被告は、この第1回期日までの間に答弁書といって、訴状に記載された事実について、間違いないかどうか、原告の訴えに対する意見を記載した書面を提出します。

訴状と答弁書が提出された状態で第1回期日が開催されます。

通常、被告は答弁書を提出した上で第1回期日は出席せず、欠席をすることが多いです。

そのため、この場合には、第1回期日は原告側のみの出席で進められます。

なお、弁護士に依頼をした場合には、こうした裁判の出席も弁護士のみが行えば足りるため、被害者の方が自ら裁判に出席するというのは当事者尋問の時点までないことがほとんどです。

また、仮に、被告が第1回期日までに答弁書を提出せず、裁判期日にも出頭しなかった場合には、被告に言い分がないものと取り扱われ、事件は終結となり、約1週間後には判決が下されます(欠席判決といいます。)。

こうした欠席判決は保険会社がいるケースではまず起こりませんが、加害者が任意保険に加入していないケースでは、起こることがあります。

第2回目以降の裁判期日

第1回期日の後は、通常1ヶ月〜1ヶ月半に1回程度のペースで裁判が進行していきます。

裁判ではお互いの主張を書面にまとめて提出することになります。

原告、被告が互いに自分の主張を出すのと合わせて、相手方の主張に対する反論を書面にして裁判期日までに提出し、この書面の出し合いを続けていく中で、互いの主張と争点を整理していきます。

主張するにあたっては、その主張を根拠付ける証拠も一緒に提出する必要があります。

なお、交通事故の裁判の特徴として、文書送付嘱託や調査嘱託という手続が比較的多くなされるという点が挙げられます。

文書送付嘱託や調査嘱託では、治療を受けた病院からカルテを取り寄せたり、警察署、検察庁から事故状況を記載した実況見分調書を取り寄せたりすることで、争点に重要な事実を確認する手続がなされます。

病院のカルテは、通常保険会社との示談交渉レベルでは、具体的な中身まで確認することはあまりありません。

したがって、カルテが出てきたことで、新たな事実が発見され、それまでの主張を保険会社が覆して、治療期間や後遺障害の有無などを争ってくるということもしばしば起こります。

したがって、裁判を提起する場合には、カルテ開示によって、被害者の方に不利な事実となりうるものはないかどうかチェックすることも検討すべきでしょう。

裁判所からの和解案の提示

書面のやり取りを行っていくとおおむね争点に対する原告、被告の互いの主張が明らかとなってきます。

そして、その主張を裏付ける証拠の内容も裁判で検討がされます。

その段階に至ると、事案によっては、裁判所から和解案を提案されることがあります。

この和解案は、あくまで裁判官の暫定的な印象による解決案です。

したがって、判決と必ずしも一致するわけではありませんが、双方の主張を踏まえての案なので、十分に検討する必要があります。

原告、被告の双方がこの和解案を受け入れれば、和解が成立し、事件が終結することになります。

証人尋問、当事者尋問

和解が成立しない場合には、人証と呼ばれる証拠調べを行うことになります。

テレビドラマでよく見かける法廷シーンのように、証人や原告、被告本人という当事者が裁判官の前の証人席に座って、互いの代理人からの質問に答えるという手続です。

日頃から裁判を取り扱っている弁護士でもこの証人尋問、当事者尋問は十分な準備をして望みます。

ですので、経験のない方にとっては、非常に緊張感のある手続になります。

この手続は代理人だけの出席では成立しませんので、被害者の方にも裁判に出席していただく必要があります。

尋問の流れ
  1. ① 主尋問 (尋問を申請した側からの質問)
  2. ② 反対尋問 (相手方からの質問)
  3. ③ 再主尋問
  4. ④ 再反対尋問
  5. ⑤ 補充尋問 (裁判官からの質問)

尋問は、上記のような流れで行われます。

尋問を行う人数が複数いる場合には、上記の流れを人数と同じ回数実施することになります。

再主尋問と再反対尋問は補充的に質問するものであり、メインは主尋問と反対尋問になります。

反対尋問は、相手方からの質問なので、どのような質問がなされるかは正確には分かりませんが、主尋問に関しては、事前に質問内容や回答を整理しておくことができます。

判決

証人尋問や当事者尋問が終われば、基本的には証拠調べが終了します。

したがって、この段階で審理を終結し、裁判官が判決を出します。

判決は原告の請求をすべて認める全部認容判決、原告の請求の一部を認める一部認容判決、原告の請求をすべて棄却する請求棄却判決があります。

 

控訴、上告

裁判所が出した判決に不服がある場合には、控訴することができます。

控訴した場合には、さらに上級裁判所で審理が行われます。

上級裁判所の判決でも納得できない場合には、上告することができます。

 

 

裁判をするかどうかの判断

裁判をした場合には、交渉段階では請求できなかった遅延損害金や弁護士費用などを請求することができます。

また、賠償の水準は、最も高水準である裁判基準で賠償を受けることができます。

もっとも、裁判にはリスクもあります。

加害者側は、裁判になった場合には、交渉段階で話し合っていたことを白紙に戻して、一切について、再度検討して反論を行ってきます。

したがって、交渉段階では賠償を認めていた損害について、裁判においては争ってくる可能性があるのです。

例えば、治療にについて、交渉段階では1年分を認めていたのに、裁判になると半年分しか認めないといった主張をしてきます。

このような主張がなされた場合には、被害者側において1年間の治療が必要であることを主張立証する必要があります。

仮に、立証できなければ、治療費は半年分しか認められないことになるのです。

したがって、裁判をする場合には、各損害項目について、どの程度の立証が可能かを十分見極めることが重要です。

ですから、裁判をするかどうかの判断は、弁護士でないと難しいでしょう。

裁判を検討されている方は、一度、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

 

裁判が集結するまでの期間

裁判所の統計によれば、交通事故の裁判の審理期間は、平均12.4ヶ月です。

裁判は時間がかかるというイメージがありますが、約20%が6ヶ月以内に終結しています。

審理期間 割合
6ヶ月以内 19.7%
6ヶ月超1年以内 41.3%
1年超2年以内 32.7%
2年超3年以内 5.3%
3年超5年以内 1.7%
5年を超える 0.04%

参照:「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第8回)」(最高裁判所・令和元年7月19日)

 

 

裁判にかかる費用

収入印紙代

裁判を行うにあたっては、訴える金額に応じて裁判所に収入印紙の購入という形で支払う必要があります。

請求額(訴額) 収入印紙代
100万円まで 10万円増える毎に1000円追加
500万円まで 20万円増える毎に1000円追加
1000万円まで 50万円増える毎に2000円追加
10億円まで 100万円増える毎に3000円追加

例えば、360万円請求する場合には、2万3000円となります。

 

郵便切手代

当事者に郵便物を送付するための郵便切手代を支払う必要があります。

原告と被告が1名ずつの場合は6000円で、1名増える毎に2000円ずつ加算されることになります。

 

弁護士費用

弁護士に依頼する場合には、弁護士費用がかかります。

弁護士費用特約がある場合には、全ての弁護士費用を賄うことができる場合もありますので、弁護士費用特約が使えるか確認されたほうがいいでしょう。

また、弁護士費用として、損害認定額の10%分を相手方に請求することができます。

例えば、100万円の賠償が裁判所に認定されたとすると、10万円が弁護士費用として認められることになります。

 

 

交通事故裁判が長引く原因

過失相殺に争いがある場合

過失割合に争いがある場合には、事故態様に争いがあるケースが多くあります。

相手がウィンカーを出していたか、どのタイミングで交差点に進入してきたかなど事実レベルで争いになることが多いのです。

こうした場合、ドライブレコーダー等の客観的な証拠がない場合には、お互いの言い分を聞いてみて、どちらが信用できるかを検討する必要が出てきます。

したがって、過失割合について争いがある場合には、尋問手続きまで進む可能性が高くなり、裁判が長引きやすいといえます。

 

後遺障害が残る場合

後遺障害が残る場合には、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求することができます。

後遺障害慰謝料は、目安の金額が決まっているため、それほど争いになりませんが、逸失利益は、基礎収入、労働能力喪失期間、労働能力喪失率について、審理する必要があり、当事者間でも争いになることが多いです。

加害者側も後遺傷害がある場合には、賠償額も高額になるため、医師の意見書をとりつけるなどして反論してきます。

後遺障害が残る場合では、お互いに主張と反論が多くなるため、結果として裁判が長引いてしまう傾向にあります。

 

死亡事故の場合

死亡事故の場合においても、逸失利益や過失割合で争いになり、双方の主張・反論が多くなり、裁判が長引く傾向にあります。

また、死亡の原因が交通事故かどうかで争いになるような場合には、医学的な問題にも発展して、審理が長期化することもあります。

 

 

まとめ

裁判を進めていくには、専門的な知識が必要となります。

また、適切な賠償額を請求するには専門である弁護士のアドバイスは不可欠です。

裁判を行うべきかどうか迷われている場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

 

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