収入が少なくても親権者となることができますか?
A) 親権者の判断において、収入はそれほど関係がありません。
女性の方から多いのがこの質問です。
特に、相手方が高収入の場合で女性が専業主婦やパート収入の場合、経済的に自立するのが難しいため、親権を取得できないのではないかと心配される方が多いです。
しかし、親権について争いとなった場合、裁判所は、「どちらの親を親権者にするのが子どもにとって幸せか」という視点に立って判断します。
具体的には、これまでの監護状況、監護への意欲、今後の監護の環境や監護体制、非監護親との今後の面会交流についての考え方等を総合的に考慮して判断します。
特に、子どもが小さい場合、家庭裁判所は、これまでの監護実績、すなわち、主たる監護者がどちらであったかを重視する傾向にあります。
また、確かに、子どもを引き取った場合に、生活がまったくできないほど経済状態が悪ければ、監護能力に問題があるといえます。
しかし、親権を取得すると、相手方から養育費をもらえます。また、その他公的扶助もあるので、経済力の問題で親権を取得できないことはほとんどないと思われます。
したがって、収入については、心配されなくてよいと思います。
むしろ、親権については、現状として、収入の少ない女性の方が有利です。収入が少ないと言うことは、仕事の時間が少なく、それだけ育児にかける時間が多いからです。
実際に当事務所では、相手方が会社経営者や医師等の高所得者の場合でも、親権を取得できた事案がたくさんあります。
子どもが小学校高学年くらいになると、子ども自身もある程度の判断能力を備えるようになるため子どもの意思も無視できません。
したがって、子どもがある程度の年齢になると、家庭裁判所は子どもの意向も確認するようにしています。
当事務所は、離婚に悩む方に対して、専門の弁護士が親身にサポートを行っています。
独りで悩まずにお気軽にご相談ください。
収入が少ない方が子育てを行うときの問題点
収入が少ない方で、親権を取得できるかご心配な方には共通して見られる問題点の傾向があります。
以下、紹介しますので、ご参考にされてください。
①離婚後の生活に不安を感じている
収入が少ないと、離婚後、生活していけるのか不安に感じる方が多くいらっしゃいます。
確かに、ケースによっては、同居しているときよりも、自由に使えるお金が減ってしまうことはあります。
しかし、少なくとも、日本においてシングルマザーが「食べていけない」ことはないので、ご安心されてください。
婚姻費用を請求する
そのために大切なことは、まず、別居と同時に、まずは相手方に婚姻費用を請求します。
婚姻費用は、離婚が成立するまで、生活費の支払いを受けることができるものですが、適切な額の婚姻費用を請求するのが重要なポイントとなります。
なぜならば、婚姻費用の額が養育費やその他の離婚条件に大きく影響する可能性があるからです。
そのため、婚姻費用の適切な額や請求方法については、離婚にくわしい弁護士に相談されることをお勧めしています。
婚姻費用について、くわしくは以下をごらんください。
養育費の取り決めを行う
また、離婚の際、適切な養育費の取り決めを行うことも重要です。
養育費については、インターネット上でもある程度調べることは可能ですが、個別の案件によって大きく異なる可能性があります。
そのため、素人判断ではなく、離婚専門の弁護士に相談されることをお勧めしています。
養育費について、くわしくは以下をごらんください。
②保育料等を減免していない
子どもを保育園や幼稚園に通わせている場合、高額な料金を支払われている方が多いと思います。
これは、保育料等の算定において、相手方の所得を考慮して算定しているからです。
離婚すると、保育料等は、基本的に相手方の所得は考慮されません。したがって、離婚すると、通常保育料等は減免されます。
また、ケースによっては、離婚成立前でも保育料等を減免することが可能です。
例えば、当事者が別居後に弁護士が代理人となって相手方と離婚を協議しているような場合、弁護士が離婚協議中の証明をすることで保育料等が減免できる場合があります。
したがって、保育料等の減免については、離婚専門の弁護士へ相談されることをお勧めしています。
③児童手当を請求しない
児童手当は、子どもを現実に監護している方が受け取るべき給付金です。
しかし、別居しているのに、児童手当をもらっていない方がとても多い状況です。
児童手当を相手方に請求したり、場合によっては受給権者の変更が可能です。
収入が少ない方が親権の取得を希望する場合のコツ
収入が少ない方が親権を取得しようとする場合、共通した傾向が見られます。
以下、親権を取得する場合のコツについて解説するのでご参考にされてください。
①相手方に婚姻費用を請求する
親権についての争いは、泥沼化する傾向にあります。
相手方も必死になるため、相手方に経済力がある場合、「経済力がある方が子どもが幸せになれる」「充実した教育を受けさせることができる」などの主張がされることがあります。
しかし、このような場合、婚姻費用を相手方に求めることで、経済力の差を解消することが可能です。
この点、婚姻費用は、親権とは関係がないようにも思えます。
しかし、婚姻費用は、婚姻関係にある夫婦は同程度の生活レベルを保持すべきであるという考え方に基づくものであり、収入が多ければ、それだけ多くの生活費を収入が少ない側に支払う義務があります。
そのため、相手方の収入が多い場合、婚姻費用も高額になるため、経済的格差が解消できるのです。
そのため、相手方から上記のような主張がされても、「婚姻費用で十分生活していける」との反論が可能となります。
②場合によっては生活保護を検討
上記のとおり、経済力は、親権者の判断においてはそれほど重要ではありません。
また、相手方の収入が多い場合、婚姻費用を請求することで、経済力の差の解消が可能です。
しかし、相手方の収入も少ない場合、婚姻費用を請求しても、多くの生活費は見込めません。
このような場合、当方の収入が少なかったとしても、相手方の収入も少ないため、親権者の判断においてフリになるとは思えませんが、さすがに食べていけないほど困窮している場合は問題です。
そのような場合は、役場の生活保護課に相談に行き、生活保護の受給も検討すべきです。
なお、生活保護を受給しているという理由で、親権者として不適格となる可能性は低いので安心してください。
③養育費の主張
婚姻費用は、離婚が成立するまでの生活費です。
離婚後は、養育費が重要となってきます。
収入が少なくとも、相手方の収入が多ければ、高額な養育費を支払ってもらえるはずです。
そのため、適切な額の養育費を主張することが重要となります。
親権についてお悩みの方は、以下をぜひご覧ください。
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