離婚調停の流れ|必要書類・期間や費用を完全ガイド
離婚調停は、裁判所において離婚について話し合い、合意による解決を目指す手続きです。
離婚調停での話し合いは、調停委員と交互に話をする形で進められていきます。
ここでは、離婚調停の手続きの流れについて、詳しく解説していきます。
離婚調停の必要書類・期間・費用や注意点などについても紹介します。
離婚調停を検討している方や、手続きの全体像を知りたいという方は、ぜひ参考になさってください。
家庭裁判所の離婚調停の手続きの流れ

離婚調停前の事前準備
必要な資料を準備する
離婚調停を有利に進めるために、次のような資料をあらかじめ準備しておくとよいでしょう。
| 状況 | 準備する資料 |
|---|---|
| 離婚について争いがある場合 |
|
| 親権について争いがある場合 |
|
| 面会交流について争いがある場合 |
|
| 養育費を請求する場合 |
|
| 財産分与を請求する場合 |
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| 慰謝料を請求する場合 |
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| 年金分割を請求する場合 |
|
年金分割のための情報通知書
もっとも、必要な資料や収集方法は事案により異なります。
そのため、事前に離婚問題に詳しい弁護士に相談し、具体的なアドバイスをもらうことをおすすめします。
離婚調停に強い弁護士に相談する
離婚調停を申し立てる前の段階で、一度、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
離婚調停は解決までに多くの時間と労力を要します。
申立てをしても、思うように事が運ばず、かえって離婚成立までの時間が引き延ばされてしまうこともあります。
そのため、まずは、離婚調停の申立てをすべきかどうかについて、専門家の助言をもらうことをおすすめします。
そのうえで、申立てに向けて進めていくことになった場合は、事前準備・申立ての方法・進め方などについて、具体的な助言をもらうとよいでしょう。
離婚調停の申立て
離婚調停の申立ては、家庭裁判所に申立書を提出して行います。
申立書の書式は、裁判所の窓口やホームページから入手することができます。
当事務所では、離婚調停申立書のサンプルをウェブサイトに掲載しています。
どなたでも、無料でダウンロードしていただくことができます。
申込書の書式に所定の事項を記載し、1200円分の収入印紙を貼付し、その他の必要書類を添えて裁判所に直接持参または郵送で提出します。
離婚調停は誰が申立てできるの?
離婚調停を申し立てることができるのは、夫または妻、もしくはその代理人の弁護士です。
夫婦以外の第三者(親・子どもなど)は、申し立てることはできません。
また、離婚調停の当事者となるのは、法律上の夫または妻(婚姻届を出している夫婦)です。
事実婚(内縁)の場合は、離婚調停を申し立てることはできませんが、同じような手続きとして「内縁関係調整調停」を利用することはできます。
なお、申立てをした人のことは「申立人」、申し立てられた人のことは「相手方」と呼ばれます。
離婚調停の管轄は?
「管轄」とは、その事件をどの裁判所が担当するかを決めるルールのことをいいます。
離婚調停の管轄は、基本的には「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」となります。
したがって、離婚調停は、基本的には相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があります。
例えば、申立人が福岡県、相手方が東京都の23区内に住んでいる場合、離婚調停は東京家庭裁判所に申立てる必要があります。
具体的な管轄区域は、裁判所のホームページから調べることができます。
当事者間において、調停を実施する裁判所を合意した場合は、その裁判所に申し立てをすることができます。
例えば、申立人が福岡県、相手方が東京都に住んでいる場合に、「福岡県の裁判所で調停を実施する」との合意をした場合は、福岡の家庭裁判所に申し立てをすることができます。
これを合意管轄といいます。
ただし、このような合意は、書面又は電磁的記録によってする必要があります。
口頭で合意しただけでは、管轄を定めることはできませんので注意が必要です。
また、合意管轄で指定ができるのは裁判所の「本庁」までであり、「支部」や「出張所」を指定することができません。
例えば、「福岡家庭裁判所小倉支部で実施する」との合意をしても、合意管轄の効力は福岡家庭裁判所(本庁)までしか生じません。
小倉支部で実施するかどうかは、裁判所の判断となります。
期日の指定・裁判所からの呼び出し
申立書が受け付けられると、数日後に、裁判所から期日の日程調整についての連絡が入ります。
期日とは、裁判所で調停を実施する日のことをいいます。
期日が決まったら、裁判所が相手方宛に期日の呼出状を送付します。
第1回調停期日
第1回調停期日は、通常、次のような流れで進められます。

調停は、申立人と相手方が交互に調停室に入り、調停委員に話をする形で進められます。
申立人と相手方が同席することは、調停成立などの場面を除いて、基本的にはありません。
期日の1回当たりの所要時間は、2時間程度です。
時間内に話し合いがまとまらなければ、話し合いの続きは次回期日に持ち越しとなります。
次回期日は、約1か月後の日程が押さえられることになります。
ただし、裁判所や当事者の都合次第では、2か月くらい先になってしまう場合もあります。
離婚調停の1回目で聞かれることは?
離婚調停の1回目では、概ね次のようなことを聞かれます。
- 【申立人】離婚を求める理由や離婚調停を申し立てた経緯
- 【相手方】離婚に対する考え
- 現在の夫婦の生活状況(同居か別居か、生活費はどうしているかなど)
- 子どもの生活状況
- 子どもの親権、面会交流、養育費についての意向
- 財産分与や慰謝料についての意向
調停委員会とは?
調停委員会とは、調停事件を処理する裁判所の機関のことです。
裁判官(又は家事調停官)1名と調停委員の2名(男女のペア)で構成されています。
ただ、実際に調停を進行させる(調停で話を聴く)のは調停委員です。
裁判官は、同一期日に複数の事件を受け持っているため、調停成立時などの重要な局面にしか調停室に現れません。
離婚調停の雰囲気は?
調停は、法廷ではなく、会議室のような適度な広さの部屋(調停室)で実施されます。
調停室には、4〜6人がけのテーブルと椅子が設置されており、調停委員2人と対面する形で座り、話をすることになります。
弁護士に依頼している場合は、弁護士も一緒に調停室に入り同席します。
調停は、比較的穏やかで話しやすい雰囲気の中で進められることが多いです。
最初は緊張していても、徐々に落ち着いて話ができるようになることも多いと思います。
もっとも、調停委員の態度や言動が疑問や不安を生じさせる場合もないわけではありません。
また、調停委員が誤った法的見解や不正確な説明を示すことも多々あります。
弁護士が同席していれば適宜フォローや是正が可能ですが、自力で対応している場合は、調停委員の雰囲気にのまれないように注意を払っておくことも必要となるでしょう。
電話・ウェブ会議での実施
近年では、調停期日を電話会議やウェブ会議システムを利用して実施するケースも増えてきています。
電話会議の場合は、調停室(調停委員が在室)と電話でやり取りをします。
ウェブ会議の場合は、映像の送受信も加わるため、調停委員の顔を見ながらのやり取りとなります。
これらを利用することで、家庭裁判所に出向くことなく調停を行うことができます。
もっとも、原則は家庭裁判所への出頭が必要とされており、電話等による実施は、あくまでも裁判所が相当と判断する場合に限って認められます。
この点、弁護士がついている場合は、問題なく認められることが多いです。
弁護士がついている場合は、通常は弁護士の事務所から電話等をつなぐため、本人確認やシステム利用がスムーズにできるからです。
一方、弁護士がついておらず、本人で対応している場合は、本人確認や通信環境の都合上、スムーズに認められないこともあるので注意が必要です。
第2回目以降の調停期日
第1回目の調停で成立することはほとんどありません。
そのため、ほとんどのケースでは第2回目以降の期日も実施されることになります。
各回の流れや所要時間は、第1回目とほとんど同じです。
期日を何回重ねるかはケース・バイ・ケースですが、3~5回程度は必要になるケースが多い傾向にあります。
期日間に調査官調査が実施されるケースも
親権や面会交流など、子どもに関する事柄に争いがある場合、期日に家庭裁判所調査官(以下「調査官」といいます。)が立ち会うことがあります。
調査官とは、心理学や社会学などの専門知識を活用し、問題解決のための調査や調整を行う裁判所職員のことをいいます。
調査官は、第1回目の期日から立ち会うこともあれば、2回目以降の期日から立ち会うこともあります。
また、調査官が関与するケースでは、期日と期日の間の期間に、子どもの生活環境や意向の調査(調査官調査)が実施されることもあります。
調査は、期日とは別の日程において、裁判所で調査官と面接をしたり、調査官が子どもを監護している家庭に訪問したりする形で実施されます。
調査の結果は、「調査報告書」という書類にまとめられます。
そして、次の期日では、この報告書の内容を踏まえ、話し合いが進められることになります。
調停の終了
離婚調停が成立する場合
話し合いの結果、合意がまとまった場合は、裁判所が調停条項(合意内容を箇条書きにしたもの)を作成します。
そして、両当事者の前で裁判官が調停条項を読み上げ、合意内容に間違いがないか確認を行います。
確認が済んだら、裁判所が調停条項を記載した「調停調書」という書類を作成します。
これにより調停成立となり、法律上も離婚が成立します。
調停条項の読み上げの際には、基本的には相手方も調停室に同席します。
しかし、相手との同席を避けたい場合(DV事案の場合など)は、その旨を裁判所に伝えれば、通常は配慮してもらうことができます。
すなわち、別々に調停室に入り、個別に調停条項の読み上げを行ってもらうことができます。
また、弁護士に依頼している場合は、本人は待合室に待機し、弁護士のみが読み上げに立ち会い、調停を成立させることも可能です。
離婚調停が成立しない場合
離婚の合意ができない場合や、離婚条件の折り合いがつかない場合は、調停は「不成立」となります。
調停が不成立となった場合は、離婚は成立せず、手続きもそのまま終了します。
その後、離婚や離婚条件についての決着をつけたい場合は、改めて離婚訴訟(裁判)を提起する必要があります。
離婚調停に必要な書類
調停の申立てに必要な書類は、次の通りです。
- 離婚調停申立書
- 標準的な申立添付書類
・夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
・年金分割のための情報通知書(年金分割を請求する場合)
・事情説明書
・子についての事情説明書(未成年の子どもがいる場合)
・進行に関する照会回答書
・送達場所等届出書
※申立書、事情説明書、進行に関する照会回答書、子についての事情説明書、送達場所等届出書の書式は、裁判所窓口又はホームページからのダウンロードにより入手することができます。
離婚調停の費用
手続きにかかる費用
離婚調停の手続き自体にかかる費用は、総額で3000円〜4000円くらいです。
内訳は以下の通りです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 申立て手数料 | 1200円 |
| 連絡用の郵便切手 | 1000円程度(裁判所によって異なる) |
| 調停調書の交付手数料など | 1000円程度(枚数等により異なる) |
弁護士に依頼する場合の費用
離婚調停の手続きを弁護士に依頼する場合は、上記の実費に加えて、弁護士費用がかかります。
弁護士費用は、依頼する弁護士(法律事務所)や、依頼内容によって大きく異なります。
そのため、詳しくは依頼を検討している事務所のホームページや法律相談でご確認ください。
ここでは参考までに相場を示します。
| 項目 | 内容 | 相場 |
|---|---|---|
| 着手金 | 依頼時に最初に支払うお金 | 40万円~60万円程度 |
| 報酬金 | 終了時に出来高に応じて支払うお金 | 20万円~100万円程度(事案により大きく異なる) |
離婚調停の期間
司法統計によれば、家事調停の既済事件の平均審理期間は7.2か月とのことです。
この「家事調停」には離婚調停以外の調停も含まれていますが、離婚調停の期間の平均としても7.2か月くらいと考えて問題ないと思われます。
筆者の個人的な感覚でも、6か月から1年の間になることが多いように思います。
離婚調停で注意すべきこと
まずは弁護士の代理交渉を活用する
離婚調停は、裁判所を通して手続きを進めるため、解決までに多くの時間を要します。
先に述べたとおり、多くの場合は6か月〜1年くらいはかかり、複雑な事案では1年以上かかることもあります。
そのため、まずは裁判外での話し合いによる解決(協議離婚)を目指すことをおすすめします。
とはいえ、本人同士では冷静な話し合いができず、結局調停を申し立てざるを得ない状況になるケースも少なくありません。
そこで、弁護士による代理交渉を活用することをおすすめします。
代理交渉とは、弁護士があなたの代理人として、相手と直接交渉するサポートです。
弁護士が間に入ることで、スムーズに話し合いを進めることが可能となるケースは多いです。
そのため、調停を利用することなく、早期に、適切な条件で離婚を成立させることができる可能性が高まります。
また、弁護士費用についても、代理交渉の方が調停サポートを依頼するよりも低く抑えられることがほとんどです。
調停条項は慎重に吟味する
調停で合意がまとまった際には、合意内容を箇条書きにした調停条項が作成されます。
この調停条項は、調停が成立すると拘束力が生じます。
そのため、調停条項の文言は、細心の注意を払ってチェックするようにしましょう。
例えば、養育費の金額や支払時期など、合意した内容どおりに記載されているかどうか、一つ一つ慎重に確認する必要があります。
もっとも、調停条項から生じる法律効果などを正確に把握するためには、専門知識や経験が必要となります。
そのため、離婚問題に詳しい弁護士にチェックしてもらうことをおすすめします。
調停手続きを弁護士に依頼していない場合であっても、調停成立前には一度相談し、条項案を見てもらうとよいでしょう。
専門家に相談する
離婚調停は話し合いの場であるものの、離婚問題に関する法的知識がなければ、有利に進めることは困難です。
調停委員も、あくまでも中立的な立場で仲介するにすぎず、あなたの味方として動いてくれるわけではありません。
そのため、調停の手続きをスムーズに、そして有利に進めたい場合は、離婚問題に詳しい弁護士への依頼を検討されることをおすすめします。
弁護士費用はかかりますが、適切な条件で早期解決を図るという点では、大きなメリットを得ることができるでしょう。
精神的な負担も大幅に軽減することもできます。
まずは自力で対応してみようという場合でも、事前準備や進め方については、一度弁護士に相談されることをおすすめします。
準備するべき資料や方向性がわかれば、安心して調停に臨むことができるようになるでしょう。
離婚調停の流れについてのQ&A
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離婚調停で勝つにはどうすればいいですか?
以上の2つは特に重要なポイントとなります。
もっとも、適切な離婚条件や集めるべき証拠は、個別の事情によって大きく異なります。
そのため、事前に離婚問題に詳しい弁護士に相談し、具体的なアドバイスをもらうことをおすすめします。
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離婚調停は女性の方が有利なのですか?
たしかに、女性の方が親権を獲得しやすく、養育費、慰謝料、財産分与なども女性側が「受け取る側」となるケースは多いです。
しかし、これは女性が子育てを主として担当している家庭が多いことや、女性の方が男性よりも収入・資産が少ないケースが多いという社会全体の傾向によるものです。
「女性だから」という理由のみで有利になることはありません。
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離婚調停中にやってはいけないことは?
- 安易に合意をする
- 無断欠席する
- 調停の録音・撮影をする
- 調停委員に暴言を吐く
- ウソをつく
- 必要な資料をわざと提出しない
- 期日間(期日と期日の間の期間)に浮気をする
- 期日間に勝手に相手や子どもに接触する
まとめ
以上、離婚調停の流れについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
離婚調停は、申立てから始まり、数回の期日を重ね、調停成立又は不成立で終了します。
調停の手続きを進めるには、通常、多くの時間や労力がかかります。
そのため、事前に離婚問題に詳しい弁護士に相談し、調停申立ての要否や、必要な準備・注意点などについて、具体的なアドバイスを受けることをおすすめします。
当事務所には、離婚問題に精通した弁護士のみで構成された専門チームがあり、離婚問題に悩む方々を強力にサポートしています。
LINEや電話での相談も実施しており全国対応が可能です。
離婚問題でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?









