婚姻費用分担請求とは?相場・算定表・ポイントを弁護士が解説

  
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婚姻費用分担請求とは

婚姻費用分担請求とは、婚姻費用を相手方に請求することをいいます。

婚姻費用とは

夫婦が婚姻生活を営むために必要な全ての費用のことを「婚姻費用」といいます。

婚姻費用には、衣食住の費用、医療費、娯楽費、子どもの養育費や教育費などが含まれます。

そして、婚姻費用については法律で、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する(民法760条)」と定められています。

引用元:民法 – e-Gov法令検索

また、夫婦は、婚姻生活が続いている限り、相手方が自分と同じ水準の生活が出来るように、お互いに助け合わなければなりません。

これを「生活保持義務(民法753条)」といいます。

つまり、夫婦は、婚姻生活に必要な生活費を分担して助け合わなければならず、通常、収入の多い夫又は妻(通常は夫側のほうが多い。)は、収入の少ない妻又は夫(通常は妻側)に対して生活費を給付しなければなりません。

このことは、別居中の夫婦でも同じです。

したがって、離婚の協議中で別居している夫婦のうち、収入の多い妻又は夫が、収入の少ない他方に対して生活費の給付をしないときは、収入の少ない妻又は夫は相手方に対して婚姻費用の分担を請求することができます。

 

「婚姻費用」と「養育費」って違うの?

「婚姻費用」と「養育費」は同じ意味だと誤解をされていることがありますが、異なります。

「養育費」とは、離婚後、子どもが自立するまでの、子どもの生活費を意味します。

一方の「婚姻費用」は、離婚が成立するまでの相手配偶者及び子どもの「養育費」を含めた生活費を意味するため、離婚後は問題となりません。

項目 婚姻費用 養育費
対象 配偶者+子ども 子ども
支払期間 離婚が成立するまで、又は別居を解消するまで 離婚後子どもが自立するまで

 

 

婚姻費用の相場

婚姻費用の相場は、月額4万円から15万円となっています。

しかし、以下で解説するように具体的な状況によって異なりますので注意が必要です。

 

婚姻費用の金額とは?

請求した婚姻費用の金額について相手方が同意をすれば、相手方が同意をした金額が婚姻費用の金額となります。

しかし、婚姻費用の金額について争いがある場合、基本的には夫婦双方の収入、子どもの数と年齢によって金額が算出されます。

裁判所が公表している統計データによれば、婚姻費用の相場は、月額4万円から15万円となっています。

 

▼婚姻費用の月額についての円グラフ(※権利者が妻の場合)

婚姻費用の月額についての円グラフ

参考:令和3年司法統計年報 家事編

合わせて読みたい
婚姻費用の相場とは?

 

ただし、婚姻費用は、夫婦双方の収入、子どもの数と年齢から算出されるので、婚姻費用を支払う側(専門用語としては「義務者」といいます。)の年収によって、婚姻費用の金額はまったく異なりますし、婚姻費用をもらう側(専門用語としては「権利者」といいます。)が専業主婦の場合と、年収500万円の場合でも、婚姻費用の額は全く異なってきます。

また、夫婦間の子どもの人数や年齢によっても金額は異なります。

したがって、婚姻費用の相場を考えるには、夫婦の年収等の具体的な状況に応じた適正額を調べなければなりません。

 

婚姻費用の算定表

具体的な状況に応じた適正額とは?

婚姻費用の金額について争いがある場合、家庭裁判所が参考にしている「婚姻費用算定表」という早見表を使って婚姻費用を算出します。

「婚姻費用算定表」を利用することにより、夫婦それぞれの年収、子どもの人数と年齢に応じて、生活を営むうえで通常生じると考えられる諸事情を加味した適正な金額を算出することが出来ます。

ただし、専門家以外の一般の方には、「婚姻費用算定表」の見方は少し難しく思われるかも知れません。

そこで、当事務所では、婚姻費用の目安を素早く確認したいという方のために、オンラインで簡単に自動計算できるサービスをご提供しています(サービス利用料はかかりません)。

自動計算に必要な情報は、夫婦各々の年収と子どもの人数及び年齢だけです。

 

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婚姻費用分担請求のポイント

特別な事情による金額の加減とは?

「婚姻費用算定表」による婚姻費用の金額は、あくまで標準的な婚姻費用を簡単かつ迅速に算出することを目的としているため、個別の事情を十分に考慮出来ていない側面があります。

そこで、以下のような特別な事情がある場合は、「婚姻費用算定表」による金額から加減できる可能性があります。

①子どもが私立学校へ進学した

「婚姻費用算定表」の金額は、公立の学校に関する教育費用しか考慮していません。

そこで、婚姻費用を支払う側(義務者)が私立学校の入学を承諾したなどの事情がある場合や、義務者の収入等からみて支払わせることが相当だと考えられる場合は、一定額を加算するように求めることが可能です。

②義務者が自宅の住居費と権利者の住居の家賃とを支払っている

義務者が、別居した権利者の住居費(家賃や住宅ローン)も支払っていることは、権利者に支払うべき婚姻費用の一部を既に支払っていることになります。

したがって、通常は、義務者が支払っている住居費のうち、相当程度は婚姻費用の算出額から控除される可能性があります。

ただし、具体的にどれだけの金額が加算され、又は控除されるかの判断は離婚専門の弁護士への相談をお勧めいたします。

 

婚姻費用はいつから支払ってもらえる?

通常は、弁護士から相手方に婚姻費用分担請求についての内容証明郵便が届いた時点又は、婚姻費用分担調停の申立時から、相手方は婚姻費用を支払わなければなりません。

なお、相手方に支払い請求をした以前に遡って支払ってもらうことは非常に難しいです。

したがって、権利者の場合は、別居した場合は弁護士に依頼するなどして、内容証明郵便で婚姻費用を請求されることをお勧めいたします。

 

不倫をした者(専門用語としては「有責配偶者」といいます。)が相手方に対して婚姻費用を請求することはできる?

有責配偶者とは、別居の原因を作った配偶者を意味します。

原則的に有責配偶者は、相手方に対して婚姻費用の分担を求めることは出来ません。

例えば、不倫をした権利者が子どもを連れて別居しているケースでは、子どもの養育費分しか婚姻費用として認めないなど、大きく減額されたり、また請求自体が認められなかったりすることがあります。

押さえるべき婚姻費用の注意点と対策について、くわしい解説はこちらをご覧ください。

 

 

婚姻費用分担請求調停の流れ

婚姻費用分担請求調停は通常、以下の流れとなります。

婚姻費用分担請求調停の流れ

婚姻費用の分担を相手方に求めたが、話し合いで解決することが出来なかった場合は、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てます。

通常、相手方の住所地を受け持つ家庭裁判所に申し立てることになります。

 

離婚調停との関係

「婚姻費用分担請求調停」の申立ては、離婚調停の申立てとともになされることが多く、この場合、婚姻費用の分担についても離婚調停の場で一緒に話し合われます。

ただし、各々別の事件になりますので、離婚調停を申立書とは別の申立書を提出する必要があります。

一方、別居中ではあるけれども、まだ離婚調停をするかしないかで悩んでいる場合には、「婚姻費用分担請求調停」だけを先に申し立てることも出来ます。

 

婚姻費用分担請求調停が不成立となったときについて

離婚調停の話合いがまとまらずに調停が不成立となった場合は、通常、離婚調停不成立として終了するか、調停を取り下げるかのいずれかになります。

しかし、「婚姻費用分担請求調停」は、調停の話合いがまとまらなかった場合、自動的に審判手続が開始されます。

審判手続とは、裁判官が、必要な審理を行った上、一切の事情を考慮して、審判という形で婚姻費用の額を決定する手続きになります。

裁判官の定めた婚姻費用の額に不服がある場合は、2週間以内に不服の申立て(専門用語としては「即時抗告」といいます。)をすることになります。

離婚調停について、くわしくはこちらをご覧ください。

 

まとめ

以上、婚姻費用分担請求について、解説しましたが、いかがだったでしょうか。

婚姻費用の支払いは、離婚が成立するまで続きます。

支払う側にとっても、受け取る側にとっても非常に重要な問題になります。

婚姻費用の額の算定等については、専門知識はもちろん、家裁実務に関するノウハウが必要です。

そのため、離婚問題の専門家に相談されることをお勧めします。

婚姻費用についてお悩みの方は、当事務所の離婚事件チームまで、お気軽にご相談ください。

 

 

 

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