離婚調停にかかる費用とは?相場や弁護士に依頼するメリットを解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  


離婚調停を始めたいと考えたとき、どのくらいの費用がかかるのかは気になるポイントです。

離婚調停の申し立てにかかる費用は収入印紙代1200円、郵便切手代1000円程度、戸籍謄本の取得費用450円です。

自分で離婚調停を申し立てて進めていく場合は、申立費用の3000円程度と、必要書類の取り寄せ費用などの実費だけしかかかりません。

他方、弁護士に依頼して離婚調停を進めていく場合、弁護士費用として少なくともトータル50万円くらいはかかります。

弁護士費用の負担が大きいと感じ、弁護士に依頼するのをためらってしまうかもしれません。

しかし、離婚調停で納得のいく解決・後悔の残らない解決・早期の解決を目指すのであれば、弁護士に依頼するのがおすすめです。

ここでは、まず離婚調停にかかる費用について内訳・相場・誰が負担するのかについて解説し、費用が負担に感じる場合の対応策もご紹介します。

そして、離婚調停を弁護士に依頼するメリット・デメリットもご紹介していきます。

離婚調停の申し立てを考えている方、弁護士へ依頼するかどうか迷っている方、費用を負担に感じる場合の対応策を知りたい方は、ぜひ参考になさってください。

離婚調停とは

離婚調停とは、離婚に関する問題について裁判所で話し合いをする手続きです。

「調停委員」という裁判所の職員2名と裁判官1名で構成される「調停委員会」が話し合いの仲介をしながら、合意による解決を目指していくものです。

離婚調停について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

離婚調停にかかる費用にはどんなものがある?

離婚調停にかかる費用は以下のとおりです。

①申立費用 収入印紙代 1200円
郵便切手代 1000円程度
夫婦の戸籍謄本の取得費用 450円
②実費 住民票、課税証明書など必要書類の取得費用 1000円程度
調停調書の交付手数料など 1000円程度
その他交通費など
③弁護士費用 法律相談料(相場)30分5000円〜1万円程度
着手金(相場)20万円~50万円程度
報酬金(相場)20万円~100万円程度
日当・実費 日当3万円~5万円程度

まずは、それぞれどのような費用なのかについて、解説していきます。

 

①申立費用

離婚調停を始めるためには、まず家庭裁判所に離婚調停の申立てをする必要があります。

申立ての際に必要になる費用は、

  • 収入印紙代
  • 郵便切手代
  • 夫婦の戸籍謄本の取得費用

となります。

 

収入印紙代

離婚調停の申立書には、申立手数料として1200円分の収入印紙を貼る必要があります。

場合によっては、離婚調停と一緒に離婚するまでの生活費(「婚姻費用」といいます。)や、別居している親と子どもの面会(「面会交流」といいます。)について話し合うための調停を別途申立てることがあります。

その場合、それぞれの調停について1200円分の収入印紙を貼った申立書を提出する必要があります。

 

郵便切手代

申立書を提出するのと一緒に郵便切手も裁判所に納める必要があります。

納めた郵便切手は、裁判所から通知書を送るときなどに使用されます。

いくら分の郵便切手を納める必要があるかは、裁判所により異なりますが、1000円前後のことが多いです。

郵便切手についても、それぞれの調停ごとに納める必要があります。

 

夫婦の戸籍謄本の取得費用

離婚調停を申し立てるときには、申立書と一緒に夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)も提出する必要があります。

夫婦の戸籍謄本は、本籍地のある市区町村役場で取り寄せることができ、取り寄せ手数料は450円です。

離婚調停と婚姻費用の調停や面会交流の調停を一緒に申し立てる場合、夫婦の戸籍謄本は1通添えればよく、それぞれの調停ごとに用意する必要はありません。

 

②実費

調停が始まった後、調停を進めるために随時必要になる費用があります。

主に想定されるのは、以下のような費用です。

  • 住民票、課税証明書など必要書類の取得費用
  • 調停調書謄本の交付手数料など
  • その他交通費など

 

住民票、課税証明書など必要書類の取得費用

離婚調停における話し合いの内容によっては、住民票、課税証明書、不動産の登記事項証明書などの資料を出す必要があります。

これらの資料を取り寄せるには手数料がかかります。

取り寄せ方法(窓口・コンビニ交付・郵送など)にもよりますが、1通数百円ですので、多くても数千円程度で収まると考えられます。

 

調停調書謄本の交付手数料など

離婚調停に関係する書類を裁判所に交付してもらう必要がある場合、それらを交付してもらうためには手数料がかかります。

たとえば、調停で話し合いがついて離婚できた場合、裁判所は調停で決まった内容を記載した「調停調書」という書類を作成します。

この調停調書の謄本は、市区町村役場への届出をする際に必要になるため、届出をする人(通常は調停を申し立てた人)は、必ず交付申請することになります。
(調停で離婚した旨記載された調書が作成されれば、法的に離婚が成立しますが、身分関係の変更を報告するために市区町村役場の戸籍担当に届出をする必要があります。)

調停調書の謄本の交付手数料は、1枚につき150円であり、通常は1通交付してもらうのに1000円程度かかります。

 

その他交通費など

調停の日には裁判所へ出向く必要がありますので、裁判所までの交通費も必要になります。

調停は、調停を申し立てられた側の住所に近い裁判所で実施されるのが原則ですので、場合によっては交通費が高額になることもあります。

なお、近年は遠方の場合オンラインで実施されることも増えているため、毎回遠方まで出向かずに済み、交通費も抑えられる傾向にあります。

 

③弁護士費用

弁護士に依頼する場合は、弁護士費用がかかります。

弁護士費用の内訳は、法律相談料、着手金、報酬金、日当・実費となっています。

金額の相場については次項で説明しますので、ここではどのような費用なのか、簡単に解説していきます。

項目 内容 支払時期
法律相談料 法律相談の費用 相談時:正式な依頼前
着手金 弁護士に依頼するとき最初に支払われる費用 依頼時
報酬金 結果に応じて支払われる費用 終了時
日当 弁護士が事務所を離れたときの手当 終了時又はその都度
実費 弁護士が事件処理をするうえで必要になった費用 終了時又はその都度

 

法律相談料

通常、弁護士に正式に依頼する前には法律相談が実施されます。

法律相談で弁護士が事情を聴き、その場でアドバイスしたり、見通しを立てたり、方針を説明したりします。

この法律相談にかかる費用が法律相談料となります。

 

着手金

着手金とは、弁護士に依頼したとき最初に支払うお金のことです。

結果の成功・不成功にかかわりなく、弁護士に動いてもらうために必要になるお金です。

 

報酬金

報酬金は、弁護士に依頼した事件が終了したときに支払うお金です。

結果の成功・不成功や成功の度合いに応じて金額が異なってきます(成功報酬)。

 

日当・実費

日当とは、弁護士が調停のために裁判所に出向くなど、事務所を離れたときの手当として支払われる費用のことです。

実費とは、弁護士が事件処理をするうえで必要になった費用のことで、通信費、コピー代、交通費、書類の収集費用、収入印紙代などです。

 

 

離婚調停の費用の相場

自分で進める場合の費用の相場

自分で離婚調停を申し立て進めていく場合、必要になる費用は申立費用と実費で数千円程度です。

申立費用は2650円程度(収入印紙代1200円+郵便切手代1000円程度+夫婦の戸籍謄本の取得費用450円)、実費は多くても数千円程度です。

 

弁護士に支払う費用の相場

弁護士に支払う費用は、依頼する弁護士(法律事務所)や依頼した結果どうなったかにより大きく異なります。

かつては弁護士の費用に関して基準が設けられていましたが(旧弁護士報酬基準)、現在は各事務所が自由に設定できるようになっており、料金体系は事務所によって様々です。

また、弁護士費用のうち特に報酬金は成功の程度に応じた金額となるので、得られた結果が大きければ大きいほど高くなります。

そのため、弁護士費用がいくらになるか一概に言うことはできませんが、大体の相場についてご紹介していきます。

ご自身の場合にかかる弁護士費用の概算をお知りになりたい方は、ご依頼を検討されている法律事務所のホームページなどを確認されるとよいでしょう。

 

法律相談料

法律相談料の相場は30分5000円~1万円程度です。

初回の相談60分間は無料にしている事務所も多くあります。

また、法律相談後に正式に依頼する場合は、法律相談料は請求しないとしていることもあります。

 

着手金

着手金の相場は、20万円~50万円程度です。

着手金については、たとえば「離婚調停を依頼する場合は40万円」という形で金額が固定されていることが多い傾向です。

ただ、獲得したい条件や、事案の難しさなどにより費用が追加されるという設定になっていることもあります。

たとえば、「基本料金40万円とし、財産分与・慰謝料を請求する場合は20万円を追加する」などといった設定です。

 

報酬金

報酬金は事案により大きく異なりますが、相場としては20万円~100万円程度といえるでしょう。

通常、離婚など「できた・できなかった」で切り分けられる事項については、「離婚できた場合は20万円」という形で一律に定められています。

他方、財産分与や慰謝料など、度合いが測れる事項については、たとえば「経済的利益の20%」という形で割合が定められています。得られた経済的利益の金額に応じて異なる割合が定められていることもあります。

経済的利益とは、相手方から受け取る金銭や相手の請求を減額した分などのことです。

具体例

報酬金について、「離婚を達成した場合20万円 + 得られた経済的利益が300万円までは20%・300万円を超える場合は10%」と設定されているとき、それぞれの結果における報酬金は以下のようになります。

結果 報酬金
Aさん 離婚が成立し、財産分与として100万円を受け取った。 20万円 + 20万円(100万円の20%)= 40万円
Bさん 離婚が成立し、財産分与として1000万円を受け取った。 20万円 + 100万円(1000万円の10% = 120万円
Cさん 離婚が成立し、経済的利益は得ていない。 20万円
Dさん 離婚が成立し、相手方からの慰謝料請求について100万円減額した。 20万円 + 20万円(100万円の20%)= 40万円

上記の例では、経済的利益のうち弁護士費用に充てる割合をわかりやすく20%、10%としましたが、実際はどのくらいの割合に設定されていることが多いかを見るには、旧弁護士報酬基準を参照するとよいでしょう。

旧弁護士報酬基準では、経済的利益のうち弁護士費用に充てる割合について、以下のように定められていました。

  • 経済的な利益の額が300万円以下の場合は経済的利益の16%
  • 300万円を超え3000万円以下の場合10% + 18万円
  • 3000万円を超え3億円以下の場合6% + 138万円
  • 3億円を超える場合4% + 738万円

参考:(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準

現在各法律事務所が独自に設定している報酬基準も、旧弁護士報酬基準を踏襲していることが多いため、相場としては上記のようになるといえます。

 

日当・実費

日当の相場は3万円~5万円程度です。

弁護士が出張するのにかかる時間に応じ、半日3万円、1日5万円などと設定されている場合もあります。

また、基本的には日当を請求しないとしつつ、遠方の裁判所に出張する必要がある場合や、所定の回数を超えて出頭する場合にのみ請求するとしている事務所もあります。

実費の金額は事案により様々であり、特に交通費が高額になることもありますが、数万円程度には収まることが多いでしょう。

事務所によっては、通常必要になることが想定されているもの(通信費・コピー代など)について、依頼時にまとめて定額でもらっておく方法をとっている場合もあります。

離婚の弁護士費用の相場について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

離婚調停が長引く場合の弁護士費用

離婚調停は、1回あたり2時間程度実施され、時間内に話がまとまらない場合は2回目、3回目と、話がまとまるまで(または、話がまとまらず終了するまで)回数が重ねられていきます。

離婚調停が長引くと、それだけ弁護士が裁判所へ出向いて対応する回数・時間が多くなるため、追加で料金が発生するというシステムを採用している法律事務所もあります。

たとえば、3回目までは日当はかからない(着手金の中に含まれている)けれども、4回目以降は1回あたり3万円の日当がかかるというような設定になっていることがあります。

そのような場合、予想外に弁護士費用が高額になってしまうこともありますので、料金がどのようになっているか依頼を検討している事務所に確認されることをお勧めします。

 

調停が長引いたときに弁護士費用が高くなるシステムについて

このシステムは、労力(出廷回数)に比例して報酬が高くなるため合理的であるようにも思えます。

しかし、弁護士と依頼者との信頼関係を保つためには好ましくないと考えます。

依頼者としては、できるだけ早く解決して欲しいと考えているはずです。

また、スピーディに解決してこそ真のプロフェッショナルであるといえます。

ところが、このシステムは、長引けば長引くほど弁護士にとってはメリット(報酬が増える)となり、依頼者の利益(早期解決)と反する可能性が高くなります。

依頼を受けた弁護士は早期解決を目指していても、依頼者からするとそうは見えない場合があります。

したがって、このシステムは、解決が長期化した場合の信頼関係を維持するという点ではデメリットが大きいと思われます。

 

 

離婚調停の費用は誰が払う?

離婚調停の費用についてのイラスト

離婚調停の申立てにかかる費用は、申し立てた側(申立人)が支払います。

調停中に必要になる交通費などの実費は各自が支払います。

弁護士費用も、弁護士に依頼した本人それぞれが支払います。

弁護士費用は決して安価ではないため、特に離婚を決意した原因(不倫や暴力など)が相手方にある場合、相手方のせいで負担を強いられたものとして、相手方に支払ってもらいたいと考えるかもしれません。

しかし、弁護士費用を相手方に支払ってもらうことはできないのが原則です。

ただし、調停の中で弁護士費用を負担して欲しいと話を向けることは可能です。

受け入れてもらえないことがほとんどですが、相手方の落ち度(不倫など)が大きい場合や、相手方がすぐに離婚したいと思っている場合などは、取り引きできる場合もあります。

 

離婚調停を申し立てられた場合の弁護士費用はどうなる?

離婚調停を申し立てられた側も、弁護士に依頼して調停に対応していくべき場合があります。

その場合、自分が申し立てたわけでもない離婚調停のために弁護士費用を支出せざるを得ないことに納得できない場合もあるでしょう。

しかし、弁護士費用は弁護士に依頼した本人それぞれが負担するのが原則で、申立人側に請求することはできません。

先に説明したとおり、申立人に対して弁護士費用を負担してほしいと交渉することはできますが、取引できる事情がある場合を除き、負担してもらうのは難しいといえるでしょう。

 

 

離婚調停の費用が負担に感じる場合

離婚調停の費用、特に弁護士費用については、決して安価ではないため負担に感じることも多いと思います。

そこで、費用が負担に感じる場合はどうしたらよいかについて、ご紹介していきます。

弁護士に交渉で解決してもらう

弁護士に離婚調停から依頼するのではなく、まずは交渉を依頼し、交渉で解決してもらうようにするとよいでしょう。

本人同士での話し合いでは行き詰まってしまい、離婚調停を申し立てるしかないと思う状況であっても、弁護士を入れて交渉することにより話が進み解決に至ることがあります。

交渉での解決とは、弁護士が相手方と直接やり取りし、離婚することや離婚の条件について取り決めをし、協議離婚をするものです。

協議離婚とは、裁判所を利用せず、話し合いで離婚条件を決めて離婚届けを提出して離婚するものです。

裁判所を利用せず、弁護士が直接相手方と電話や手紙などで話しを進めるので、離婚調停よりも少ない時間や労力で解決できることが多いです。

その分、交渉を依頼する場合の弁護士費用は、離婚調停を依頼する場合の弁護士費用よりも少額であることが通常です。

ただし、相手方が話し合いを拒否する場合や、譲り合う気が全くないなど、話し合いが難しい状況の場合は、調停に移行せざるを得ません。

その場合でも、一旦交渉を試みたことが余計な出費となるとは限りません。

すなわち、一旦交渉を試みてから調停に移行する場合、調停の着手金全額が改めて必要になるのではなく、調停の着手金と交渉の着手金の差額だけが必要になるとの料金設定にしている事務所も多くあります。

交渉による解決には、費用の他に時間も節約できるというメリットもありますので、話し合いが難しいことが明らかでない場合以外、まずは弁護士に交渉を依頼することをおすすめします。

協議離婚について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

法テラスを利用するメリットとデメリット

弁護士費用の支払いが難しい場合、法テラスを利用することも考えられます。

法テラスとは

法テラスとは、国民のだれもが法的トラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるようすることを目的に国が設置した機関です(正式名称は「日本司法支援センター」といいます。)

法テラスの業務の一つとして、経済的に余裕のない方に対し、無料での法律相談や弁護士費用の立て替えを行うものがあります(「民事法律扶助業務」といいます。)。

これを利用すれば、手元にまとまったお金がない場合でも、離婚調停を弁護士に依頼することができます。

利用方法としては、法テラスの無料相談で相談担当となった弁護士にそのまま依頼する方法や、法テラスを利用できる弁護士(法テラスと契約している弁護士)を自分で探してその弁護士に依頼する方法があります。

 

法テラスを利用するメリット

弁護士費用を立て替えてもらえる

法テラスの民事法律扶助を利用することにより、無料で法律相談することができます。

また、弁護士費用を立て替えてもらえることにより、手元にまとまったお金がない場合でも弁護士に依頼することができます。

立て替えてもらった費用は、月額5000円~1万円程度に分割して返済していくことになります。

ただし、生活保護を受けている方については、返済の猶予や免除をしてもらえることがあります。

ー法テラスを利用しない場合よりも弁護士費用が安くなる

法テラスを利用する場合、弁護士費用は法テラスの基準に基づいて決められることになります。

法テラスの基準は、各法律事務所が独自に定めている料金よりも安くなることが多いです。

そのため、法テラスを利用しない場合よりも、弁護士費用が安くなることが多いといえます。

 

法テラスを利用するデメリット

利用条件を満たしている必要がある

法テラスを利用するためには、資力(収入や資産)が一定の基準以下であることなど、所定の条件を満たしている必要があります。

 

審査に手間と時間がかかる

法テラスを利用するためには、法テラスに資力を証明する書類など提出し、利用条件を満たしているか審査してもらう必要があります。

書類を揃える手間がかかりますし、審査結果が出るまでには時間がかかることもあります。

そのため、たとえば相手方のDVに困っていて一刻も早く動きたいという場合でも、着手金がすぐに支払えないため、弁護士にすぐに対応してもらえないという状況に陥る可能性があります。

 

立て替えてもらった費用は返済する必要がある

法テラスは、弁護士費用を肩代わりしてくれるわけではないので、最終的には自分で負担する必要があります。

月額5000円〜1万円程度の分割で返済していきますが、相手方からお金が支払われた場合などは、一括での返済を求められることになります。

 

依頼できる弁護士の範囲が限られる

法テラスを利用するには、依頼する弁護士が法テラスに勤務する弁護士であるか、法テラスと契約している弁護士である必要があります。

離婚調停を依頼するならば、離婚を専門的に扱っている弁護士を選びたいところですが、法テラスで相談担当となった弁護士が離婚を専門的に扱っているとは限りません。

また、自分で離婚を専門的に扱っている弁護士を探したとしても、その弁護士が法テラスと契約している弁護士でなければ、法テラスを利用して依頼することはできません。

 

【法テラスを利用するメリット・デメリット】

メリット デメリット
  • 弁護士費用を立て替えてもらえる(手元にまとまったお金がなくても弁護士に依頼することができる)
  • 法テラスを利用しない場合よりも弁護士費用が安くなることが多い
  • 利用条件を満たしている必要がある
  • 審査には手間と時間がかかる
  • 立替費用は返済していく必要がある
  • 依頼できる弁護士の範囲が限られる

 

法テラスの離婚調停の費用

法テラスを利用して弁護士に離婚調停を依頼する場合の費用(立替基準)は、実費が2万円、着手金が11万円、報酬金が8万8000円が目安となっていますが、事案により異なります。

着手金については、処理が難しい事案の場合は19万8000円になるまで増額されることがあります。

また、報酬金については、得られた経済的利益に応じて算定されます。

たとえば、現実にお金を受け取った場合は、受け取った金額が3000万円まではその10%、3000万円を超える部分についてはその超える部分の6%が加算されます。

先にご紹介した弁護士費用の相場と比較してみると、着手金が増額されたり、大きな経済的利益が得られたとしても、ほとんどの場合で法テラスを利用した場合の方が費用が安くなることがわかります。

 

離婚調停の弁護士費用が不安な場合のポイント!

弁護士に見積もりをもらう

弁護士に正式に依頼する前に、弁護士に見積もりをもらうとよいでしょう。

トータルでどのくらいの金額が必要になるかを予め把握しておけば、お金の工面の目処も立てやすくなります。

相手方からお金が支払われるか、反対に相手方にお金を支払うことになりそうかという見通しにより準備する金額も変わってきますので、大体の予算感を確認するとよいでしょう。

分割払いの可能性を聞いてみる

通常、着手金の支払いは一括で求められ、全額支払わない限りは弁護士に動いてもらうことができません。

しかし、依頼内容、経済的利益が得られる見通しなどによっては柔軟に対応してもらえる場合もあります。

一括での支払いが厳しい場合は、弁護士に分割払いの可能性を尋ね、相談してみるとよいでしょう。

 

 

費用を払ってでも弁護士に依頼すべき?

離婚調停を自分でやれば数千円で済むけれど、弁護士に依頼すると弁護士費用が負担になる。

それでは、弁護士に依頼せず自分でやったほうがよいのでは?という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。

そこで、ここからは弁護士に依頼するメリット・デメリットについて解説していきます。

 

調停を弁護士に依頼するメリットとデメリット

メリット

弁護士依頼のメリット

書面の作成を任せることができる

弁護士に依頼すれば、調停に必要な書類の作成を全て任せることができます。

離婚調停では、申立書類以外にもいくつか書類の提出が必要になる場面があります。

たとえば、お互いの言い分を整理するために自分の意向をまとめた書面を作成して提出したり、財産を分ける前提として夫婦の財産についての一覧表を作成して提出したり、財産に関する資料(預金通帳のコピーなど)を揃えて出すことが求められる場面があります。

弁護士に依頼した場合は、弁護士がこれらの書類を全て作成し、収集し、整理して提出してくれます。

もちろん、弁護士と打ち合わせをしたり、財産に関する資料を弁護士に渡したりする必要はありますが、自分で全て行うよりも手間と時間を大幅にカットすることができます。

また、書面の内容面についても、法律的な観点から整理された適切なものにすることができるので、調停での話し合いを円滑に進めるのに役立ち、解決までの時間が短縮できることもあります。

 

相手方との窓口になってくれる

調停を依頼する場合に限りませんが、弁護士に依頼すると弁護士が相手方とのやりとりの窓口となってくれます。

そのため、自分で相手方と直接やりとりをする必要がなくなるので、精神的に楽になります。

調停を申し立てれば調停委員が仲介に入ってくれるので、弁護士に依頼しなくても相手方と直接やり取りしなくて済むようにも思えます。

確かに、離婚についての話し合いは調停委員を仲介にして進めることができますが、調停の日以外にも荷物の引き取りや、子どもに関することなど随時連絡が必要になる場合もあり、そのような連絡は自分でやらなければなりません。

そのため、特にDVなどにより別居を開始しており、相手方と接触したくない、居場所も秘匿したいという場合などは、弁護士が窓口になってくれることが大きなメリットといえるでしょう。

また、双方に弁護士がついており、お互いが納得している場合は、次の調停の日までの間に弁護士同士で話を進められることもあり、その結果、調停での解決が早まることもあります。

 

調停に同席してフォローしてくれる

離婚調停を弁護士に依頼した場合、弁護士は代理人として調停に同席します。

調停の席では、調停委員からの質問に答えたり、こちらの意向を伝えたりする必要がありますが、緊張してしまったり、感情的になってしまったりして思うように話せない場合もあります。

そのような場合は、弁護士が適宜フォローしてくれます。

また、弁護士は法律的な問題について整理して調停委員に伝えてくれます。

それにより、話のポイントがはっきりして調停の進行が円滑になり、その結果早く解決できることもあります。

 

離婚に関する問題全体の解決を図ってくれる

離婚調停は話し合いの手続きであり、裁判で裁判官に判断をもらうよりも柔軟な解決ができる点がメリットといえます。

ただし、このメリットを活かすには話し合いをうまくまとめる必要があり、そのためには裁判になったらどうなるかを見通した上で交渉し、落とし所を見極めていくことが重要です。

これは専門知識や経験、交渉の心得のある弁護士に任せないと、なかなか難しいものです。

また、弁護士は、離婚後にどうなるかも考慮し、依頼者の最大限の利益を実現できるように方針・戦略を立て、全体的な解決を図ってくれます。

たとえば、離婚後の子どもの教育費が心配という場合、通常裁判で認められる養育費の金額に私立学校や習い事の月謝・塾代などを考慮した金額を加算してもらい、その代わり相手方が望む早期の離婚に応じる提案を出すなどです。

 

離婚調停と一緒に婚姻費用の請求もしてくれる

すでに相手方と別居している場合、相手方が生活費を支払う立場であるとき(自分よりも収入が多いとき)は、離婚が成立するまでの間、相手方に生活費(婚姻費用)を支払ってもらうことができます。

婚姻費用は、支払って欲しいと請求をした時点からしかもらえないのが原則であるため、別居したら速やかに請求をする必要があります。

弁護士に依頼する場合、婚姻費用を請求できる状態であれば依頼後速やかに請求をしてくれます。

婚姻費用を支払う側にとっては、毎月の支払いは結構な負担になることも多く、この負担を無くしたいがために早く離婚を成立させたいと考えることがあります。

そのため、婚姻費用を支払ってもらうようにすると、生活費を確保できるだけではなく、離婚調停での話し合いもスムーズに進められることがあります。

もちろん、自分で請求することもできますが、婚姻費用の適正額を計算したり、相手方からの反論や支払拒否に対応したりするのは専門家でないと難しい面もあります。

 

状況を説明し適切な判断ができるよう導いてくれる

仲介をしてくれる調停委員は法律の専門家ではありません。

したがって、「相手方の言い分とこちらの言い分の中間値で合意するのがよいのではないか」など少々雑な提案をしてくることもあります。

また、調停委員に相手方の言い分をそのまま伝えられたりすると、調停委員が相手方に味方しているように見えたり、相手方の方が正しいと言われているように感じ戸惑ってしまうこともあるでしょう。

そのような場合、自分1人で対応していると場の雰囲気に流されて「調停委員の言っていることが正しい」と思い込んでしまい、不利な条件を飲んでしまう恐れもあります。

弁護士が同席している場合は、調停委員に誤解を招く言動があったときには指摘してくれ、調停委員から伝えられた相手方の言い分や、調停委員からの提案についても、どういう意味なのか説明してくれます。

それにより、雰囲気に流されたり、誤解をすることなく、適切な判断ができる状態にすることができます。

 

調停条項の意味を説明してくれる

調停で話し合いがまとまった場合、合意内容を箇条書きにした「調停条項」というものが作成されます。

一旦「この調停条項で調停を成立させてよい」としてしまうと、後から覆すことはできなくなります。

そのため、調停条項の意味を正しく理解し、本当に合意したとおりの内容になっているか、慎重にチェックする必要があります。

しかし、調停条項には専門用語が使用されており、意味を正しく理解することが難しいことがあります。

弁護士に依頼している場合は、弁護士が調停条項の意味を説明してくれ、合意したとおりの内容になっているかもチェックしてくれるので安心です。

 

裁判手続きに速やかに移行することができる

離婚調停での話し合いでは解決しなかった場合、次の段階として離婚裁判(離婚訴訟)に進むことになります。

離婚裁判は、離婚調停のような話し合いの手続きではなく、裁判官に判断してもらう手続きです。

裁判手続きは法律に基づいて厳格に進められますので、自分で対応するのは非常に困難であり、調停段階で弁護士に依頼していなかった方も離婚裁判になったら依頼するというケースが多いです。

離婚裁判になって初めて弁護士に依頼する場合、弁護士を探したり、依頼した弁護士にこれまでの経緯について説明する必要があるので、離婚裁判を起こすまでに時間がかかってしまいます。

他方、調停段階から弁護士に依頼しており、引き続きその弁護士に裁判の対応を依頼する場合は、速やかに離婚裁判を起こすことができます。

 

離婚調停終了後もサポートしてくれる

離婚調停で離婚が成立したら調停の手続きは終了し、裁判所の関与はなくなります。

しかしその後も市町村役場への届出や、子どもの氏の変更、社会保険や年金の手続きなど、様々な手続きをする必要があります。

これらの手続きは、基本的に自分で対応する必要がありますが、どこで手続きをすればいいか、どこに問い合わせればよいかなど、弁護士に聞けば教えてくれるでしょう。

また、調停で養育費、財産分与、慰謝料など相手方からお金が支払われる取り決めになった場合、通常実際にお金が支払われるのは調停終了後になるため、支払いがされたかどうかについて裁判所は関与しません。

そのため、弁護士に依頼していないと、自分で支払確認や支払われない場合の対処をしなくてはなりません。

弁護士に依頼している場合は、支払い期限がずっと先に設定されてるなどの事情がない限り、約束どおりの支払いがあるか弁護士が確認してくれることになります。

そして万一支払いがなかった場合には、弁護士にそのまま強制執行のサポートを依頼することも可能です。

 

デメリット

弁護士依頼のデメリット

弁護士費用がかかる

弁護士に依頼した場合は弁護士費用がかかります。

婚姻費用、養育費、財産分与、慰謝料などを受け取る側である場合、相手方から支払われたお金の一部を弁護士費用に充てることができるので、弁護士費用を支払っても自分の手元のお金がマイナスになるケースは少ないといえます。

他方、自分が相手方にお金を支払う側である場合、相手方にお金を支払い、弁護士にも支払うことになります。

弁護士に依頼することにより相手方に支払う金額を減らせることも多いため、依頼しない場合に比べればマイナスの程度が小さくなる場合も多いですが、いずれにしても手元からお金が出ていってしまうので、より負担感が大きくなりがちです。

 

弁護士のに選び方によっては時間や費用が余計にかかってしまいかねない

弁護士といっても、それぞれ取り扱い分野が異なり、依頼した弁護士が離婚問題に詳しくない場合もあります。

離婚問題についてよりよい解決をするためには、離婚に関する専門知識を持っていることに加え、離婚問題特有のノウハウや経験があることも必要になります。

そのため、離婚を専門的に扱っている弁護士以外に依頼すると、満足する結果を得られない可能性があります。

また、離婚は非常にプライベートな問題であり、弁護士との信頼関係はとても大切になってきます。

弁護士に依頼したものの、その弁護士に不信感を持ってしまった場合、相性が合わないと感じた場合は、別の弁護士に依頼し直した方がよいケースもあります。

別の弁護士に依頼し直した場合、元の弁護士に支払った着手金は返金されないのが一般的で、別の弁護士にも改めて着手金を支払うことになりますので、費用が余計にかかってしまいます。

また、新しい弁護士を探す時間、新しい弁護士と打ち合わせをする時間なども必要なので、時間も余計にかかるといえます。

離婚に強い弁護士の選び方については、こちらをご覧ください。

 

【調停を弁護士に依頼するメリットとデメリット】

メリット デメリット
  • 書面の作成を任せることができる
  • 相手方との窓口になってくれる
  • 調停の同席してフォローしてくれる
  • 離婚に関する問題全体の解決を測ってくれる
  • 離婚調停と一緒に婚姻費用の請求もしてくれる
  • 状況を説明し適切な判断ができるよう導いてくれる
  • 調停条項の意味を説明してくれる
  • 裁判手続きに速やかに移行することができる
  • 離婚調停終了後もサポートしてくれる
  • 弁護士費用がかかる
  • 弁護士の選び方によっては時間や費用が余計にかかってしまいかねない

 

 

まとめ

以上、離婚調停にかかる費用と、弁護士に依頼するメリット・デメリットについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

離婚調停にかかる費用のうち、ポイントとなるのは弁護士費用です。

負担に感じることが多いと考えられますが、弁護士に依頼するメリットも多く、よりよい解決のためには依頼することがおすすめです。

費用面が心配な方も、まずは離婚問題に精通した弁護士に相談されることをおすすめします。

離婚に強い弁護士であれば、費用面や今後の方向性について親身になって相談に応じてくれると思います。

この記事が離婚問題にお困りの方にとってお役に立てば幸いです。

 

 

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