親権者指定の調停・審判とは?親権を勝ち取るポイント

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  

親権者指定の調停・審判とは?親権を勝ち取るポイント 親権者指定の調停・審判とは、裁判所で子どもの親権者を定める手続きのことをいいます。

親権に関する法律は改正され、改正後の法律は2026年4月1日から施行されています。

法改正前は、親権者を定めなければ協議離婚をする(離婚届を出す)ことはできませんでした。

しかし、改正後の法律のもとでは、親権者指定の調停(裁判所で話合いをする手続き)又は審判(裁判所に判断を仰ぐ手続き)を申し立てていれば、離婚と同時に親権者を定めなくても協議離婚できるようになりました(離婚届を出した後に親権者を決めることができるようになりました)。

このように、親権者指定の調停・審判は、改正後の法律のもとでは「親権者を定めずに先に離婚したい場合」に利用される手続きとして重要な意味を持つようになりました。

そこで、ここでは協議離婚に伴う親権者指定の調停・審判について、利用場面や手続きの流れ、親権獲得のポイントなどについて解説していきます。

親権者指定の調停・審判とは?

親権者指定の調停・審判とは?

親権者指定の調停・審判とは、裁判所で子どもの親権者を定める手続きのことをいいます。

法改正により、2026年4月1日から親権に関する新制度が施行されています。

2026年4月1日から親権に関する新制度

親権者指定の調停・審判は、新制度の導入に伴い、新たに「親権者を定めずに協議離婚する場合」にも利用される手続きとなりました。

以下では、親権者指定の調停・審判が利用される場面や、法改正のポイント、調停と審判の違いについて解説していきます。

 

親権者指定の調停・審判が利用される場面とは?

親権者指定の調停・審判の手続きは、親権者を定めずに協議離婚をする(離婚届を出す)場合に申立てが必要となる手続きです。

協議離婚とは、夫婦間で離婚に合意し、離婚届を提出することによって離婚を成立させる方法のことをいいます。

協議離婚をする場合は、子どもの親権者についても夫婦で話し合って定める必要があります。

そして、原則としては、親権者を定めてから離婚届を出すものとされています(民法819条1項、765条1項1号)。

つまり、「親権者の定め→離婚届の提出」という順番が原則ということです。

しかし、「離婚の合意はできているけれども、親権者については折り合いがつかない」というケースもあります。

このような場合は、例外的に「親権者指定の調停又は審判の申立てをしていること」を条件に、親権者未定のままでも離婚届を出すことができるものとされています(民法765条1項2号)。

すなわち、

親権者指定の調停・審判の手続き

という順番で進めることができるということです。

参考:民法|e-Gov法令検索

なお、親権者指定の調停・審判は、上記の他にも、離婚後に生まれた子どもや認知された子どもの親権者を定める際にも利用される手続きです(この利用場面は法改正前と同じです)。

ただし、この記事では、協議離婚に伴う親権者指定の調停・審判(= 法改正による新たな利用場面)のみを想定して解説していくこととします。

 

法改正のポイント

改正前 親権者を定めなければ離婚届を出せない(協議離婚できない)
改正後 親権者指定の調停又は審判の申立てをしていれば、親権者を定めなくても離婚届を出せる(協議離婚できる)

以前(法改正前)は、親権者を定めないまま協議離婚をすることは認められていませんでした。

親権者を定めることが離婚届受理の条件とされており、親権者の記載がない離婚届は受理してもらうことはできませんでした。

しかし、そのような制度のもとでは、「早く離婚したい」という気持ちから相手の要求に安易に応じてしまうなど、親権が適切に取り決められないケースも見受けられました。

そこで、改正後の法律では、「親権者指定の調停又は審判の申立て」を条件に、親権者を定めなくても離婚届を出すことができるものとされました。

 

調停と審判の違い

調停 裁判所で話し合いを行い、合意による解決を目指す手続き
審判 裁判官が一定の結論(判断)を下す手続き

 

親権者指定の調停

調停とは、裁判所で調停委員を仲介に話し合いを行い、合意による解決を目指す手続きです。

親権者指定の調停では、どのように親権者を定めるかについて話し合うことになります。

具体的には、父母双方が親権者となるか(共同親権)、それとも父母の一方のみが親権者となるか(単独親権)、単独親権とする場合はどちらが親権者となるかについて、話し合いを行います。

話し合いの結果、合意ができた場合は合意内容(親権者の定め)が「調停調書」という書類に記載され、親権者が確定します。

一方、合意ができない場合は、調停の手続きは終了し、自動的に「審判」という手続きに移行します。

 

親権者指定の審判

審判とは、裁判官が当事者の言い分や提出資料を踏まえ、一定の結論を出す手続きです。

親権者指定の審判では、裁判官が子どもと父母の関係や、父母同士の関係、これまでの監護状況など、様々な事情を踏まえたうえで、親権者を指定することになります。

 

 

親権者指定の調停・審判を利用できる人

親権者指定の調停・審判はこれから離婚する人が対象

協議離婚に伴う親権者指定の調停・審判の申立てができるのは、これから離婚をする人(まだ離婚しておらず、これから離婚届を出す予定の人)です。

また、離婚の方法には、協議離婚の他にも、裁判所の手続きを利用する「調停離婚」や「裁判離婚」があります。

しかし、親権者指定の調停・審判の対象となるのは協議離婚をする人だけです。

調停離婚や裁判離婚の場合は、離婚の手続き(離婚調停・離婚裁判)の中で親権者を定めることになるため、親権者未定のまま離婚成立となることはありません。

なお、離婚調停で親権を定める場合の手続きについては、以下のページをご覧ください。

 

離婚後に親権者を変更したい場合

離婚後に親権者を変更したい場合は、親権者指定の調停・審判ではなく、「親権者変更の調停・審判」という別の手続きを申し立てる必要があります。

例えば、離婚するときに「親権者を母親と定める」としたケースで、離婚後に父親が「親権者を父母と定める」と変更したいと考えたとします。

このような場合は、親権者指定の調停・審判ではなく、「親権者変更の調停・審判」を申し立てることになります。

 

 

親権者指定の調停・審判のメリットとデメリット

親権者指定の調停・審判を申し立てるメリットとデメリットは、次のとおりです。

メリット
  • 早期に離婚を成立させることができる
  • 落ち着いて親権者を決めることができる
デメリット
  • 親権者未定の期間は不安定な状態に置かれる

 

親権者指定の調停・審判のメリット

早期に離婚を成立させることができる

親権者指定の調停・審判を申し立てれば、親権者未定のままでも離婚届を出すことができます。

そのため、「親権が決まらないから離婚できない」「親権を決めるために離婚調停や離婚裁判をしなければならない」という状況を避けることができ、早期に離婚を成立させることが可能となります。

 

落ち着いて親権者を決めることができる

親権者指定の調停・審判を申し立てれば、離婚と親権者の定めのタイミングをずらすことができます。

先に親権以外の問題を解決することができれば、時間的・精神的な余裕が生まれるため、親権について落ち着いて検討することができる環境を整えることができます。

その結果、適切に親権者を定めることができ、子どもの利益につながります。

 

親権者指定の調停・審判のデメリット

親権者指定の調停・審判を利用する場合は、離婚成立後から親権者指定がされるまでの期間、親権者未定のままとなります。

未定期間においては、離婚前と同様に父母が共同で親権者となるものと考えられます。

しかし、親権者について協議がまとまらない状況の中では、父母の協力や連携が上手くいかず、父母間で対立が生じる可能性があります。

その結果、子どもが不安定な状況に置かれてしまうことが懸念されます。

 

 

親権者指定の調停・審判の注意点

離婚前に申し立てる必要がある

親権者指定の調停・審判は、「離婚届を出す前」に申し立てる必要があります。

親権者指定の調停・審判の申立てがされていない場合は、親権者未定のままでは離婚届を受理してもらうことはできません。

 

申立て後は速やかに離婚届を提出する必要がある

親権者指定の調停・審判の申立て後は、速やかに離婚届を出し、裁判所に「離婚」の記載がある戸籍謄本(全部事項証明書)を提出する必要があります。

審判の場合は、裁判所が相当の期間を定めて離婚したことを証する文書(戸籍謄本など)の提出を命じ、期間内に提出がない場合は申立てを却下(受け付けないこと)できるとされています(家事事件手続法169条の3第1項2項)。

参考:家事事件手続法|e-Gov法令検索

調停の場合は、このような法律上の規定はありません。

しかし、一定期間が経過しても「離婚」の記載がある戸籍謄本が提出されない場合(離婚届が出されない場合)は、裁判所の判断で手続き終了とされる可能性があります。

そのため、親権者指定の調停・審判は協議離婚の準備が整い、「あとは親権者を決めるだけ」という状況になってから申し立てるべきでしょう。

 

取り下げが制限される

取り下げとは、申立人(手続きを申立てをした人)の意思で調停や審判の手続きを「なかったことにする」ことをいいます。

他の手続き(離婚調停など)では、基本的には申立人がいつでも自由に取り下げを行うことができます。

しかし、親権者指定の調停・審判は、家庭裁判所の許可を得なければ取り下げることができないものとされています(家事事件手続法169条の2、273条3項)。

参考:家事事件手続法|e-Gov法令検索

自由な取り下げを認めると、離婚後に親権者が未定のままとなり、子どもの利益が害される恐れがあるからです。

もっとも、離婚前(離婚届を出す前)の段階であれば、上記のような恐れはないため、基本的には取り下げできる(許可される)と考えられます。

一方、離婚後の場合は、子どもが成人したなどの事情がない限り、取り下げができない(許可されない)可能性が高いと考えられます。

 

 

親権者指定の調停・審判の利用を検討すべきケース

次のようなケースでは、親権者指定の調停・審判の利用が考えられます。

  • 親権以外の問題は解決済みで、早期に離婚を成立させたいケース
  • 親権者について落ち着いて考えたいケース

親権者指定の調停・審判を利用すれば、親権者が決まるのを待たずに離婚を成立させることができます。

そのため、親権以外の問題は解決済みで、再婚を予定している場合など、早く離婚を成立させたいケースでは、この制度を利用するメリットがあります。

また、先に離婚を成立させれば精神的・時間的余裕ができ、夫婦の問題にとらわれずに「子どもにとって何が一番いいか」を検討しやすくなります。

そのため、落ち着いて親権者について考えたいという場合も、この制度を利用することが考えられます。

 

 

親権者指定の調停・審判の利用を避けるべきケース

親権者以外の問題が解決していないケースでは、親権者指定の調停・審判の利用は避けた方がよいでしょう。

親権者指定の調停・審判は、親権者以外の条件(財産分与や慰謝料など)についても協議がまとまり、「あとは親権者を決めるだけ」という状態の場合に申し立てを検討するべきです。

親権者以外の条件についても折り合いがつかない場合は、親権者指定の手続きではなく、離婚調停を利用して包括的な解決を図るべきでしょう。

 

 

親権者指定の調停の手続き

親権者指定の調停の流れ

親権者指定の調停は、次のような流れで進められます。

親権者指定の調停の流れ

 

調停の申立て~初回期日の流れ

親権者指定の調停の申立ては、「離婚届を出す前」に行います。

申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所となります。

申立て後は、速やかに離婚届を提出し、家庭裁判所に「離婚」の記載のある戸籍謄本(全部事項証明書)を提出します。

その後、裁判所によって期日(調停を実施する日)が指定され、調停での話し合いが開始されます。

期日の所要時間は1回当たり2時間程度です。

時間内に話がまとまらなければ次回(約1か月後)に持ち越しとなり、合意成立(又は不成立)まで期日が重ねられていきます。

 

調査官調査の実施

調査官調査とは、家庭の問題に関する専門知識を有する「家庭裁判所調査官」によって行われる、子どもの生活状況などについての調査のことをいいます。

調査官調査は、必ず実施されるとは限らず、裁判官が必要と判断した場合にだけ、裁判官の命令に基づいて実施されます。

ただ、親権者指定の手続きにおいては子どもの生活状況等が重要な考慮要素となるため、多くのケースで実施されることになるでしょう。

調査官調査は、期日の中ではなく、期日と期日の間の期間に、調査官が当事者や子どもと面談したり、家庭訪問をしたりする形で実施されます。

調査の結果は「調査報告書」という書類にまとめられ、それ以降の期日では、この調査報告書の内容を踏まえて話し合いが行われることになります。

 

調停終了までの流れ

話し合いの結果、合意がまとまったら「調停成立」となり、裁判所により調停調書(合意内容を記載した書類)が作成されます。

これにより、親権者が確定します。

一方、合意がまとまらない場合は、調停は「不成立」として親権者が確定しないまま終了し、その後は自動的に「審判」に移行します。

 

親権者指定の調停で聞かれること

親権者指定の調停では、概ね次のような事項が聞かれるものと考えられます。

  • これまでの養育状況
  • 現在の子どもの生活状況
  • 父母と子の関係(同居時・別居後の関わり方など)
  • 父母同士の関係(DV・モラハラの有無に関する認識、教育方針を巡る対立状況など)
  • 父母双方の養育方針や家庭環境等
  • 子どもの意向(年齢や発達の程度に応じて)
  • 親権者の定めの協議が調わなかった理由など

 

不成立になったらどうなる?

調停が不成立となったら、調停の手続きは親権者未定のまま終了します。

その後、自動的に審判に移行し、裁判官によって親権者が指定されることになります。

 

親権者指定の調停の必要書類

親権者指定の調停の必要書類は、次の通りです。

 

申立てに必要な書類

  • 申立書及びその写し1通
  • 標準的な申立添付書類
    ・申立人・相手方・対象となる子どもの戸籍謄本(全部事項証明書)・子についての事情説明書・進行に関する照会回答書
  • その他の書類
    ・送達場所等届出書

※申立書類の書式は、家庭裁判所の窓口やホームページで入手することができます。

参考:親権者指定の申立書|裁判所HP

 

離婚後に速やかに提出する書類

  • 「離婚」の記載がある戸籍謄本(全部事項証明書)

 

親権者指定の調停にかかる期間

親権者指定の調停の申立てから終了までは、2か月~6か月程度かかると予想されます。

調停は、申立てから初回期日までが約1か月程度かかり、その後は1か月~1か月半くらいの間隔で期日が繰り返されることになります。

離婚調停(親権以外の条件についても話し合う調停)の場合は、3〜7回くらい期日が行われ、終了まで6か月~1年程度かかるケースが多い傾向にあります。

一方、親権者指定の調停は、親権者のみの話し合いであることに加え、子どもの利益のために早期に親権者を確定する必要性もあるため、比較的短い期間で終了すると思われます。

ただ、調査官調査に時間がかかることもあるため、半年程度を要するケースもあると考えられます。

もっとも、協議離婚に伴う親権者指定の調停は、新制度(2026年4月1日~)のもとスタートした手続きであるため、実際の傾向については今後の運用を注視する必要があります。

 

親権者指定の調停にかかる費用

親権者指定の調停にかかる費用は、次のとおりです。

申立てに必要な費用 申立て手数料
(申立書に収入印紙を貼付)
1200円(子ども1人につき)
連絡用の郵便切手 1000円程度
必要書類の取得費用 戸籍謄本 1通450円(窓口取得の場合)
調停調書の交付手数料など 1000円程度
弁護士費用
(弁護士に依頼する場合のみ)
着手金:依頼時に支払うお金 20万円~50万円程度
報酬金:終了時に支払うお金 30万円~50万円程度

 

 

親権者指定の審判の手続き

親権者指定の審判の流れ

親権者指定の審判の流れ

調停が不成立になった場合は、自動的に審判の手続きに移行するため、改めて申立てを行う必要はありません。

審判の手続きでは、裁判官が当事者の提出資料(調停段階で出したものも含む)や調査官調査の結果(※)を踏まえて審理を行います。

また、審判に当たっては、当事者の言い分の聴取(陳述聴取)や、子ども(15歳以上の場合は必須)の意見の聴取が実施されます。

審理が終結したら、審判が出され、審判書(審判の内容が記載された正式な書類)が当事者双方に送達(裁判所から正式に書類を届けること)がされます。

審判の内容に納得がいかない場合は、2週間以内に不服申立て(即時抗告といいます。)ができます。

不服申立てがされずに2週間が経過すると、審判は確定し、法的効力が生じます。

 

※調査官調査について

調停段階で調査官調査が行われているケースでは、審判段階では改めて調査官調査は実施されないのが通常です。

ただし、子どもの生活状況が大きく変わっている場合など、事情によっては審判段階でも調査官調査が実施されることもあります。

なお、調査報告書は重要な判断材料となります。

調査報告書の内容と大きく異なる結論(審判)が出ることはほとんどありません。

 

親権者指定の審判の必要書類

調停から審判に移行する場合は、追加で申立書類を出す必要はありません。

一方、調停を経ずに審判を申し立てる場合は、調停の申立時と同様の書類が必要となります。

 

審判結果に不服の場合の対処法

審判の結果に不服がある場合は、「即時抗告」という不服申し立て(高等裁判所で再審理してもらう手続き)をすることができます。

即時抗告をする場合は、審判書の送達を受けた日の翌日から2週間以内に、原裁判所(審判をした家庭裁判所)に「抗告状」を提出して申立てを行います。

 

親権者と指定された後の手続き

親権者指定の審判が確定した場合は、裁判所から市区町村に連絡がいくため、当事者が特に届出をしなくても、子どもの戸籍に最新の親権者情報が載ることになります。

そのため、親権者指定に関する届出等は必要ありません。

その他、親権者の指定に伴い必要になることがある手続きとしては、次のようなものが考えられます。

必要な手続き 状況
子の氏の変更許可 子どもを自分の戸籍に入れる場合
(家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立て、その後に市区町村役場にて戸籍の異動を行う)
養育費請求調停・審判 養育費の金額等について、父母間での協議がまとまらない場合
親権行使者の指定 共同親権と指定された場合で、指定後に子どもの進学先・住む場所・財産管理などに関して対立が生じた場合

 

 

調停と審判はどちらを申し立てるべき?

原則としては、まずは調停を申し立てるべきとされています。

家族に関する問題については、いきなり裁判官に白黒つけてもらうのではなく、まずは話し合いによる解決を図ることが望ましいと考えられているためです。

ただし、親権者指定については、調停前置主義(まずは調停をしなければならないというルール)は採られていません。

そのため、調停を経ず、いきなり審判を申し立てることも可能です。

しかし、審判を申し立てても、裁判所が話し合いによる解決の余地があると判断した場合は、まずは調停の手続きが実施されることになります(「付調停(ふちょうてい)」といいます。)。

この点、DVや虐待が明らかに認められる場合は、過去にも親権を巡り大きな対立が生じている場合(裁判所で親権行使者の指定や監護者指定の手続きを行っている場合など)は、話し合いの余地なしとされる可能性があります。

一方、このような事情がない場合は、基本的には付調停にされるものと考えられます。

 

 

親権を獲得するためのポイント

法改正後の判断枠組みについて

親権を獲得するためのポイントを押さえる前提として、法改正後における親権の決め方や判断枠組みについて、簡単に解説しておきます。

離婚後の親権については、以前は必ず単独親権(父母の一方が単独で親権者となる)とされていました。

しかし、法改正により、2026年4月1日からは、離婚後も共同親権(父母の双方が共同で親権者となる)を選択することができるようになりました。

単独親権とするか、共同親権にするかは父母の話し合いで決め、話し合いで決まらない場合には裁判所が定めるものとされています。

裁判所が定める場合は、次のような枠組みで判断されます。

【判断枠組み】

  • 共同親権とすると子どもの利益を害するとき(例:虐待やDVがあるケース)

①必ず単独親権とする

  • ①の事情がない場合

「父母と子の関係」「父と母の関係」「その他一切の事情」を子どもの利益の観点から総合的に考慮して、共同親権と単独親権のいずれを定めるか判断する

 

単独親権を獲得するポイント

単独親権を獲得したい場合、共同親権とすると子どもの利益を害する事情があることを示すことがポイントとなります。

共同親権とすると子どもの利益を害する事情の具体例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 過去に相手が子どもを虐待していた
  • 相手から暴力等(身体的DVだけでなく、精神的・経済的・性的DVも含む)を受けており、今後も受ける恐れがある

親権者指定の調停・審判では、期日や調査官調査において、これらの事情を説明する必要があります。

また、これらの事実を裏付ける証拠(診断書、暴力等の録音・録画、ケガの写真、児童相談所の相談記録など)も準備しておくようにしましょう。

なお、双方が単独親権を希望して争っている場合は、「どちらが親権者にふさわしいか」が判断されることになります。

その際には、どちらが主たる監護者か(主として子どもの世話を担当しているか)が重要な考慮要素となります。

そのため、監護の継続性を維持すること(子どもと離れないようにすること)が重要なポイントとなります。

 

ワンポイント:子どもの連れ去りには注意

筆者の経験上、親権争いで有利になりたいからといって、相手に無断で子どもを連れ去る行為は、裁判官から不適切な監護者としてマイナス評価を受けるリスクが極めて高く、その後のリカバリーが困難な事例も散見されます。

 

必ず事前に専門の弁護士に相談することを推奨いたします。

 

共同親権を獲得するポイント

共同親権を獲得したい場合とは、具体的には、「相手は単独親権を希望しているが、自分は共同親権としたい」という状況だと考えられます。

典型的には、母親(主として監護をしている側)は母親の単独親権とすることを希望しており、父親は共同親権とすることを希望しているというケースです。

このような場合は、なるべく話し合い(協議又は調停)での解決を目指すことがポイントになると考えます。

すなわち、母親を説得し、共同親権とすることに同意を得ることを目指すというのが現実的な手段となると考えられます。

なぜなら、審判になった場合、母親側からは、「父親から虐待やDVがありました」「教育方針が大きく異なるので協力関係を構築することができません」といった主張(真実であるかはさておき)が出されることが予想されます。

そうなった場合、事実の有無や評価を争うことは可能であるものの、父母間でそのような争いが生じていること自体、協力関係が構築できない事情として考慮されてしまう可能性があります。

そうすると、共同して親権を行使することが難しいと判断され、単独親権とされてしまう恐れがあります。

単独親権となる場合は、これまで主として監護をしてきた側が有利となるため、上記のようなケースでは父親は不利な状況となります。

単独親権か共同親権かで争いになっているケースでは、以上のようなリスクが考えられますので、慎重に進める必要があります。

お早めに離婚問題に精通した弁護士へ相談し、見通しや方針について具体的にアドバイスしてもらうことをお勧めします。

 

 

親権者指定の調停についてのQ&A

調停を欠席したらまずい?

無断で欠席するのは避けるべきです。

調停は話し合いの手続きであるため、一方当事者が欠席すると手続きを進めることができません。

次回期日も欠席が見込まれる場合は、そのまま不成立となって審判に移行する可能性もあります。

そうすると、話し合いによる柔軟な解決をするチャンスを失うことになります。

また、法律上は、正当な理由なく調停に出席しない場合は5万円以下の過料に処するとされています(家事事件手続法258条1項、51条3項)。

参考:家事事件手続法|e-Gov法令検索

やむを得ずに欠席する場合は、必ず裁判所に連絡を入れましょう。

 

親権争いは父親が不利?

状況によります。

法改正前は、離婚後は必ず単独親権とされていたため、多くのケースでは、監護実績のある母親が有利で、監護実績の乏しい父親は不利でした。

しかし、法改正により、離婚後も共同親権を選択することができるようになったため、監護実績の乏しい父親でも共同親権者として親権を持つことが可能になりました。

もっとも、母親が単独親権を強く希望する場合は、その理由などにもよりますが、「共同で親権を行使することが難しい」として、単独親権とすべきだと判断されてしまう可能性があります。

そのような場合は、法改正前と同様に父親は不利になることが多いです。

 

 

まとめ

以上、協議離婚に伴う親権者指定の調停・審判について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

法改正により、親権者指定の調停・審判を申し立てれば、親権者未定のままでも離婚届を出すことができるようになりました。

しかし、利用をすべきかどうかは、親権者以外の条件に関する協議の状況や、夫婦と子どもの生活状況など、様々な事情を考慮したうえで検討をする必要があります。

そのため、親権の問題でお困りの場合は、まずは離婚問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

自分のケースではどのような方法をとるのが最適かについて、具体的な事情に基づいたアドバイスをもらうようにするとよいでしょう。

当事務所には、離婚問題に精通した弁護士のみで構成された専門チームがあり、離婚問題に悩む方々を強力にサポートしています。

LINEや電話での相談も実施しており、全国対応が可能です。

親権の問題でお困りの方はお気軽にご相談ください。

あわせて読みたい
ご相談の流れ

 

 

#親権

親権に関する事例

なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?   

続きを読む