養育費はいつまで請求できる?離婚に強い弁護士がポイントを解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


POINT!

養育費を請求できるのは、基本的に子どもが20歳になるまでです。

ただし、大学に進学する場合、子どもに持病や障害がある場合などには、20歳を過ぎても養育費を請求できる場合があります。

両親が再婚した場合や、子どもが養子縁組をした場合にも、養育費の支払期間に影響が出ることがあります。

離婚問題に直面されている方の中には、子どもの養育費はいくらになるのか、いつまで支払があるのか、といったことについて、疑問や不安のある方もおられるでしょう。

子どもの大学進学後も養育費は続くのか、親の再婚や子どもの養子縁組があると養育費はどうなるのか、といったことについて頭を悩ませている方もおられるかもしれません。

養育費は、離婚後の親と子どものそれぞれの生活や子どもの進学などに影響を及ぼす大切なものですので、きちんとした知識を得ておくことが重要です。

今回は、養育費をいつまで請求できるのかについて解説していきます。

なお、多くの場合、養育費の支払い義務があるのは夫であり、子どもを養育して養育費を受け取るのは妻なので、以下では、便宜上、養育費の支払義務者を「夫」「父親」、子どもを養育して養育費を受け取る側を「妻」「母親」などということがあります。

 

 

養育費とは

養育費は、子どもが経済的・社会的に独立できるようになるまでにかかる生活費、医療費、教育費などの費用です。

離婚する夫婦の間に経済的・社会的に自立できない未成熟の子がいる場合、その子の養育費は、子どもを直接養育しない親(非監護親)も負担しなければなりません(民法766条1項)。

養育費について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

養育費を請求できる期間

養育費の支払い義務はいつから?

養育費の支払い義務が発生するのは、養育費を請求したことが客観的に明らかとなったときと考えられます。

具体的には以下のような場合です。

  • 養育費を内容証明郵便によって請求した(弁護士名が望ましい)
  • 調停を申し立てた

養育費の支払い義務が問題となってくるのは、夫と妻の財布が別になり、生計が分かれてしまってからです。

代表的には、夫婦が別居に至った場合です。

夫婦仲が悪化して別居に至った場合、通常はお互い別々に生活費を負担することとなり、夫から生活費が支払われることもなくなるからです。

同居中であっても、家庭内別居のような状態で、生活費の多くを別々に支払っている場合(必ずしも全てでなくても可)や、夫が生活費を家に入れないような場合には、婚姻費用※(養育費を含む)を請求することができます。

※婚姻費用(こんいんひよう)とは、離婚が成立するまでの生活費のことをいいます。養育費と似ていますが、養育費は離婚「後」の子供のためのお金です。いずれも生活に関わる重要なお金ですので、離婚が成立する前の方は、婚姻費用についてもおさえるようにしてください。

 

ただ、養育費の請求をせずに過ごしてしまった場合、無制限に過去にさかのぼって請求できるわけではありません。

養育費は扶養義務に基づくものですが、養育費(離婚前なら婚姻費用)が請求されない間は、支払を受けるべき側(妻や子)が扶養を要する状態だったか判然としない、といった理由で、請求があるまでは養育費の支払い義務は発生しない、とされているのが、裁判実務の実情です。

請求がある前の養育費の支払い義務を認めてしまうと、支払い義務者(夫)が、自分に養育費の支払い義務がある(=妻や子が扶養を要する状態にある)と知らない間に、養育費の未払が増えていってしまう、という不都合がある点も、考慮されているようです。

こうした理由から、調停や審判では、原則として、養育費調停申立てをした月以降の養育費が認められる傾向です。

なお、離婚調停を申し立てただけでは養育費を請求したことにならないので、注意が必要です。

また、養育費を請求したことが客観的に明らかである場合(例えば弁護士に依頼し、内容証明郵便によって請求していた場合)には、その請求をした月の分から養育費が認められる傾向です。

妻(権利者側)は、なるべく早く、内容証明郵便又は調停の申立てによって、養育費を請求するようにしましょう。

内容証明郵便で養育費を請求する際は、だれが見ても(後に裁判所で見られることになっても)、養育費を請求していることが明らかとなるように、はっきりと、「養育費を支払ってください。」などと書くようにしてください。

なお、原則としては請求が必要なのですが、ケースごとの状況にかんがみて、養育費の請求が遅れた場合でも請求時以前に遡って養育費を支払わせた裁判例もないわけではありません。

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養育費の支払い通知書

夫(養育費を支払う側)は、妻から養育費の請求や調停の申立てを受けたら、その月から養育費の支払義務が発生し、後に未払分について一括での支払を求められることにもなり得るので、注意しましょう。

また、裁判例の中には、請求時以前に遡って養育費の支払を命じたものもあります。

請求時以前の養育費を支払わなければならないか否かはケースバイケースであり、請求前の養育費を支払わされる可能性はゼロである、と言い切ることはできませんので、ご注意ください。

以上のとおり、裁判所は過去の養育費の請求に対しては厳しいところがありますので、過去の養育費を支払ってもらいたい場合には、まずは当事者間で話し合う方がよいでしょう。

その際のポイントについては、こちらをご覧ください。

養育費を請求する際、内容証明郵便をどのように書けば「養育費の請求があった」と認めてもらえるか、調停の申立てをどのように準備したらよいか、交渉する場合にはどのようにしたらよいか、といった点については、一度専門家である弁護士に相談した方が安心です。

養育費の請求を受けた方も、請求額が妥当なものか、いつから支払に応じなければならないかなどについて、離婚問題に詳しい弁護士であればきちんと回答してくれるでしょう。

 

養育費の支払い義務がなくなるのはいつ?

  • 養育費の支払は、多くの場合、子どもが20歳になるまで
  • 大学に進学する場合や、持病や障害があって自立できない場合には、20歳以降も養育費の支払い義務が続くことも
  • 逆に、子どもが早くに就職するなどして自立した場合は、養育費の支払い義務は、子どもが20歳になるより前に終了

父母の再婚や子どもの養子縁組があった場合については、次の項で解説します。

養育費は、子どもが独り立ちできるようになるまで支払わねばなりません。

多くの場合、子どもが20歳になるまで支払は続きます。

法律改正の影響〜成人年齢の18歳への引き下げ〜

2022年(令和4年)4月1日に改正民法が施行され、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。

これにより、今後は18歳で成人することになりました。

しかし、「この改正に伴って養育費の支払も18歳まで」、とされるわけではありません。

法律上の成人年齢が引き下げられても社会の状況がいきなり変わるわけではありません。

そのため、養育費の支払は、これまでと同様、20歳になるまでとすることが多いようです。

 

子供が大学に進学したらどうなるの?

大学に進学した場合、20歳になったとしても、卒業までは経済的に自立することが難しく、親の支援が必要となります。

近年は大学進学率も上がっており、子どもが大学に進学することも多くなっています。

そこで、父親が子どもの大学進学を認めていた場合や、両親の学歴(大学を卒業している)、経済的状況などから子どもの大学進学後も養育費の支払を継続させるのが妥当な場合、大学卒業まで、又は一般的に大学を卒業する22歳の3月まで、養育費の支払期間が延長されることがあります。

 

子供に障害がある場合はどうなるの?

子どもの心身に障害や持病があり、20歳を過ぎても自立することができないこともあります。

その場合、20歳を過ぎても引き続き、養育費の支払義務を負うことになり得ます。

 

子どもが早くに自立した場合は?

子どもが20歳になる前に就職し、経済的に自立できた場合には、未成熟子ではなくなり、養育費の支払義務はなくなります。

ただ、進学をしなかったとしても、就職していなかったり、就職していても収入が不十分だったり、アルバイトのみで収入が不安定だったりすると、事情にもよりますが、まだ経済的に自立できていない、として、養育費の支払義務が継続することになると考えられます。

子どもが進学しなかったからといって、「もう自立した」として一方的に養育費を打ち切ることはせず、相手方と相談して合意するようにし、書面(双方の署名押印入り)にも残しましょう。

合意ができない場合は、離婚に詳しい弁護士に相談するなどして変更するようにしましょう。

養育費の支払期間
原則 20歳になるまで
20歳を過ぎても養育費を支払うべき場合
  • 大学に進学する場合(状況による)
  • 持病や障害のために自立できない場合
20歳より前に養育費支払が終了する場合 子どもが早くに就職して自立した場合

 

 

再婚しても養育費を支払う必要がある?

離婚後に両親が再婚した場合、養育費の支払義務はどうなるでしょう?

母親が再婚した場合と、父親が再婚した場合に分けて解説します。

母親が再婚したケース

子どもを養育している母親が再婚しただけでは、養育費の減額は、基本的にはありません。

しかし、子どもが再婚相手と養子縁組すると、養育費が減額又は免除されることが多いです。

減額又は免除するには、話し合って合意するか、調停・審判をする必要があります。

母親が再婚しても、それだけでは、再婚相手は配偶者(母)の子どもに対する扶養義務は負いません。

そのため、養育費の減額も、基本的にはありません。

子供を養子縁組したときは養育費をもらえなくなる可能性も

しかし、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合は、養親(再婚相手)が一次的な扶養義務を負うことになります(民法818条2項、820条)。

そのため、再婚相手の収入などにもよりますが、実父の養育費は減額又は免除されることが多いです。

ただ、実の父親と子どもとの親子関係は、養子縁組後も存続します。

そのため、子の養子縁組により当然に養育費の支払義務が消滅するわけではありません。

ですから、父親は、話し合うことなく一方的に養育費を不払(又は減額)とできるわけではありません。

一方的に不払とすると、状況によっては、後に支払わなかった分の養育費をまとめて請求されたり、差押えなどの強制執行をされてしまいかねません。

母親側と話し合い、合意して、養育費を変更しましょう。

そして、合意ができた場合は、双方が署名押印した書面を作成しておきましょう。

話し合っても合意できない場合は、裁判所の調停・審判も利用できます。

いずれにせよ、母親の再婚・子どもの養子縁組があったケースは算定表には盛り込まれておらず、新たな養育費をいくらにするかは、専門家でないと適切に計算することが難しいです。

一度、離婚問題に精通した弁護士に相談することをお勧めします。

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ご相談の流れ

母親の再婚後の養育費、養育費減額の申し入れの方法などについて、以下のサイトもご参照ください。

 

父親が再婚したケース

POINT!

父親が再婚した場合、新たに扶養する人数が増え、養育費が減額される可能性があります。

ただし、減額するには、話し合って合意するか、調停・審判をする必要があります。

父親が再婚すると、父親に新たな家族ができ、扶養する人数が増える場合があります。

そうなると、事情の変更があったとして、養育費が減額される可能性があります。

ただし、母親の再婚があった場合と同様、この場合も養育費を勝手に減額しない方がいいでしょう。

相手方と話し合い、もし話がまとまらない場合には裁判所の調停・審判も利用して、新たな取り決めをするようにしましょう。

相手方と合意ができた場合は、双方の署名押印入りの書面を作成しておきましょう。

父親の再婚も、母親の再婚と同様、算定表には盛り込まれておらず、専門家でないと適切に養育費を計算することが難しいです。

やはり一度、離婚問題に精通した弁護士に相談することをお勧めします。

養育費を払いながら再婚した場合の養育費の計算方法についての詳細は、こちらをご参照ください。

再婚や養子縁組があったときの養育費について、表にまとめると以下のようになります。

母親が再婚 子どもが誰かと養子縁組 父親が再婚
子は養子縁組しない。
→養育費変わらず
養親が一次的な扶養義務を負う。
→養育費の減額又は免除
*話し合いが必要
再婚に伴い扶養する者が増えた場合
→養育費の減額
*話し合いが必要
子が再婚相手と養子縁組
→減額又は免除
*話し合いが必要

離婚協議書等での再婚・養子縁組の通知条項

以上のように、離婚後の再婚・養子縁組は養育費の額に影響を与える事情となります。

ただ、離婚後に相手方の再婚や子どもの養子縁組について知るには、相手方から情報を得る必要があります。

そのため、未成熟の子どもがいる場合で、相手方が再婚したり、子の養子縁組がなされたりする可能性があるときには、離婚協議書や調停条項に、以下の例のように、再婚や養子縁組があったときには速やかに通知する旨の条項を設ける場合があります。

Aが再婚した場合又は子B、Cのうち1人以上が第三者と養子縁組をした場合、Aは、Dに対し、○○の方法により速やかに知らせることを約束する。

なお、このような条項がなくとも、再婚したとき、養子縁組の有無に関係なく、養育費を支払っている元夫にも連絡される方もいらっしゃいます。

連絡せず、「再婚したことを隠して養育費を多く支払わせていた」と思われると、感情的にこじれ、養育費の支払にも影響が出る場合があるので、特に支障がなければ、再婚したことを元夫に伝えることを検討してもよいでしょう。

 

 

養育費の支払い期間についてのポイント

母親側が知っておきたいポイント

養育費の相場を理解する

養育費の相場は、裁判所が公表している標準算定方式・算定表(以下「算定表」といいます。)でわかるようになっています。

当事者間で話し合いがつかず、裁判所で調停などをすることになった場合、裁判所は、この算定表を基準に養育費の金額を決めることが多いです。

そのため、夫婦間で話し合う段階でも、最終的な結論を見越して、算定表の金額を参考に養育費を決めていくことが多くなっています。

離婚に関する交渉を弁護士に依頼した場合でも、弁護士は、算定表をもとに養育費の適正額を割り出し、その金額をもとに交渉を進めるのが通常です。

このように、算定表は、養育費算定の目安となっているため、養育費について考えるに当たって、とても重要なものとなっています。

養育費について話し合う際には、算定表の使い方、例外的に増減額される場合などについてある程度の知識を持っておくことが大切です。

算定表について、詳しくはこちらをご覧ください。

進学、習い事などについての合意の証拠を残しておく

養育費を決める際、子どもの進学や習い事について、父親の意向を確認することや、話し合って自分や子どもの方針について父親に了承してもらうことは、非常に大切です。

父親の合意が得られていれば、習い事や進学にかかる費用を養育費に上乗せしてもらうこともできる場合があります。

また、上でもご説明したとおり、大学進学について合意が得られていれば、養育費の支払期間を20歳以降まで延ばすことも可能です。

父親と話し合い、進学や習い事について了解を得ることができたら、その証拠(メールやLINEの画面の写真、録音、書面(父親の署名入り)など)を残しておきましょう。

後々養育費について問題が発生し、父親が「進学費用や習い事費用を出さない」、と言い出した時、当初は了承していたことを立証する必要が生じる場合があります。

その時、父親が当初は了承していたことの証拠が何もないと、養育費の上乗せなどをもらえなくなってしまう可能性があります。

進学などに関する決め事は、大切なことですので、何らかの形で証拠に残すようにしてください。

養育費についての合意内容は弁護士に書面で作成してもらう

養育費に関する合意ができたら、内容を双方の署名押印入りの書面(離婚協議書など)に残しておくべきです。

養育費は、長い間続けて支払われるものですし、ケースによって、毎月払いか、一括払いか、進学時などの臨時費用はどうするか、子どもが複数いる場合なら子ども一人一人に対する養育費の金額はいくらとするか、など様々な事情に対応しなければなりません。

このような合意を、法律知識のない一般の方が、専門家の支援なしに適切に書面にまとめようとするのは、困難なものがあります。

離婚時の法律問題についての専門家である弁護士に相談して書面にしてもらうか、せめて、自分たちで作成した合意書(離婚協議書)を弁護士に一度見てもらうことができれば安心です。

そうして養育費の合意を書面にまとめることができたら、これを執行認諾文言(しっこうにんだくもんごん)がついた公正証書にしておきましょう。

長期間にわたって支払が続く養育費に関しては、途中で不払いとなってしまう可能性が、残念ながら比較的高いからです。

不払が生じてしまったときに、執行認諾文言付き公正証書があれば、改めて裁判や調停を起こさなくても、相手方の財産を差し押さえて養育費の支払に充てさせることができます。

公正証書を作成するときにも、弁護士がサポートすることができます。

当事務所では、離婚協議書を簡単に作成したい方のために、ウェブサイト上にスマホで自動的に離婚協議書を作成できるページを掲載しています。

ぜひ、こちらもご活用ください。

再婚するときは要注意

再婚をした場合には、養育費がどのようになるか、注意が必要です。

先にも述べましたとおり、再婚しただけで養育費が減額されることは少ないです。

再婚したというだけでは、再婚相手は子どもと法的に親子になるわけではないので、再婚相手が子どもの扶養義務を負うことはなく、実父の扶養義務の程度にも変更はないからです。

しかし、再婚に伴い、再婚相手と子どもが養子縁組をしてしまうと、養育費が減額ないし免除される可能性が高くなります。

養子縁組をすると、再婚相手(養親)が子どもに対して第一次的な扶養義務を負うことになるため、養親にそれなりの収入があれば、養親において子どもを養うべきであるとされるからです。

このように、養子縁組をするか否かで、実父からの養育費支払に大きな差が出てしまうことになります。

もしかすると、養子縁組をしない方が有利なのではないか、と思われるかもしれません。

しかし、新しい家族にとって、養子縁組をするか否かは、心情的にも大きな影響をもたらすこととなり得ます。

養子縁組をした方が、新しい家族として安定して過ごすことができる、という場合もあるでしょう。

様々な影響を考慮して、子どもの生活がより良い方向に向かうよう、養子縁組をするか否かについてよく考えて結論を出してください。

 

養育費の支払が滞った場合

養育費は長い間支払ってもらうことになることがほとんどです。

その間には、色々な変化が起こります。

父親の収入が思うように伸びなかったり、下がってしまったり、ケガや病気をしたり、場合によっては無職になってしまうこともあるかもしれません。

こうした変化に伴い、当初予定していた養育費の支払が難しくなってしまう場合も、残念ながらあります。

約束した養育費の支払ができない、と言われると、「約束したのに!」と腹立たしくなるかもしれません。

「一度は約束したのだから、そのとおり払ってほしい」と思うのも当然です。

「自分や子どもだって生活が苦しいのに・・・」との思いもあるでしょう。

しかし、とりあえず相手の言い分に耳を傾け、状況によっては柔軟に考えることも必要です。

多少金額が少なくなったとしても長く支払ってもらえる方が、結果的には得をする場合もあります。

相手の言い分を受け入れず関係性が悪化してしまうと、後々進学時の臨時出費があったなどして養育費の増額などを申し入れることになったときに、容易に了承してくれなくなることも考えられます。

話合いがこじれて支払が滞るようになってしまった場合、裁判所に調停を申し立て、それでも話し合いがつかなければ、審判をすることになります。

既に調停、審判、判決を得ていた場合、又は強制執行認諾文言付き公正証書を作成していた場合には、すぐに強制執行手続をし、相手方の財産(預金、不動産、給料など)を差し押さえることもできます。

しかし、いずれの手続も相応の手間と費用がかかります。

そして、差押えをすると、場合によっては相手方をさらに追い詰め、経済的にもさらなる苦境に追いやってしまい、結果的にトータルで得られる養育費の額が少なくなってしまう場合もあります。慎重に考えなくてはなりません。

離婚後に養育費の変更に関する交渉が必要となった場合も、弁護士に相談することができます。

特に、相手方が養育費の全部又は一部を支払わなくなってしまった場合の対応については、裁判所での手続を行うことも含めた慎重な対応が必要ですので、離婚専門の弁護士に相談する必要性が高いと言えます。

 

父親側が知っておきたいポイント

養育費の相場を理解する

「母親側が知っておきたいポイント」でも解説しましたが、養育費の相場について、裁判所が標準算定方式・算定表(算定表)を公表しています。

裁判所での調停などでは、この算定表で養育費の金額が決まることが多いです。

そのため、当事者間の話合いでも、最終的な結論を見越して算定表の金額を参考に養育費を決めることが多いです。

弁護士に依頼した場合でも、弁護士が算定表をもとに養育費の適正額を割り出し、その金額をもとに交渉を進めるのが通常です。

このように、算定表は、養育費算定の目安であり、養育費の決定に際してとても重要なものとなっています。

養育費について話し合うに当たっては、算定表の使い方、例外的に増減額される場合などについての知識を持っておくことが大切です。

算定表について、詳しくはこちらをご覧ください。

無理な約束をしない

養育費の支払期間は長く、場合によっては20年近く支払い続けなければなりません。

長い間安定して支払を続けるためには、無理のある約束はしない方が賢明です。

安易に高い額で合意してしまうと、大きな事情の変更がない限り、簡単に養育費を減額してもらうことはできません。

無理な金額で合意して払えなくなった場合、未払分が積みあがっていき、最終的にかなり大きな金額になってしまう可能性もあります。

自分の収入や生活費、将来的な収入の見込みなども考えて、算定表を参照しつつ、払い続けられる額を見極めて、約束するようにしましょう。

途中で支払えなくなった場合は協議を行う

養育費を途中で支払えなくなった場合は、相手方と話し合いましょう。

話し合わないまま一方的に支払を止めてしまうと、養育費の不払となってしまいます。

特に、調停、審判、判決又は強制執行認諾文言付き公正証書で決まった養育費には注意が必要です。

調停、審判、判決又は強制執行認諾文言付き公正証書で決まった養育費を不払にすると、すぐに差押えなどの強制執行手続をとられてしまう危険性があります。

預金に対する差押えがあると、差押え時点までにあった預金が払い戻せなくなる場合があります。

不動産が差し押さえられた場合は、登記簿上に差押えがなされたことが記載されてしまい、未払の養育費を支払えなければ、最終的には不動産を強制的に売却されてしまいます。

毎月の給料(最大で給料の2分の1まで)が差し押さえられてしまう場合もあります。

給料が差し押さえられると、職場にも差押えのことを知られてしまい、信用を無くしてしまうことにもなりえます。

自営業の方であれば、差押えがあると、事業上の契約の解除事由になってしまうなど、大きな影響が生じる可能性があります。

調停、審判、判決又は強制執行認諾文言付き公正証書はなかった場合であっても、それまで支払ってきた養育費を一方的に支払わなくなった場合、相手方から調停等を起こされる可能性があります。

調停などが起こされると、それに対応する労力や費用がかかりますし、相手方や子どもとの関係にも悪影響が生じかねません。

支払が苦しくなってきたときは、相手方に相談し、養育費額を下げることへの了承をもらい、書面(双方の署名押印入り)に残すようにしてください。

 

まとめ

今回は、養育費について、いつからいつまで支払うか、大学に進学する場合、子どもに持病や障害がある場合、両親の再婚があった場合はそれぞれどうなるか、その他養育費について知っておきたいポイントなどについて解説しました。

養育費は支払期間も長く、その間に子どもの側にも親の側にも色々なことが生じますから、一度取り決めれば無事終了、とはいかないケースもあります。

生じる問題も多様で、一般の方では対応しきれないこともあり得ます。

離婚が成立した後に生じた問題についても、弁護士に相談して対応してもらうことが可能です。

お困りの場合は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。

当事務所には、離婚事件に注力する弁護士で構成される離婚事件チームがあり、養育費について強力にサポートしています。

全国対応も可能ですので、養育費にお困りの方は当事務所までお気軽にご相談ください。

 

 

 

 

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