尾てい骨骨折とは?|対処法や後遺症のポイント

執筆者:弁護士 重永尚亮 (弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士)

尾てい骨骨折(びていこつこっせつ)とは、外部からの強い衝撃がお尻に加わったことにより、尾てい骨が折れてしまうことをいいます。

尾てい骨骨折の基本的な治療方法は安静にしておくことです。

尾てい骨骨折が治療により治ったとしても、痛みや痺れが残ってしまう可能性があります。

残ってしまった症状が後遺障害として認定される場合があります。

後遺障害に認定されると等級に応じて後遺障害慰謝料が支払われます。

ここでは、尾てい骨骨折の症状、日常生活への影響や対処法について解説いたします。

尾てい骨骨折とは

尾てい骨骨折(びていこつこっせつ)とは、交通事故といった外部からの強い衝撃がお尻に加わったことにより、尾てい骨が折れてしまうことをいいます。

尾てい骨は、背骨の一番下にある骨で、骨盤の中の「仙骨」の下に位置しています。

尾てい骨骨折は骨盤に位置していることから、骨盤を骨折した場合と同じように扱われます。

尾てい骨

 

 

尾てい骨骨折の症状

尾てい骨骨折の主な症状は下記のものが挙げられます。

  • お尻付近が腫れている
  • 尾てい骨付近が痛む
  • 痛みによって気分が悪くなる
  • 痛みが酷く吐き気がある
  • 尾てい骨が直腸を圧迫して便が出にくいことがある

上記症状を感じられた場合には尾てい骨が折れている可能性があります。

 

 

尾てい骨骨折の日常生活への影響

尾てい骨骨折後の過ごし方

歩くことはできる?

尾てい骨を骨折したとしても歩くこと自体は可能です。

もっとも、既にご説明した通り、尾てい骨骨折は骨盤骨折と同じものと扱われることもあり、人が歩行する上で重要な骨盤に傷がついている状態となります。

そうすると、尾てい骨骨折をすることで少なからず歩行に支障が生じます。

具体的には、歩いている際に、尾てい骨付近に違和感や痛みが伴います。

 

尾てい骨骨折の座り方に注意

尾てい骨骨折となった場合に注意すべきは、座り方です。

尾てい骨は人のお尻に位置している関係上、普段通りに座ってしまうと骨折している尾てい骨を押し付けてしまう形になってしまいます。

例えば、自転車のサドルといった尾てい骨をピンポイントで圧迫してしまうようなものには座らない方が良いでしょう。

もし、尾てい骨を圧迫するような座り方を続けてしまうと治りが遅くなってしまいます。

そこで、尾てい骨を圧迫しないように、なるべく柔らかいところに座ることやクッションの中でお尻が触れる部分に穴が空いているドーナッツ型のクッションを挟んで座ることを心がけましょう。

ドーナッツ型のクッション

 

尾てい骨骨折の寝方とは

尾てい骨骨折で禁忌(タブー)とされている寝方というものはありません。

もっとも、尾てい骨を圧迫するような体制、具体的には仰向けで寝る場合は、尾てい骨付近に痛みが出てしまうので避けた方が良いでしょう。

そこで、うつ伏せか横向きの体勢で寝ることをお勧めいたします。

どうしても仰向けでなければ寝ることができない場合は、柔らかいクッションをお尻付近に挟んで寝るといった方法も試してみると良いでしょう。

 

尾てい骨骨折はコルセットが必要?

尾てい骨骨折の場合、コルセットまでは不要な場合がほとんどです。

その代わり、痛みを和らげる方法として、クッションを利用する方法があります。

クッションについては、すでにご説明した通り、お尻が触れる部分に穴が空いているドーナッツ型のクッションを活用すると良いでしょう。

 

尾てい骨骨折で仕事を休む必要がある?

尾てい骨骨折の基本的な治療方法は安静にしておくことです。

したがって、立ったり座ったりを繰り返すような作業を行う必要がある仕事や、長時間座り続けなければならない仕事の場合は、尾てい骨骨折による痛みが直接影響します。

そこで、上記仕事内容のような尾てい骨に負担をかけてしまうような仕事内容の場合は、医師の指示に相談の上、仕事を休むか検討しましょう。

 

尾てい骨骨折の完治はいつ頃?

既に説明した通り、尾てい骨骨折の治療方法は、通常、安静にして自然に治ることを待つことです。

尾てい骨に負担をかけるような動きを避けて安静にしている状態を続けていた場合は、回復が早い人で1〜2週間、平均して1〜2ヶ月程度で治ることがほとんどです。

一方、仕事や家事等によりどうしても尾てい骨に負担をかけてしまう動きを避けられない場合は、治るまでに半年以上かかってしまう場合があります。

なお、尾てい骨骨折の完治とは、折れた骨がくっつくことを意味します。

したがって、尾てい骨付近に痛みが残っていたとしても、骨がきちんとくっついていれば尾てい骨骨折自体は完治と判断されてしまう。

被害者の方々としては、未だ痛みが残っているのに完治と判断されることに違和感を感じること思われます。

しかし、既にご説明した通り、尾てい骨骨折が治ったかの基準は骨がくっついているかどうかとされていることには注意が必要です。

 

尾てい骨骨折の入院期間は?

尾てい骨骨折は、そもそも手術が必要となるほどの骨のズレが発生することは少なく、基本的には手術は行われないため、入院自体も必要ない場合がほとんどです。

もっとも、手術は不要であったとしても、激痛で歩くことができない場合には入院するということも考えられます。

入院期間については尾てい骨骨折の痛みの程度によってまちまちです。

 

 

尾てい骨骨折の原因

尻もち

尾てい骨骨折の原因で最も多いのが尻もちです。

その他には、つまずいて転んだ場合・高いところから転落した場合、スポーツで人や物と接触した場合があります。

交通事故に遭った時も後ろから追突された場合や、歩いているときに車にはねられた場合、バイクに乗っている時にぶつかって投げ出された場合にも尾てい骨骨折が発生する可能性があります。

出産をする際に尾てい骨を骨折するというケースもあります。

他にも、仕事中に高いところから転落してお尻に強い衝撃が加わったといった労災事故でも発生する可能性があります。

 

 

尾てい骨骨折の後遺障害認定の特徴と注意点

尾てい骨骨折後に痛みがあると後遺障害を認定できる?

尾てい骨骨折が完治したとしても、尾てい骨付近に違和感や痛みといった症状が残ってしまう場合があります。

尾てい骨が完治しても尾てい骨付近に痛みが残ってしまった場合には後遺障害として認定される可能性があります。

上記症状が残ってしまった場合には、以下の後遺障害等級が認定される可能性があります。

等級 症状
12級13号 局部にがん固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

12級13号

「局部にがん固な神経症状を残すもの」とは、治療したにもかかわらず残ってしまった神経症状(痛み、痺れ等)が、交通事故によって残ってしまったことを医学的に証明できるものをいいます。

医学的に証明できるとは、レントゲンやCT、MRIによって骨に異常所見が認められることをいいます。

具体的には以下の2つの観点から判断されます。

  1. ① 画像所見(レントゲン、CT、MRI等で撮影された画像です)
  2. ② 神経学的検査(神経に異常があるかの検査です)

12級13号の具体的な認定基準については以下のページをご覧ください。

14級9号

「局部に神経症状を残すもの」とは、被害者に発症している症状が医学的に説明できるものをいいます。

医学的に説明できるとは、診断書の記載から交通事故によって神経症状が残ってしまったと説明がつくことをいいます。

12級13号と比較すると、「証明」ではなく、「説明」で足りることから12級13号よりも認定のハードルは低いです。

しかし、後遺障害の認定自体のハードルが高いことから、14級9号だとしても認定される確率は一桁に止まる事には注意が必要です。

後遺障害14級についての詳細は下記ページをご覧ください。

注意点

尾てい骨骨折が完治したとしても、尾てい骨がずれた状態でくっついてしまい、尾てい骨付近の体表面に盛り上がりが残ってしまう場合があります。

尾てい骨は骨盤に位置していることから、骨盤骨に変形障害(正常な形で骨がくっつかなかった等の場合)が認定されそうなところです。

しかし、後遺障害等級表上、変形障害の骨盤骨に尾骨は含まれていないことから後遺障害として認定を受けることができません。

また、後遺障害を適切に認定してもらうためには、以下の点に注意する必要があります。

①継続的に整形外科に通院する

後遺障害として認定される前提条件として、これ以上治療をしても症状が改善されない状態(専門用語で「症状固定」といいます。)となっている必要があります。

そして、症状固定となったかどうかは整形外科の主治医が判断します。

後遺障害の認定にあたっては整形外科の主治医が作成した診断書が重視されます。

よくある例として整形外科と整骨院を併用して通院されている方がいらっしゃいます。

整骨院への通院自体を否定するものではないですが、整骨院ではあくまで施術が行われるのみで診察はされません。

もし整骨院のみの通院の場合、診断書という形で治療状況を確認できません。

したがって、整骨院へ通院するとしても整形外科にも通院するようにしましょう。

また、ポイントと関係しますが、継続的に整形外科に通院していないと主治医としては、治療経過を見ていないことから後遺障害診断書を書けないと言われてしまう可能性があります。

後遺障害診断書は後遺障害として認定されるために必須の書類ですので、この点からも継続的に整形外科に通院する必要があります。

 

②事故に遭ってから間がないタイミングでレントゲンやCTを撮影する

尾てい骨骨折は外から目で確認するだけでは本当に尾てい骨骨折が発生しているのかを判断できません。

そこで、尾てい骨骨折を発見するためには、レントゲンやCTを撮影することが必要不可欠となります。

ここで注意しなければならないことは、もし尾てい骨骨折がレントゲン撮影等により発見されたとしても、それが交通事故によって生じたものであるといえなければなりません。

既にご説明したとおり、尾てい骨骨折は日常の動作の中でも発生しうるものです。

そうすると、事故からだいぶ期間が経過したタイミングでようやくレントゲン撮影を行った結果、尾てい骨骨折が発覚しても、これが交通事故によるものなのか、別の理由によるものか判断がつきません。

したがって、交通事故でお尻に衝撃を受けた場合には、なるべく早い段階で整形外科を受診し、主治医に相談し、レントゲン撮影等を行うようにしましょう。

 

③後遺障害診断書に尾てい骨骨折により痛みが残っていることを記載してもらう

後遺障害申請では、後遺障害診断書を必ず提出する必要があります。

後遺障害診断書には所定の書式があります。

後遺障害診断書の画像

そして、尾てい骨骨折について後遺障害認定を受けるためには、後遺障害診断書には、尾てい骨骨折があったこととそれによって痛みが残っていることが記載されている必要があります。

後遺障害診断書には患者の自覚症状を記載する欄が設けられています。

そこで、主治医から症状固定となったから後遺障害診断書を書くと言われた際は、自覚症状として、尾てい骨付近に痛みが残っていることを記載してもらうようにしてください。

後遺障害申請についての詳細について知りたい方は下記のページをご覧ください。

 

 

尾てい骨骨折の慰謝料などの賠償金

尾てい骨骨折の場合にもらえる慰謝料は通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2つがあります。

また、後遺障害が認定された場合、等級に応じた後遺障害逸失利益が認められます。

後遺障害逸失利益の算定方法については下記のページをご覧ください。

 

通院慰謝料

通院慰謝料は、通院期間を元に算出されます。

入通院慰謝料の計算方法について詳しくは下記のページをご覧ください。

 

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は認定された等級に応じて金額が決まっています。

尾てい骨骨折の場合に認められる後遺障害慰謝料は以下の通りです。

等級 自賠責基準 裁判基準
12級13号 94万円 290万円
14級9号 32万円 110万円

 

 

尾てい骨骨折で適切な賠償金を得る5つのポイント

尾てい骨骨折で適切な賠償金を得る5つのポイント

①適切な治療を受ける

尾てい骨骨折は日常動作である座るという動作に支障を及ぼすものです。

症状が改善しない中で途中で通院をやめてしまうと更なる症状悪化に繋がりかねません。

そこで、定期的に整形外科に通院し、適切な治療を受けた上で、症状の改善を図った方が良いでしょう。

また、定期的に整形外科に通院することは慰謝料の金額にも影響します。

交通事故における慰謝料は入通院期間を基準に算定されます。

通院期間が長いほど慰謝料は増額します。

もっとも、注意点として、例えば1ヶ月の実際に通院した日数が少ない場合は、1ヶ月全てが通院期間と判断されない可能性があります。

 

②後遺障害を適切に認定してもらう

尾てい骨骨折が治ったとしても、骨折部分に痛み等が残ってしまう場合があります。

一般的にこの残ってしまった症状を後遺症と呼びますが、慰謝料を受け取るためには後遺障害申請を行い、後遺障害と認定される必要があります。

そして、既にご説明した通り、認定された等級に応じてもらえる慰謝料の金額は異なります。

そこで、残ってしまった症状について後遺障害を認定してもらい、適切な等級の認定を受ける必要があります。

後遺障害の認定のポイントについては下記のページをご覧ください。

 

③適切な賠償金の金額を算定する

加害者側が提案する示談の内容は、被害者の方々に支払うべき金額よりも低額である可能性があります。

そこで、加害者側の保険会社と示談をする際は、適切な賠償金が提示されているかを弁護士に確認することをお勧めします。

 

④加害者側が提示する示談内容は専門家に確認してもらう

一度加害者側が提案する示談内容でサインをしてしまうと後々金額に不満があったとしても取り消すことができなくなります。

上記③でご説明した通り、加害者側の保険会社が提示する金額が本来払うべき金額よりも低額となっている可能性があります。

そこで、被害者の方々が知らず知らずのうちに損をしていたということがないように弁護士に相談すると良いでしょう。

交通事故の示談をスムーズに行う方法については以下のページをご覧ください。

 

⑤後遺障害に詳しい弁護士に早い段階で相談する

早い段階から後遺障害に詳しい弁護士に相談することで、後遺障害認定のために逆算的なサポートを行うことができます。

また、後遺障害申請はとても複雑で治療と並行して後遺障害申請を見据えて行動するのはとても困難です。

そこで、後遺障害に詳しい弁護士に相談し、サポートを受けることで被害者の方々は治療に専念することができます。

 

 

まとめ

以上の通り、尾てい骨骨折が発生した場合で、骨折が治ったとしても痛み等の症状が残った場合に、その症状が後遺障害として認定される可能性があります。

そして、後遺障害として認定されることによって適切な後遺障害慰謝料を受け取ることができます。

後遺障害申請手続を被害者の方々ご自身で行うことは非常に困難を伴います。

そこで、交通事故を専門とする弁護士に一度相談することをお勧めいたします。

当法律事務所には、交通事故を専門とする弁護士が所属しております。

そのため、後遺障害に悩む被害者を強力にサポートすることができます。

被害者の方の保険会社で、弁護士費用特約を付けられている場合は、特殊な場合を除き弁護士費用は実質0円でご依頼いただけます。

LINE等のオンラインや電話相談を活用して全国対応も行っていますので、後遺障害診断書でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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