後遺障害とは?【弁護士が解説】
この記事でわかること
- 後遺障害の内容
- 後遺障害と後遺症の違い
- 後遺障害認定の概要
- 後遺障害に認定された場合の賠償項目
目次
「後遺症」と「後遺障害」の違い
交通事故において、後遺障害とは、治療を続けても完治することがなく、身体的あるいは精神的な不具合が将来にわたって残ってしまう状態をいいます。
この後遺障害は、自動車損害賠償保障法(いわゆる自賠法)で規定されており、最も重い1級から14級までの等級があります。
各等級には、それぞれ該当する症状が定められており、その数は140種類に上ります。
具体的な内容は下表のとおりです。
交通事故にあった被害者の方とお話をすると、「事故の後遺症があって・・・」ということをよく聞きます。
しかしながら、ここで使われている「後遺症」と先ほど説明した「後遺障害」というのは、全く別物です。
両者は、治療を継続したけれども完治せずに身体的あるいは精神的な不具合が残存するという点では共通しています。
しかし、「後遺障害」として認められるのは、その障害により労働能力の喪失を伴うような場合に限られます。
したがって、医師から後遺症が残ると言われたとしても、必ずしも後遺障害の認定を受けることができるとは限らないのです。
そして、交通事故による後遺症があると被害者の方が考えていても、後遺障害として認定されなければ、その後遺症による補償はなされません。
このように、「後遺症」と「後遺障害」というのは、全く違うものであるという点を交通事故の被害者の方は知っておく必要があります。
後遺障害認定について
後遺障害等級の認定機関
実際に交通事故にあった被害者に残った後遺症が後遺障害に該当するかどうかは、上述した自賠法による基準に当たるかどうかの判断により決定されます。
その判断を行い、後遺障害の認定を行うのは、損害保険料率算出機構です。
損害保険料率算出機構により等級の認定がされ、その等級に基づいて損害額を算定して、加害者の保険会社と示談交渉を行って、賠償額を決定していくという流れになります。
複数の後遺障害がある場合
複数の後遺障害に認定される場合には、「併合」の処理が行われます。
例えば、2つの部位に12級の後遺障害が認定された場合には、併合して11級が認定されます。
後遺障害診断書等の医療記録の重要性
損害保険料率算出機構が後遺障害等級を認定するにあたっては、定型の書式が定められている後遺障害診断書や事故状況説明書、レントゲン写真やMRI画像を用います。
後遺障害診断書は、下の書面になります。
これは整骨院の柔道整復師の方が記入しても受け付けてもらえません。
そのため、必ず医師に記載をしてもらわなければなりません。
この後遺障害診断書には、交通事故の日時、被害者の方の自覚症状、診断書を作成した病院の通院期間と実際に通院した日数などを記載し、検査の結果などをそれぞれの症状の内容に合わせて記載してもらいます。
後遺障害診断書に記載されていない事柄は、審査の対象にならないので、漏れが内容十分に注意しなければなりません。
後遺障害の認定手続は原則として書面審査となります(傷跡の大きさを確認する必要のある外貌醜状などの場合には例外的に面談が実施されます。)。
このことから、後遺障害の等級認定の申請に当たっては、後遺障害診断書をはじめとする各種書類が極めて重要な役割を担っているということがわかります。
後遺障害の申請をする際に提出する書類の多くは治療期間中に作成されるものですから、治療期間中においても後遺障害の申請を意識した対応が大切になってきます。
後遺障害診断書の記載内容とそれまでの診断書の記載内容で整合性が取れないものは、その時点でマイナス評価を受けてしまう可能性があります。
したがって、交通事故にあった場合には、早い段階で交通事故を専門とする弁護士に相談した上で治療を行っていくことが大切です。
後遺障害の申請方法
後遺障害の申請方法には、事前認定と被害者請求という2つの方法があります。
事前認定は、保険会社が後遺障害の申請をしてくれる方法です。
この方法の場合、被害者は、後遺障害診断書を保険会社に送付すれば、後は手続きを進めてくれるので、申請の労力が少なくて済みます。
しかし、実際にどのような書類が提出されているのか不透明です。
また、申請に最低限必要な書類以外に、認定に有利な証拠を積極に添付してもらうこともできないでしょう。
被害者請求は、被害者側で後遺障害の申請を行う方法です。
この場合、被害者自身で後遺障害申請をするため、資料の収集など労力がかかります。
しかし、認定に向けて有利な証拠を添付することができるなどのメリットがあります。
また、弁護士に依頼した場合には、弁護士が後遺障害の申請をするため労力をかけることなく被害者請求の方法で後遺障害申請をすることができます。
後遺障害が認定されると何が変わる?
後遺障害等級が認定されるかどうか、あるいは、どの等級に認定されるかどうかで、賠償金額が大きく変わってきます。
後遺障害が認定されると、入通院したことによる慰謝料(傷害慰謝料)とは別に後遺障害慰謝料を請求することができます。
また、後遺障害が残存しているということは、痛みや運動障害などで労働能力を喪失していえます。
労働能力の喪失によって、将来、収入が減ってしまう可能性があります。
こうした減収に対する補償として、後遺障害の逸失利益を請求することができます。
このように、交通事故の被害者の方にとって、後遺障害が認定されるかどうかは、適切な補償を受けるためには重要なポイントになります。
まとめ
後遺障害に認定されるかどうかで賠償額は大きく変わってきます。
したがって、適切な後遺障害に認定されるよう早い段階から専門の弁護士に相談されることをおすすめします。
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