うつ病の相手と離婚できる?【弁護士が事例で徹底解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

弁護士の回答

離婚が認められる可能性はありますが、決して容易ではないと考えられます。

相手がうつ病などの精神疾患を患っている場合、結婚生活がうまくいかずに離婚を決意される方が多くいます。

デイライト法律事務所の離婚事件チームには、このような「うつ病と離婚」に関するご相談が多く寄せられています。

うつ病の相手と離婚ができるかについて、事例をもとに、詳しく解説いたしますのでご参考にされてください。

事例

ご相談者Mさん (北九州市八幡東区)
職業:会社員
婚姻期間:10年
解決方法:協議
離婚を切り出した

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 利益
離婚 ×不成立 ○成立

 

状況

相談者のMさんは、10年ほど前に妻と入籍しました。

ところが、結婚生活を開始してしばらくして妻がうつ病になり、体調が悪化していきました。

Mさんは少しでも妻の体調がよくなるようにと、ペットを買ったり、一緒に外出したりといったことを続けていましたが、妻の症状は改善せず、次第にMさんが仕事をしながら、家事をこなすようになりました。

そんな中、妻はうつ病が原因でリストカットをして自殺を図るという行動に出ました。

そのため妻はしばらく入院して静養をしていました。

それでも、妻の体調はよくならず、妻はしばらくして再び自殺を図りました。

そこで、Mさんはこれ以上、妻の自殺行為で精神的なショックを受けると、Mさん自身も体調を崩しかねないと思い、離婚を決意し、別居を開始しました。

妻は、離婚について頑なに拒否をしており、別居についても早く解消したい、Mさんに戻ってきてほしいといってきていました。

Mさんとしては、妻とやり直すことは難しいということだったので、離婚を成立させるためにはどうしたらよいかということでご相談に来ました。

 

弁護士のサポート

依頼を受けてすぐに協議離婚の申入れを書面にて行いました。

妻は当初Mさんとやり直したいということで離婚には応じないという対応でした。

そこで、Mさん本人に手紙を書いてもらい、それを弁護士の書面とともに送付しました。

手紙の内容は、Mさんの離婚意志が固く、妻とやり直すことは考えていないというものです。

それでも妻は離婚に消極的でしたので、このままの状態が続けば調停を申し立てざるを得ないこと、Mさんに修復の意向がない以上、最終的には裁判をすれば離婚になることを説明しました。

そうしたところ、妻も弁護士を立てて交渉をするようになりました。

その後は、弁護士間で交渉を行い、最終的には交渉から半年ほどで離婚が成立しました。

 

解説

うつ病の相手との離婚の3つの問題点

相手がうつ病の場合、以下の3つの問題点が想定されます。

①裁判では離婚が認められない可能性がある

この事例では、弁護士の協議によって離婚がまとまりました。

しかし、協議や調停では解決できないこともあります。

その場合、離婚するためには、離婚裁判を起こさなければなりません。

離婚裁判において、裁判所が離婚判決を出すためには、「離婚原因」と呼ばれる、下表の5つの要件のいずれかに該当することが必要となります(民法770条1項)。

離婚原因
  1. ① 相手方に不貞行為があった
  2. ② 相手方の生死が3年以上明らかでない
  3. ③ 相手方から悪意で遺棄された
  4. ④ 相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
  5. ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な理由がある

引用:民法|電子政府の窓口

したがって、離婚においては、「離婚原因」に該当するか否かの見通しを立てておくことが重要です。

この点、うつ病は、上記の④「相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」に該当するようにも思えます。

しかし、うつ病程度の精神疾患では、基本的には、「強度の精神病」には該当しないと考えられます。

また、うつ病の程度がひどい場合でも、最高裁は、上表④の要件は厳格に解釈し、簡単には離婚を認めていません。

判例 重度の精神病の場合の裁判例

最高裁は、精神病者に対する離婚訴訟において、「諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込のついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許されない」と判断しています。

【最判昭33.7.25】

参考:最高裁|裁判例結果詳細

なお、当事務所には、相手が重度の精神病の場合の解決事例もありますが希少なケースです。

婚姻を継続し難い重大な理由

④に該当しない場合でも、⑤「婚姻を継続し難い重大な理由」があれば、裁判所は離婚判決を出してくれます。

しかし、長期間の別居などがない場合、この要件を満たすのは難しい傾向です。

単に「うつ病」というだけではこの要件には該当しないと考えられます。

以上から、うつ病の事案では、裁判では離婚が認められない可能性があるということを認識すべきでしょう。

 

②協議が難しい傾向にある

相手がうつ病等の精神疾患を患っている場合、意思疎通が難しく、冷静な話し合いができないことが予想されます。

話し合いにならないと、離婚協議が難航します。

協議が難航すると、解決(離婚成立)まで長期間を要したり、裁判に発展する可能性があります。

 

③成年後見人の申立てが必要な場合がある

相手の精神疾患の程度が重症の場合、「訴訟能力」が認められていないため、離婚裁判を起こすことができません。

その場合、家庭裁判所へ成年後見の申立てを行い、成年後見人を選任してもらうことで、訴訟が可能となりますが、その分の時間や労力等のご負担がかかってしまいます。

上記事例のような軽度のうつ病であれば、訴訟能力は認められると考えられますが、相手の状況しだいでは、成年後見人の申立ても必要な場合があることを押さえておく必要があります。

 

 

うつ病の相手との離婚のポイント

上記の問題点を踏まえて、相手がうつ病の場合、次の点がポイントとなります。

 

POINT①協議による解決を目指す

上述したとおり、単に「配偶者がうつ病」というだけでは、裁判で離婚が認められない可能性があります。

したがって、できるだけ離婚裁判は回避して、協議による解決を目指す方がよいでしょう。

また、協議でまとまらなければ、離婚調停を申し立てて、話し合いによる解決を検討します。

離婚調停では、失敗しないポイントを押さえておくとよいでしょう。

 

POINT②第三者に入ってもらう

相手がうつ病の場合、当事者同士では冷静な話し合いとならないことが懸念されます。

そのような場合、離婚を専門とする弁護士などの第三者に間に入ってもらうことをお勧めいたします。

あなたが弁護士に依頼された場合、相手も弁護士に依頼する可能性があります。

その場合、双方とも弁護士が代理人となって交渉を行うため、少なくとも冷静な状況での話し合いが可能となります。

 

POINT③別居の必要性を検討する

相手が協議離婚に応じない場合、離婚前に別居するという方法を検討せざるを得ないでしょう。

上述したとおり、長期間の別居状態が継続すると、⑤婚姻を継続し難い重大な理由に該当する可能性があります。

そうすると、離婚裁判となった場合に、離婚が認められる可能性が出てきます。

この場合は長期戦が予想されるため、離婚を決意されているのであれば、できるだけ早く別居されたほうがよいと考えられます。

もっとも、別居することで、マイナスとなる面も考えられます。

そのため、別居前に、離婚専門の弁護士に相談されて、メリットやデメリットについて詳しく助言をもらわれることをお勧めいたします。

 

 

まとめ

以上、相手がうつ病の場合の離婚の可能性について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

うつ病を理由とする離婚は、決して簡単ではありません。

裁判では離婚が認められない可能性もあるため、まずは協議による解決を検討されることをお勧めいたします。

自分は離婚したいのだけど、相手がどうしてもいやだと拒否しているような事案の場合、当人同士で離婚したい、離婚したくないと話していてもなかなか前に進みません。

このような場合、弁護士を代理人に立てて、交渉を行えば、相手方に離婚意思の強さが伝わるだけでなく、感情的な部分を抑えて冷静な交渉を行うことができる可能性が十分にあります。

場合によっては、今回のMさんのように、こちらが弁護士を立てれば相手方も弁護士を立てて交渉するということもよくあります。

こうなると、弁護士同士での話合いとなるため、本人同士の場合より協議がまとまる可能性が高まります。

最近ではうつ病といった精神的な病が離婚の原因のひとつという方はもちろん、相手方がアスペルガー症候群やADHDなどのケースも多くなっています。

こうした問題(アスペルガー・ADHD)については、こちらに詳しく説明しておりますので、あわせてご覧下さい。

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この記事が離婚問題に直面されている方にとって、お役に立てば幸いです。

 

 





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