夫のせいでうつ病。離婚慰謝料や親権はどうなる?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

夫の行為が不法行為に該当する場合、慰謝料を請求できます。

また、うつ病の場合、親権の判断に影響する可能性があります。

 

うつ病が離婚に影響する?

日本では、離婚する際、必ず裁判所を通す必要はなく、協議によって離婚することが可能です。

しかし、相手が離婚に応じてくれない場合、離婚裁判を起こす必要があります。

では、裁判所は夫のせいでうつ病となった場合に離婚判決を出してくれるでしょうか?

離婚について、民法は、次の5つの場合に限り、離婚を認めると規定しています(民法770条1項)。

この5つは「離婚原因」と呼ばれています。

上記のうち、ご質問のケースは、上記の離婚原因に該当する可能性があります。

もっとも、「夫のせい」の具体的な行為を特定する必要があります。

このようなケースでは、特に夫のモラハラやDVなどが問題となりやすいです。

度重なるモラハラによって、妻がうつ病になってしまったというケースが典型です。

この場合、「婚姻を継続し難い重大な理由があるとき」に該当すると考えられます。

その他、夫の不倫、両親との不和、性格の不一致などが問題となるケースもあります。

不倫の場合は、「相手方に不貞行為があったとき」に該当すると考えられるため、うつ病になっていなかったとしても、法律上離婚が認められます。

その他の性格の不一致などの場合は、「不法行為」とまでは認定されにくいと考えられます。

【根拠条文】
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用元:民法|電子政府の窓口

もっとも、夫の不法行為が認められなかったとしても、別居してその期間が長くなれば「婚姻を継続し難い重大な理由があるとき」に該当すると考えられます。

裁判で離婚が認められるために必要となる「別居の期間の長さ」は、具体的な状況しだいで異なります。

性格の不一致などの有責性が認められない事案でも、一方配偶者がうつ病にかかってしまったような場合、比較的短い別居期間でも離婚が認められる可能性もあります。

 

 

離婚の慰謝料を請求できる?

慰謝料についても、「夫のせい」の具体的な行為によっては、慰謝料を請求できます

夫の不倫

例えば、夫の不倫のせいでうつ病になったような場合は、慰謝料を請求できます。

もっとも、夫が不倫を否認した場合、その証拠が必要となるため、証拠を残しておくことが重要です。

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不倫の証拠の集め方

 

夫のDVやモラハラ

また、夫のDVやモラハラなどでうつ病になった場合も、夫に不法行為責任が発生する考えられることから慰謝料を請求できます。

もっとも、モラハラなどの精神的な虐待の場合、身体的なDVと異なり、目に見えない暴力であることから、相手が否認した場合は立証できない可能性があります。

したがって、この場合も証拠を集めておくことが重要となります。

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うつ病であることが親権に影響する?

父母双方が親権を譲らない場合、最終的には裁判で争うこととなります。

したがって、親権を考える上では、今後の見通しとして、裁判所の判断基準(親権の決め方)を押さえておく必要があります。

親権は、下記の考慮すべき具体的事情をもとに、決められていると考えられます。

父母の側の事情
監護に対する意欲と能力、健康状態、経済的・精神的家庭環境、居住・教育環境、子に対する愛情の程度、実家の資産、親族・友人等の援助の可能性など
子の側の事情
年齢、性別、兄弟姉妹関係、心身の発育状況、従来の環境への適応状況、環境の変化への対応性、子自身の意向など

 

それでは、うつ病であることが不利になるでしょうか。

うつ病であることは、「健康状態」という点においてマイナスになる可能性があります。

したがって、うつ病であるよりは、うつ病ではない方が親権については有利となります。

しかし、親権の判断では、その他の諸事情が総合的に考慮されます。

特に、子供が小さい場合、監護の継続性(これまで主として子供の養育を行ってきた方を優先する)を重視する傾向にあります。

したがって、これまで子供の食事を作る、風呂に入れる、健康管理をしている、などの状況があり、かつ、うつ病の程度が重くなければ親権について、獲得できる可能性はあると考えられます。

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まとめ

以上、夫のせいでうつ病になってしまった場合の離婚問題について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

夫が離婚に応じてくれない場合、法定の離婚原因の要件を満たすかが問題となります。

また、状況しだいでは、夫に対して慰謝料を請求できる可能性があります。

親権については、軽度のうつ病であって、かつ、その他有利な事情があれば、獲得できる可能性があります。

もっとも、これらの判断は具体的状況に応じて、専門的知識と経験をもとに行わなければなりません。

そのため、正確な見通しを立てるために、離婚問題に精通した弁護士にご相談されることをお勧めします。

この記事がうつ病と離婚の問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

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