DV夫の特徴とは?リスクと対処法を解説|チェックリスト付

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

DV夫とは、家庭において、妻に対して身体的・精神的・経済的・性的暴力を行う夫のことを言います。

幸せな結婚生活を夢見ていたにも関わらず、夫からの暴力で苦しんでいる方は多いです。

一見、真面目そうで良い旦那さんに見えたとしても、家に戻った途端、DV夫に豹変する男性も世の中には沢山います。

DV被害はときとして、命に関わるほどの深刻な影響をもたらします。

ここでは、DVに強い弁護士がDV夫の特徴、リスクや対処法をわかりやすく解説いたします。

DV夫の被害に苦しまれている方はぜひ参考になさってください。

DV夫とは?

DV夫とは、家庭において、妻に対して身体的・精神的・経済的・性的暴力を行う夫のことを言います。

なお、DVとは、ドメスティック・バイオレンス(Domestic Viorence)の略であり、家庭内又は親密な関係の中での暴力のことを指します。

DVと夫婦喧嘩との違い

DVは支配的で、加害者が相手を支配しようとすることが特徴です。

身体的、精神的、経済的な支配やコントロールを行い、恐怖や不安を引き起こします。

これに対し、夫婦喧嘩は一般的な意見の衝突や感情の高まりから生じる口論であり、お互いに対立することがありますが、支配的なパターンや継続的な暴力は特に見られません。

DVは単なる夫婦喧嘩と異なり、後述するような深刻な影響をもたらすことが懸念されます。

 

DV夫とモラハラ夫との違い

モラハラは精神的な嫌がらせのことを指します。

DVのうち、精神的DVについては、モラハラと重なりますが、一般的に「精神的DV」の方が「モラハラ」よりも被害の程度が深刻なイメージがあります。

 

DV夫の心理とその原因

DVを行う夫の心理としては、妻に対する支配とコントロールの欲求と考えられます。

その原因は多岐にわたりますが、一般的には、過去のトラウマや虐待の経験、ストレスや情緒的な問題、社会的文化的な影響があげられます。

 

 

DV夫の特徴

DV夫には、次のような特徴が見られます。

外面が良い

DV男性は、家の中では暴力をふるいますが、ご近所の方や職場仲間、友人、相手の親など周囲の人間からは良い男性だと高い評価を受けていることが多いです。

しかし、良い男性を演じていると、徐々にストレスが溜まりやすくなります。

我慢の限界が頂点に達した時、妻に暴力をふるうという最悪のケースを生み出すのです。

また、日頃から褒めるのが上手な男性も要注意です。

誰かを褒めるのは良いことですが、自分の評価を良くすることだけに集中しがちなため、自分が傷つけられた時は一気に相手を攻撃するかもしれません。

束縛する

一見、とても愛されているように見えますが、束縛がエスカレートすると、常に相手の行動を監視しないと気が済まなくなります。

外出する度に、行き先や帰宅時間、誰といくのかなど、自分の行動を相手に報告するとなると、好きで一緒になった男性でも嫌気がさしてきます。

束縛する男性は、「いつか捨てられるのではないか…」と不安を抱えている方が多いですが、同情してしまうと、束縛が暴力に発展する可能性もあるので気をつけましょう。

相手によって態度を変える

社会的立場が上の人間には、とても礼儀正しく接し、自分よりも下だと思う人間には、王様のように偉そうな態度をとる男性も要注意です。

また、支配力が強く自分がすべて正しいと思い込んでいると、たとえ自分に非があったとしても聞く耳を持ちません。

そんな方は、すべて責任を他人に押し付ける傾向がありますので、相手と衝突することが多くなるでしょう。

あわせて読みたい
DVの種類と被害者の特徴

 

あなたの夫はDV夫?〜チェックリスト〜

DV被害者の方は、長年にわたってDV夫から「お前が悪い」などの暴言を浴びさせらつづけているため、「自分が悪い」と洗脳されている方が多い傾向です。

そのため、夫の行為がDVかが判断がつかなくなっている可能性があります。

ここでは、どのような言動がDVに該当する可能性があるか、チェックポイントをご紹介します。

DVチェックリスト

 

 

DV夫の問題点

被害が深刻であること

DVは、妻に対する暴力という悪質な犯罪行為です。

DVには、ケガで済むようなものもありますが、ときとして被害者の命を奪うという痛ましい事件も発生してます。

身体的な暴力以外でも、決して軽視はできません。

精神的DVは、目には見えない言葉の暴力です。

言葉の暴力を受け続けると、ストレスによる、イライラ感、倦怠感、無力感、不眠、食欲不振などが現れます。

症状が進行すると、抑うつ状態になります。

「自分は価値のない人間だ。」「自分がすべて悪い。」「社会に適合できない人間だ。」などと思うようになって、何をする気も起きない(無気力状態)、何をしても楽しいと思えなくない、何に対しても興味がないといった状態になっていきます。

さらに悪化すると、うつ病になり、被害者の心は修復不可能なまでに破壊されます。

このように、DV被害はとても深刻であり、早急に手を打つべき犯罪であることを肝に銘じる必要があります。

 

 

DV被害の状況

当事務所には、DV被害者の方から多くのご相談が寄せられています。

政府の発表でも、女性の約3人に1人、男性の約5人に1人は、配偶者から被害を受けたことがあり、女性の約7人に1人は何度も受けているとの統計データがあります。

被害の内容としては、身体的暴力が最も多く、次いで心理的攻撃、経済的圧迫、性的強要の順となっています。

DVの種類 内容 被害経験者の割合
身体的暴力 殴る、蹴るなど 17.4%
心理的攻撃 暴言、監視、嫌がらせ、脅迫など 13.7%
経済的圧迫 生活費を渡さない、貯金を使う、働くことを妨害するなど 6.8%
性的強要 性交の強要、避妊しない、ポルノを見せるなど 6%

根拠:内閣府男女共同参画局|男女間における暴力に関する調査報告書

 

 

DV夫を治す方法はない!?

夫のDVを治すことができれば、それが一番の解決法です。

DVを治すためには、まず、加害者自身が自分の言動がDVに該当するということに気づき、かつ、それを正そうという気持ちが必要です。

そして、実際に、医師に相談して治療を受けるべきだと思います。

しかし、現実的に、夫のDVを治すことは決して簡単ではありません。

当事務所の離婚事件チームは、DVについて、多くのご相談が寄せられていますが、DV夫が反省して、治療を受けるようになるケースはほとんどありません。

DV夫に対して、被害者のつらい気持ちなどを伝えても、多くの夫は、「自分は悪くない」と言ってDVの事実を否定します。

そして、「妻の方に落ち度があった」「自分の言動は妻を正しくするためのものだった」などと言って、自分を正当化します。

このような対応を取ってくると、夫婦関係の修復は難しいと言えます。

 

 

DV夫から暴力を受けている場合の対処法

DV夫から逃げる〜別居をする〜

DVの内容や被害者の状況にもよりますが、DV事案では、「別居すること」が最重要だと思われます。

DVの内容が殴る・蹴る等の身体的な暴力の場合、最悪、生命に関わります。

また、暴言などの精神的な暴力であっても、日常的に行われ、被害者がつらい目にあっている場合、そのまま一緒に生活を続けると精神が崩壊する可能性もあります。

実際に、身体的な暴力よりも、精神的な暴力の方が重傷といえるケースが多々あります。

そのため、「言葉の暴力だから」といって、軽く考えないことが大切です。

したがって、夫のDVが治りそうにない場合は、専門家のサポートを受けながら別居することを検討した方がよいでしょう。

まずは別居して、安全を確保してから、冷静な状態で離婚を考えるという方法もあります。

別居サポートについてはこちらのページをご覧ください。

なお、収入が少ない妻が別居すると、別居中の生活費について心配されると思われます。

しかし、別居後、婚姻費用と言って、双方の年収に応じた生活費は請求することが可能です。

 

DV夫との離婚を検討する

相手がDV夫の場合、離婚を検討される方が多くいます。

そこで、ここでは、DVを理由に離婚できるかを解説します。

協議・調停離婚

日本では、相手が離婚に同意すれば、離婚届に署名して役場に提出することで離婚することが可能です。これを協議離婚といいます。

また、家裁に離婚調停を申し立てて、話し合いによって離婚することも可能です。これを調停離婚といいます。

しかし、協議離婚・調停離婚は、相手の離婚への承諾が必要です。

相手が離婚に応じなければ、法律上は夫婦関係が継続することとなります。

 

裁判離婚

相手が離婚に応じない場合、離婚裁判を提起することとなります。

裁判では、民法という法律に規定する事由(民法770条1項・「離婚原因」といいます。)に該当すれば、離婚判決が出ます。

この離婚原因は、次の5つが規定されています。

離婚原因(民法770条1項)
  1. 相手方に不貞行為があったとき
  2. 相手方から悪意で遺棄されたとき
  3. 相手方の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重大な理由があるとき

DVについては、上記の「5.婚姻を継続し難い重大な理由」に該当する可能性があります。

例えば、入通院を伴うような強度の身体的な暴力があった場合などは該当しやすいと思われます。

しかし、軽度の暴力や精神的暴力、経済的暴力などの場合、裁判離婚は簡単ではありません。

これらについては、仮にその事実が証明できたとしても、「婚姻を継続し難い重大な理由」に該当しないと認定される可能性があります。

また、DV夫が事実関係を否認した場合、妻側でDVの存在を立証する必要があります。

入通院を伴うような身体的暴力の場合、診断書やカルテなどでDVを証明できる傾向にあります。

しかし、入通院がない場合や言葉の暴力などの場合、DVを証明するのが困難な傾向です。

したがって、裁判所が離婚を認めない可能性があります。

 

保護命令の申立てを検討する

保護命令とは、DV加害者からの暴力を防ぐために、被害者からの申し立てにより、裁判所が加害者に対し、被害者に接近してはならないこと等を命ずる命令です。

DV夫からの暴力が悪質で、今後も継続する状況の場合、保護命令の申し立ても視野に入れる必要があります。

 

DV夫への慰謝料請求

DVが離婚原因となり、離婚に至った場合、離婚慰謝料が認められます。

その際に、判決となった場合、慰謝料は100万円から300万円程度の認定がなされる可能性があります(神戸地裁平成6年2月22日判決)。

もっとも、DV事案では慰謝料の幅が広く、具体的な金額は状況によって異なります。

また、DV夫の暴力を示す証拠を確保することは難しく、立証できない場合、慰謝料は認められません。

そのため、DV夫への慰謝料請求については、DVに強い専門の弁護士に相談すべきです。

 

 

DV夫問題の相談窓口

DV夫の問題については、具体的な状況に応じて警察、配偶者暴力相談支援センター等の行政の窓口、弁護士などが考えられます。

いきなり警察に相談すると大変なことになるのではないか

行政窓口だと抜本的な解決にならないのではないか

などの疑問が生じ、どこに相談すべきかわからないという方がいらっしゃいます。

相談窓口で迷われたら、DVに強い専門の弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

DVの専門家であれば、相談者のおかれた具体的な状況を分析し、今後取るべき行動や注意すべきことを助言してくれるでしょう。

 

 

DV夫に関するQ&A

DVから逃げる方法はありますか?

DVから逃れる方法としては、通常別居を検討します。

その上で、保護命令の申し立ての必要性を検討しましょう。

ただし、緊急の場合はすぐに警察に通報するなどの対処も必要となります。

いずれにせよ、DV問題に精通した弁護士の助言のもと、行動されることをお勧めいたします。

DV夫の末路はどうなる?

DV夫の末路は、DVを行う夫の行動、彼らが受ける支援、その他の状況によって影響されます。

例えば、離婚して孤独になる、逮捕・起訴されて有罪判決を受ける、治療やカウンセリングを受けて立ちなおる、などのケースが想定されます。

 

まとめ

DV夫の特徴や対処法、離婚可能性等について解説しましたが、いかがだったでしょうか?

パートナーがDV夫の場合、被害者の方は、とても悲しく、つらい目にあわれていると思います。

ご自身では、現状を的確に分析し、今後の対応方法を考えるのは困難だと思われます。

まずはDVにくわしい弁護士にご相談の上、対策の助言を受けるようにされて下さい。

当事務所には、離婚問題に精通した弁護士で構築される離婚事件チームがあります。

離婚事件チームの弁護士は、すべての弁護士がファイナンシャル・プランナーの資格を保有し、離婚後の生活設計を含めたきめ細やかなサポートを行っています。

また、税理士、税務調査士、労務調査士等の専門家も在籍しており、離婚の悩む方々をサポートしています。

あわせて読みたい
ご相談の流れ

 

 

なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?   

続きを読む