恥骨骨折はいつから歩ける?治療期間とリハビリの禁忌

恥骨骨折とは、骨盤の一部である恥骨という骨が、外部からの強い力などによって折れてしまうことをいいます。
恥骨骨折が治るまでの期間は、概ね2〜6ヶ月程度です。
骨折の度合いにもよりますが、発症から2週間前後は安静にし、痛みのピークが落ち着いてから徐々に歩行を開始していくのが一般的な目安となります。
もし交通事故で恥骨骨折を負った場合、後遺障害等級が認定されれば、慰謝料だけで約110万円〜290万円(弁護士基準)、賠償金の総額では1,000万円を超えるケースもあります。
しかし、恥骨骨折はレントゲンでは骨折が判明しにくく、適切な検査(CTやMRI)や申請を行わないと、本来もらえるはずの補償を受けられないリスクがあります。
この記事では、恥骨骨折の基礎知識から、適正な慰謝料を獲得するためのポイントまで分かりやすく解説します。
目次
恥骨骨折とは?主な症状と原因
恥骨骨折とは、骨盤の一部である恥骨という骨が、外部からの強い力などによって折れてしまうことをいいます。
恥骨骨折は、レントゲンでははっきりと骨折していることがわからないこともあり、MRIやCT(特にCTが有用)で判明することも多いです。
恥骨は、骨盤の前の方に位置しています。
恥骨の場所については、下記のイラストをご参照ください。

恥骨骨折の症状
恥骨骨折の症状としては、以下のようなものがあります。
- 足の付け根や下腹部付近の痛み
- 股関節を動かすときの激しい痛み
- 恥骨部分を押すことで生じる圧痛
- 腫れや内出血
- 歩行が難しくなる
さらに重症の場合には、排尿時に痛みが生じることもあります。
恥骨骨折の原因
恥骨骨折の原因としては、以下のような状況が考えられます。
交通事故のケース
- バイクでの転倒
スリップや接触により転倒し、地面に骨盤を強打した
- 歩行中の衝突
歩行中に正面から車が衝突し、バンパー等と骨盤が強く接触した
労災事故(仕事中)のケース
- 高所からの転落
足場など高いところから落ちて、地面に骨盤を強打した
- 機械への挟まれ・激突
作業中にプレス機やフォークリフト等が骨盤に強く当たった
交通事故や労災事故で骨盤を強打し、痛みが続く場合は、恥骨骨折等を疑った方が良いでしょう。
恥骨骨折の治療期間と安静期間|いつから歩ける?
恥骨骨折はどれくらいで治る?
恥骨骨折がどれくらいで治るかは、骨折具合や個人差で変わりますが、概ね2〜6ヶ月程と考えられます。
ただ、完治するとは限らず、痛みや股関節の可動域など後遺症を残してしまう可能性があります。
恥骨骨折で安静にしないといけない期間
安静にしないといけない期間は、骨折具合等にもよりますが、2週間前後が一つの目安になるかと思います。
ケースバイケースなところではあるので、詳しくは主治医に確認されるのがベストです。
恥骨骨折はいつから歩ける?
恥骨骨折をしても、症状が軽い場合は基本的に歩くことができます。
ただし、自分の判断で歩こうとするのではなく医師と相談しながら歩行を開始することが大切です。
仕事復帰できる時期の目安
仕事復帰できる時期は、骨折の程度や仕事内容によって異なります。
一般的な目安としては、事務職などのデスクワークの場合1〜3ヶ月程度、肉体労働など体を動かす仕事の場合には3〜6ヶ月程度かかる場合もあります。
恥骨骨折の治し方と禁忌
恥骨骨折の治療法(保存療法と手術)
恥骨骨折の治療方法は、保存療法と手術の2つがあります。
骨折の程度が軽微で、骨のズレが大きくない場合には、保存療法で安静にして骨がくっつくのを待ちます。
骨折により骨が大きくズレているような場合には、手術が必要になります。
骨折部分について、プレートで固定するなどして、骨をくっつけるための手術を行います。
恥骨骨折でやってはいけないこと(禁忌)
恥骨骨折の禁忌(きんき=やってはいけないこと)は、骨盤付近を無理に動かしたり刺激しないことです。
特に安静期間には、仕事等で骨盤付近に負担をかけるようなことは避けるようにしましょう。
恥骨骨折の場合に可能性のある後遺障害等級と注意点
| 可能性のある後遺障害等級 | 症状 | |
|---|---|---|
| 変形障害 | 12級5号 | 骨盤の骨が変形してしまった |
| 神経症状 | 12級13号 | 骨盤付近に痛みが残ってしまった |
| 14級9号 | ||
| 機能障害 | 8級7号 | 股関節が動かしにくくなってしまった |
| 10級11号 | ||
| 12級7号 | ||
| 下肢の短縮障害 | 8級5号 | 骨盤がゆがんで足が短くなってしまった |
| 10級8号 | ||
| 13級8号 | ||
| 正常分娩困難 | 11級10号 | 女性の産道が狭くなり正常な分娩が困難になった |
骨が変形してしまった場合〜変形障害〜
恥骨骨折により、骨盤の骨が変形してしまった場合、以下のような後遺障害等級があり得ます。
| 等級 | 後遺障害の基準 |
|---|---|
| 12級5号 | 骨盤骨に著しい変形を残すもの |
骨盤骨に著しい変形を残すものとは、裸になった状態で明らかに変形がわかる状態のことをいいます。
裸になった状態で明らかに変形がわかる状態が12級5号の要件なので、レントゲン等でなければ変形がわからないような事案では、認定は難しいでしょう。
なお、裸になった状態で明らかに変形がわかる状態を立証するためには、負傷部位の裸体写真を撮影して自賠責保険に提出することが有効です。
骨盤付近に痛みが残ってしまった場合〜神経症状〜
骨盤付近に痛みが残ってしまった場合、以下のような後遺障害等級があり得ます。
| 等級 | 後遺障害の基準 |
|---|---|
| 12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
恥骨骨折は、レントゲンだけでは発見しにくいものになっていますので、病院ではMRIやCT画像(どちらかというとCTが有用)を撮ってもらうようにしてください。
また、骨がしっかりくっついて治った場合は、12級13号の認定は厳しく、14級9号が認定されるかどうかの問題となってきます。
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは、痛みやしびれが残っていることが医学的に「証明」可能と言える場合のことを指します。
医学的に証明可能とは、具体的には、痛みやしびれの存在が画像所見(レントゲン、MRI、CT)により裏付けられている場合をいいます。
14級9号 局部に神経症状を残すもの
「局部に神経症状を残すもの」とは、痛みやしびれが残っていることが医学的に「説明」可能と言える場合のことを指します。
医学的に説明が可能とは、画像所見はないものの、痛みやしびれなどが残り、それが治療経過、症状の一貫性・連続性などから医学的に一応説明できる場合のことをいいます。
股関節(こかんせつ)が動かしにくくなってしまった場合〜機能障害(股関節の可動域制限)〜
恥骨骨折によって、股関節が事故前よりも動かしにくくなることがあります。
このように、以前よりも動かせる幅が狭くなってしまう障害を股関節の機能障害(股関節の可動域制限)といいます。
股関節の可動域制限があった場合、以下のような後遺障害等級があり得ます。
| 等級 | 後遺障害の基準 |
|---|---|
| 8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
| 10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
| 12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
※3大関節とは、股関節、ひざ関節、足関節のことをいいます。
可動域制限は、患側(かんそく=異常のある側)と健側(けんそく=問題のない側)との比較で判断されます。
そのため、後遺障害診断書では、必ず患側だけでなく健側の可動域も記載してもらうようにしましょう。
8級7号 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
「関節の用を廃したもの」とは、次の①〜③のいずれかに該当するものをいいます。
- ① 関節が強直したもの
- ② 関節の完全弛緩性麻痺(かんぜんしかんせいまひ)またはこれに近い状態にあるもの
- ③ 人工関節、人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
10級11号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、次の①〜②のいずれかに該当するものをいいます。
- ① 関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
- ② 人工関節・人工骨頭をそう置換した関節のうち、8級7号以外のもの
12級7号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているもの
足が短くなる〜下肢の短縮障害〜
恥骨骨折等によって、最終的に骨盤がゆがんで足が短くなってしまうことがあります。
短くなっているかどうかは、左右の足の長さを比較して(患側と健側を比較して)、以下の違いがあれば後遺障害等級が認定されます。
| 等級 | 後遺障害の基準 |
|---|---|
| 8級5号 | 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
| 10級8号 | 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
| 13級8号 | 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
下肢が短縮しているかどうかは、上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)と下腿内果下端(かたいないかかたん)の間の長さを左右で比較して判断します。
上前腸骨棘は、腰付近のでっぱりの骨です。
下腿内果下端は、くるぶし付近のことです。

計測方法を間違えていないか心配な方は、専門家(弁護士)に確認してもらったほうが良いです。
正常分娩困難
恥骨骨折等が原因で、女性の産道が狭くなり、正常な分娩が困難になった場合は以下の後遺障害等級があり得ます。
| 等級 | 後遺障害の基準 |
|---|---|
| 11級10号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
恥骨骨折でもらえる慰謝料相場
入通院慰謝料
恥骨骨折で入院や通院をした場合、入通院慰謝料(傷害慰謝料ともいいます)を請求できます。
入通院慰謝料とは、入院や通院を要したことで被害者に生じた精神的苦痛に対する金銭的な補償のことです。
入通院慰謝料は、最も金額が高くなる裁判基準の場合、入院や通院の期間に応じて目安が決められています。
入通院慰謝料の裁判基準は、軽傷用の基準と重傷用の基準に分かれていますが、恥骨骨折の場合は、以下の重傷用の基準を用いて計算をします。
例えば、1ヶ月入院して、6ヶ月通院した場合には、149万円が入通院慰謝料となります。

入通院慰謝料について、詳しくは以下のページをご覧ください。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ってしまった場合に発生する慰謝料のことです。
後遺障害慰謝料は、認定される後遺障害等級によって相場が決まっています。
恥骨骨折の場合の認定される可能性のある後遺障害等級ごとの後遺障害慰謝料(裁判基準)は、以下のとおりです。
| 後遺障害等級 | 裁判基準の相場 |
|---|---|
| 12級5号 | 290万円 |
| 後遺障害等級 | 裁判基準の相場 |
|---|---|
| 12級13号 | 290万円 |
| 14級9号 | 110万円 |
| 後遺障害等級 | 裁判基準の相場 |
|---|---|
| 8級7号 | 830万円 |
| 10級11号 | 550万円 |
| 12級7号 | 290万円 |
| 後遺障害等級 | 裁判基準の相場 |
|---|---|
| 8級5号 | 830万円 |
| 10級8号 | 550万円 |
| 13級8号 | 180万円 |
| 後遺障害等級 | 裁判基準の相場 |
|---|---|
| 11級10号 | 420万円 |
後遺障害慰謝料について、詳しくは以下のページをご覧ください。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残った場合の将来の収入減少に対する補償のことをいいます。
後遺障害逸失利益は賠償項目の中でも最も高額になることが多く、1000万円を超える金額になることも多いです。
後遺障害逸失利益の計算方式は、以下のとおりです。
後遺障害逸失利益について、詳しくは以下のページをご覧ください。
休業損害
恥骨骨折のケガをして仕事を休んだ場合、休業損害を請求できる可能性があります。
休業損害は、基本的に減収があった場合にのみ請求できます。
したがって、会社員の場合で仕事を休んでも会社の温情などで給料が下げられなかった場合、休業損害は請求できません(ただし、有給休暇を使用した場合は例外的に休業損害を請求できます)。
なお、主婦の場合でも、事故によって家事に影響を与えた場合は、女性の平均賃金を基礎収入として休業損害を請求できる可能性があります。
休業損害の計算方法など、詳しくは以下のページをご覧ください。
その他実費
慰謝料や休業損害とは別に、治療や通院のために直接支払った費用も全額請求の対象です。
- 治療費・調剤費(手術・検査・投薬・リハビリ代など)
- 通院交通費(電車・バス代、ガソリン代、駐車場代、タクシー代)
- 入院雑費(日用品代・通信費などの定額費用)
- 装具・器具の購入・レンタル費用(松葉杖、車椅子、骨盤ベルトなど)
- 文書料(警察提出用・保険請求用の診断書発行費用)
あなたの恥骨骨折の賠償金はいくら?自動計算機ツール
上記でご紹介した損害等について、手っ取り早く計算できるツールがあります。
各項目を少し入力するだけで、概算の損害を自動で計算してくれます。
どのくらいの賠償金になりそうかすぐに知りたい方は、ぜひご活用ください。
恥骨骨折で適切な賠償金を得る5つのポイント

①適切な治療を受ける
まずは、なんと言っても適切な治療を受けて、恥骨骨折を治すことを目指しましょう。
骨折の場合、整骨院等ではなく、病院に通うべきです。
そして、病院の先生の指示に従って必要なリハビリ等を行っていくことが肝心です。
なお、保険会社は、一方的に治療費の打ち切りを言ってくることがあります。
もっとも、病院の医師がまだ治療が必要と言っている段階では、治療の打ち切りは行われるべきではありません。
治療の必要性が肯定できる段階では、保険会社と治療の打ち切り交渉をしていくべきです。
治療の打ち切り交渉は、基本的に専門家の弁護士の力を借りた方が良い結果になることも多いです。
治療の打ち切りについて、詳しくは以下のページをご覧ください。
②後遺障害診断書を作成してもらう
恥骨骨折のケガをしてから、十分な治療を行ったにもかかわらず、何らかの後遺障害が残った場合は、加害者側の自賠責保険に対して、後遺障害の申請をすべきです。
後遺障害の申請に必須な書類として、「後遺障害診断書」というものがあります。
後遺障害診断書は、主治医に書いてもらうものになります。
後遺障害診断書は、後遺障害申請書類の中でも非常に重要性の高いものですから、被害者の訴えている自覚症状が書いていない場合や、誤記がある場合は、主治医に書き直してもらう方が無難です。
後遺障害診断書について、詳しくは以下のページをご覧ください。
③後遺障害申請はなるべく被害者請求で
後遺障害申請方法には、被害者側で申請する被害者請求と、保険会社が申請する事前認定の2種類があります。
被害者請求は、被害者が自分自身で提出書類を決めることができるため(事前認定の場合は保険会社が提出書類を決める)、後遺障害認定の確率を少しでも上げようと思ったら、後遺障害の申請方法は被害者請求を選択すべきです。
被害者請求は、弁護士が被害者の代理で行うことができるため、専門家である弁護士に任せた方がなお良いでしょう。
被害者請求について、詳しくは以下のページをご覧ください。
事前認定について、詳しくは以下のページをご覧ください。
④賠償金を裁判基準で算定する
賠償金の基準は、大きく分けて3つあります。
その3つとは、自賠責基準、任意保険会社基準、裁判基準です。
3つの基準の中で、最も金額が大きくなるのは裁判基準です。
そのため、賠償金は、全ての項目において基本的に裁判基準で計算すべきです。
なお、保険会社は、交渉段階において、弁護士が介入していないと裁判基準では認めてくれない傾向にあります。
慰謝料の裁判基準等について、詳しくは以下のページをご覧ください。
慰謝料の自賠責基準について、詳しくは以下のページをご覧ください。
⑤交通事故や労災に詳しい弁護士に相談する
交通事故や労災に詳しい弁護士に相談して、今後の対応について適切なアドバイスを受けましょう。
弁護士に依頼すれば、交渉などの面倒なことを任せることができます。
特に、後遺障害については難解な知識が要求されますので、一度は弁護士にご相談されることをお勧めします。
交通事故で弁護士に依頼するメリットなどについて、詳しくは以下のページをご覧ください。
まとめ
上記で解説したとおり、恥骨骨折は複数の後遺障害が考えられ、認定される後遺障害等級によって賠償金が大きく異なります。
適切な賠償金を得るためには、後遺障害申請を慎重に行うべきであり、そのために専門家の知識が必要となってきます。
デイライト法律事務所には交通事故や労災等の事故関係の案件に注力する弁護士のみで構成される人身障害部があり、日々事故の被害者の方の味方となって活動しております。
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恥骨骨折のケガをされた方は、まずはデイライト法律事務所にお気軽にご相談ください。













