住宅ローンがある場合の婚姻費用の算定方法を教えてください。
私は、妻と別居を検討しています。その場合は、私が家を出ていくことになると思います。
別居後、婚姻費用を支払わなければならないと聞いたのですが、住宅ローンがあるため、適正額をいくらと判断して良いかわかりません。住宅ローンがある場合の婚姻費用の考え方を教えてください。
婚姻費用は、算定表を用いて、適正額が決まります。そして、婚姻費用には、衣食住に関する一切の費用が含まれるため、「住」に関する費用である住宅ローンも、その中に含まれてしまうようにも思えます。
しかし、このように形式的に考えると、住宅ローンつきの住居から、夫が出て行く形で別居を開始することになった場合などに、妻側がもらえる婚姻費用の額が少なくなりすぎてしまいます。
一方で、婚姻費用として全く考慮しないとなると、夫が高額の支出を強いられ苛酷な結果になることが起こりえます。
この問題に対して、実務上、いろいろな考え方がありますが、ここでは一例をご紹介したいと思います。
では、具体的にはどう考えるのが妥当でしょうか。
くり返しになりますが、住宅ローンには、婚姻費用に含まれる「住」の側面と、財産分与の対象となる資産形成の側面があるため、その調整ということで、次のように考えると良いでしょう。
すなわち、夫の年収から住宅ローン1年間分を控除して、その額を算定表に当てはめるという方法です。
具体例
妻:専業主婦
夫:年収500万円
1年間の住宅ローンの返済総額が100万円
夫の年収を400万円(500万円 – 住宅ローン100万円)と見立てて、
算定表を当てはめることになります。
以上のように、住宅ローンと婚姻費用の調整は複雑ですので、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめいたします。
住宅ローンがある場合の婚姻費用の3つのポイント
①適切な額の婚姻費用を算定する
住宅ローンを支払っている場合の婚姻費用の事案では、ケース・バイ・ケースではありますが、上記のように、義務者の年収から住宅ローンの年間負担額を控除して、婚姻費用を算定する手法を取る調停や審判例が多いという印象です。
これに対して、次のような処理もたまに見られますが、裁判例ではあまり採用されていないと思われます。
住宅ローンの額を婚姻費用の額から控除する
例えば、住宅ローンが月額 7万円、年収に相当する婚姻費用の額が 15万円の場合、8万円(15万円 − 7万円 = 8万円)を支払うという主張。
この場合、権利者側がもらう婚姻費用の額が少なくなりすぎるという問題があります。
また、上記のように、住宅ローンは賃料と異なり、資産形成に資する面があるので、その全額を婚姻費用から控除するのは問題があるといえます。
住宅ローンの負担を全く考慮しない
他方で、住宅ローンの負担について、婚姻費用の算定おいてまったく考慮せずに主張されることもあります。
自分自身が居住していない、相手方居住の自宅のローンを負担しているのですから、相手方の居住費の一部を負担していると評価すべきであり、このような処理も問題があるといえます。
婚姻費用は、離婚が成立するまでの生活費の負担であることから、「一時的な義務」のように考えている方もいらっしゃいます。
しかし、婚姻費用の合意した金額が今後の離婚協議に大きな影響を与える可能性があります。
そのため、適切な額の婚姻費用の算定が重要となります。
他方、婚姻費用の算定は素人判断では難しい場合があります。
できれば離婚に詳しい弁護士にご相談の上進めていかれることをお勧めします。
②婚姻費用の調停を申し立てられる可能性
婚姻費用の額を一方的に決めて支払うと、その額に相手方が納得せずに、婚姻費用の分担調停を申立てられる可能性があります。
婚姻費用の調停は、平日の昼間にあり、多くの方は会社を休んで出廷されています。また、通常月1回程度ですが、期間としては半年を超えることもあり、大きな負担となることがあります。
そのため、可能な限り、協議で解決した方がよいと思わます。
協議での解決するために、婚姻費用の額についての説明や根拠などを相手方に分かりやすく伝えてあげるとよいでしょう。
③離婚条件の協議が必要
婚姻費用は、離婚協議の中で重要なゴールではありますが、あくまでゴールは「適切な条件で離婚を成立させること」です。
婚姻費用の協議にばかり集中しすぎて、肝心の離婚協議が後回しになることがあります。
スピーディーに解決したいのであれば、婚姻費用の協議を他の離婚条件と同時並行的に進めていった方がよいでしょう。
特に、離婚条件の中で、財産分与は時間がかかります。そのため、財産分与が問題となるような事案では、双方が財産開示を行うなどして協議を行っていくことがポイントとなります。
婚姻費用の算定方法等についてくわしくはこちらをごらんください。
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