養育費の事情変更とは?減額となるのはいつから?

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者・3級ファイナンシャルプランナー

養育費は、事情変更によって、増減額請求ができます。

相談者の方に多いのは、「算定表の額とかけ離れた合意をしてしまったのですが、養育費の増額(減額)はできますか?」というご相談です。

しかし、裁判所は、合意内容が算定表による額とかけ離れていたということだけでは、事情変更にはあたらないと考えていますので、注意が必要です。

 

養育費の事情変更についての考察(特に基準日)

典型的な事情変更にあたるのが、養育費の支払義務者(多くは父)が再婚し子をもうけ扶養家族が増えたというケースです。

しかし、この場合も、より深く審判例をみていくと、合意や審判時に予想可能であった場合には、養育費の額を変更すべき事情変更にはあたらないとしているのです。

 

事情変更の一般論

事情変更というのは、合意の際から現時点(例:審判時)にかけて、判断の前提となる事情が変更されたという場合です。

つまり、あの時とは状況が変わったというイメージです。

そして、養育費の場合において、事情変更があったとして修正すべきではないかを判断する際には、例えば、

  • 客観的事情に変更があったこと(例:年収が変わったこと)
  • その変更を、予想できなかったこと
  • その事情変更が、当事者の責任により生じたわけではないこと
  • 元々の合意どおりの内容を維持することが、公平に反すること

などの諸事情を総合的に考慮することになります。

以下、詳しく見ていきます。

 

合意や審判時に予測可能であったというのはどういう場合か?

例えば、離婚時の養育費の合意の際に、義務者が不貞相手と既に同居をしていたような場合がそれにあたるでしょう。

ちょっと想像していただきたいのですが、不貞相手と結婚するために、妻の離婚の同意を得るべく高額な養育費で合意することは実務上も少なくありません。

そのようなケースで、離婚成立後、実際に不貞相手と結婚ないし子をもうけたからといって、事情変更を主張して養育費の減額を求めるのは明らかに不当といえるのではないでしょうか。

そのため、裁判所も、そのような場合には事情変更は認めないのです。

 

養育費はいつの時点から減額になるか?

では、事情変更が認められる事例で、養育費はいつの時点から減額になるのでしょうか?

減額の請求の意思を明確にしたときからなのでしょうか。それとも、事情変更の事情が発生したときに遡るのでしょうか。あるいは、審判時からなのでしょうか。

この問題については、種々の見解があるところだと思います。

この点については、請求の意思を明確にしたときとするものが比較的多いように思います。

「請求の意思を明確にしたとき」というのは、例えば、養育費の増額(減額)調停を申し立てた時点という場合です。

他方で、以下のような審判例もあります。

判例 東京家審昭34・4・13の審判例

この審判例は、「若し扶養義務消滅事情が発生しそのため客観的に扶養義務内容が減少、消滅しているときには、既に支払済となっている過去分は現在の状況に徴して返還せしめ、若し未払になっているときには、事情変更により残存義務のみの義務に変更せしめるということになる。」と判示していることから、事情変更の事情が発生したときに遡るとしています。

養育費の事情変更については、後から、事情変更事由が生じていたことを知ることも少なくないと思いますので、ある意味では妥当です。

しかし、任意で支払っていたものまで過去の事情変更時に遡って清算するのが妥当かは、個人的には疑問が残ります。すでに費消してしまったものまで、返還まで求めるのは酷な気もします。

多くの審判例は、上記の事情変更に関する原則をベースにしつつ、個別具体的な事情によって、若干の修正を加えているという印象を受けます。

このように、養育費の事情変更とその基準日には争いがあるところです。

 

 

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