DNA鑑定で、自分が父親じゃなかった・・・養育費はどうなる?

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

 

私は結婚して妻との間に子も設けました。ところが、どうもこの子が私に似ていなかったため、DNA鑑定を受けました。

その結果、自分の血を引いた子どもではなく、自分が父親でないことが明らかとなりました

その事実がどうしても受け入れられないため、やむなく離婚を考えていますが、養育費は支払いたくありません。

自分の子ではないのだから、養育費を払う必要はないですよね?

弁護士の回答

子どもが自分の血を引いていなかったことが明らかになったとしても、妻が婚姻期間中に懐胎した子は夫の子と推定されます。(民法772条1項)

そのため、生物学上の父子関係が認められない場合でも、養育費は支払わなければならない場合がありえるため、十分注意しておく必要があります。

参考:民法|e-Gov法令検索

 

養育費支払義務はあるのか?

子どもが自分の血を引いていなかったことが明らかになったとしても、妻が婚姻期間中に懐胎した子は夫の子と推定されるため(民法772条1項)、法律上は夫の子として扱われます。

参考:民法|e-Gov法令検索

そのため、この法律上の親子関係を解消しない限りは、養育費の支払義務が発生します。

夫側としては、この推定を覆すため、嫡出否認の訴えを提起する必要があります。しかし、「子の出生を知った時から1年以内に提起しなければならない」ため(民法777条)、現実には難しい場合が多いと思われます。

嫡出否認の訴えが提起できない場合は、親子関係不存在確認の訴えを提起することになります。

これは期間制限もないため、嫡出否認の訴えに比べると利用しやすい類型になります。

もっとも、過去の判例では、DNA鑑定で生物学上の父子関係が認められなかったにもかかわらず、法律上の親子関係の不存在を認めなかった例もあります(最高裁平成26年7月17日)。

したがって、生物学上の父子関係が認められない場合でも、養育費は支払わなければならない場合がありえるため、十分注意しておく必要があります。

 

 

離婚できるのか?

DNA鑑定をした結果、子どもが自分の血を引いていなかった場合、妻に対する信用を失うことになるのは間違いありません。

この場合、確実とはいえませんが、妻が婚姻期間中に不貞行為をしたことが明らかであれば、離婚が認められる可能性が高くなります。

また、妻が、他の男性の子どもであることをひた隠しにし、夫の子であるかのような虚偽の説明をしていた場合は、それ自体が「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚が認められる可能性があります。

他方、双方ともに夫婦の子であると信じていた場合など、妻に非があるとまではいえない場合は、離婚が認められない可能性があります。

離婚が成立する条件についてはこちらをご覧ください。

 

自分の子でないとわかった場合の問題点

当事務所には、結婚後、DNA鑑定で実の子ではなかったことがわかったと言って、ご相談に訪れる方がたくさんいらっしゃいます。

数多くの相談実績を誇る離婚弁護士が「自分の子でないとわかった」について、解説いたします。

離婚訴訟は長期化する

DNA鑑定で自分の子でないとわかった場合、妻側に不貞行為があるのが明らかですので、妻は有責性となります。

したがって、離婚訴訟を提起すれば、ほぼ勝訴は確実です。

しかし、離婚訴訟は解決まで長年月を要します。

また、離婚訴訟前に、調停前置といって、離婚調停を申立てなければなりません。

相手方が離婚に応じれば問題ありませんが、仮に離婚に応じない場合、解決まで長期化する傾向にあります

 

当事者同士の話し合いは困難?

相手方が離婚に応じてくれれば、日本では、裁判所を通さない「協議離婚」が法律上認められています。

しかし、現実には、相手方に対する不信感、怒り、恐怖、などのマイナスの感情が強く、当事者同士では冷静な話し合いは難しいかと思われます。

話がまとまらない以上、第3者に間に入ってもらうなどの手を考えたほうがよいでしょう。

 

婚姻費用の支払い義務がある

相手方と離婚するまでの間、通常、夫側は妻に対して婚姻費用を支払わなければなりません。

婚姻費用は、通常、養育費よりも高額になります。

そのため、相手方が離婚に応じてくれず争ってくれば、夫側の負担は重くなります

 

DNA鑑定で自分の子でないとわかった場合のポイント

DNA鑑定ポイント

実の子でない事案の場合、共通した傾向が見られます。

上記で解説した問題点を踏まえて、うまく進めていくためのコツについて、解説するのでご参考にされてください。

 

まずは話し合いで解決を試みる

上記のとおり、裁判所で離婚を進めるとなると、長年月を要する可能性があります。

もちろん、裁判所の手続きにもメリットはありますが、解決までの期間を考えると、まずは当事者同士での話し合いによる解決を目指してみてはいかがでしょうか。

ご質問のケースは、DNA鑑定で実の子ではないと判明しているため、相手方に帰責事由があることが明らかな事案です。

相手方に帰責事由があるケースでは、相手方も裁判は避けたいと考えるのが一般的であり、協議による解決の可能性は十分あると思われます。

ただし、相手方から養育費や財産分与などの金銭請求がされた場合、その妥当性については専門家に相談しつつ、進めていかれた方がよいでしょう。

 

適切な第3者に入ってもらう

当事者同士での解決が難しい場合、第3者に仲介に入ってもらうことを検討します。

この場合、双方共通の知人などが候補者として考えらます。

共通の知人であれば、相手方も心を開いて話しやすいからです。

自分の両親などの親族の場合、親族も感情的になってしまうおそれがあるため適任か否かを慎重に判断された方がよいでしょう。

また、士業の専門家であれば、離婚に詳しい弁護士の方がよいでしょう。

弁護士以外にも行政書士、司法書士などの専門家もいますが、弁護士と異なり、相手方と交渉する代理権がないため仲介役となることが法的にできませんので注意されてください。

 

婚姻費用には妥協しない

離婚までの間、相手方から生活費を請求される可能性があります。

この生活費は婚姻費用といって、収入が多い方(通常は夫側)が少ない方(通常は妻側)に支払う義務があります。

注意しなければならないのは、あくまで適正額についてのみ支払うということです。

適正額は双方の年収や子供の数・年齢によって決まります。

婚姻費用の適正額についてはこちらをごらんください。

例えば、適正額が月額10万円だったとします。

相手方から婚姻費用15万円を請求されて、適正額を調べずに安易に合意してしまうと、離婚協議が長引いたときに負担が大きくなってしまいます。

また、一度合意してしまうと、後から減額したくても、減額はできない可能性があります。

ご質問のケースでは、相手方に不貞行為があったと考えられる事案です。

このようなケースでは、婚姻費用について、算定表上の適正額よりも減額される可能性もあります。

相手方が不貞行為を行った場合の婚姻費用についてはこちらをご覧ください

婚姻費用については専門知識が必要な場合があるため、できれば専門家にご相談の上、進めていくのがよいでしょう。

 

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