離婚の訴状の書き方とは?【弁護士が解説】

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

離婚裁判は、訴状の作成から始まります。

離婚の訴状は、「記載すべき事項」が法令で定めてあります。

また、記載内容に不備があると裁判所から補正を求められることがあります。

弁護士でも、離婚を専門としていないと、訴状の不備があることが多く、訴状を提出した後に訂正をしている場面をよく見かけます。

ここでは、離婚の訴状の記載要領について、詳しく解説しています。

離婚の訴状を作成される際は、ぜひ、ご参考にされてください。

 

離婚訴訟の訴状の注意点

訴状には、次の事項を記載します(民事訴訟規則53条1項)。

  • 請求の趣旨
  • 請求の原因
  • 請求を理由づける事実
    (具体的に記載し、かつ、立証を要する事由ごとに、当該事実に関連する事実で重要なもの及び証拠を記載する。)

記載例 離婚裁判の訴状の記載例

請求の趣旨や請求の原因という言葉は、弁護士には日常用語ですが、素人の方にはわかりにくいと思われます。

請求の趣旨とは、離婚裁判において、相手(被告)に請求する内容をいいます。

もっとも、なんでも請求できるわけではなく、裁判で請求できる内容は限られます。

例えば、「離婚を求める」は請求できますが、離婚裁判では「謝罪を求める」などは請求できません。

具体例を見た方がイメージがわくと思いますので、サンプルを示します。

第1 請求の趣旨

  1. 原告と被告とを離婚する。
  2. 原告と被告との間の長女松子(○年○月○日生)、長男竹男(○年○月○日生)及び二男梅男(○年○月○日生)の親権者を原告と定める。
  3. 被告は、原告に対し、判決確定の日から前記未成年者らが成人に達するまでの間、毎月末日限り、前記未成年者ひとりにつき1か月○万円の金員を支払え。
  4. 被告は原告に対し、財産分与として金○○万円を支払え。
  5. 被告は、原告に対し、金○○万円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  6. 原告と被告との間の別紙年金分割のための情報通知書記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定める。
  7. 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

上記は、妻(原告)が浮気・不倫をした夫(被告)に対して、離婚裁判を起こす場合の訴状に記載する請求の趣旨のサンプルです。

1項で離婚を求め、2項で親権、3項で養育費、4項で財産分与、5項で慰謝料、6項で年金分割を求めていますが、簡潔に、必要最小限のことを記載します。

なお、7項は訴訟費用の負担を被告とするものです。

訴訟費用と聞くと、「弁護士に支払う報酬」をイメージされる方が多いのですが、そうではありません。

訴訟費用とは、法律で定められたもので、印紙代等の手数料や切手代等をいいます。訴状には必ずついてくるおまけのようなものなので、あまり気にしない方がよいでしょう。

離婚請求(1項)の他の要求事項のうち、親権(2項)、養育費(3項)、財産分与(4項)、年金分割(6項)の要求事項を「附帯処分」といいます。

慰謝料(5項)は、損害賠償請求であって、本来、家庭裁判所が管轄ではなく地方裁判所が管轄となります。

したがって、附帯処分ではありませんが、離婚裁判の場合、「人事訴訟に係る請求と当該請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求」として、家裁に訴えを提起できます(人事訴訟法17条1項)。

 

仮執行宣言について

財産権上の請求に関する判決については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができます(民事訴訟法259条)。

例えば、慰謝料を請求した場合、勝訴しても相手から控訴されると確定しないため、確定するまで支払ってもらうことができません。

このとき、判決に仮執行宣言がつくと、相手から控訴されても、仮に執行が可能となる、すなわち、強制執行が可能となります。

そのため、訴状には請求の趣旨に「仮執行宣言を求める」と記載することも多くあります。

しかし、離婚裁判の場合、離婚慰謝料は、離婚が確定してはじめて慰謝料が発生すると考えられています。

したがって、離婚慰謝料を請求する場合、裁判所は仮執行宣言をつけません。

このような理由で上記サンプルには仮執行宣言を記載しておりません。

 

離婚裁判の請求の原因について

請求の原因とは、請求を特定するために必要な事実のことをいいます。

請求を理由づける事実については、具体的に記載し、かつ、立証を要する事由ごとに、当該事実に関連する事実で重要なもの及び証拠を記載しなければなりません。

附帯処分についても同様です(人訴規則19条)。

下表は、請求する内容(請求の趣旨)に応じた記載すべき内容について、チェック項目をまとめたものです。

 

離婚

※離婚原因とは、次の5つのどれかをいう。

  1. 被告の不貞行為(民法770条1項1号)
  2. 被告の悪意の遺棄(民法770条1項2号)
  3. 被告の生死が3年以上不明(民法770条1項3号)
  4. 被告が強度の精神病で回復の見込みがない(民法770条1項4号)
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)

婚姻生活の経過を長々と記載するのではなく、上記を基礎づける具体的な事実を記載する。
実務上は、5.のその他婚姻を継続し難い重大な事由を記載することがほとんど。
1.から4.のどれかを主張する場合でも、認められない場合に備えて5.も記載した方がよい。
5.を主張しない場合、裁判官から主張しないか釈明される場合がある。

親権

(被告を親権者として申し立てても構わない。)

養育費

ただし、被告の収入が不明な場合は記載しなくて良い。

収入の証明資料:源泉徴収票、所得証明書、確定申告書など

財産分与

ただし、相手の財産については、離婚調停時に相手が財産開示に協力しなかったなどの理由で不明の場合は記載しなくて良い。

慰謝料

年金分割

なお、当事務所では、離婚裁判の訴状の書き方について、記載例のダウンロードが可能です。

ダウンロードは無料ですので、こちらのページをご覧ください。

 

 

管轄と移送の問題

離婚裁判の土地管轄は、原告又は被告が普通裁判籍を有する地等を管轄する家庭裁判所の管轄に専属すると規定されています(人事訴訟法4条1項)。

合意管轄が認められない
この点、離婚調停や通常の民事訴訟の場合、当事者の合意で管轄を定めることができるのに対して、離婚裁判では合意管轄や応訴管轄が認められていないため注意が必要です。
自庁処理は例外的な措置
家庭裁判所は、離婚裁判がその管轄に属しないと認める場合においても、離婚調停がその家庭裁判所に係属していたときであって、調停の経過、当事者の意見その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、自ら審理及び裁判をすることができと規定されています(人事訴訟法6条)。

この規定があることから、離婚調停が行われた家裁に離婚裁判を提起する代理人がいますが、自庁処理はあくまで例外的な措置であって、単に離婚調停が行われたことをもって、自庁処理が認められるわけではないので注意が必要です。

 

 

離婚裁判の裁判所に支払う手数料

離婚裁判を提起するためには、収入印紙と郵便切手が必要となります。

基本的な手数料は下表のとおりですが、印紙代等は請求する内容によって異なるため、正確な額は弁護士に確認されたほうがよいでしょう。

請求内容 手数料 備考
原則:離婚のみを請求する場合 印紙代:1万3000円

郵便切手:5350円
(内訳:500円と100円は各7枚、82円・20円・10円・2円・1円は各10枚)

非財産上の請求として訴額が160万円とされている(民訴費4条2項)

郵便切手は被告が1名増えるごとに1082円を2組ずつ増額

離婚裁判において慰謝料も請求する場合 印紙代:請求する慰謝料の額で決定 例:請求額が500万円の場合 印紙代は3万円

慰謝料の請求額が160万円以下の場合は1万3000円

附帯処分を申立てる場合 養育費、財産分与、年金分割を求める場合、訴えの手数料とは別に、1200円の納付が必要 子供が数人いる場合、子一人につき1200円

 

まとめ

以上、離婚の訴状の書き方について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

訴状の記載は弁護士でもミスが多いため、気をつけて作成すべきです。

もっとも、訴状の記載要領は、形式的な事項が多いため、弁護士であれば、事前に調べておくことで不備を回避することが可能です。

この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てば幸いです。

なお、離婚の訴状のサンプル・見本について、当法律事務所はホームページ上に公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。

離婚裁判の訴状のサンプル・見本の閲覧・ダウンロードはこちらから

 

 

 

なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?   

続きを読む