駐車場での当て逃げ事故|対処法や注意点を弁護士が解説

執筆者:弁護士 木曽賢也 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)


駐車場で当て逃げ事故を起こされた場合の対処法などを、交通事故を多く扱う弁護士が解説いたします。

当て逃げとは

そもそも、当て逃げとは、車両同士等の接触事故を起こしているにもかかわらず、警察への報告や危険防止措置をとらずに立ち去ることをいいます。

 

 

駐車場で当て逃げされた場合の対処法

駐車場で当て逃げされた場合は、以下の対応をするのが望ましいです。

①加害車両の情報をメモする

加害者の人相、車種、車の色、登録ナンバー等、できるだけメモをして後に加害者を特定できるようにしておきましょう。

メモの手段は、紙にメモする、携帯のメモ機能を使うなど、どのような手段でも構いません。

 

②警察へ連絡する

事故に遭ったことを、早めに警察に連絡しましょう

警察へ連絡することにより、後に交通事故証明書を入手できるようになります。

交通事故証明書について、詳しくはこちらをご覧ください。

また、警察が加害者特定のための捜査をしてくれる可能性もあります

 

③証拠になるものを確保する

後々の賠償金請求などを考えた時に、被害者としては証拠になるものをできる限り確保する必要があります

以下は、証拠を確保する場合の例です。

自車の写真を撮影

被害者の車両の損傷部分を写真撮影しておくことをお勧めします。

理由としては、後で加害者が特定できた場合に、損害の確認や加害者から「事故と関係のない傷だ!」と言われないようにする等の必要があるからです。

特に、事故直後に撮影された写真は、信用性が比較的高いです。

スマホの写真が証拠になるかどうかについて、詳しくはこちらをご覧ください。

駐車場の管理者へ連絡

駐車場の管理者へ連絡して状況を伝え、防犯カメラがある場合は、その画像見せてもらえるか等をお願いしてみるのも良いかと考えます。

特に、駐車場などに設置されている部班カメラ映像は、保存期間が短いことも多く、早急に連絡する必要があります

ドライブレコーダーの確認

自車のドライブレコーダー映像を確認し、衝突の瞬間、加害者車両の登録ナンバー等を把握することが重要です。

よくある事態として、映像が上書きされてしまい、肝心の事故映像が消えてしまうということがありますので気をつけてください

目撃者の確保

事故の目撃者がいる場合は、その方に事故の状況等を伺います。

可能であれば、目撃者と連絡先を交換し、後日証言をしていただけるか打診してみるのも良いかと思います。

 

④加入している保険会社へ連絡する

ご自身で加入されている保険会社にも連絡してみましょう。

最終的に加害者が特定できない場合でも、

  • 物損であれば、車両保険
  • 人損であれば、人身傷害保険等

の何かしらの保険は使用できる可能性があります。

ただし、車両保険を使用した場合、ご自身の保険料が上がる場合がほとんどなので、注意が必要です。

車両保険について、詳しくはこちらをご覧ください。

人身傷害保険について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

⑤怪我がある場合は早めに病院に通院する

事故によって負傷された場合、早めに病院に通院するようにしてください。

事故から期間が空いて通院した場合、事故との因果関係が否定されて治療費等の補償がなされない可能性があります

交通事故の通院について、詳しくはこちらをご覧ください。

また、最終的に加害者が特定できない可能性もありますので、労災案件ではない場合は、基本的に健康保険を使用して治療費を抑えておいたほうが良いです。

健康保険での通院について、詳しくはこちらをご覧ください。

ただし、駐車場事故は、一般的に衝撃が軽微とみなされる可能性が高く、治療の必要性は後々争われるリスクがあります。

 

⑥加害者特定後、示談交渉する

加害者を特定し損害が確定した後は、物損や人損について示談交渉をしていくことになります。

加害者が任意保険に加入している場合、任意保険会社の担当者と交渉することになります。

示談できれば、加害者もしくは加害者加入の任意保険から賠償金を受領して事件終了となります。

加害者側との交渉について、詳しくはこちらをご覧ください。

示談交渉の開始時期等について、詳しくはこちらをご覧ください。

過失割合10対0の場合にはご自身での示談交渉が必要

被害者の方に過失が全くない、過失割合10対0の事故の場合、被害者が加入している保険会社は示談交渉してくれません

このようなケースで保険会社が交渉してしまうと、いわゆる「非弁行為」に該当してしまうからです。

10対0の事故の場合に、被害者加入の保険会社が交渉できない理由について、詳しくはこちらをご覧ください。

もっとも、ただでさえ事故が起きたことで被害者の方に精神的負担がかかっているので、そのような状況下で示談交渉もするとなると、とても過酷な状況だと思います。

そのため、可能であれば、示談交渉を弁護士に任せるということも検討すべきでしょう。

弁護士に依頼すれば、

  • 交渉窓口を弁護士に設定できる
  • 物損や人損につき、適切な賠償を獲得しやすくなる

などのメリットがあります。

交通事故で弁護士に依頼するメリットについて、詳しくはこちらをご覧ください。

駐車場事故の過失割合について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

駐車場で当て逃げをしてしまったらどうなる?

駐車場で当て逃げをしてしまった方は今後警察からの取り調べや逮捕が予想されます。

以下の参考になさってください。

駐車場での当て逃げはどういう処罰になる?

当て逃げをしてしまった場合は、以下の刑事罰が科せられる可能性があります。

違反の内容 刑事罰
救護措置義務違反(人損の場合) 5年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法72条1項前段、117条1項)
救護措置義務違反(人損で人の死傷が当該運転者の運転に起因するものである場合) 10年以下の懲役または100万円以下の罰金(道路交通法72条1項前段、117条2項)
救護措置義務違反(物損の場合) 1年以下の懲役または10万円以下の罰金(道路交通法72条1項前段、117条の5第1号)
事故報告義務違反 3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金(道路交通法72条1項後段、119条1項10号)

参考:道路交通法|e−Gov法令検索

また、以下の行政責任を負う可能性があります。

違反の内容 行政責任(加算点数)
安全運転義務違反 2点
危険防止等措置義務違反 5点

 

当て逃げしたら刑事事件専門の弁護士に相談

当て逃げは重罪であるため、捜査機関は容疑者を特定するため活動している可能性が高いです。

容疑者は防犯カメラ、目撃情報、被害車両に付着した塗装等から判明することがあります

容疑者が特定できれば、突然、警察が自宅や会社を訪問し、逮捕することもあります。

そのため、自首をし、被害者との示談を進めていくことをお勧めいたします。

この場合、刑事専門の弁護士に相談なさるとよいでしょう。

刑事事件に強い弁護士であれば自首同行のサポートや被害者との示談交渉を行ってくれるでしょう。

 

 

よくある質問

警察はどこまで調べてくれる?

ケースバイケースです。

加害者特定の証拠が揃っている場合は、加害者特定まで捜査してくれる可能性が高いです。

逆に、証拠が乏しい場合は、捜査を途中で断念せざるを得ないケースもあるかと思います。

証拠の確保も警察が行ってくれる場合もありますので、事故後、できる限り早めに警察に連絡するようにしましょう

 

知らない間に当て逃げされていた場合、どうしたらいい?

すぐに警察に連絡し、現状の証拠を確保しましょう。

特に、ドライブレコーダーの精査や目撃者の確保等は早急におこなってください。

また、ご自身の加入されている保険会社にも連絡し、アドバイスを受けてください。

 

駐車場での当て逃げ事故でも保険はおりる?

加害者が特定できた場合は、加害者側の保険会社へ請求可能です。

加害者が特定できない場合は、ご自身が加入されている保険会社で使用できる特約があれば賠償金を受領できます

以下は、当て逃げ事故の場合に使用できる保険等のまとめです。

物損 人損
使用できる可能性のある保険
  • (加害者の)対物保険
  • (被害者の)車両保険
  • (加害者の)対人保険
  • (被害者の)人身傷害保険
  • (被害者の)無保険者傷害保険
  • 労災保険
  • 政府保障事業

相手方が無保険の場合について、詳しくはこちらをご覧ください。

ひき逃げの場合の治療費について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

まとめ

以上、駐車場での当て逃げについて、対処法や注意点について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

当て逃げをされたら、①加害車両の情報をメモする、②警察へ連絡する、③証拠になるものを確保する、④被害者が加入している保険会社に連絡する、⑤怪我がある場合は早めに病院に通院する、⑥加害者特定後、示談交渉する等の対応が必要となります。

また、駐車場での当て逃げ事故は、早期に適切な対応をすれば、加害者が特定でき、損害賠償を請求できる可能性があります。

重要なのは、焦らず、落ち着いて対処することです。

当事務所には交通事故に注力する弁護士のみで構成される専門チームがあり、当て逃げ問題でお困りの方を強力にサポートしています。

また、当て逃げをしてしまった方については、当事務所の刑事事件専門の弁護士がサポートいたします。

当て逃げ事故については、当事務所までお気軽にご相談ください。

 

 

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