モラハラ夫の弱点とは?妻が知っておくべきポイント

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  


モラハラ(モラル・ハラスメント)とは、精神的暴力のことで、わかりやすく言えば、言葉や態度による「嫌がらせ」です。

モラハラをする夫(モラハラ夫)は、頭がよく弁が立つと思われていることも多いですが、実は、

  1. ① 思い通りに動かせない人には弱い
  2. ② 物理的な距離を置かれることには弱い
  3. ③ 自分よりも立場が上の人には弱い
  4. ④ 世間体や人目を気にする
  5. ⑤ コンプレックスを抱えていることが多い

といったような弱点を持っています。

ここでは、モラハラ夫の弱点、妻が知っておくべきこと、モラハラ夫から解放されるためのポイントについて解説いたします。

モラハラに悩む妻の方はぜひ参考になさってください。

モラハラ夫の5つの弱点

モラハラ夫に見られることが多い弱点としては、次のようなものが挙げられます。

①思い通りに動かせない人には弱い

モラハラ夫は、他人を思い通りに支配・コントロールすることで快感を得たり、自分を特別な存在だと感じたりしています。

一方、自分の言うことを聞いてくれなかったり、思い通りの反応を示さない人には弱いです。

そのような人からは満足が得られませんし、自分がその人を支配している特別な存在だと感じることができなければ、強く出ることもできません。

 

②物理的な距離を置かれることには弱い

モラハラ夫は、妻を思い通りにコントロールすることで快感を得ており、それに依存してしまっています。

そのため、モラハラ夫にとって、妻はなくてはならない存在であり、妻に物理的な距離を置かれることは、到底受け入れることができません。

仮に妻が別居した場合は、あらゆる手段を使って連れ戻そうとします。

力で連れ戻そうとするばかりでなく、「オレも悪かった。反省しているから戻ってきて欲しい。」と泣いたり、土下座してみせたりすることもあります。

本当に反省しているということではなく、そこまでしなければならないほど、妻が自分の元を離れていくことを恐れているということです。

 

③自分よりも強い人には弱い

モラハラ夫は、上司など、自分よりも立場が上の人や、権力のある人には強く出られず、媚びへつらう傾向にあります。

もっとも、尊敬するとか、礼節を重んじるとかではなく、自分の出世にかかわる、利用価値があるといったような、自己中心的な考え方からそうなっていることが多いです。

主従関係でしか人間関係をとらえることができないので、人と信頼関係を築くことも苦手です。

また、モラハラ夫の中には、母親に甘やかされて育ったことなどが影響し、自分の母親には逆らえず、何でも母親の言うとおりにするという人もいます。

④世間体や人目を気にする

モラハラ夫は、一般的に自己肯定感が低く、他人からどう見られているか、いつも気にしています。

他人によく見られるため、ブランド品で身を固めたり、体型に気を付けている人もいます。

また、家の中では妻に「お前は家事もできない能なしだ」「母親失格だ」などと言っていたとしても、他人の前では妻のことを褒めて、「いい夫」や「いい父親」を演じたりもします。

 

⑤コンプレックスを抱えていることが多い

モラハラ夫は、学歴などにコンプレックスを抱えていることも多いです。

自分の学歴などは隠す一方、妻やその親族の学歴や職業をけなして優越感を得ようとすることもあります。

 

ワンポイント

モラハラ夫の弱点を突けば、「モラハラをやめてくれる」又は、「モラハラ夫に仕返しができる」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、不用意に弱点を攻撃するのは得策とは言い難く、現実的でもないと思われます。

モラハラ夫は、妻を思い通りに動かすことに過剰な自信を持っているため、妻が急に自分に無関心・無反応になったり、自分の弱点を指摘するようになったりすると、激高して暴れたり、モラハラがエスカレートする恐れがあります。

また、モラハラの被害を受けている方は、モラハラ夫によって主体性や判断力を奪われてしまっている状態にあるため、距離を置くこと以外の方法でモラハラ夫に対抗するのは、実際上困難です。

後に詳しく解説しますが、モラハラ夫から解放されるためには、物理的な距離を置くのが一番です。

そのため、弱点を攻撃することに気を取られず、まずは別居を検討するなど、ご自身や子どもの安全を最優先するようになさってください。

モラハラ夫の特徴と対応方法について、詳しくはこちらをご覧ください

 

 

モラハラ夫をもつ妻が知っておきたいポイント

モラハラの被害は深刻であること

モラハラによってストレスを受け続けると、頭痛、めまい、吐き気、胃痛、生理不順などの身体的な症状や、イライラ、不眠、気分の落ち込み、意欲低下、無気力、自尊心の低下、さらには死にたくなるなどの心の症状が現れます。

また、モラハラを受けたことにより、モラハラから解放された後も傷跡が癒えず、苦痛を感じ続けたり、生活に支障が出たりする場合もあります。

このように、モラハラの被害は、場合によっては死に至ることもある重大なものです。

しかし、モラハラによる心の傷は目には見えません。

そのため、身体的な暴力がある場合に比べ、モラハラの被害は軽視されがちです。

被害者自身も、モラハラの被害を受けていることについて、自覚していないこともあります。

モラハラ夫に、「お前がオレを怒らせるのが悪い」などと言われ続けることで、苦しんでいても、「私が悪いから夫が怒るんだ」「私さえ我慢すればいい」と思い込んでしまうのです。

また、モラハラについて、世間の認識は決して高くはありません。

そのため、被害者が周囲の人に相談をしたとしても、「そのくらい我慢したら?」「あなたの方に落ち度があったのでは?」などと言われ、理解を得られないことも多いです。

このような状況から、モラハラの被害は、被害者も気づかないうちに、どんどん深刻化していってしまう場合もあります。

 

モラハラは治らないことが多い

モラハラの被害にあわれている方は、夫が変わってモラハラがなくなってくれることを願っているかもしれません。

しかし、モラハラは治らないことが多いのが実情です。

モラハラ夫が自分に非があることを認めることは、滅多にありません。

また、モラハラ夫は、妻を支配することで快感を得て、依存しているため、そこから抜け出すことが困難になってしまっています。

 

別居しても治らない?

モラハラ夫は、妻に別居されると、すぐに「オレが悪かった。反省している。」などと言ってくることが多いです。

そのような夫を見て、妻も「改心してくれたんだ」と思ってしまうこともあります。

しかし、夫が本気で改心しようとしているケースはまれであり、妻を連れ戻すためのセリフに過ぎないことがほとんどです。

夫のコトバを信じて戻っても、夫は何にも変わっておらず、裏切られてさらに苦しめられてしまうケースも多いです。

モラハラを治すためには、夫自身が自分の問題を自覚して、自分から専門家の適切なサポートを受けるなどして改善に取り組むことが必要です。

仮に、夫自らそのような行動を起こした場合は、その様子次第では夫婦関係の修復について話し合う余地も出てくるかもしれません。

しかし、その場合でも、カウンセリングなどを受けたという表面上の事実だけにとらわれず、本当に改善したのか、慎重に見極める必要があるでしょう。

 

モラハラを理由とする離婚は難しい

モラハラ夫の場合、妻の求めに応じて離婚に合意するケースは多くはありません。

合意で離婚ができない場合、離婚するには、裁判で離婚判決をもらう必要があります。

そして、離婚判決をもらうためには、法律で定められている条件(「離婚原因」といいます。)がある必要があります。

モラハラによって夫婦関係が破綻し、修復不可能な状態になった場合は、離婚原因のうち、「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)に該当すると認められる可能性があります。

引用元:民法|電子政府の窓口

そのため、モラハラを理由に裁判で離婚をすることはできます。

ただ、モラハラがあったと認めてもらうためには、モラハラを証拠によって裏付ける(立証する)必要があります。

モラハラの証拠としては、暴言や誹謗中傷などの発言内容の録音・録画やメール・LINEなどがあります。

しかし、録音等が難しい状況もありますし、「無視」「不機嫌な態度」といった形のモラハラの場合は証拠に残すことが困難です。

このように、立証の点から見ると、モラハラを理由とする離婚は難しい傾向にあるといえます。

ワンポイント

裏を返せば、モラハラを理由に離婚するためには、証拠集めが重要になります。

必要な証拠や注意点は事案により異なりますので、モラハラに詳しい専門家のアドバイスを受けながら、着実に進めることをおすすめいたします。

 

 

モラハラ夫から解放されるためには

モラハラ夫と物理的な距離をとる

先に述べたとおり、モラハラ夫が改心することは基本的にはまず期待できません。

そのため、モラハラ夫から解放されるためには、自分から別居し、物理的な距離を取る必要があります。

経済面などを考えると離婚の決心がつかないという場合も多いと思われますが、必ずしも離婚を前提に家を出る必要はありません。

まずはモラハラ夫の支配から抜け出し、自分を取り戻すことが大切です。

また、家を出ることを事前に夫に知らせる必要もありません。

むしろ、事前に夫に知らせると、あらゆる手段で妨害してきたり、モラハラがエスカレートする可能性もあるので、別居の準備や別居当日の段取りは、夫に気づかれないように慎重に行う必要があります。

その他にも、必要な荷物の持ち出しなど、気を付けるべき点はいくつかありますので、別居に当たっては、モラハラに精通した専門家のサポートを受けることをおすすめいたします。

 

弁護士に間に入ってもらう

法律相談~別居のサポート

まずはモラハラに理解のある弁護士に相談をされることをおすすめいたします。

モラハラを受けている方の中には、モラハラ夫が怖い、別居後・離婚後の生活が不安、子どもが心配といった理由から、「別居はできない」「離婚はできない」と思い込み、一歩を踏み出すことができない方もいらっしゃいます。

そのような場合は、弁護士に相談し、法的に取りうる手段や、今後の見通しなどについて知ることで、モラハラ夫からの解放への一歩を踏み出しやすくなります。

また、別居を決意した場合は、弁護士に別居のサポートを依頼することもできます。

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別居を弁護士がサポート

 

モラハラ夫との窓口になる

モラハラ夫は、妻が別居したとわかると、ひっきりなしに電話をかけたり、大量にメールやLINEを送ったり、妻の実家に押しかけてきたりして、妻を連れ戻そうとすることがあります。

弁護士に依頼した場合は、別居と同時に「今後の連絡は全て弁護士宛にすること」「妻本人やその親族には直接接触しないこと」等を夫に申し入れることができるため、上記のような事態をある程度阻止することができます。

また、その後は弁護士がモラハラ夫との窓口となるため、ご自身で夫と直接やり取りをする必要がなくなります。

これにより、肉体的・精神的な負担を大幅に軽減することができます。

 

婚姻費用のサポート

別居後は、夫に対してご自身や子どもの生活費(「婚姻費用」といいます。)を請求することができます。

しかし、モラハラ夫の場合は、素直に支払うことは滅多になく、「妻が勝手に出て行った」などと言って一切支払わない姿勢を見せることもあります。

弁護士に依頼した場合は、弁護士が代理人として婚姻費用の請求や交渉、あるいは裁判所の手続き(調停)の対応を行ってくれますので、早期に適正な金額を支払ってもらえる可能性が高くなります。

 

 

離婚のサポート

先にも述べたように、モラハラ夫との離婚はスムーズにいかないことが予想されますので、弁護士のサポートを受けながら、適切に対処していくことをおすすめいたします。

もっとも、モラハラから解放されるための解決方法は様々であり、離婚が唯一の解決策とは限りません。

モラハラ夫と別居し、直接のモラハラ被害から解放されれば、自分を取り戻し、今後のことも冷静に考えられるようになります。

その段階で、経済面や子どものことなど、様々なことを考慮して解決方法を検討するのもよいでしょう。

モラハラ問題に精通した弁護士であれば、具体的な状況に即した、適切な解決案も示してくれるでしょう。

 

 

まとめ

以上、モラハラ夫の弱点、妻が知っておくべきこと、モラハラ夫から解放されるためのポイントついて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

モラハラ夫には弱点がありますが、不用意に弱点を突くとモラハラがエスカレートする可能性もあるので注意が必要です。

モラハラ夫との生活から抜け出すには、まずは物理的な距離を置くことが大切です。

具体的な方法については、モラハラの内容や被害者の方の置かれた環境で異なりますので、まずはモラハラに精通した弁護士に相談されることをおすすめいたします。

当事務所の離婚事件チームは、モラハラ問題を強力にサポートしています。

LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており全国対応が可能です。

モラハラにお悩みの方は、当事務所の離婚事件チームまで、お気軽にご相談ください。

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