即時抗告の期間はいつまで?【弁護士解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

即時抗告とは

即時抗告とは、不服申立て(専門用語としては「抗告」と呼ばれています。)の一種です。

即時抗告は、通常の抗告と異なり、一定の不変期間内(つまり延長できない)に提起することが必要となります。

特に迅速な確定が要求される決定について、法律が明示している場合にのみ認められる不服申立ての方法です。

 

 

即時抗告はいつまでに提起しなければならない?

即時抗告の提起期間は、民事訴訟法、刑事訴訟法、破産法、民事調停法、家事手続法などによって異なります。

例えば、民事訴訟では裁判の告知のあった日から1週間、刑事訴訟では3日です(民事訴訟法332条、刑事訴訟法422条)。

他方で、家事審判や破産手続では2週間の場合もあります(家事事件手続法第86条、破産法9条など)。

「即時」抗告という名称からは、迅速に不服申立てを行わなければならないというイメージを持たれるとお思いますが、各手続により異なるため注意が必要です。

 

 

問題点

即時抗告の期間はわかったとしても、その期間をいつから数えるのか(「起算日」といいます。)、それがいつ満了するのかが不明確であるため、いつまでに即時抗告を行うべきか、判断に迷うことがあります。

そこで、具体例(家事事件)をもとに、起算日や満了日について詳しく解説いたしますので、ご参考にされてください。

具体例子どもを連れて実家へ帰った妻に対して、子の引き渡し、監護者指定の審判を申立てたのですが、認められませんでした。

結果に納得がいかないので、不服を申立てたいのですが、いつまでに行えばよいでしょうか?


【解説】

上記の例のような子の引渡し・監護者指定や婚姻費用などの家事事件の審判に関しては、家事手続法に即時抗告についての規定があります。

そして、家事手続法は、即時抗告の期間について、2週間以内に行わなければならないと定めています(家事事件手続法85条1項)。

引用元:家事事件手続法|e−GOV法令検索

ただ、この2週間については、起算日や終了日が土日などの場合に混乱することがよくあるため、くわしくご説明いたします。

まず、2週間の起算日については、審判書謄本を受け取った日の翌日から起算すると考えてもらって結構です。

詳しく説明しますと、家事手続法には次のように記載されています。

「即時抗告の期間は、特別の定めがある場合を除き、即時抗告をする者が、審判の告知を受ける者である場合にあってはその者が審判の告知を受けた日から、審判の告知を受ける者でない場合にあっては申立人が審判の告知を受けた日(二以上あるときは、当該日のうち最も遅い日)から、それぞれ進行する。」(法86条2項)

ここで、「審判の告知」は通常「特別送達」で行われます。

特別送達というのは、封書に「特別送達」と表示され、郵便職員から名宛人に直接手渡される郵便のことです。

この郵便物の中に「審判書謄本」が入っています。

審判書謄本には、子の引渡し・監護者指定の申立てに対する裁判所の判断とその理由が記載されています。

なお、受取人が自宅にいなくて不在者伝票が入っていた場合でも、あくまで実際に受け取った日の翌日から起算します。

不在伝票を見ても、中身を知ることができないからです。

さて、次に、どうして審判書を受け取った日ではなく、その翌日と考えるかですが、少し話しが難しくなります。

まず、家事手続法34条4項は、民事訴訟法という法律の94条から97条までを準用しています。

(参照条文)
家事手続法第34条4項
民事訴訟法第九十四条 から第九十七条までの規定は、家事事件の手続の期日及び期間について準用する。

次に、民事訴訟法95条1項は、「期間の計算」については民法によると定めています。

(参照条文)
民事訴訟法95条1項
期間の計算については、民法の期間に関する規定に従う。

そして、民法の条文を見ると、週によって期間を定めたときは、期間の初日は算入しないと規定されています。

(参照条文)
民法第140条
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

即時抗告の期間は、2週間と定められているので、「週によって期間を定めたとき」に該当し、初日は除くことになるのです。

なお、民法140条をよく見ると、「ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。」と定めてあります。

これは、午前0時0分0秒ピッタリに審判が来謄本を受け取ったら、翌日ではなく、その日から進行することになるという意味ですが、これが現実に起こることはほぼありません。

以上から、2週間の起算日については、審判書謄本を受け取った日の翌日から起算すると考えてもらって大丈夫です。

次に、2週間の終期についてですが、具体例でご説明します。

例えば、1月7日水曜日に審判書謄本を受け取った場合です。

前述したように、この場合、起算日は翌日の1月8日木曜日となります。

2週間の終期は、1月21日の水曜日となります。

これは、民法に規定があります。

すなわち、民法第143条2項には「週の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週においてその起算日に応答する日の前日に満了する」とある。

この規定によれば、1月7日木曜日が起算日であれば、2週間の期間は、起算日に応答する日(1月22日木曜日)の前日である1月21日(水曜日)ということになります。

(参照条文)
民法第143条2項
週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。

ただし、終期が土日などの場合は注意が必要です。

この場合、民事訴訟法第95条3項により、終期は月曜日となります。

(参照条文)
民事訴訟法第95条3項
期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律 (昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日又は十二月二十九日から十二月三十一日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する。

例えば、1月10日土曜日に審判書謄本を受け取ったとします。

その場合、起算日は1月11日日曜日となります。

2週間後の応答する日(1月25日日曜日)の前日の満了によって終了すると考えると1月24日のように思えますが、その日は土曜日なので、民事訴訟法第95条3項が適用され、翌日である1月26日月曜日に確定するということになります。

 

 

まとめ

以上、即時抗告の提起期間のポイントについて、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

即時抗告の提起期間を過ぎてしまうと、不服申立てができなくなるため注意が必要です。

しかし、提起期間の判断は、素人の方には難しいと思われます。

上記の解説のとおり、即時抗告の期間は手続きによって異なります。

そのため、即時抗告を行う場合、その手続の内容に照らして個別に判断することとなります。

したがって、即時抗告を検討されている方は、その分野に詳しい弁護士へご相談されることをお勧めいたします。

この記事が法律問題でお困りの方にとってお役に立てば幸いです。

 

 

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