私が努力して築いてきた財産は必ず折半しなければいけないの?

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  

財産分与について質問です。

私は会社を経営しています。

妻と結婚してもう20年以上が経ちますが、これまでずっと真面目に働いてきて、従業員も数多くいます。

しかし、妻が私に突然離婚を請求してきました。

財産分与は2分の1と言っていますが、私の場合そのまま2分の1としてしまうと、かなりの金額を渡さなければならなくなります。

もしかしたら会社に、ひいては従業員たちの給料を支払えなくなる可能性もあります。

一方で、妻は浪費家で、高級品をどんどん買いあさり、預金額はほとんどありません。

このような場合でも、単純に2分の1にしなければならないのでしょうか。

 

 

弁護士の回答

経営判断は、代表取締役の才覚によるものが大きいため、2分の1ルールが修正される可能性があります。

会社を設立し、それを大きくしていくというのは、並大抵の努力で成し遂げられるものではありません。

したがって、財産分与の分与割合について夫である相談者に若干有利に判断される可能性があります。

また、妻が不必要な浪費を繰り返していたという場合、財産維持どころか財産逸出行為を行っているということになりますので、その点でも妻の寄与割合が下がる可能性もあります。

婚姻期間全体でいうと、結婚当初は円満であり、ある時点から家庭内別居にいたったなど、実質的に夫婦の協力関係に疑義があるといった事情がある場合は、その点を主張していくことも考えられます。

 

財産分与では折半するのが原則(2分の1ルール)

財産分与とは、同居期間中に夫婦で協働して形成した財産を折半することをいいます。

多くのケースでは、夫の方が高収入で、妻がもっぱら家事育児に従事するという状況にありますので、以下ではそれを前提に説明します。

一般的には、夫が外で仕事ができるのは、妻が家で家事と育児を担っているから、と考えられていますので、よほどのことがない限り、財産分与は2分の1となります。

一方で、高額の資産を形成した場合(1000万円単位、億単位)、夫による才覚がなければそれだけの資産形成はできないのが通常です。

また、妻があまりに不誠実な行為を繰り返したことによって、その財産形成に対する貢献度が低くなる場合もあります。

そのような場合は、単純に2分の1ルールを適用すると、夫が不合理な結果を甘受しなければならなくなります。

そこで、ケースバイケースではありますが、夫に有利に分与割合を修正した例があります。

折半とならなかったケース

夫が、1級海技士の資格を持ち、1年に6か月ないし11か月の海上勤務に当たっていたというケース
夫の資格による海上勤務が財産形成に大きく寄与している、と判断されたため、夫:妻=7:3とされました。
夫が一部上場会社の代表取締役で、婚姻中に220億円の資産を形成したケース

共有財産の原資のほとんどが夫の特有財産であったこと、その運用、管理に携わったのも夫であること、一方で妻が具体的に共有財産の取得に寄与したり、会社経営に直接具体的に寄与したり、特有財産の維持に協力したと認められる証拠がないことから、夫:妻=95:5とされました。

ただし、このケースでは、総財産の5%といっても、妻が取得するのは10億円ですので、決して小さな金額ではない異例の金額であることには変わりません。

折半となったケース

4年という短期間で、夫が800万円の原資を2500万円にまで増大させたケース

投資した有価証券が値上がりしたことによるものですが、夫が何か特殊な勉強をした過去や専門的な分野での勤務経験があったものではなく、偶然的な事象が大きく寄与したという事情があったため、夫:妻=1:1とされました。

しかし、夫婦の一方が競馬により1億9000万円の利益を得たケースにおいては、運によることが大きいとしながら、夫:妻=1:2と判断されたものもあります。

裁判例をみると、夫婦の一方が特殊な資格を取得して、その資格に基づいてその人にしかできない仕事によって築いた財産については、その金額が大きければ大きいほど、その人に有利な分与割合が適用されている印象です。

一方で、運の要素が強いものについては、1:1に近い割合で判断されているようですが(原資がどこから支出されていたかにもよります。)、その運を掴むためにある程度の予測や判断が必要になる場合には、若干その判断をした人に有利な分与割合を適用していると考えられます。

合わせて読みたい
財産分与とは

 

 

相談者の場合

会社を設立し、それを大きくしていくというのは、並大抵の努力で成し遂げられるものではありません。

したがって、財産分与の分与割合について夫である相談者に若干有利に判断される可能性があります。

また、妻が不必要な浪費を繰り返していたという場合、財産維持どころか財産逸出行為を行っているということになりますので、その点でも妻の寄与割合が下がる可能性もあります。

婚姻期間全体でいうと、結婚当初は円満であり、ある時点から家庭内別居にいたったなど、実質的に夫婦の協力関係に疑義があるといった事情がある場合は、その点を主張していくことも考えられます。

 

 

まとめ

大前提である2分の1ルールを動かすことは容易ではありません。

まずは2分の1で考えた場合にどの程度の支払いが出てくるのか、そして、それが原則であるということを覚悟しておくことを忘れてはいけません。

 

 

財産分与

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