モラハラ相手と離婚すべき?必要な手続きや費用を解説

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  

モラハラをする夫又は妻(モラハラ相手)に悩んでいる方は、相手と離婚すべきなのか、どうすれば離婚できるのかがわからず、離婚に踏み出せない状況になっていることも多いと思います。

そこで、ここでは①モラハラ相手と離婚すべきか、②モラハラを理由に離婚できるか、③モラハラ相手と離婚するための手続きの流れ・弁護士費用、④モラハラ離婚で注意すべきポイントについて、解説していきます。

モラハラ相手と離婚すべきか?

モラハラの程度や被害者の方の置かれた環境は様々ですので、「モラハラ相手とは離婚した方が良い」と一概に言うことはできません。

離婚が唯一の解決方法であるとも言い切れません。

例えば、別居をして直接のモラハラ被害から抜け出すことができれば良いというケースもあります。

一方で、縁を切りたい、法律上の夫婦関係を清算したいという場合は、離婚するしかありません。

しかし、このように思っている方でも、「離婚後の生活が不安」「子どもが心配」「相手が怖い」などの理由から離婚するべきか迷っている場合も多いと思います。

その場合は、専門の弁護士に相談し、離婚までの道筋や、離婚した場合の見通しを説明してもらうとよいでしょう。

「離婚するとどうなるのか」がわかれば、どうしたいか、何をするべきかについて具体的に考えることができるでしょう。

いずれにしても、モラハラを受け続ける状況から抜け出すため、一歩を踏み出すことが大切です。

 

 

モラハラを理由に離婚できる?

日本では、夫婦間の合意によって離婚をすることができますが、合意ができない場合は、最終的には裁判で離婚判決をもらわなければ離婚することができません。

離婚判決をもらうためには、「離婚原因」が必要になります。

「離婚原因」とは、離婚できる条件のことであり、法律(民法)で次のように定められています(770条1項)。

引用元:民法|電子政府の窓口

  1. 相手方に不貞行為があったとき
  2. 相手方から悪意で遺棄されたとき
  3. 相手方の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

5つ目の「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、夫婦関係が破綻し修復不可能な状態になっていることをいいます。

そこで、モラハラによって夫婦関係が破綻し修復不可能な状態になったと認められる場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、裁判で離婚が認められる可能性があります。

ただし、モラハラに該当する言動等は、軽微なものから悪質なものまで多岐に渡り、その全てが夫婦関係を破綻させる程度のものであるとはいえません。

また、モラハラは証拠に残しておくことが難しいため、裁判所にモラハラがあったと認めてもらえない場合もあります。

このようなことから、モラハラだけを離婚原因とするのでは、裁判で離婚を認めてもらうことは難しい傾向にあります。

別居期間が長くなれば離婚は認められやすくなる

モラハラが離婚原因として認められない場合であっても、別居が長期(事案によりますが3年~5年程度の場合が多いです)に及んでいるときは、裁判でも離婚が認められやすくなります。

別居が長期に及んでいることは、「婚姻を継続し難い重大な事由」として考慮されるためです。

したがって、モラハラを理由に離婚することが難しくても、時間をかければ、最終的にはモラハラ相手と離婚することはできます。

 

 

モラハラ相手と離婚するための手続きの流れ

弁護士に相談

弁護士に依頼する・しないにかかわらず、まずは離婚問題に詳しい弁護士に法律相談されることをおすすめいたします。

弁護士に相談すると、次のようなメリットを得ることができます。

  • ご自身の状況を整理することができる
  • 今後の見通しを立てることができる
  • 適切な解決方法がわかる

離婚は法律問題ですので、専門知識がなければ、見通しを立てたり、適切な解決方法を判断することは難しいです。

自己判断で進めてしまうと、モラハラ夫(妻)のいいように進められてしまい、後悔することにもなりかねません。

また、置かれた環境は人それぞれですので、方針等は具体的な事情に即して判断する必要があります。

そのため、弁護士に相談し、具体的な事情を踏まえた助言をもらうことが重要です。

別居する

弁護士に相談し、別居した方が良い状況との助言を受けた場合は、まずは別居するようにしましょう。

モラハラ夫(妻)相手に、同居したまま離婚の話し合いを進めていくことは通常困難ですので、ほとんどのケースでは、離婚を進める前提として別居することが必要になります。

弁護士に別居のサポートを依頼した場合は、別居の準備や当日の段取りなどについて弁護士と打ち合わせを行ったうえで、別居を実行することになります。

そして、別居と同時に弁護士から相手に対して通知書を送付し、①今後は弁護士が窓口になること、②依頼者に直接接触しないことなどを申し入れます。

その後は、弁護士が間に入って相手とやり取りをしていきます。

弁護士に依頼しない場合であっても、別居に際しては注意するべき点がいくつかあるので、事前に専門の弁護士の助言をもらうようにしてください。

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婚姻費用の取り決めをする

婚姻費用とは、夫婦や子どもの生活費のことです。

相手よりも収入が少ない場合は、別居後、離婚が成立するまでの間、相手に対して婚姻費用を請求することができます。

逆に、相手の方が収入が少ない場合は、相手から請求される可能性があります。

いずれの場合であっても、適正な金額で取り決めをするためには、専門知識が不可欠となりますので、請求や交渉についても弁護士にしてもらうことをおすすめいたします。

 

弁護士による離婚協議の実施

モラハラ相手と別居して距離をとることができたら、離婚に向けて話し合いをスタートさせます。

協議離婚の方法

話し合いで離婚する方法を「協議離婚」といいます。

当事者間で、①離婚すること自体に合意ができるかどうか、②離婚条件(親権、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割など)はどうするかなどについて話し合いをします。

話し合いの結果、合意することができたら、その内容について「離婚協議書」を作成します。

そして、離婚届を役所に提出すれば、離婚成立となります。

このように、協議離婚は裁判所を利用しないので、時間・労力・金銭面での負担が少なく済みます。

また、裁判所の基準にとらわれない柔軟な解決をすることも可能です。

そのため、まずは協議離婚を目指すのが一般的です。

モラハラ相手への対処法

モラハラ相手と離婚の話し合いをする場合は、弁護士に依頼し、代理人として対応してもらうことをおすすめいたします。

モラハラの加害者と被害者が直接、冷静かつ対等に話し合いをするのは非常に困難なことです。

被害者が自分で対応していると、疲弊していき、離婚できないと思い諦めてしまったり、モラハラ相手が提示した不当な条件を受け入れてしまい、離婚後に後悔することになる可能性もあります。

そのため、相手との直接のやり取りは避け、離婚専門の弁護士に代理人として交渉してもらうようにするのがよいでしょう。

それにより、離婚の意思が固いことを示すとともに、裁判になった場合の見通しを踏まえた妥当な解決を提案することができますので、相手を説得し、合意ができる可能性も高くなります。

もっとも、弁護士が交渉しても、相手が頑なに離婚を拒否する場合などは、それ以上話し合いを進めることは困難です。

その場合は、離婚調停の申し立てを検討しなければなりません。

 

離婚調停

調停とは、裁判所で調停委員会(調停委員という裁判所の職員2名と裁判官(家事調停官)で組織される機関)を仲介に話し合い、合意による解決を目指す手続きのことです。

当事者同士の話し合いで解決ができない場合、まずは調停を申し立てる必要があります。

いきなり裁判(訴訟)を起こして決着をつけることは基本的にはできない決まりになっています(これを「調停前置主義」といいます。)。

調停で話し合った結果、合意ができたら、その内容は裁判所によって「調停調書」という書面にまとめられます。

この調停調書が作成された時点で離婚が成立します。

他方、調停で話し合っても合意に至らなかった場合は、調停は「不成立」として手続きが終了します。

その後、決着をつけるためには、改めて訴訟を起こす必要があります。

モラハラ相手への対処法

先にも解説したように、モラハラを理由に裁判で離婚を認めてもらうことは難しい傾向にあるため、調停段階で離婚を成立させることを目指すべきです。

そのためには、調停委員に「モラハラによって夫婦関係が破綻し修復不可能な状態になっていること」をわかってもらうことがポイントとなります。

そうすることで、調停委員が「離婚はやむを得ないのではないか」というスタンスになるので、調停を有利に進めやすくなることがあります。

もっとも、モラハラの内容を整理して言葉で伝えるというのは、難しいことです。

また、調停委員の中には、モラハラに理解のない人もおり、伝え方が不十分であったりすると「ただの夫婦喧嘩では?」「あなたが過敏に反応しすぎなのでは?」などと思われる可能性もあります。

そのため、事前に、モラハラの内容を詳しく(時系列・シチュエーション等も一緒に)整理しておくとともに、録音やLINE、診断書など、モラハラの証拠となるものをできる限り集めておくことが重要です。

なお、弁護士に依頼している場合は、証拠集めから、調停への同席・フォロー、調停条項(調停調書に記載される合意内容)のチェック等に至るまで、全般的なサポートを受けることができます。

 

離婚訴訟

調停が不成立となった場合は、裁判(離婚訴訟)を起こして離婚を求めることになります。

訴訟は、話し合いではなく、裁判官が当事者の言い分や提出証拠を踏まえて離婚原因があるかどうかを判断し、結論を下す手続きです。

離婚原因があると認められ、離婚判決を出してもらうことができれば離婚が成立します。

なお、訴訟の手続きに乗ったら必ず白黒つけなければならないとは限らず、審理の途中で合意による解決(和解)をすることも可能です。

ただし、和解をするには当事者双方の歩み寄りが必要ですので、離婚それ自体や親権で争っているような場合(お金で調整できないような場合)、和解での解決は難しいでしょう。

訴訟は、法律で定められた厳格なルールに則って進められますので、専門家でないと対応が難しい面があります。

また、先にも解説したとおり、モラハラだけを理由に離婚を認めてもらうことは難しい傾向にあるため、法的観点から戦略を立てる必要があります。

そのため、離婚訴訟をする場合、弁護士に依頼する必要性は高いです。

 

 

モラハラ相手と離婚するための弁護士費用

離婚を弁護士に依頼する場合の費用は、依頼する弁護士(法律事務所)、依頼内容、得られた結果などにより異なります。

そのため一概に言うことはできませんが、最低でも総額で40万円くらいはかかると考えた方がよいでしょう。

詳しくは、依頼を検討している事務所のホームページや、相談時に見積もりを出してもらって確認するようにしてください。

なお、以前は、弁護士費用について、弁護士会としての基準がありました(旧報酬規程)。

現在、弁護士費用は自由化されており、事務所ごとに独自に定めていますが、この旧報酬規程を踏襲しているところも多いので、相場の参考としてご紹介いたします。

旧報酬規程の弁護士費用のまとめ
項目 内容 相場
協議段階 離婚調停 離婚訴訟
着手金 依頼するときに支払う費用 20万円から50万円 20万円から50万円 30万円から50万円
報酬金 事件が終了したときに出来高に応じて生じる費用 20万円から50万円 20万円から50万円 30万円から50万円
相談料 依頼前、相談の際に支払う費用 30分5000円

※上表は、弁護士会の旧報酬規程をベースに作成しています。
慰謝料、財産分与などの経済的利益がある場合は上記に加算されます。

引用元:旧弁護士報酬規程

 

 

モラハラ相手との離婚事例

ここでは、当事務所の解決事例の中から、モラハラ相手と離婚を成立させた方の事例をご紹介いたします。

Yさん(女性)のケース

Yさんは、30年前に夫と結婚し、長年夫からのモラハラに悩まされ心身に不調も生じていました。

依頼を受けた弁護士は、別居のサポートをするとともに、離婚協議を開始しました。

当初、夫は、離婚を拒否していましたが、弁護士が直接の面談を重ね、丁寧に説明・説得したことにより、2か月という短期間で協議離婚を成立させることができました。

Kさん(女性)のケース

Kさんは、結婚生活20年を過ぎた頃、夫のモラハラを原因としたうつ病の発症が判明したことなどから、離婚を決意し、当事務所に相談に来られました。

依頼を受けた弁護士は、別居のサポートをするとともに、夫に対して離婚を申し入れ、婚姻費用も請求しました。

当初、夫は、離婚を拒否し、婚姻費用も支払わないとの姿勢を見せていました。

そこで弁護士は、離婚調停を申し立て、戦略的に粘り強く交渉を重ねました。

その結果、夫は離婚に合意し、長女の学費相当分を養育費として支払ってもらう旨の取り決めもすることができました。

Kさん(男性)のケース

Kさんは、子どもが生まれる少し前頃から、妻からモラハラを受け、うつ状態と診断されるまでに至り、離婚を決意しました。

妻は、Kさんからの離婚の申し入れを拒否するとともに、仮に離婚する場合の条件として過大な金額の慰謝料、養育費、財産分与を要求しました。

Kさんは、ご自身で離婚調停を申し立てましたが、離婚の話が進まなかったため、弁護士に依頼をされました。

依頼を受けた弁護士は、裁判になった場合の見通しを踏まえ、妻を説得するとともに、早期解決を条件に、裁判になった場合に認められ得る財産分与の金額に多少上乗せした額を支払うことを提案しました。

その結果、裁判に至ることなく、調停段階で離婚を成立させることができました。

 

 

モラハラ離婚で注意すべきポイント

モラハラ離婚で注意すべきポイント

まずは別居を検討しましょう

モラハラ相手との離婚を考える場合は、まずは別居することを検討しましょう。

同居したままの状態でモラハラ相手と離婚の話を進めていくことは困難です。

また、別居して物理的な距離を置くことは、モラハラ被害から抜け出すという点からも非常に重要です。

別居期間が長くなればそれだけ離婚しやすくなるので、その点でも早期に別居することがポイントとなります。

 

弁護士を代理人として相手と接触を断つ

被害者の別居を知った相手は、あらゆる手段(脅す、謝る等)を使って被害者を連れ戻そうとしたり、電話やLINEなどを通じて被害者を責め立て追い詰めたりすることが予想されます。

このような相手に自分で対応していると、安心して離婚協議ができる状況を作ることはできないでしょう。

そのため、別居後は弁護士を窓口にして、相手との直接接触を断つようにしましょう。

 

モラハラの証拠を集める

モラハラは、目に見えない暴力であるため、証拠に残すことが難しい傾向にあります。

しかし、モラハラ相手との離婚を有利に進めるには、より多くの証拠を集めておくことがポイントとなりますので、諦めずに着実に集めてみるようにしましょう。

モラハラの証拠とは

モラハラの証拠には以下のようなものがあります。

証拠の具体例 立証する内容
録音・録画データ 相手の暴言や誹謗中傷などの発言内容
LINE等のメッセージ
診断書やカルテ モラハラによって心の傷を負ったことやその程度

上記は一例です。

集めるべき証拠は状況により異なりますので、詳しくは専門家にご相談ください。

 

居場所を知られない方法

別居先をモラハラ相手に知られると、相手が押しかけてきてトラブルになる可能性などがありますので、知られないよう対処しておく必要があるでしょう。

別居先を知られてしまうキッカケとしては、

  1. ① 裁判所に出す書類(調停申立書)などに記載された新住所を相手が見てしまうこと
  2. ② 相手が戸籍の附票や住民票を確認してしまうこと

などが考えられます。

①については、裁判所に出す書類には新住所を記載しないことや、裁判所に住所を非開示にしたい旨申し出ることなどで対処することができます。

②については、別居の際に住民票を移した場合、DV等支援措置を申し出て、相手が住民票等の閲覧・交付を受けることを制限してもらうことなどが考えられます。

詳しい申出方法等に関しては、各市区町村にご確認ください。

 

 

まとめ

以上、モラハラ相手との離婚問題について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

モラハラ相手と離婚するべきかどうかは状況により異なりますので、一度専門の弁護士に相談されることをおすすめいたします。

モラハラ問題に理解のある弁護士であれば、具体的な状況をもとに、離婚したときに「どのような変化が生じるか」や、必要な手続き、費用などに関して、親身になって助言してくれるでしょう。

当事務所には、モラハラ問題に注力する弁護士のみで構成された離婚事件チームがあり、モラハラ問題を強力にサポートしています。

LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っておりますので、モラハラにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

 

 

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