浮気の慰謝料額は自動計算できない?シミュレーターについて弁護士が解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

ネット上には、浮気の慰謝料額を自動で計算できるとしたシミュレーターがいくつか公開されています。

法律の専門家ではない一般の方には、こうしたシミュレーターは、慰謝料額を簡単に算定できるものとして便利に見えるかもしれません。

しかし、浮気の慰謝料額は、状況によって大きく異なり、考慮すべき事情も多岐にわたります

そのため、浮気の慰謝料額は、本来、自動計算になじむものではなく、自動計算機が示した慰謝料額を信用するのはリスクがあります

今回は、浮気の慰謝料額が自動計算シミュレーターによる計算になじむのかについて解説していきます。

浮気の慰謝料自動計算機とは

浮気の慰謝料自動計算機とは、いくつかの質問(浮気をしていた期間、回数、子の有無、結婚期間など)に答えると、慰謝料額を自動的に表示するツールです。

インターネットで検索すると、そうした自動計算機を設けているサイトがいくつか見つかります。

一般の方には、こうした自動計算機は、手間なく慰謝料額について知ることができるものとして、便利なように思われるでしょう。

当サイトでも、養育費額や遺留分など、自動計算になじむものについては、積極的に自動計算シミュレーターをご提供しています。

しかし、不貞行為の慰謝料については、自動計算ツールによって相場などを示すのは適切ではないと考えています。

その理由についてご説明します。

 

 

シミュレーターを参考にできない4つの理由

浮気の慰謝料額の自動計算シミュレーターを参考にできない理由として、以下のようなものがあります。

それぞれの理由について、解説してきます。

 

慰謝料の額は類型化・予想が難しい

精神的損害を金銭に換算するのは、難しいものです。

物が壊れた、などという場合には、被害の内容・程度は通常客観的に明らかであり、物の価格や修理費用について、物そのものを直接見てもらい、評価・見積もりなどをもらって賠償額を決めることができます。

しかし、精神的苦痛は、個々人の性格や背景事情によって程度が様々である上、精神的苦痛自体を直接見るわけにもいかず、客観的には被害の程度が分かりません。当然見積もりを取れるようなものでもありません。

つまり、浮気の慰謝料については、物が壊れた場合と違い、「あなたの被害額は○○円です」と、直接、客観的に確定することができないのです。

慰謝料額が高くなるようにしようと思うと、どれだけ大きな精神的損害を受けたか、ということを、様々な関連事情を立証することで、裁判官などに納得してもらわなければなりません。

しかし、精神的損害の大きさを示すために様々な事情について立証しても、それらの事実を見てどの程度精神的損害があったと評価するかは、評価する側の知識、経験、価値観などにより、どうしても一定程度左右されてしまいます。

そのため、浮気の慰謝料額については、精神的損害の程度がどの程度と認められるかの見通しが難しいのです。

さらに、浮気の背景事情は、次の項でもご説明するとおり大変多様です。

そのため、例えば、

「子どもが○歳までの場合、慰謝料額は○○円」
「結婚期間が○○年の場合、慰謝料額は○○円」

などと類型化することも、難しいです。

同じ年齢の子どもがおり、結婚期間も同じ、という場合でも、夫婦仲、夫婦の健康状態、家庭の状況、浮気された側の受けた影響の程度など、事情は実に様々なので、「同じ類型」として括ることは適切ではないからです。

同じ慰謝料額でも交通事故の慰謝料については、算定基準がかなり明確にされて公表されており、見通しが立てやすいです。

しかし、浮気の慰謝料額については、現在のところそのような基準はありません

このことも、浮気の慰謝料額の予想を難しくしています。

 

考慮要素が多岐にわたる

裁判になった場合、不貞行為の慰謝料額は、

  • 不倫相手との関係性
  • 不貞行為の状況・期間・回数
  • 不倫した配偶者の社会的地位、支払い能力
  • 不倫された配偶者の精神的打撃の程度、被った影響
  • 不倫された配偶者の責任の有無、程度
  • 婚姻してからの年数
  • 家庭の状況
  • 子どもの有無、年齢、人数
  • 当事者の年齢・健康状態

などの多くの要素について、全体的に考慮して柔軟に決められています

こうした要素が複雑に絡み合って「生きた事案」が成り立っており、単純に「この要素とこの要素を取り出せば、慰謝料がわかる」と切り分けられるものでもありません。

こうしたことから、離婚問題に詳しい弁護士ほど、浮気の慰謝料額を自動計算シミュレーターによって算出することには難があると感じるのです。

慰謝料の相場、算定要素については、以下のページでも詳しく解説しています。

 

裁判官の裁量が大きい

裁判上の判断基準が示されていないこともあり、裁判になったときの慰謝料額の決定は、裁判官の裁量に大幅に委ねられているのが実情です。

精神的苦痛に対する慰謝料も、目安がまったくないわけではなく、過去の裁判例の積み重ねから、ある程度の相場は形成されています。

しかし、それは未だかなり緩やかな相場であり、担当する裁判官の裁量が広く認められているのが実際のところです。

そのため、同じ事案であっても、担当する裁判官が違えば、慰謝料額が数十万円、もしかすると100万円以上違うことになる可能性もあります。

このような裁判官ごとの違いは、当然、自動計算シミュレーターには反映することができません。

 

示談交渉で終わるケースが多い

不倫の慰謝料は示談で決まることも多く、訴訟に発展しないケースも多くあります。

示談交渉での慰謝料額は、裁判例で形作られてきた一応の相場も考慮に入れはしますが、実は、状況によりかなり幅広く変動します。

具体例でご説明しましょう。

具体例① 夫が浮気をしたので、妻が慰謝料を請求するケース

当初の妻の考え:「離婚を望むが急ぎはしない、裁判で時間をかけて争ってもいい」と考えた上で、一般的な慰謝料額(仮に200万円とします。)を請求夫の考え:「離婚はなるべく避けたいし、慰謝料も払いたくない。」

このようなケースで、慰謝料と離婚について交渉している間に、次のような事情が生じたとしましょう。

交渉中の状況①

妻が、交渉の途中で、交渉が長引くことの負担、交渉中の夫の態度などに耐えられなくなり、「やはり一刻も早く離婚したい、時間と労力のかかる裁判は避けたい」と思うようになった。

こうした状況になった場合、妻としては、夫に協議離婚に応じてもらうため、請求する慰謝料額を下げる(例えば、100万円にする。)ことが考えられます

しかし、同じケースで次のようになった場合はどうでしょう。

交渉中の状況②

妻は、①と同様、交渉の負担や夫の態度への不満を感じたけれども、そのために夫への怒りが強くなり、「最初は慰謝料額について150万円まで譲歩しても良いと思っていたけれども、絶対に譲歩しない!」と考えを変えた。

この場合、示談交渉で請求する慰謝料額は、妻の気持ちが当初のままであった場合(150万円までの譲歩があり得た。)と比べて、高額(200万円を維持。)になってくると考えられます

このように、浮気の状況(回数や期間)、浮気したころの家庭や当事者の状況は同じであっても、当事者の性格や考えによって交渉の状況は変わり、慰謝料額もこれに大きく影響される可能性が十分にあるのです。

どれだけの浮気の証拠を押さえているか(裁判になったときに勝訴できる見込みの程度)によっても、示談交渉時の慰謝料額は変わってきます。

具体例②-1
夫の浮気について確たる証拠を妻が押さえており、裁判になっても勝てることが見込める。この場合、妻は、強気に高めの慰謝料額を請求することができます。夫としても、浮気の証拠が掴まれているため、裁判になっても勝ち目がないので、裁判で時間や労力を取られるよりは、と高めの慰謝料額でも示談に応じる可能性が高くなります
具体例②-2
妻は夫の浮気を確信しているが、証拠はほとんど入手できていない。この場合、妻は、裁判になると慰謝料がゼロになってしまう可能性があるため、交渉で強く出ることができず、慰謝料額も、低額で納得するほかなくなってしまうかもしれません。夫の方でも、妻が浮気の証拠を持っていないとなれば、裁判にすれば勝てる公算が大きいわけですから、示談交渉で高い慰謝料額を請求されても応じる可能性は低いでしょう

浮気の証拠がない場合の慰謝料に関する交渉の実例として、以下のページもご覧ください。

浮気の証拠の集め方については、以下のページでも詳しく解説しています。

具体例③ 同じ事案でも時間の経過とともにパワーバランス(交渉力)が変化するケース

たとえば、不倫をした配偶者(ここでは、Aさん、とします)が離婚を望んでいるとします。しかし、Aさんは、夫婦関係が破綻したことに責任のある有責配偶者(ゆうせきはいぐうしゃ)ですから、離婚をしたいと言っても、もう一方の配偶者(ここでは、Bさん、とします。)が拒否すれば、法律上簡単には認められません。

つまり、離婚裁判を起こしても、離婚が認められない可能性が高いのです。

なお、なぜ有責配偶者からの離婚請求が簡単に認められないのかについて、くわしくお知りになりたい方は、下記のページをご参照ください。

Aさんが離婚をするためには、裁判にする前に示談で離婚を成立させるしかなくなります

そのためには、Bさんに納得してもらう必要がありますので、不倫の慰謝料などの支払を多くしなければならなくなります

しかし、Aさんがいったん離婚をあきらめ、10年を超える長期間Bさんと別居した後、再度離婚を持ち出したとすると、状況が変わります。

この時には、別居して長期間が経過しているため、AB間に未成熟の子がいない場合、Aによる離婚の請求が、裁判所でも認められる可能性が高まります。

そうすると、Aとしては、慰謝料を特別多額に支払わなくとも離婚できるので、示談でも、Aさんが支払いに応じる慰謝料額は低くなります。

このように、同じ事案でさえ、周囲の事情が変わり、交渉での力関係が変われば、慰謝料額も変わってきます。

なお、有責配偶者からの離婚請求については、以下のページでも詳しく解説しております。

これらのケースを見ても分かるとおり、慰謝料額は、示談交渉の状況によって大きく変わり得るものです。

こうした交渉状況は、自動計算シミュレーターには反映されません。

 

 

正しい情報を入手しましょう

以上のような事情がありますので、当事務所では、浮気の慰謝料の自動計算シミュレーターを設けることはしておりません。

その代わりに、多数の解決事例の記事や解説記事をご提供することなどにより、慰謝料額及びその決まり方についての正しい情報の発信に努めております

サイトマップにて多数の記事についてご紹介しておりますので、ぜひ一度ご覧下さい。

記事を読む以上に、ご自分の場合に即した慰謝料額の目安を知りたい方は、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

離婚問題を重点的に取り扱ってきた弁護士であれば、どのような事案で、いくら程度の慰謝料が支払われてきたか、豊富な知識・経験を有しています。

ただ、既に解説したとおり、慰謝料額には交渉時の状況も影響してきますし、裁判となれば裁判官の裁量も大きいです。

そのため、当事者の方から事情を伺った弁護士であっても、「慰謝料は○○円」などと安易に言うことはできません。

それでも、個々にご相談を受ければ、相談者の置かれている状況などから、慰謝料に関する考え方、金額について参考になる意見などをお伝えできる場合が多いと思います

ぜひ一度、離婚問題に詳しい弁護士にご相談ください。

 

 

まとめ

今回は、浮気の慰謝料額の自動計算シミュレーターの特徴と、このようなシミュレーターは信用できないことを、浮気の慰謝料額の決まり方についてご紹介しながら解説しました。

浮気・不倫の慰謝料額は、複合的・有機的に絡まり合った多数の事情を背景に、実に多様な個々のケースの状況に影響されて、決まっていくものです。

ネット上の計算ツールのように、定型的ないくつかの質問に答えるだけで金額が決まるものではないのです。

そうしたツールを用いる際には、あまり信用せず、あくまで一つの意見として捉えるようにしましょう。

浮気の慰謝料額が気になるときは、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

当事務所には、離婚事件に注力する弁護士で構成された離婚事件チームがあり、浮気(不倫)に関する慰謝料についてのご相談、相手方との交渉、裁判について豊富な実績を有しております。

全国対応も可能ですので、浮気の慰謝料についてお知りになりたい方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

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