後遺障害4級とは?具体例・認定基準や慰謝料の相場を解説

監修者:弁護士 鈴木啓太 弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

後遺障害4級は、手足の切断や両目の視力低下など、仕事や日常生活に重大な支障が残る重い後遺症が残っている場合に認定される等級です。

後遺障害4級の後遺障害慰謝料の相場は1670万円です。

また、後遺障害4級に認定された場合には92%の労働能力を喪失したと評価され、後遺障害逸失利益を請求することができます。

したがって、賠償額は数千万円以上で、事案によっては1億円を超えるケースもあります。

この記事では、後遺障害等級のうち、4級の症状の具体例や認定基準、慰謝料の相場などについて解説しますので、参考にされて下さい。

後遺障害4級とは?

「後遺障害」とは?

後遺障害とは、交通事故で怪我を負い、治療を受けても完治せず、将来的にも回復が見込めない状態をさします。

 

後遺障害の等級とは?

後遺障害には、その程度に応じて、1級(最も重い)から14級(最も軽い)の等級があります。

等級の認定を受けるには、申請が必要です。

申請の流れ(被害者請求の場合)は以下のとおりです。

  • 1
    医師から症状固定(これ以上治療を受けてもよくなる見込みがない状態)の診断を受ける
  • 2
    医師に「後遺障害診断書」の作成を依頼する
  • 3
    相手方の自賠責保険会社に対し、「後遺障害診断書」及び必要書類一式を提出する
  • 4
    相手方保険会社から損害保険料率算出機構(後遺障害の等級を審査する機関)に書類がわたり、審査が行われる
  • 5
    後遺障害等級の審査結果が申請者に通知される

後遺障害等級の認定の基準は、「自動車損害賠償保障法施行令」に定められています。

認定を行うのは、損害保険料率算出機構という機関です。

審査結果に不服がある場合には、異議申し立てを行うこともできます。

後遺障害の申請手続きの詳細については下記のページをご覧ください。

 

後遺障害4級とは?

後遺障害等級のうち、4番目に重いのが第4級です。

どのような後遺障害があると4級と認定されるかについて、以下で解説します。

 

 

後遺障害4級の具体例や該当する症状

自動車損害賠償保障法施行令では、後遺障害4級の認定基準は以下のとおりと定められています。

後遺障害4級の認定基準

それぞれについて、詳しくみていきましょう。

 

両眼の視力が0.06以下になったもの

ここでいう視力とは、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正が可能な場合には、矯正視力を指します。

視力の測定は、万国式試視力表(眼科などで視力を測るときに用いられる、ランドルト環やアルファベット、ひらがななどが使用された表)によって行います。

両眼の視力が0.06以下というのは、右眼と左眼それぞれの視力が0.06以下であることを意味します。

片方の眼の視力が0.06以下になった場合には、9級の認定基準に該当します。

 

咀嚼(そしゃく)及び言語の機能に著しい障害を残すもの

咀嚼機能の障害とは?

咀嚼機能とは、食べ物を歯でかみくだいて飲み込みやすくする機能のことです。

咀嚼機能障害は、食べ物を十分にかみくだいて唾液と混ぜて飲み込みやすいようにするという一連の流れをうまく行うことができない状態を指します。

咀嚼機能障害は、交通事故によって、歯の上下のかみ合わせや歯並びが変わってしまったり、下あごの開閉動作がしにくくなってしまったりすることなどが原因で起こります。

 

言語機能の障害とは?

言語機能の障害には、声帯自体の異常などにより声自体が異常を生じる「音声障害」と、音を作る口や喉の異常のためにうまく発音ができない「構音障害」があります。

言語機能の障害については、医師だけでなく、言語聴覚士による検査が行われることがあります。

 

後遺障害4級が認定される程度は?

咀嚼機能と言語機能の両方に著しい障害が残った場合に認定されます。

咀嚼機能の著しい障害とは、粥食や同じ程度の食べ物(おかゆと同程度のやわらかさ、なめらかさの食べ物)以外は食べることができない状態を指します。

言語機能の著しい障害とは、以下の①②のいずれかによって、言語のみでは意思疎通ができない状態にあることを指します。

① 4種類ある子音のうち、2種類の発音ができない

口唇音(ま行音、ば行音、ぱ行音、わ行音、ふ)

歯舌音(な行音、た行音、だ行音、ら行音、さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ)

口蓋音(か行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)

咽頭音(は行音)

② 綴音(てつおん)機能(音と音を結合させる機能)に障害がある
上記の4種類の子音のうち、発音ができないのが1種類だけだったとしても、語音をつなげることができない場合には、綴音機能に障害があるものと認められます。

なお、咀嚼機能の著しい障害または言語機能の著しい障害のどちらか一方が残った場合には、4級ではなく6級の認定基準に該当します。

 

両耳の聴力を全く失ったもの

聴覚の障害とは?

聴覚の障害については、純音聴力レベルと明瞭度によって判断されます。

「純音聴力レベル」とは、音を聴き取ることができる最小の音圧のことです。

純音聴力の検査は日を変えて3回行われ、純音聴力レベルの判定には2回目と3回目の測定値の平均が用いられます。

「明瞭度」とは、語音(何を話しているか)を聴き取る能力のことです。

明瞭度を測る検査は、情報伝達に日常使用する語音を用いて、その聴こえ方を調べます。

結果は%で示され、検査結果が適正と判断できる場合には検査は1回でよいとされています。

 

4級の認定基準は?

4級の認定基準である、「両耳の聴力を全く失ったもの」とは、以下の①②のいずれかの場合を指します。

① 両耳の平均純音聴力レベルが90dB(デシベル)以上である
② 両耳の平均純音聴力レベルが80dB(デシベル)以上であり、かつ、最高明瞭度が30%以下である

上記の基準とされる、90dB(デシベル)とは、パチンコ店の店内ほどの音量とされています。

また、ゲームセンターの店内の音が80dB(デシベル)程度とされています。

参考:環境省「騒音の目安について」

 

一上肢をひじ関節以上で失ったもの

上肢(じょうし)とは、腕と手のことをさします。

4級の認定基準である、「一上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは、片方の上肢について、以下の①~③のいずれかに該当する場合をいいます。

上肢の図

① 肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離断した
肩から下の腕を失った状態です。
② 肩関節とひじ関節との間において上肢を切断した
肩からひじの間で腕が切断され、切断部から先の腕を失った状態です。
③ ひじ関節において、上腕骨と橈骨(とうこつ)及び尺骨(しゃっこつ)とを離断した
ひじから下の腕を失った状態です。

両方の上肢をひじ関節以上で失った場合には、後遺障害1級の認定基準に該当します。

 

一下肢をひざ関節以上で失ったもの

下肢(かし)とは、股関節から足先までをさします。

4級の認定基準である、「一下肢をひざ関節以上で失ったもの」とは、片方の下肢について、以下の①~③のいずれかに該当する場合をいいます。

下肢の図

① 股関節において、寛骨(かんこつ)と大腿骨(だいたいこつ)を離断した
股関節から下の脚を失った状態です。
② 股関節とひざ関節との間において切断した
股関節とひざの間で脚が切断され、切断部から先の脚を失った状態です。
③ ひざ関節において、大腿骨と脛骨(けいこつ)及び腓骨(ひこつ)とを離断した
ひざから下の脚を失った状態です。

両方の下肢をひざ関節以上で失った場合には、後遺障害1級の認定基準に該当します。

 

両手の手指の全部の用を廃したもの

「手指の用を廃したもの」とは?

自動車賠償保険法施行令では、「手指の用を廃したもの」とは、「手指の末節骨の半分以上を失い、又は中手指節関節若しくは近位指節間関節(おや指にあっては、指節間関節)に著しい運動障害を残すもの」と定義されています。

手指の骨や関節の名称及び位置は以下の図をご参照ください。

手指の骨や関節の名称及び位置

具体的には、以下の①~④のいずれかの場合に該当することを指します。

① 手指の末節骨の長さの2分の1以上を失った場合
「末節骨(まっせつこつ)」とは、指の第一関節から指先までの骨をさします。
② 中手指節関節若しくは近位指節間関節(親指にあっては、指節間関節)の可動域が健側(けんそく)の可動域角度の2分の1以下に制限されている場合

「中手指節関節」とは指の第三関節(付け根の関節)、「近位指節間関節」とは第二関節、「遠位指節間関節」とは第一関節をさします。

つまり、第三関節または第二関節(親指は第一関節)を動かせる範囲が受傷していない側(右手に症状が残っている場合は左手)の半分以下になっている場合です。

③ 親指について橈側外転または掌側外転のいずれかが健側の2分の1以下に制限されている場合

親指の「橈側外転」とは、下図のように親指を人差し指から離す動きをさします。

親指の「橈側外転」

つまり、親指を人差し指から離せる範囲が受傷していない側(右手に症状が残っている場合は左手)の半分以下になっている場合です。

また、親指の「掌側外転」とは、下図のように親指を手のひらから離す動きをさします。

親指の「掌側外転」

つまり、親指を手のひらから垂直方向に離せる範囲が受傷していない側の半分になっている場合です。

④手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失した場合

「深部感覚」とは、筋肉や関節など身体の内部からの情報を伝える感覚で、身体の位置や動きを把握するために欠かせないものです。

「表在感覚」とは、皮膚や粘膜に対する刺激から生じる感覚で、身体の表面に関する情報を脳に伝える役割をします。

これらの感覚が失われているかどうかは、自己申告だけで判断されるのではありません。

医学的に、当該部位を支配する感覚神経が断裂しうると判断される外傷を負った事実を確認する必要があります。これに加えて、筋電計を用いた感覚神経伝導速度検査を行い、感覚神経活動電位が検出されないことを確認して認定されます。

 

4級の認定基準は?

後遺障害4級に認定されるのは、左右の手の全ての指が上記の①~④のいずれかに該当する場合です。

片手の全ての指が上記の①~④のいずれかに該当する場合は、後遺障害7級の認定となります。

 

両足をリスフラン関節以上で失ったもの

「リスフラン関節」とは、下図のとおり、足の中央部にある関節です。

足の指につながる骨(中足骨)と土踏まずを作る骨(楔状骨、立方骨)をつないでいます。

リスフラン関節

リスフラン関節は、歩くときに体重を支える重要な役割を果たしています。

4級の認定基準である、「リスフラン関節以上で失ったもの」とは以下の①②のいずれかに該当する場合をさします。

① 足根骨(踵骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3つの楔状骨からなる)において切断した

足根骨(そっこんこつ)とは、足の後ろ側の7つの骨(踵骨、距骨、舟状骨、立方骨、3つの楔状骨)の総称です。

これらの骨の部分で足が切断されたという状態です。

② リスフラン関節において、中足骨と足根骨を離断した

中足骨(ちゅうそくこつ)と足根骨がリスフラン関節で切り離されてしまう状態をさします。

中足骨とは、足の甲に位置する5本の骨で、リスフラン関節につながっています。

中足骨は、歩行や走行などの動作をするときに重要な役割を果たしています。

なお、片足をリスフラン関節以上で失った場合には、後遺障害7級の認定基準に該当します。

 

後遺障害4級の症状が複数ある場合

後遺障害等級に該当する後遺障害が複数ある場合、原則として、最も重い障害の等級を基準として、等級を繰り上げる処理がなされます。

これを「併合」といいます。

後遺障害4級の症状が2つ以上ある場合には、原則として1級として扱われます。

後遺障害の併合については下記のページをご覧ください。

 

 

後遺障害4級の慰謝料はいくら?相場と計算方法

後遺障害に対する慰謝料とは?

交通事故によって、後遺障害が残った場合、慰謝料の請求をすることができます。

慰謝料とは、精神的苦痛に対する賠償金をさします。

後遺障害を負った人は、治療をしても完治しない症状が残り、その後の生活においてストレスや不自由を抱えることになります。

こうした精神的苦痛に対する金銭的な賠償が後遺障害慰謝料です。

なお、怪我の治療のための入通院に伴う精神的・肉体的苦痛に対する慰謝料は、別途、「入通院慰謝料」として請求することが可能です。

入通院慰謝料についての詳しい解説は下記のページをご覧ください。

 

後遺障害慰謝料の相場は?

後遺障害の慰謝料には、金額の相場があります。

慰謝料には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」3つの算定基準があります。

 

自賠責基準とは?

交通事故の加害者が加入している自賠責保険から支払われる慰謝料の基準です。

自賠責保険からの支払いは、必ずこの基準により算定されます。

自賠責保険は、法律で加入が義務付けられているため、仮に加害者が任意保険に加入していない場合でも、被害者は自賠責保険から補償を受けることができます。

しかし、補償の金額が最低限にとどまるため、自賠責基準は3つの基準の中で最も低額となります。

 

任意保険基準とは?

交通事故の加害者が任意加入している保険会社の独自の支払基準です。

強制加入の自賠責保険に加え、任意保険(対人賠償保険)に加入している割合は全国平均で約75%(2025年度末時点)となっており、多くのケースで任意保険会社からの慰謝料の支払いが想定されます。

参考:自動車保険の都道府県別加入率|日本損害保険協会

各保険会社が内部での支払基準を設けていますが、当該基準は外部には公表されていません。

自賠責保険よりはやや高い水準となることが多いですが、保険会社によっては、自賠責保険とあまり変わらないか、自賠責保険の基準を用いて算定していることもあります。

保険会社は被害者に対し、自社の基準を用いて賠償金の提示をしますが、「弁護士基準(裁判基準)」に比べると低額であり、弁護士が介入して交渉することにより慰謝料を含む賠償金が増額される可能性があります。

保険会社から賠償金の提示があった場合には、交通事故や後遺障害に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。

 

弁護士基準(裁判基準)とは

弁護士が使用する基準であり、裁判をした場合に裁判所が用いる基準でもあります。

裁判では、過去の事例に基づいて適正な金額が決定されていることから、法的な正当性が高い基準といえます。

弁護士基準は、3つの基準の中で最も高額の水準となっています。

慰謝料の3つの基準

被害者としては、この弁護士基準に基づいて適正な慰謝料の支払いを受けることが大切です。

適正な慰謝料の支払いを受けるためには、加害者の保険会社から賠償金の提示を受けても、そのまま受け入れず、弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士が交渉することで、被害者が受け取ることができる慰謝料の増額が期待できます。

弁護士基準(裁判基準)について詳しくは下記のページをご覧ください。

 

後遺障害4級の慰謝料の相場

では、後遺障害4級の認定を受けた場合に得られる慰謝料の相場はどのくらいなのでしょうか。

「自賠責基準」では、慰謝料の金額は737万円(2020年3月31日以前に発生した事故の場合は712万円)となっています。

「任意保険基準」では、各社で基準が異なり、正確な金額は明らかではありませんが、自賠責基準を多少上回る程度です。

「弁護士基準(裁判基準)」では、慰謝料の相場は1670万円で、自賠責基準の2倍以上となっています。

この金額はあくまで相場であって、個別の事案によって、事情が考慮され、増減することがあります。

自賠責基準 弁護士基準
737万円 1670万円

交通事故の慰謝料の相場早見表や計算例については下記のページをご覧ください。

 

 

後遺障害4級の逸失利益|相場と計算方法

後遺障害4級の認定を受けると、慰謝料のほかに逸失利益の請求をすることもできます。

 

後遺障害の逸失利益とは?

逸失利益とは、交通事故がなければ被害者が得ることができたはずの将来の収入のことです。

後遺障害によって、労働能力が制限されてしまった結果、収入が減少することが予想されます。

交通事故で後遺障害が残った被害者は、逸失利益を賠償金の一つの項目として請求することができます。

 

逸失利益の計算方法

逸失利益にも相場があり、以下の計算式で求めることができます。

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

 

「基礎収入」とは

被害者が得られる見込みの収入(年収)のことです。

これは、被害者が交通事故の時点で就業していたかどうか、どのような職業についていたのかなどの事情で変化します。

たとえば、被害者が会社員の場合には、交通事故にあう前年の年収を基礎収入とします。

自営業者の場合には、原則として交通事故の前年の確定申告の所得額を基礎収入とします。

専業主婦(主夫)や学生の場合、賃金センサス(政府が毎年発表する「賃金構造基本統計調査」の結果をもとに算出した、1年間の平均収入)を用います。

無職の場合でも、就労の能力や意欲を考慮し、就労する可能性が高いといえる場合には、賃金センサスを用いて基礎収入を算定することができます。

子どもの場合、収入がありませんので、賃金センサスの男女別・学歴計・全年齢平均賃金を用いるのが原則です。(女子の場合には、女性の全年齢平均賃金ではなく、男女の全労働者の全年齢平均賃金で算出するのが一般的です。)

 

労働能力喪失率とは

労働能力喪失率とは、後遺障害によって労働能力がどの程度失われたかを示す割合です。

この割合は、後遺障害の等級に応じて、目安が設けられています。

下表のとおり、後遺障害4級の労働能力喪失率の目安は92%となっています。

後遺障害4級は労働能力喪失率が高く、後遺障害によって労働能力がほとんど失われてしまうことが想定されているのがわかります。

等級 労働能力喪失率(目安)
1級 100%
2級 100%
3級 100%
4級 92%
5級 79%
6級 67%
7級 56%
8級 45%
9級 35%
10級 27%
11級 20%
12級 14%
13級 9%
14級 5%

これは目安であり、事案(被害者の職業や年齢、後遺障害の部位や程度など)に応じて、判断されます。

 

労働能力喪失期間とは

労働能力喪失期間とは、後遺障害によって労働能力が制限される期間のことです。

原則として、症状固定日から、67歳までの期間ですが、被害者の症状固定時の年齢によって以下のような例外もあります。

  • 子ども(18歳未満)の場合
    18歳から67歳までを労働能力喪失期間とします。
    ただし、実際に逸失利益(損害額)を計算する際は、中間利息控除のため「症状固定時から67歳までのライプニッツ係数」から「症状固定時から18歳になるまでのライプニッツ係数」を差し引いた数値を使用します。
  • 大学生の場合
    大学卒業時から67歳までを労働能力喪失期間とします。
  • 高齢者の場合
    症状固定時の年齢が67歳を超えている場合には、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。
    また、「症状固定時から67歳までの期間」と「平均余命の2分の1」のうち、いずれか長い方の期間が労働能力喪失期間となります。
    平均余命は、厚生労働省が発表している「簡易生命表」に掲載されています。
  • むちうちなどの神経症状の場合
    むちうちなどの局部の神経症状の場合には、67歳までの間ずっと労働能力の制限が続くとは考えにくいということから、例外的に5年程度に制限される傾向があります。

参考:令和6年簡易生命表(男)|厚生労働省
参考:令和6年簡易生命表(女)|厚生労働省

 

ライプニッツ係数とは

逸失利益は将来得られたはずの収入(の総額)ですが、交通事故の賠償金としては、基本的に一括で支払いを受けることになります。

先に一括で賠償金を受け取ることで、多くの場合、(銀行に預け入れるなどして)利子等が生じます。

本来であれば、毎月の給与として支払われるものであるので、この利子等についてはもらいすぎということになります。

この利子等のことを「中間利息」といい、公平の観点から、逸失利益の算出の際には中間利息を控除すべきであると考えられています。

中間利息を控除するために利用する数値をライプニッツ係数といいます。

ライプニッツ係数は以下の表のとおりです。

ライプニッツ係数表(2020年4月1日以降に発生した交通事故の場合)
労働能力
喪失期間
(年)
係 数 労働能力
喪失期間
(年)
係 数
1 0.9709 44 24.2543
2 1.9135 45 24.5187
3 2.8286 46 24.7754
4 3.7171 47 25.0247
5 4.5797 48 25.2667
6 5.4172 49 25.5017
7 6.2303 50 25.7298
8 7.0197 51 25.9512
9 7.7861 52 26.1662
10 8.5302 53 26.3750
11 9.2526 54 26.5777
12 9.9540 55 26.7744
13 10.6350 56 26.9655
14 11.2961 57 27.1509
15 11.9379 58 27.3310
16 12.5611 59 27.5058
17 13.1661 60 27.6756
18 13.7535 61 27.8404
19 14.3238 62 28.0003
20 14.8775 63 28.1557
21 15.4150 64 28.3065
22 15.9369 65 28.4529
23 16.4436 66 28.5950
24 16.9355 67 28.7330
25 17.4131 68 28.8670
26 17.8768 69 28.9971
27 18.3270 70 29.1234
28 18.7641 71 29.2460
29 19.1885 72 29.3651
30 19.6004 73 29.4807
31 20.0004 74 29.5929
32 20.3888 75 29.7018
33 20.7658 76 29.8076
34 21.1318 77 29.9103
35 21.4872 78 30.0100
36 21.8323 79 30.1068
37 22.1672 80 30.2008
38 22.4925 81 30.2920
39 22.8082 82 30.3806
40 23.1148 83 30.4666
41 23.4124 84 30.5501
42 23.7014 85 30.6312
43 23.9819 86 30.7099

逸失利益や算定方法についての詳しい説明は下記のページをご覧ください。

 

後遺障害4級の逸失利益の計算例

後遺障害4級の逸失利益の具体的な計算例をみてみましょう。

 

(例1)35歳・会社員男性の場合

基礎収入:600万円(前年の年収)

労働能力喪失率:92%

労働能力喪失期間:32年

労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数:20.3888

逸失利益:600万円 × 0.92 × 20.3888 = 1億1254万6176円

よって、逸失利益は1億1254万6176円となります。

 

(例2)10歳・女児の場合

基礎収入:545万5600円(2025年の賃金センサスの男女計・学歴計・全年齢平均)

労働能力喪失率:92%

労働能力喪失期間:49年(18歳から67歳まで)

労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数:20.131(67歳に達するまでのライプニッツ係数から18歳に達するまでのライプニッツ係数を差し引いたもの)

逸失利益:545万5600円 × 0.92 × 20.131 = 1億104万548円

よって、逸失利益は1億104万548円となります。

 

(例3)53歳・専業主婦の場合

基礎収入:437万700円(2025年の賃金センサスの全女性平均)

労働能力喪失率:92%

労働能力喪失期間:14年(53歳から67歳まで)

労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数:11.2961

逸失利益:437万700円 × 0.92 × 11.2961 = 4542万2115円

よって、逸失利益は4542万2115円となります。

 

 

後遺障害4級の示談金

後遺障害4級の認定を受けた場合、慰謝料と逸失利益以外にも被害者が請求できる賠償金があります。

一般的に、交通事故の被害者(人身損害を受けた被害者)が請求できる賠償金の項目(後遺障害慰謝料及び後遺障害逸失利益を除く)は以下のとおりです。

交通事故の示談金という言葉を聞いたことがある方もいると思いますが、これらを含めた交通事故の損害に対する賠償金の総称を意味します。

 

治療関係費用

治療費(入院費や手術費を含む)、通院交通費、付き添い費用、介護費用、文書料などの費用です。

治療費は、被害者、医療機関、加害者の任意保険会社の合意があれば、保険会社から医療機関に直接支払ってもらうことが可能となります。

 

入通院慰謝料

怪我の治療のために入院や通院を余儀なくされたことに対する精神的・身体的苦痛に対する慰謝料です。

後遺障害慰謝料と同様に、入院や通院の期間に応じて、相場の金額があります。

自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準があるのも後遺障害慰謝料と同様で、弁護士基準が最も高い水準となります。

詳しくは下記のページをご覧ください。

 

休業損害

交通事故によって仕事を休み、収入が減ってしまった場合に請求が可能です。

休業損害の金額は、原則として【基礎収入の日額】×【休業日数】で算出します。

基礎収入の日額は、給与所得者の場合には、直近3か月間の給与を元に算出します。

自営業者の場合には、前年の確定申告の所得額を元に算出します。

専業主婦(主夫)も、交通事故によって家事ができなかった期間があれば、休業損害を請求することが可能です。

合わせて読みたい

交通事故の示談金についての詳しい解説は下記のページをご覧ください。

 

 

後遺障害4級で障害年金はもらえる?

後遺障害4級の認定を受けた場合、上記の賠償金以外にもお金を受け取れる場合があります。

その1つが障害年金です。

障害年金は、国民年金または厚生年金の加入者が、病気や怪我で生活や仕事が制限されるようになった場合に受け取れる年金です。

交通事故で負った後遺障害であっても、条件を満たせば障害年金の対象となります。

障害年金の等級は以下のとおり1級から3級まで(3級は厚生年金保険のみ)がありますが、自動車損害賠償保障法施行令で定められている後遺障害等級とは基準が異なっていることに注意が必要です。

参考:障害等級表|日本年金機構

なお、障害年金の対象になったとしても、交通事故の加害者側から賠償金を受け取った場合には、一定の期間障害年金を受けることができない可能性があります。

逆に、すでに障害年金を受けていた場合、加害者側からの損害賠償金が減額されることがあります。

これは、公平の観点から、被害者が補償を二重に受けることにならないように調整するためです。

障害年金についての詳しい解説は下記のページをご覧ください。

 

 

労災の後遺障害4級の受給内容

労災の後遺障害認定

業務中や通勤途中に交通事故にあったという場合には、労災保険が適用できる可能性があります。

労災においても、後遺障害については、自賠責の後遺障害と同じく1級から14級の認定基準が定められています。

各等級の認定基準も類似しています。

しかし、労災を認定する機関は労働基準監督署であり、自賠責とは異なります。

労災の認定の手続きには、書類審査だけでなく、面談調査もあります。

よって、自賠責で後遺障害の等級認定を受けても労災の認定の結果と一致しない場合もあります。

 

労災の後遺障害4級

労災の後遺障害等級の認定基準は、労働者災害補償保険法施行規則の等級表で定められています。

この規則の等級表に掲げられている後遺障害4級の具体的な症状は、自賠責の後遺障害4級の基準に掲げられている症状と同じです。

 

労災の後遺障害4級の給付内容

労災の後遺障害4級の認定を受けた場合、業務中の交通事故の場合には「障害補償給付」、通勤中の交通事故の場合には「障害給付」が支給されます。

後遺障害4級の障害補償給付と障害給付(以下ではあわせて「障害(補償)給付」とします)の給付内容は以下のとおりです。

給付の種類 内容 4級の給付金額
障害(補償)年金 残存する後遺障害の等級に応じて支給 給付基礎日額の213日分
障害特別支給金 障害(補償)年金に上乗せして支給(一時金) 264万円
障害特別年金 ボーナスなどの特別給与に対応する給付 算定基礎日額の213日分

給付基礎日額とは、交通事故の直前3か月間に被害者に対して支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われる賃金を除く)を、その期間の日数で割った1日当たりの賃金額です。

算定基礎日額とは、交通事故以前の1年間に、被害者が会社から受けた特別給与(ボーナスなど)の総額を365で割った金額です。

なお、自賠責保険から補償を受けていた場合には、補償内容が重複する労災の給付が受けられませんので、注意が必要です。

労災の後遺障害についての詳しい解説は下記のページをご覧ください。

 

 

後遺障害4級の認定のためのポイント

後遺障害4級の認定のためのポイント

ここまで、後遺障害4級に関するお金について解説しましたが、きちんと補償を受けるには等級の認定が大前提となります。

しっかりとポイントを押さえて、申請を行うことが非常に重要となります。

以下では、認定のためのポイントを紹介します。

 

被害者請求を行う

後遺障害の等級認定の請求には、「事前認定」と「被害者請求」の2つの方法があります。

事前認定とは、加害者の任意保険会社を経由して申請を行う方法です。

被害者は後遺障害診断書を任意保険会社に提出し、その他の書類は任意保険会社がそろえて審査機関に提出します。

被害者請求とは、被害者が直接審査機関に申請する方法です。

被害者自身が必要書類をすべて集めて審査機関に提出する必要があります。

そのため、事前認定に比べると手間がかかりますが、被害者側で提出書類の確認ができたり、追加で提出する資料(主治医の意見書など)を準備したりすることができます。

後遺障害の認定には、症状が認定基準に該当することを立証するために必要な資料をそろえて提出することが非常に重要です。

よって、できるかぎり被害者請求の方法で申請するのがよいでしょう。

 

適切な内容の後遺障害診断書を作成してもらう

医師から症状固定(これ以上治療を受けてもよくなる見込みがない状態)だと診断を受けたら、後遺障害診断書の作成を依頼することになります。

後遺障害診断書の記載内容は、後遺障害の認定に直結するため重要です。

主治医が後遺障害の認定手続きに詳しくないという場合もあり、後遺障害診断書に必要な記載が抜けてしまうと、適切な認定が受けられなくなってしまいます。

専門家である弁護士のサポートを受けることによって、適切な内容の後遺障害診断書を作成してもらいやすくなります。

 

異議申し立てを行う

一度申請を行って4級と認定されなくても、異議申し立てを行って結果が変わる可能性があります。

しかし、ただ「結果に不服がある」というだけでは結果が変わる可能性は低いでしょう。

等級の認定を得るには、被害者にとって有利な証拠資料(医師による意見書や画像資料等)を追加で提出する必要があります。

 

後遺障害に強い弁護士に相談、依頼する

上記のとおり、後遺障害の等級認定の申請には被害者請求の方法が望ましいですが、複数の書類の作成や取り寄せが必要となり、被害者自身で行うことは大変な作業です。

弁護士に相談、依頼をすることで、適切なサポートを受けることができ、スムーズに申請を行うことができるでしょう。

また、弁護士に後遺障害診断書の記載内容が適切であるのかのチェックを受け、必要であれば医師に訂正をお願いすることもできます。

すでに後遺障害の認定結果が出ている場合でも、その内容を弁護士が確認し、妥当な結果でないと判断すれば、異議申し立ての手続きのサポートを受けることができます。

後遺障害等級の認定の可能性を高めるためにも、交通事故の事案、特に後遺障害について経験が豊富な弁護士に相談、依頼することをおすすめします。

後遺障害に強い弁護士選びのポイントは下記のページをご覧ください。

 

 

後遺障害4級についてのQ&A

後遺障害等級4級の具体例は?

具体例として、両方の眼の視力が0.06以下となった場合や、片方の腕のひじから下を失ってしまった場合などがあります。

後遺障害4級の症状は、いずれもその後の日常生活に大きな影響があるものといえるでしょう。

 

交通事故で後遺障害4級になるとどうなるのか?

相手方(加害者)に対し、後遺障害慰謝料、逸失利益等の賠償金を請求することができます。

また、障害年金や労災の給付を受けられる場合もあります。

 

後遺障害等級の認定にはどれくらいの期間がかかりますか?

後遺障害の等級の認定の申請を行ってから結果が出るまで、早くても1~2か月はかかるのが一般的です。

書類の不足や不備があったり、審査機関が追加で調査を行ったりする場合にはさらに時間がかかり、数か月かかるケースも珍しくはありません。

筆者の経験では、被害者が複数の医療機関を受診していたため、審査機関による各医療機関への調査に時間がかかり、半年ほどしてから結果が通知されたこともありました。

 

後遺障害4級の認定基準に挙げられている具体的な症状に該当しなければ、4級の認定を受けることはできませんか?

必ずしもそうではありません。

交通事故による怪我や後遺障害は多岐にわたりますので、認定基準に列挙されていない症状が残る場合もあります。

4級の認定基準に該当しない後遺障害であっても、4級の後遺障害に相当するものは、4級の認定を受けられることになっています。

 

なぜ、後遺障害慰謝料の金額に基準があるのですか?

慰謝料は被害者が受けた精神的・身体的苦痛を金銭で賠償するものです。

本来であれば、一人ひとり苦痛の度合いは異なるはずですが、それを個々に金銭で評価するのは非常に難しいことです。

また、同程度の後遺障害を負った被害者の間で慰謝料に大きな差があっては、平等とはいえません。

そこで、後遺障害を程度の重さによって等級に分け、等級に応じて慰謝料の一定の基準を定めることで、被害者にできるだけ迅速かつ平等に慰謝料が支払われるようになっています。

 

 

まとめ

以上、後遺障害4級の認定基準や慰謝料、逸失利益などについて解説しましたが、いかがでしたか。

交通事故で重度の後遺障害を負った上に、後遺障害の認定の申請手続きや慰謝料の交渉などを被害者自身が行うのは、非常に大きな負担になることは間違いありません。

また、被害者自身で保険会社と交渉を行う場合、慰謝料や逸失利益等を低額で提示され、納得がいかなくても相場や交渉の方法がわからないということもあるでしょう。

被害者は適切な補償を受けるべきであり、そのためにも、専門家である弁護士に相談・依頼されることをおすすめします。

当事務所では、来所相談、電話相談、オンライン相談により全国対応していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

 

 

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