交通事故で後遺障害が残った場合、国民年金からなにか給付がある?

執筆者:弁護士 北御門晋作 (弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士)

国民年金の加入者が交通事故などによる病気や怪我で障害状態になったとき、障害基礎年金の支給要件をみたせば障害基礎年金の給付が受けられます。

なお、相手方から損害賠償金を受け取った場合には、一定の期間障害年金を受け取れないことがあります(国民年金法第22条第2項)。

平成27年10月1日以降の事故については、最大で事故日の翌月から36か月間受給できない可能性があります(厚生労働省平成27年9月30日通知)。

平成27年9月30日以前の事故については、最大で事故日の翌月から24か月間受給できない可能性があります。

交通事故専門の弁護士が解説いたします。

 

障害基礎年金とは

国民年金に加入している被保険者が、病気や怪我で障害等級表(1級・2級)による障害状態になったとき支給される年金です。

支給要件

障害基礎年金の支給要件は以下の通りです(国民年金法30~30条の4条)。

  1. 国民年金に加入している間に初めて医師の診療を受けた日(初診日)があること
    20歳前や、60歳以上65歳未満(年金に加入していない期間)で、日本国内に住んでいる間に初めて医師の診療を受けた日があるときも含みます。
  2. 一定の障害の状態にあること(1級・2級)
  3. 保険料の納付要件
    初診日の前日において、下記のいずれかの要件を満たしていることが必要です。

    1. ① 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
    2. ② 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

 

障害の等級

障害等級は以下の通りです。

1級

  1. 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
  2. 両下肢の機能に著しい障害を有するもの
  3. 両眼の矯正視力の和が0.04以下のもの
  4. 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
  5. その他

2級

  1. 上肢の機能に著しい障害を有するもの
  2. 下肢の機能に著しい障害を有するもの
  3. 両眼の矯正視力の和が0.05以上0.08以下のもの
  4. 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
  5. その他

 

障害認定

初診日から、1年6か月経過 (その間に治癒した場合は治癒時)に障害の状態にあるか、または65歳に達するまでの間に障害の状態となったとき(国民年金法30条)に認定されます。

初診日から、1年6か月以内に、下の1~8に該当する日があるときは、その日が「障害認定日」となります。

  1. 人工透析を初めて受けた日から起算して3か月を経過した日
  2. 人工骨頭又は人工関節をそう入置換した日
  3. 心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)又は人工弁を装着した日
  4. 人工肛門の造設、尿路変更術を施術した日から起算して6か月を経過した日
  5. 新膀胱を造設した日
  6. 切断又は離断による肢体の障害は、切断又は離断した日(障害手当金又は旧法の場合は、創面が治癒した日)
  7. 喉頭を全摘出した日
  8. 在宅酸素療法を開始した日

 

年金額(令和2年4月時点)

年金額は以下の通りです(国民年金法33条)。

1級
78万1700円 × 1.25 + 子の加算
2級
78万1700円 + 子の加算

 

子の加算とは

「子の加算」とは、後遺障害を負った人によって生活をしている子供がいる場合に、障害基礎年金の受給額が加算されることをいいます(国民年金法33条の2)。

子とは

以下の要件を満たす子をいいます。

  1. ① 後遺障害を負った人によって生計を維持している子
  2. ② 18歳に達した後の3月31日を経過していない子
    または20歳未満で障害等級1級もしくは2級の障害がある子

加算額

・第1子・第2子の場合:各22万4900円

・第3子以降の場合:各7万5000円

 

20歳前の傷病による障害基礎年金の所得制限

20歳になる前に傷病を負った人の障害基礎年金は、被害者本人が国民年金保険料を納付していないので、2段階の所得制限が設けられています。

前年の所得額が360万4000円を超える場合:半額支給停止

前年の所得額が462万1000円を超える場合:全額支給停止

障害年金のほかにも後遺障害を負った人に対しての支援があります。

各種の支援の概要についてはこちらをご覧ください

参考:国土交通省 自動車総合安全情報

 

 

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