モラハラ夫をおとなしくするにはどうすればいい?弁護士が解説

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  

モラハラ(モラル・ハラスメント)とは、精神的暴力のことで、わかりやすく言えば、言葉や態度による「嫌がらせ」です。

モラハラをする夫(モラハラ夫)をおとなしくさせる方法としては、次のようなものが考えられます。

  1. ① 別居する
  2. ② 夫にモラハラをやめるように相談する
  3. ③ 共通の知人に相談する
  4. ④ 夫の家族に相談する
  5. ⑤ 離婚する

ここでは、モラハラ夫をおとなしくするための方法について解説し、モラハラ夫から解放されるためのポイントについても紹介していきます。

夫からのモラハラ被害に悩まれている方は、ぜひ参考になさってください。

モラハラ夫をおとなしくするための5つの方法

モラハラ夫をおとなしくするための5つの方法

①別居する

モラハラの被害が深刻な場合は、すぐに別居することを検討する必要があります。

モラハラの被害が深刻な場合とは、例えばご自身が次のような状態になっている場合です。

  • 何をするにも夫の顔色をうかがってしまう
  • 夫の機嫌を損ねないよう常に気を遣ってしまう
  • 夫の帰宅時間が近づくと気が重くなる
  • 夫が怒り出すと動悸がする・過呼吸になる
  • 夫がセックスを要求してきたら断りたくても断れずに応じてしまう
  • 夫との生活がストレスで心身に不調が生じている(イライラ・不眠・自尊心の低下・意欲の低下など)

このような状態になっている場合は、モラハラ夫をおとなしくさせようと頑張っている間にも、どんどんモラハラの被害が深刻化していってしまう可能性があります。

そのため、できる限り早期にモラハラ夫と物理的な距離を取り、モラハラから抜け出すことが重要になります。

別居というとハードルが高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、必ずしも離婚を前提として家を出る必要はありません。

また、別居することを事前に夫に知らせる必要もありません。

むしろ、別居することを夫に事前に知らせてしまうと、夫が別居を妨害してくる恐れもあるため、多くの場合は夫に黙って別居を実行することになります。

 

②夫にモラハラをやめるように相談する

被害が軽い場合は、夫にモラハラをやめるように相談することも考えられます。

被害が軽い場合とは、上記の1で挙げたような具体的な影響が未だ生じていないような場合です。

この段階であれば、完全な主従関係が出来上がってしまっているわけではないため、こちらから夫に働きかけることが不可能ではない場合もあります。

ただし、以下のようなことには注意する必要があります。

モラハラをやめてくれる可能性は低い

モラハラは、通常、「妻は夫に従うべき」「自分は妻をコントロールする権利がある」などといった考え方によって引き起こされています。

モラハラをやめるには、夫自身がこのような考え方に問題があることに気づき、改善に取り組む必要があります。

しかし、モラハラ夫は、自分は正しいと思っている傾向にあるため、自分の考え方に問題があると認めることは、滅多にありません。

また、仮に問題に気づくことができても、自分の考え方を変えるように努力するというのは非常に難しいことです。

その上、モラハラ夫は、妻を支配することに快感を覚え、それに依存しているため、その状態から抜け出すことが困難となってしまっています。

このようなことから、モラハラ夫が改心してモラハラをやめる可能性は低いといえます。

そのため、こちらが働きかけても、夫が取り合わない様子を見せるようであれば、早めに見切りをつけて別居などを検討された方がよいと考えられます。

 

どのように相談する?

まずはシンプルに、どのような行為をやめてほしいのか、なぜやめて欲しいのかなどについて伝えた上で、改善を求めることが考えられます。

しかし、モラハラ夫は、「俺はモラハラなんてしていない」「お前のために言っているだけだ」「お前は大袈裟だ」などと言って、妻の要求を聞き入れないことが予想されます。(妻の要求を聞き入れてすぐに改善するのであれば、そもそもモラハラ夫ではなかったともいえるでしょう。)

そのため、モラハラ夫に対しては、「モラハラをやめてくれない場合は、別居や離婚を検討せざるを得ない」ということを伝えて危機感を与え、様子を見るという方法も考えられます。

しかし、モラハラ夫は、妻が離れていくことが許せず、妻が別居や離婚をちらつかせると、反省するどころか逆上する場合もあります。

また、妻に対する支配力をさらに強めようとして、モラハラをエスカレートさせる可能性もあります。

そのため、状況次第ですが、別居や離婚の話題を出すのには慎重になった方がよいでしょう。

 

具体的な行動を求める

モラハラ夫が妻からの改善の要求を聞き入れてくれる場合は、もう一歩踏み込んで、モラハラを改善するためのカウンセリングや加害者プログラムなどを勧めるのもよいでしょう。

被害者である妻から指摘を受けるだけよりも、専門家の適切なサポートを受けた方が改善する可能性は高くなると考えられます。

ただし、どのようなサポートを受けたとしても、夫自身が変わりたいと思って真摯に取り組まなければ、根本的な改善は望めません。

モラハラ夫の場合、「自分は正しい」「変わる必要はない」と思いつつも、妻が離れていくことを阻止したいがために、形だけカウンセリングなどに通い始めるといった可能性もあります。

このようなことから、夫がカウンセリングなどに通ってくれれば安心できるとは限らないので、注意する必要があります。

 

おとなしい状態を維持することも重要

夫が一時的におとなしくなったとしても、今後ずっとおとなしいままでいるとは限らないので注意が必要です。

先に解説したように、多くの場合、モラハラ夫にとって、モラハラをやめるのは非常に難しいことです。

そのため、夫がモラハラをしないように努力し続けない限り、時間が経てばモラハラが再発する恐れがあります。

モラハラが再発した場合は、再度モラハラをやめてほしいと相談しても、「お前は俺に完璧を求めるつもりか」「俺は変わったのに、お前はいつまでも昔のことを持ち出してくる」などと言われて話にならない可能性もあります。

したがって、夫が努力し続けているかどうかも慎重に観察する必要があるでしょう。

その際には、カウンセリングなどを受けているといった表面的な事実にとらわれず、「妻の意思を尊重するか」「支配的な態度をやめているか」など、本質的な部分を見るようにするとよいでしょう。

 

③共通の知人に相談する

夫と共通の知人(友人、(元)同僚など)がいる場合は、その人に相談してみるのも1つの方法です。

しかし、モラハラ夫は家庭の外では「いい夫」と思われるように振る舞っていることも多いため、家庭外の人に相談をしても、「あの人がそんなことをするはずない」「あなたが大袈裟なのではないか」と思われる可能性もあります。

また、モラハラに対する世間一般の認識も決して高いものではないため、被害の深刻さを理解してもらえず、「ただの夫婦喧嘩なのではないか」などと言われて終わってしまう可能性もあります。

そのため、相談するのであれば、単に共通の知人というだけではなく、こちらの話を誠実に聞いてくれる人、親身になってくれる人を選ぶべきでしょう。

もっとも、仮にそのような人に相談をすることができたとしても、その人から直接夫に働きかけてもらうかどうかは、慎重に検討するべきです。

その知人から忠告等を受けた夫は、反省するどころか、妻が他人に相談したことに激高し、モラハラをエスカレートさせる可能性もあります。

そのため、単に「夫にモラハラをやめるよう働きかけて欲しい」とお願いするよりも、一緒に解決策を考えてもらったり、仮に別居することになった場合にサポートしてもらえる体制を整えておいたりする方が得策とも考えられます。

 

④夫の家族に相談する

夫の両親や兄弟姉妹で、味方になってくれそうな人がいるのであれば、その人に相談をすることも考えられます。

ただし、共通の知人に相談する場合と同様、相談するかどうかや、夫に働きかけてもらうかどうかは、慎重に検討するべきでしょう。

 

⑤離婚する

別居をすれば、直接のモラハラ被害からは解放されることになりますが、法律上の夫婦関係は続くので、接触を完全に断つことは困難です。

モラハラ夫と縁を切ることを望むのであれば、最終的には離婚をすることになります。

もっとも、モラハラ夫は「妻は自分のもの」という意識が強い傾向にあるため、離婚にすんなりと応じることは少なく、離婚に至るまでの道のりが紛糾するケースも多いです。

そのため、モラハラ夫との離婚は、モラハラの問題に精通した弁護士のサポートを受けながら進めていくことをおすすめいたします。

 

 

モラハラ夫から解放されるためには

モラハラ夫と物理的な距離をとる

先に解説したように、モラハラ夫がモラハラをやめてくれることは、基本的には期待することができません。

モラハラをやめてもらおうと働きかけている間にも、モラハラの被害が深刻化していってしまう可能性があります。

そのため、改善の見込みがない場合は早めに別居し、物理的な距離を置く必要があります。

先にも述べたように、必ずしも離婚を前提に別居する必要はありませんし、別居について夫の許可を取る必要もありません。

まずはモラハラから抜け出して、自分を取り戻すことが大切です。

ただし、別居の際には、その後の展開を見通した準備が必要となりますので、事前に専門の弁護士に相談し、具体的なアドバイスをもらうことをおすすめいたします。

 

弁護士に間に入ってもらう

夫と別居した後は、弁護士に夫との交渉を依頼し、今後の窓口となってもらうことをおすすめします。

弁護士に依頼した場合は、別居と同時に、夫に対し、今後の窓口は弁護士とし、妻には直接接触しないことを申し入れることができます。

これにより、モラハラ夫が妻に直接接触をすることは困難となります。

そして、その後はご自身で直接夫とやり取りをする必要がなくなるため、精神的・肉体的な負担を大幅に軽減することができます。

また、夫の方が収入が多い場合、別居後、離婚が成立するまでは婚姻費用(生活費のこと)を請求することができます。

この婚姻費用についても、弁護士から夫に対して請求してもらうとよいでしょう。

このようにして、モラハラ夫と距離を保ちつつ、安全を確保することで、以降は安心して離婚協議等、解決に向けて進めて行くことができるようになるでしょう。

 

 

まとめ

以上、夫をおとなしくする方法や、モラハラ夫から解放されるためのポイントについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

夫をおとなしくさせるのは、簡単なことではありません。

夫をおとなしくさせようと働きかけている間に、被害が深刻化してしまうことには注意する必要があります。

モラハラ夫への対処法は、モラハラの内容や被害者の方の置かれた環境で異なります。

そのため、具体的な方策については、モラハラの問題に精通した弁護士に相談されることをおすすめいたします。

当事務所には、男女問題に注力する弁護士のみで構成された離婚事件チームがあり、モラハラ問題を強力にサポートしています。

LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っておりますので、モラハラにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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