モラハラ夫の母親に特徴はある?弁護士が解説

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  


モラハラ(モラル・ハラスメント)とは、精神的暴力のことで、わかりやすく言えば、言葉や態度による「嫌がらせ」のことです。

モラハラをする夫(モラハラ夫)は、なぜモラハラをするような人になったのでしょうか。

その原因が母親の育て方にあると考える人は多いと思います。

しかし、母親の育て方が原因でモラハラ夫になるという科学的根拠はありません。

とはいえ、モラハラ夫に悩まされている方は、その母親(義母)の人となりに疑念を抱いていたり、母親との接し方に悩みを抱えていたりすることも多いと思います。

そこで、ここでは、モラハラ夫の母親に関して、特徴の有無や接し方のポイントについて解説し、モラハラ夫から解放されるためのポイントについても紹介していきます。

ぜひ参考になさってください。

モラハラ夫の母親に特徴はあるの?

特徴があるとは限らない

夫のモラハラは、通常、「妻は夫に従うべき」「自分は妻をコントロールする権利がある」などといった考え方(価値観)によって引き起こされています。

モラハラ夫は、成長する過程でこのような考え方を身につけてきたといえます。

それでは、夫がこのような考え方をするようになった原因は、母親にあるのかというと、必ずしもそうとは限りません。

通常、人の価値観は、家庭環境(母親の育て方に限らず、父親の育て方、両親の関係性、兄弟姉妹の有無、居住状況など様々なものを含みます)、両親以外の身近な大人の言動、読む本、学校の友人、あるいは社会や文化など、様々なものによって形成されます。

母親の育て方は、数ある要因の中の1つとはなり得ますが、必ずしも決定的な影響を及ぼしているとは限りません。

仮に、夫が母親からモラハラをする人の考え方を学んだとしても、別のところで他の考え方を身につけ、母親の考え方を批判的に捉えることができた場合は、モラハラ夫になる可能性は低いでしょう。

反対に、母親がモラハラをする人とは逆の考え方を夫に教えていたとしても、夫が別のところでモラハラをする人の価値観を身につけた場合は、モラハラ夫になる可能性もあります。

以上のようなことから、「こういう母親の場合は息子がモラハラ夫になる」というように、モラハラ夫の母親が特徴的であるとは必ずしもいえないと考えられます。

 

母親の影響が大きい場合

上記のとおり、モラハラ夫になったことについて、必ずしも母親に原因があるとは限りません。

もっとも、次のような場合は、モラハラ夫になったことについて、母親の影響が大きいと推察することもできるでしょう(ただし、母親の影響だけでそうなっているとは限りません。)。

①母親自身にモラハラ気質がある場合

母親自身にモラハラ気質がある場合、息子が母親の価値観を正しいものとして受け継ぐことにより、モラハラ夫になる可能性があります。

夫の母親が、夫婦のことや、子ども(母親にとっての孫)の育て方・教育に関し、いちいち干渉してきたり、母親の言うとおりにしないと不機嫌になったり悪態をついてきたりする場合は、モラハラ気質である可能性があります。

このような言動は、息子や孫を自分のモノとして思い通りにできると考えていることの現れである可能性がありますが、これは、モラハラをする人の考え方といえます。

 

②母親が配偶者夫(夫の父親)からモラハラを受けていた場合

母親が配偶者父親からモラハラを受けている家庭環境で育った場合、夫が「家庭では父親の言うことが通るんだ」「母親は父親には逆らえないんだ」などといった、モラハラを肯定する考え方を身につけてしまっている可能性もあります。

このような家庭環境であった場合、夫の母親への接し方にも特徴が出ることがあります。

母親が父親の言うことに何でも従っていたり、侮辱されているのに何も言わなかったりしている姿を見て、「母親は尊敬するに値しない人だ」と思うようになり、母親を軽視するようになっている場合があります。

そのため、夫が母親を抑圧するような態度をとっていたり、母親が息子を恐れているような様子を見せている場合は、モラハラがある家庭環境で育ったことが影響している可能性があるとも考えられます。

 

③母親が息子を甘やかして育てた場合

母親が、息子を甘やかして育てた、具体的には、

  • 息子のわがままを許す(全部実現してあげようとする。)
  • 息子が問題のある言動をしても咎めない
  • 息子の非を認めず、責任転嫁して息子の方が被害者であるかのように振る舞う

というような場合も、モラハラ夫になる可能性があります。

 

母親が上記のように息子に接していると、息子は、「他人(特に親密な関係にある女性)は、自分のためだけに、思い通りに動いてくれるのが当然である」「自分は何をやっても許される」などといった考えを持つようになる可能性があります。

これは、まさにモラハラをする人の考え方といえます。

 

モラハラ夫かどうかは母親を見るだけでは判断できない

母親が上記の①~③に当てはまったとしても、息子がモラハラ夫にならない場合もあります。

また、母親が①~③に当てはまり、かつ、息子がモラハラ夫である場合であっても、母親以外の要因によってモラハラ夫になった可能性もあります(因果関係があるとは限らない)。

そのため、母親に関する事情に着目するだけでは、その息子がモラハラ夫かどうかを判断するのは困難です。

夫がモラハラ夫かどうかを判断するには、夫自身の言動や態度を確認する必要があります。

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モラハラ夫との母親との上手な接し方

ここでは、モラハラ夫の母親(あなたの義母)への接し方のポイントについて解説していきます。

相談するかどうかは慎重に判断する

夫のモラハラについて、夫の母親に相談するべきかどうかは、慎重に判断したほうがよいでしょう。

母親が味方になってくれるとは限らない

夫のモラハラについて母親に相談をしても、こちらの味方になってくれるとは限りません。

母親が息子の問題に誠実に向き合ってくれる人かどうかは、慎重に見極める必要があるでしょう。

母親自身がモラハラ気質の場合や、息子を溺愛している場合、自分の責任にされるのを避けたいと思っているような場合は、「息子がそんなことをするはずはない」「あなたが大袈裟なんじゃないの?」「そのくらい我慢しなさい」などと言われ、何の解決にもならない可能性があります。

場合によっては、「嫁が息子にケチをつけてきた」と思われる可能性もあります。

そうなると、あたりが強くなったり、夫と一緒になって攻撃されたりする可能性もあるので、注意が必要です。

 

相談するときは具体例をあげる

母親が信用できる人であるとして、夫のモラハラについて相談する場合は、どのような発言があるのかなど、客観的な事実を具体的に伝えるようにしましょう。

「モラハラを受けている」と言うだけでは、どのような状況か理解してもらえない可能性があります。

モラハラについての世間の認識は決して高いものではなく、夫の母親に「モラハラ」と言っても、その実態や被害の深刻さを理解してもらうのは難しいでしょう。

また、モラハラは、1つ1つの言動を切り取ってみると、殴る・蹴るなどの身体的な暴力がある場合に比べると酷くないように見えるという特徴もあります。

そのため、出来事の全体像を伝えなければ、「単なる夫婦喧嘩なのではないか」と思われる可能性もあります。

このような実情も踏まえ、相談できる場合は、具体的かつ詳細に説明するようにしましょう。

暴言等の録音や、夫からのLINEなど、客観的な証拠を見せるのもよいでしょう。

ただし、そのような証拠も含めて、息子の問題をきちんと受け止めてくれるかどうかは、母親次第であることには留意する必要があるでしょう。

 

親身になってくれる場合の注意点

母親が親身になってくれた場合でも、単に「注意してください」などと頼むだけでは解決にならない可能性もあります。

母親が夫に注意をしてくれても、夫はモラハラを反省するどころか、「妻が反抗した」と考えて、より支配力を強めようと、モラハラをエスカレートさせることもあります。

「母親の言うことには何でも従う」というモラハラ夫の場合は、一時的にはモラハラがおさまるかもしれませんが、真摯な反省はしていないので根本的な解決にはならず、再発するのも時間の問題と思われます。

そのため、母親から夫に注意してもらうことで全てを解決しようと思わずに、母親には状況を理解してもらうこと、よい相談相手となってもらうことを目指すようにするとよいのではないでしょうか。

 

責めない

モラハラ夫に苦しんでいる方は、「モラハラ夫になったのは母親のせいだ」「息子がモラハラをしているのに何もしないなんてひどい親だ」などと、夫の母親を責める気持ちになるかもしれません。

しかし、母親を責めても状況が改善するわけではありません。

モラハラ夫に加え、母親についても悩んだり、どうにかしようとすると、余計に苦しくなってしまいます。

そのため、モラハラは夫自身の問題であると考え、母親とは切り離して考えた方がよいと思われます。

 

敵対しない

「モラハラ夫の母親だから問題がある人」という先入観から、敵対心や恐怖心を持って接すると、その雰囲気が相手にも伝わり、関係が悪くなる可能性もあります。

そのため、「モラハラ夫の母親」だと意識し過ぎることなく、子どもを連れて遊びに行ったり、母の日に食事や贈り物をしたりするなど、義母として普通に接するスタンスの方がよい場合があります。

そのようにして、義母と良好な関係を構築することができた場合は、夫のモラハラについて親身に相談に乗ってくれるようになる可能性もあるでしょう。

また、仮に夫と別居や離婚をすることになった際にも、母親が口を挟み事態を紛糾させるような事態には至らずに済むかもしれません。

 

距離を置く

母親自身がストレスの原因になっている場合は、距離を置く必要があるでしょう。

例えば、母親自身がモラハラをしてくる人である場合、息子のモラハラを助長する場合、息子のモラハラを知っても息子を擁護し、「そのくらい我慢するのが当然」「あなたが悪い」「離婚は絶対ダメ」などと言ってくるような場合です。

このような母親に関わり続けることは、モラハラ夫とその母親両方から二重にモラハラを受けているのと同じ状況といえますので、被害がより深刻になる可能性もあります。

そのため、このような場合は、母親と上手くやっていこうと頑張るよりも、距離を置いた方がよいでしょう。

距離を置く方法としては、夫と別居して物理的な距離をとるのが一番でしょう。

夫と別居をすれば、通常はその母親とも距離を置くことができます。

 

 

モラハラ夫から解放されるためには

モラハラ夫と物理的な距離をとる

モラハラ夫から解放されるためには、夫と別居をして物理的な距離を置くのが一番です。

夫の方からモラハラをやめてくれることは、基本的には期待できません。

モラハラをやめるためには、夫自身が自分の問題を自覚し、誠実に改善に取り組む必要がありますが、モラハラ夫が自分の非を認めることは滅多にありません。

また、モラハラ夫は、妻を支配することに依存しているため、依存対象である妻が近くにいる状態では、モラハラをやめるのが非常に困難な状態となってしまっています。

そのため、モラハラから解放されるためには、自分から別居して夫と距離を置く必要があります。

このとき、必ずしも離婚を前提に家を出る必要はありませんし、夫に許可をとる必要もありません。

まずは、モラハラ夫の支配下から抜け出して、自分を取り戻すことが大切です。

ただし、別居の際には、荷物の選定、当日の段取りなど、注意すべき点がいくつかあります。

そのため、モラハラの問題に詳しい弁護士のサポートを受けることをおすすめいたします。

また、別居の決心がつかないという場合も、まずはモラハラに理解のある弁護士に相談してみることをおすすめいたします。

相談をすることで、ご自身の置かれている状況を把握したり、今後の見通しを知ることができるので、一歩を踏み出しやすくなります。

 

 

弁護士に間に入ってもらう

別居後は、弁護士に代理人として間に入ってもらうことをおすすめします。

依頼を受けた弁護士は、別居と同時に、夫に対し、今後の連絡はすべて弁護士宛にすることや、妻やその親族に直接接触しないことを申し入れます。

これにより、夫があなたに直接接触することは困難となります。

それに伴い、夫の母親があなたに直接接触することも困難となります。

その後は弁護士がモラハラ夫との窓口となるので、ご自身で夫と直接やり取りをしなくても済むようになり、精神的・肉体的な負担も大幅に軽減されます。

また、別居後、離婚が成立するまでの間は、婚姻費用(生活費のこと)を請求する必要があります。

この婚姻費用についても、弁護士から夫に対して請求してもらうとよいでしょう。

このように、弁護士を間に入れ、夫との距離を保ちながら安全を確保することで、以降は安心して離婚協議など、解決に向けて進めて行くことが可能になるでしょう。

 

まとめ

以上、モラハラ夫の母親の特徴の有無、接し方のポイント、モラハラ夫から解放されるためのポイントについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

母親の育て方が原因でモラハラ夫になるとは限りません。

モラハラは夫自身の問題と考え、母親とは敵対せず、頼りすぎず、普通に接することを心がけるとよい場合が多いと思われます。

ただし、母親が夫のモラハラを助長するなど、被害を拡大させる場合もあるので注意が必要です。

モラハラの被害は、ご自身でも気が付かないうちに深刻化していってしまうこともありますので、早めに対処する必要があります。

まずは、モラハラに理解のある弁護士に相談し、状況を踏まえた具体的なアドバイスをもらうようにされてください。

当事務所には、離婚問題に注力する弁護士のみで構成された離婚事件チームがあり、モラハラ問題を強力にサポートしています。

LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っておりますので、モラハラにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

この記事が、モラハラにお悩みの方にとってお役に立てれば幸いです。

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