モラハラ夫の離婚後の気持ちとは?弁護士が解説

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  

モラハラをした夫は、離婚により、自分の振る舞いを後悔する可能性もあります。

また、離婚した事実を受け止められず、元妻に執着し続けたり、離婚の原因が元妻にあると思い込んで元妻に仕返ししようとしたりする可能性もあります。

ここでは、モラハラをした夫の離婚後の気持ち、モラハラ夫の離婚後に予想される行動、モラハラ夫から解放されるポイントについて解説していきます。

離婚後にモラハラ夫がどうなるのか気になる方や、モラハラ夫からの仕返しなどに不安を感じている方は、ぜひ参考になさってください。

 

モラハラ夫は離婚後に後悔する?

モラハラ夫は、離婚後、自分の振る舞いなどについて後悔することがあるのでしょうか?

離婚の考え方に関する国の調査によると、女性よりも男性の方が離婚を否定する考え方を持っている人の割合が多いとのことです(女性が全体の39.9%、男性が全体の53.3%)。

参考:厚生労働省白書|2005年度版 図表2-2-11

これはモラハラ夫に限らず男性一般の傾向といえますが、モラハラ夫に限って見た場合も、半数くらいの人は離婚に消極的であると推察されます。

そのため、モラハラ夫が離婚後に後悔する可能性は、一定程度あると考えられます。

もっとも、モラハラ夫は、自分が正しいと思い込んでいる傾向にあり、離婚に至ったのも、自分ではなく妻のせいであると考えている場合が多いです。

そのため、モラハラ夫の後悔の対象は、「自分がモラハラをして妻を追い詰めたこと」などではなく、「妻をコントロールできなかったこと」だったり、「離婚に応じて妻を支配下から解放してしまったこと」などである場合が多いと考えられます。

モラハラ夫に悩まされている方は、離婚によって、夫に「モラハラをしなければよかった。妻には申し訳ないことをしてしまった。」という形で後悔させたいと考えている場合もあると思います。

しかし、上記のとおり、モラハラ夫がこのような気持ちになることは、人にもよりますが、基本的には期待することができません。

モラハラ夫に後悔をさせることを目的にしていると、離婚後も元夫のことが気になり、ストレスになる場合もあります。

そのため、モラハラ夫を後悔させることにとらわれることなく、モラハラから抜け出してご自身の人生を取り戻すことを最優先に考えることが大切といえるでしょう。

 

 

モラハラ夫の離婚後に予想される行動

モラハラ夫の中には、離婚を受け入れて前向きに生きる人もいますが、元妻に執着し続ける人や、破滅的になる人もいます。

そのため、モラハラ夫は、離婚後、次のような行動をする可能性があります。

 

①元妻へLINEなどを送ってくる

モラハラ夫の中には、離婚をしても、妻は自分のものであるという意識が抜けない人もいます。

そのため、離婚後も従来と同じように元妻にLINEなどで頻繁に連絡を入れてくることもあります。

元妻が連絡を無視しても、諦めることなく、しつこく連絡をし続けてくることもあります。

それがエスカレートすると、自宅に来たり、待ち伏せしたり、付きまとったりするといった、ストーカー行為に発展する可能性もあるので、注意が必要です。

 

②元妻へ仕返しをする

モラハラ夫は、離婚に至ったのは妻のせいであり、自分には何ら問題はなかったと思い込んでいる場合もあります。

そのため、「自分をこのような状況に追いやった妻」に対し、様々な手段で仕返ししようとする可能性があります。

身体的な暴力を振るう可能性もゼロではないので、注意する必要があります。

モラハラ夫の場合、身体的な暴力を振るうことには抑制的であるケースが多いものの、離婚に直面して制御がきかなくなり、破滅的な行動を取ることもあり得ます。

元妻が他の男性と交際したり、再婚した場合は、その相手の男性にも危害が及ぶ可能性もあります。

また、子どもを利用して元妻に仕返しをしようとする場合もあります。

離婚後、元夫が子どもと面会交流(子どもと離れて暮らす親が子どもと会うなどして交流することです。)を実施した際などに、子どもに対して母親の悪口を吹き込み、母子関係を悪化させようとすることなどが考えられます。

また、子どもの通学路などで待ち伏せをして、子どもを連れ去ってしまうといった行動に出る可能性もあります。

 

③元妻へ再婚を持ちかける

モラハラ夫の中には、自分の思い通りになると思っていた妻が離れていくことが受け入れられない人もいます。

そのため、元妻に対して復縁を求める場合があります。

「お前一人でやっていけるわけがない」「子どもがかわいそうだ」というような、上から目線な理由で復縁を迫ることもあります。

その一方で、「離婚して、自分のダメさや、きみの大切さを思い知った」「今度こそ変わるから、やり直させてくれ」というような謝罪とともに、復縁を申し出ることもあるでしょう。

しかし、多くの場合、元夫からの謝罪等は、元妻を取り戻すためのコトバに過ぎません。

復縁した途端、モラハラが再発することも予想できますので、元夫のコトバには振り回されないように注意する必要があります。

 

④別の女性(攻撃対象者)と結婚してモラハラを繰り返す

上記の1〜3は、モラハラ夫が離婚後も元妻に執着し続けるケースでしたが、モラハラ夫の中には、元妻に執着せずに新しい生活を始める人もいます。

もっとも、モラハラを反省した結果ではなく、新たな攻撃対象者としての再婚相手を見つけたために、元妻を攻撃しなくてもよくなったというケースが多いと思われます。

そうすると、モラハラ夫は、再婚相手にもモラハラを繰り返す可能性が高いです。

このように、モラハラ夫は、どこかで自分の問題を自覚して改善することができなければ、新しい人を見つけても円満な夫婦関係を築くことが難しいと考えられます。

その結果、最終的には、孤独になってしまう可能性もあるかもしれません。

 

 

モラハラ夫から解放されるポイント

モラハラ夫と離婚したとしても、元夫との接触を断つことができなかったり、元夫からの仕返しなどにおびえながら生活することになってしまっては、モラハラから解放されたとはいえません。

このような事態を回避するためには、次のようなポイントを押さえておくとよいでしょう。

接触しないという約束を取り付ける

合意によって離婚する場合は、離婚や離婚条件に関する取り決めとともに、離婚後は互いに接触しないとの約束も取り付け、離婚協議書や調停調書などの書面に残しておくようにしましょう。

離婚後は接触してはいけないことを明確に認識してもらうことで、モラハラ夫が離婚後に元妻にむやみに連絡したり、自宅を訪ねてきたりすることをある程度阻止できる可能性があります。

 

連絡手段などは明確に取り決めておく

子どもがいる場合は、子どもの父母としての関係はなくならないため、モラハラ夫との接触を完全に断つことが困難なこともあります。

例えば、面会交流を実施する場合は、子ども自身で父親と自由にやり取りできる年齢でもない場合は、少なくとも緊急連絡(当日子どもの体調不良で中止する旨など)等は父母間でする必要があります。

このように、離婚後に連絡を取らざるを得ない状況がある場合は、離婚時に連絡手段と連絡事項を明確に取り決め、それ以外の手段・事項での連絡はしない約束を取り付けておくとよいでしょう。

 

必要な情報以外は教えない

上記のように、子どもの関係などで最小限必要になる情報以外は、元夫と共有する必要はありません。

現住所などを元夫から聞かれても、元夫が知る必要がないのであれば教えないようにしましょう。

なお、離婚後、元夫が子どもと面会交流をする場合は、その際に、子どもから元妻に関する情報を聞き出そうとする可能性もあります。

そのため、面会交流のルールなどについては、離婚前にきちんと取り決めておくことも重要になります。

適切な取り決め内容等については、具体的な状況により異なりますので、専門の弁護士に相談されることをおすすめいたします。

 

保護命令を出してもらう

保護命令とは、DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)に基づき、被害者からの申立てにより、裁判所が加害者に対し、被害者に接近してはならないこと等を命ずるものです。

(元)夫から殴る・蹴るなどの身体的な暴力や、「殺してやる」などといった脅迫を受けた場合は、保護命令を申し立てることが考えられます。

なお、保護命令は、今後加害者が被害者に暴力等を振るうのを防止するためのものであり、現に発生している緊急事態に対処するものではありません。

(元)夫が現に暴力を振るってきた場合など、緊急の対処が必要な場合は、すぐに警察に通報し、身の安全を確保するようにしてください。

また、現行のDV防止法においては、身体的な暴力があった場合や、生命や身体にかかわる脅迫があった場合でなければ保護命令を申立てることができません。

そのため、LINEが大量に送られてくるものの生命等を脅かすような文言は含まれていない場合や、付きまとわれているものの身体的な暴力等がない場合は、保護命令制度を利用することができません。

このような場合は、状況に応じて警察に相談し、ストーカー規制法に基づく警告措置などをとることが考えられます。

DV防止法は2023年5月に改正法(2024年4月1日施行)が成立し、精神的な暴力の場合でも保護命令を出してもらえるようになりました。

 参考:内閣府男女共同参画局

 

弁護士に間に入ってもらう

モラハラ夫との離婚を進める場合は、弁護士に代理人として離婚の交渉を進めてもらうことをおすすめいたします。

専門家である弁護士が間に入って交渉をすることで、裁判に至ることなく、合意で離婚をすることができる可能性が高くなります。

また、離婚条件や離婚後の約束事などについて、漏れなく、適切に取り決められるように尽力してくれますので、終局的な解決を目指すことができます。

それにより、離婚後に夫とトラブルが再発することを防止することができます。

また、合意で解決をするということは、夫も納得した上での解決ということになりますので、接触しないこと等の約束事も守られやすくなります。

既に離婚が成立しているという方も、元夫とのやり取りに不安がある場合は、専門の弁護士にご相談ください。

弁護士であれば、代理人として面会交流や養育費に関する交渉をすることもできます。

また、状況に応じて保護命令の申立てをする際は、専門的な知識がないと難しい面もありますので、DV・モラハラ問題に精通した弁護士のサポートを受けることをおすすめいたします。

 

 

まとめ

以上、モラハラをした夫の離婚後の気持ち、モラハラ夫の離婚後に予想される行動、モラハラ夫から解放されるポイントについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

モラハラ夫は、離婚後、離婚を後悔するとともに、元妻に執着して接触を図ったり、仕返ししようとする可能性もあるので注意が必要です。

適切な対処法は具体的な状況により異なりますので、離婚後の夫の行動に不安を感じる場合は、一度モラハラ問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめいたします。

当事務所には、男女問題に注力する弁護士のみで構成された離婚事件チームがあり、モラハラ問題を強力にサポートしています。

LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っておりますので、モラハラにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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