浮気とは?どこから・どこまで?不倫との違いを解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  


浮気とは、一般的には既婚・未婚にかかわらずパートナー以外の人と交際関係にあることをいいます。

もっとも、どこからが「浮気」となるかについては、人によって捉え方が異なります。

自分が「浮気」ではないと思っていても、パートナーが「浮気」だと思えば、関係が悪化したり、慰謝料請求などの法的なトラブルに発展する可能性もあります。

また、浮気と似たような言葉には「不倫」や「不貞行為」があり、これらとの違いもわかりにくいものとなっています。

そこで、ここではどこからが「浮気」となるのかを中心に、浮気と不倫・不貞行為の違い、浮気で慰謝料を請求できるのはどのような場合かについても解説していきます。

 

浮気とは?

浮気とは、一般的には既婚・未婚にかかわらずパートナー以外の人と交際関係にあることをいいます。

浮気と不倫の違い

浮気と同じような状況を表す言葉に「不倫」があります。

不倫とは、道徳的に許されない男女の関係を指す言葉であり、一般的には既婚者が妻又は夫以外の人と交際関係にあることをいいます。

浮気は当事者の双方が独身の場合も含むのに対し、不倫は当事者の一方又は双方が既婚者である場合を指すという点で違いがあるといえます。

ワンポイント 浮気や不倫は人により捉え方が異なる
浮気や不倫は、次に説明する「不貞行為」とは異なり、日常用語であるため、人によって抱くイメージが異なるものと思われます。
この記事では、浮気と不倫について、独身者同士の場合も含むのか、少なくとも一方が既婚者の場合を指すのかという点で区別していますが、肉体関係の有無によって区別する方法もあるでしょう。
もっとも、浮気や不倫を理由に法的な請求(慰謝料や離婚の請求)をする場面においては、浮気・不倫の区別がどこにあるかはあまり問題になりません。
浮気や不倫を理由に法的な請求ができるかどうかは、それらの行為が「不貞行為」に該当するかどうかが重要なポイントとなるためです。

浮気と不貞行為の違い

浮気や不倫は、実は法律に直接記載されている言葉ではなく、法律では「不貞」という用語が使われています。

法律(民法)には、離婚事由(離婚できる条件)の1つとして、「不貞な行為」というのが定められており、これが浮気や不倫と概ね一致するものといえます。

【根拠条文】

民法(裁判上の離婚)

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。

引用元:民法|電子政府の窓口

もっとも、「不貞行為」とは、基本的には「配偶者以外の人と自由な意思に基づいて(=強制されたのではなく)性的関係を結ぶこと」と解釈されています。

性的関係とは、肉体関係(性交渉又は性交類似行為)を持つことを指します。

したがって、「浮気」は当事者双方が独身の場合や、肉体関係を伴わない交際関係も含むのに対し、「不貞行為」は当事者の少なくとも一方が既婚者であり、肉体関係を持つ場合を指すという点で違いがあるといえます。

不貞行為・不倫・浮気の相違点
不貞行為 不倫 浮気
当事者 一方又は双方が既婚者(※) 既婚者・独身者問わない
肉体関係 あるものに限る あるもの、ないもの両方含む

(※)「既婚者」には、内縁関係にある者も含むものとします。

 

 

浮気の確率

相模ゴム工業株式会社が発表している調査結果によると、浮気をしている人(※)の割合は、全体では20.5パーセント、性別・年代別だと下表のようになったとのことです。

男性 女性
平均 26.5% 15.2%
20代 29.5% 16.5%
30代 30.9% 17.9%
40代 30.1% 17.1%
50代 24.5% 14.3%
60代 19.8% 10.5%

全体:調査対象のうち、結婚している人+未婚で現在交際相手がいる人
結婚している人の割合(平均):調査対象のうち、男性は59.9%、女性は70.0%

※「結婚相手/交際相手以外にセックスをする相手はいますか?」との質問に対し、「特定の相手が1名いる」「複数名いる」「特定ではないがいる」と答えた人です。
ここではセックスをする相手に限定されているため、「浮気」に肉体関係を伴わない交際関係も含むと考える場合、「浮気」をしている人の割合は上表のものよりも高くなると考えられます。

 

 

浮気とはどこから・どこまでを言うの?

先にも述べたように、どこから・どこまでが浮気なのかは人によって考え方が異なり、最終的にはパートナーがどう思うかによることになります。

もっとも、浮気だと思う基準としては、大体次の3つがあると思われます。

  1. ① 肉体関係を持ったかどうか
  2. ② 親密な関係にあるかどうか(そう見えるかどうか)
  3. ③ 恋愛感情を抱いているかどうか(他の人に心が移っているかどうか)

①〜③の全てを満たしているような場合は、多くの人が浮気と捉えることになるといえるでしょう。

それ以外の場合は、パートナーが何を基準として重視しているのかによって浮気と捉えられるかどうかが異なるといえるでしょう。

これを踏まえ、以下の各行為について浮気に当たり得るかどうかを見ていきましょう。

また、離婚や慰謝料等の法的な請求の可否という面においては、「不貞行為」に当たるかどうか、すなわち①が重要なポイントとなります。

そのため、各行為が不貞行為に当たるかどうかについても解説していきます。

 

性行為を行うのは浮気?

パートナー以外の人と性行為をすることは、通常は①〜③の全てを満たすため、ほとんどの人が浮気と捉えることになるでしょう。

パートナー以外の人と肉体関係を持ったら浮気というのは一般常識としても定着しており、異論を差し挟む余地はあまりないものと思われます。

ただし、風俗店で性的サービスを受ける行為、風俗店で働いて性的サービスを提供する行為などについては、必ずしも「親密な関係」や「恋愛感情」を伴うものではありません。

そのため、パートナーが「親密な関係がなければ浮気ではない」「恋愛感情を抱いていなければ浮気ではない」と考えている場合、上記のような行為に関しては、浮気ではないと捉えられる可能性もあるでしょう。

なお、既婚者がパートナー以外の人と性行為をした場合は、その回数や恋愛感情の有無にかかわらず不貞行為となります。

そのため、上記のような性的サービスを受ける・提供するといった行為も不貞行為に当たります。

 

外泊や旅行は浮気?

パートナー以外の人と2人でホテルや相手の自宅に泊まったり、宿泊を伴う旅行をしたりすれば、実際に肉体関係を持ったかどうかはさておき、パートナーに「肉体関係を持った」と思われる可能性は非常に高いといえるでしょう。

また、このような行為自体、通常は「親密な関係」や「恋愛感情」がなければしないものであると考えられていると思われます。

そのため、外泊や旅行も①~③を全て満たすものとして、ほとんどの人が浮気と捉えるものといえるでしょう。

なお、既婚者がパートナー以外の人と外泊や旅行をした場合は、不貞行為があったとされる可能性が高いです。

外泊や旅行という行為自体が不貞行為に当たるわけではありませんが、このような行為があれば肉体関係があったことが強く推認されます。

そのため、実際に肉体関係があったかどうかはさておき、裁判の上では不貞行為があったと認定される場合が多いです。

 

キスをするのは浮気?

キスをする行為自体は、通常は肉体関係を伴うものではないため、パートナーが「肉体関係を持たなければ浮気ではない」と考えている場合は、浮気には当たらないことになるでしょう。

ただし、キスをする行為には、状況によっては性行為や性交類似行為が伴っていても不自然ではないといえるような場合もあるため、パートナーの捉え方次第では「肉体関係を持った」と思われる可能性も十分あり得ると思われます。

また、キスは、通常は親密な関係であったり、相手に好意を抱いている場合でなければしない行為といえるでしょう。

そのため、パートナーが「親密な関係にあれば浮気になる」又は「恋愛感情を抱いていれば浮気になる」と考えている場合は、浮気と捉えられることになるでしょう。

なお、既婚者がパートナー以外の人とキスをする行為自体は、通常は肉体関係を伴うものではないため、不貞行為には該当しません。

ただし、状況等によっては夫婦関係に大きな影響を及ぼす可能性もあるため、不貞行為と同様に、慰謝料や離婚の理由となる可能性はあると考えられています。

この点は、次に挙げるハグや手をつなぐ行為などについても同様のことがいえます。

 

ハグをするのは浮気?

ハグもキスと同様、通常は肉体関係を伴うものではないため、パートナーが「肉体関係を持たなければ浮気ではない」と考えている場合は、浮気には当たらないことになるでしょう。

ただし、キスと同様、性行為や性交類似行為が伴っていても不自然ではないといえるような場合もあり得ると考えられるため、パートナーの捉え方次第では「肉体関係を持った」と思われる余地はあるでしょう。

また、ハグはキスよりも親密度が低い行為ともいえますが、少なくとも日本においては、相当親しい関係にあり、相手に好意がなければしないのが一般的な感覚といえるのではないでしょうか。

そのため、パートナーが「親密な関係にあれば浮気になる」又は「恋愛感情を抱いていれば浮気になる」と考えている場合は、浮気と捉えられる可能性は高いでしょう。

 

手をつなぐのは浮気?

手をつなぐ行為も概ねハグと同様に考えることができます。

ただし、手をつなぐのはハグよりもさらに密着度の低い行為であり、それだけで「肉体関係を持った」と思われる可能性は低くなると考えられます。

異性と食事をするのは浮気?

異性と食事をする行為自体には身体的接触も伴わないため、パートナーが「肉体関係を持たなければ浮気ではない」と考えている場合は、浮気には当たらないことになるでしょう。

ただし、関連性は薄いものの、食事の前後で肉体関係を持つ可能性自体はあるため、例えば元恋人とわざわざ会う約束をして食事をしたような場合、パートナーの捉え方次第では「肉体関係を持ったのではないか」と疑われる可能性はあるでしょう。

他方で、パートナーが「親密な関係に見えれば浮気になる」又は「相手に恋愛感情を抱いていれば浮気になる」と考えている場合は、相手との関係性や状況次第で浮気になるかどうかが異なるといえるでしょう。

例えば、職場の同僚と仕事の帰りや合間に短時間で食事をするのは、捉え方にもよりますが、特に親密な関係だったり、相手に恋愛感情がなくても為し得ることではないでしょうか。

他方、休日に2人でわざわざ食事をしに行くというのは、恋人同士のデートにも見える行為であり、「親密な関係にある」「相手に恋愛感情を抱いている」と思われる可能性は高いといえるでしょう。

このように、異性と食事をする行為は、身体的な接触があるケースと比べて、人によって捉え方が異なる場合が多いと考えられます。

なお、既婚者がパートナー以外の異性と食事をする行為自体は、通常肉体関係を伴うものでもなく、不貞行為には当たりません。

ただし、キスと同様、状況等によっては夫婦関係に大きな影響を及ぼす可能性もあるため、慰謝料や離婚の理由となる可能性はゼロとはいえないでしょう。

 

連絡を取り合うのは浮気?

ここで問題となるのは、仕事の連絡や事務連絡、グループ内での連絡などではなく(これらは通常は浮気に当たらないでしょう)、特定の人とLINE等で日常会話をする行為です。

このような行為自体には身体的接触も伴わないため、パートナーが「肉体関係を持たなければ浮気ではない」と考えている場合は、通常は浮気には当たらないことになるでしょう。

もっとも、性行為等があったことをうかがわせるメッセージが含まれている場合は、パートナーに「肉体関係を持った」と思われる可能性は非常に高いでしょう。

また、LINE等での日常会話は、親密な関係になければ通常はしないというのが一般的な感覚と思われます。

そのため、パートナーが「親密な関係にあれば浮気になる」又は「相手に恋愛感情を抱いていれば浮気になる」と考えている場合は、連絡を取り合う行為自体が浮気と捉えられる可能性は高いと考えられます。

また、メッセージに「好き」「愛してる」といった言葉やハートマークなどが使われている場合は、パートナーが「連絡を取り合う行為自体は浮気ではない」と考えている場合であっても、「親しい関係にある」「恋愛感情を抱いている」と思われる可能性は非常に高いでしょう。

なお、既婚者がパートナー以外の人とLINE等で連絡を取り合うことは、それ自体は不貞行為には当たりません。

もっとも、性行為等があったことを直接言及しているメッセージが含まれている場合は、肉体関係を持ったことが強く推認されるため、不貞行為があったと認定される可能性があります。

他方、性行為等があったことに直接言及されていない場合は、それだけでは肉体関係を裏付けることはできないでしょう。

しかし、肉体関係が裏付けられない場合であっても、やり取りからうかがえる交際状況や、それが夫婦に与えた影響等によっては慰謝料や離婚が認められる可能性もゼロとはいえないでしょう。

 

恋愛・結婚向けのマッチングサイトなどに登録等をするのは浮気?

マッチングサイトなどで出会った人と実際にやり取りや接触をするのではなく、登録だけしているという場合は浮気になるでしょうか。

登録するだけでは特定の「浮気相手」も「不適切な交際関係」も生じません。

しかし、マッチングサイト等が恋愛や結婚相手を探すことを目的としたものである以上、登録した行為自体、パートナー以外の人との恋愛や結婚を望んでいることの現れと受け取られることにはなるでしょう。

そのため、少なくとも他の人に心が移ったものとして、浮気と捉えられる可能性はあります。

また、登録する行為自体は浮気に当たらないとしても、パートナーが「サイトで出会った人と肉体関係を持っているのではないか」又は「恋愛関係にあるのではないか」といった疑いを持ち、浮気をしていると捉えられる可能性はあるでしょう。

なお、既婚者がこのような行為をすること自体は不貞行為には当たりません。

また、特定の相手との不適切な交際関係が具体的にある場合とは異なり、このような行為のみを理由に慰謝料や離婚を求めることは難しいと考えられます。

ただし、相手の信頼を失わせる行為であり、夫婦関係の悪化、さらに離婚の一因となる可能性はあるものと考えられます。

 

浮気する夢を見るのは?

浮気する夢を見ることは、マッチングサイト等に登録する行為とも異なり、自分でコントロールもできなければ、外部的な行動も伴わないため、少なくともそれ自体は浮気とはいえないでしょう。

もっとも、寝言で浮気相手の名前を呼んでおり、それを聞いたパートナーが「実際に浮気をしている」又は「心が他の人に移っている」と受け取った場合は、浮気しているのではないかと疑われる余地はあるかもしれません。

なお、たとえ既婚者がパートナー以外の人と浮気をする夢を見たり、その前提として相手に恋愛感情を抱いていたりしても、内心にとどまる限り、不貞行為に当たらないのはもちろん、法的な責任を追及されることもありません。

 

 

浮気で慰謝料を請求できる場合とは?

浮気をされた場合、浮気によって被った精神的な苦痛をつぐなうため、浮気をした当事者(浮気をしたパートナーと浮気相手)に対して慰謝料を請求することができます。

もっとも、浮気で慰謝料を請求できるのは、基本的には浮気が「不貞行為」に当たる場合です。

すなわち、基本的には、パートナーと結婚しており、かつ、パートナーが自分以外の人と肉体関係を持った場合に、慰謝料を請求することができます。

 

パートナーと結婚していない場合は請求できない

パートナーと結婚をしていない場合は、原則として、浮気をされても慰謝料を請求することはできません。

パートナーと結婚していなくても、浮気をされれば精神的な苦痛は受けるものですが、恋人としての権利や利益と、配偶者としての権利や利益は、その中身や重みが違うものとされており、現在の日本(裁判実務)では基本的には後者のみが救済の対象とされています。

ただし、法律上の夫婦でなくても、次の場合は慰謝料を請求することができると考えられています。

内縁関係にある場合

内縁関係とは、婚姻届は提出していないものの、お互いに実質的に夫婦になろうと合意をした上で、事実上の夫婦としての共同生活を送っていることをいいます。

内縁関係にある場合でも、一方が他の人と性的関係を持てば他方の平穏な夫婦生活を送る権利や利益が害されることになるため、慰謝料を請求することができると考えられています。

ただし、内縁関係は事実上のものであるため、成立しているかどうかが問題となるケースは多いです。

また、内縁関係が成立していると認められたとしても、浮気相手において内縁の妻又は夫の存在を知ることができなかったなどの理由により、慰謝料が認められないケースもあります。

後に解説しますが、浮気相手に対する慰謝料が認められるためには、浮気相手において自分と肉体関係を持つ人に(事実上の)妻又は夫がいることを知っている又は注意すれば知ることができたことが必要になります。

しかし、内縁関係にあるかどうかは外から判断がつきにくいため、注意しても知ることができなかったと評価されることが多いです。

そのため、内縁関係にある場合は、法律上の夫婦の場合よりも慰謝料が認められるためのハードルが高くなるといえます。

同性婚の場合

同性のカップルの場合でも、内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては、法的保護に値する利益があるとして慰謝料が認められるとした裁判例があります。

これを踏まえると、同性のパートナーが他の人と性的関係を持った場合、そのパートナーと「内縁関係と同視できる関係」にあると認められるのであれば、慰謝料を請求できる可能性があると考えられます。

【参考判例】

宇都宮地裁真岡支部令和元年9月18日判決

引用元:最高裁ホームページ

 

婚約破棄となった場合

パートナーと婚約中に浮気をされ、それが原因で婚約破棄となった場合は、婚約破棄をせざるを得なくなったことについて慰謝料を請求することができるとされています。

ただし、婚約が具体的に結婚への期待を生じさせるものになっていなければ、婚約破棄により権利や利益が害されたとは言い難く、慰謝料は認められないと考えられています。

婚約が具体的に結婚への期待を生じさせるものになっていたかどうかは、次のような客観的な事情の有無によって判断されることになります。

  • 婚約指輪の交換
  • 両家の顔合わせ
  • 知人などへの結婚の報告
  • 結婚式場の予約
  • 結婚式の招待状の発送

なお、婚約を解消しない場合に、浮気自体についての慰謝料を請求できるかというと、内縁関係が成立していると認められない限りは難しいと考えられます。

あわせて読みたい
婚約破棄の問題点

 

肉体関係がない場合は?

上記のとおり、慰謝料が認められるのは基本的には肉体関係がある場合です。

しかし、肉体関係がなければ慰謝料が認められる余地がないというわけではありません。

不貞行為を理由に慰謝料が認められるのは、それが他方(不貞行為をされた側)の平穏な夫婦生活を送る権利や利益を侵害する行為であるからです。

肉体関係がない交際関係であっても、上記のような権利や利益が侵害される場合はあると考えられます。

そのため、肉体関係がない場合でも慰謝料が認められる余地はあり、実際に慰謝料を認めた裁判例もあります。

ただし、具体的にどのような行為等があれば慰謝料が認められるかについての判断基準は明確でなく、同じような態様等のものであっても判断は分かれるものと推察されます。

したがって、肉体関係がある場合よりも慰謝料が認められるハードルは高くなると言わざるを得ないでしょう。

肉体関係があっても慰謝料が認められない場合

肉体関係(不貞行為)があっても、次のような場合は例外的に慰謝料は認められないとされています。

(1)浮気相手において相手が既婚者であることを知らなかった場合

浮気相手において、自分と肉体関係を持つ人が既婚者であることを知らなかった、又は注意しても知ることができなかった場合は、浮気相手に対する慰謝料は認められないとされています。

ただし、単に不貞行為をした配偶者が浮気相手に対して自分が既婚者であることを告げていなかったなどの事情があるだけでは、これによって慰謝料が妨げられることはないと考えられています。

「注意しても知ることができなかった」といえるのは、例えば、不貞行為をした配偶者が浮気相手と同棲していた場合や、頻繁に泊まりのデートをしていたような場合と考えられていますので、これによって慰謝料が妨げられるケースは多くはありません。

(2)夫婦関係が破綻していた場合

不貞行為がされた時点で既に夫婦関係が破綻していた(修復不可能な状態になっていた)場合、不貞行為によって平穏な夫婦生活を送る権利や利益が侵害されたとはいえないため、慰謝料は認められないとされています。

もっとも、単に夫婦仲が悪い、口を利かない、性交渉等がない、不貞行為をした方が一方的に離婚を申し入れたり別居を始めたりした、といった事情があるだけでは、夫婦関係が破綻していたとは通常は認められません。

夫婦関係が破綻していたと認められる可能性があるのは、お互いに離婚を前提として長期間別居をしている場合や、お互いに離婚に納得し具体的に協議や調停などを行っているような場合です。

そのため、これによって慰謝料が妨げられるケースも多いとはいえません。

 

浮気の慰謝料の時効

浮気の慰謝料には、請求できる期限があります。

原則として、不貞行為とその相手を知った時から3年が経つと、時効によって請求できなくなってしまいます。

また、不貞行為の時から20年が経った場合は、不貞行為やその相手を知ろうと知るまいと、時効によって請求できなくなってしまいます。

もっとも、浮気の慰謝料は、誰に、どのような内容の慰謝料を請求するかによって請求期限のスタート時点が異なります。

これを状況別にまとめると次のようになります。

状況 離婚しない場合 離婚した場合
発生する慰謝料 不貞行為そのものによる慰謝料(不貞慰謝料) 浮気が原因で離婚せざるを得なくなったことによる慰謝料(離婚自体慰謝料)
浮気をした配偶者に対する慰謝料請求の時効期間 次のいずれかの期間(早く満了した方)
①不貞行為があったことを知った時から3年
②不貞行為の時から20年(※1)
離婚の成立時から3年
浮気相手に対する慰謝料請求の時効期間 次のいずれかの期間(早く満了した方)
①不貞行為があったこと及び浮気相手を知った時から3年
②不貞行為の時から20年
離婚の成立時から3年(※2)

(※1)民法159条「夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない」との規定により、婚姻期間中に①又は②の期間が来るケースでは離婚後6か月後まで時効期間が延長されます。

(※2)浮気相手に対する離婚自体慰謝料は原則認められません。

慰謝料の請求期限の概要は上記のとおりですが、時効の制度について熟知していないと、実際の事案で請求期限を正確に把握することは困難です。

また、請求期限は一定の手段を講じることにより延長することができますが、適切に手段を講じることや、手段を講じた結果いつまで延長されるのかを判断することにも、専門知識が不可欠となります。

そのため、浮気が発覚した場合はお早めに専門の弁護士に相談されることをおすすめいたします。

 

浮気の証拠とは?

浮気の慰謝料を請求する場合は、まずは浮気の証拠を押さえる必要があります。

証拠がなければ、パートナーが浮気を認めない場合、それ以上解決に向けて進めて行くことができなくなってしまいます。

また、裁判で慰謝料を請求する場合は、証拠によって浮気を裏付けることができなければ、慰謝料を認めてもらうことが非常に困難になります。

そのため、証拠を押さえることはとても重要になります。

先にも述べたとおり、慰謝料が認められるのは、基本的に浮気が不貞行為に当たる場合ですので、パートナーが他の人と肉体関係を持ったことを裏付ける証拠があるのが望ましいといえます。

例えば、2人でラブホテル、自宅などの密室に出入りする写真(調査会社による調査報告書など)は有力な証拠となります。

他方、メールやLINE等やり取りの画面(性交渉があったことを直接言及していないもの)などは、それ単体では弱い証拠ですが、他の証拠と合わせることで肉体関係を裏付けることができる場合もあります。

必要となる証拠や、証拠の集め方、集める際の注意点などについては、事案により異なりますので、まずは専門の弁護士に相談されることをおすすめいたします。

浮気調査を依頼すべき?費用は?

上記に述べたように、パートナーの浮気が疑われる場合、まずは証拠を集めることが重要になります。

しかし、ご自身では十分な証拠が集められない場合もあります。

そのような場合、調査会社(興信所、探偵等)に浮気調査を依頼することも考えられます。

これは、パートナーが浮気することが疑われる期間や日時に、調査会社にパートナーの素行調査を依頼するものです。

調査の結果、パートナーが浮気相手とラブホテルや浮気相手の自宅に出入りする場面の写真など、有力な証拠を入手できる場合もあります。

したがって、浮気調査の依頼は、成果がある限りは、証拠を押さえる手段として強力で効果的なものといえるでしょう。

他方で、浮気調査の依頼には相当程度の費用がかかることがほとんどです。

あくまでも依頼先や依頼内容によりますが、数十万円単位になることが多いといえます。

また、調査を依頼しても、結果的に浮気の証拠を押さえることができずに終わってしまうこともあります。

したがって、調査を依頼するべきか否かはケース・バイ・ケースとなります。

依頼するとしても、依頼のタイミング、内容などは慎重に検討する必要があります。

そのため、まずは専門の弁護士に状況を見てもらい、アドバイスをもらった上で依頼するかどうかを判断することをおすすめいたします。

 

 

まとめ

以上、浮気と不倫・不貞行為の違い、どこからが「浮気」となるのか、浮気で慰謝料を請求できる場合などについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

どこから「浮気」となるかは人によって異なるため、パートナーと浮気の認識について話し合っておいたり、誤解されるような行動は控えたりすることが大切といえるでしょう。

浮気が「不貞行為」に当たる場合は、基本的に慰謝料を請求することができますが、慰謝料の請求については証拠の収集も含めご自身での対応が難しいことが多いです。

そのため、浮気でお悩みの場合は、まずは専門の弁護士に相談されることをおすすめいたします。

当事務所では、離婚問題を専門に扱うチームがあり、浮気の問題について強力にサポートしています。

LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており全国対応が可能です。

浮気の問題については、当事務所の離婚事件チームまで、お気軽にご相談ください。

この記事が、浮気の問題にお悩みの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

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