むちうちの後遺症とは?後遺障害認定の難しさと認定対策

交通事故によるむちうちの後遺症とは、これ以上治療を続けても症状が改善しない「症状固定」のあとも、首の痛みや痺れが残っている状態をいいます。
むちうちは骨折や脱臼と違い、痛みがあってもレントゲンやMRI画像に写りにくいため、後遺障害として認定を受けるのは難しいのが現実です。
しかし、適切な治療・検査を受け、的確な証拠を提出すれば、後遺障害として認定され、数十年先の不安に備えるための正当な賠償金を受け取れる可能性は十分にあります。
この記事では、むちうちの具体的な症状や、後遺障害の認定率を上げるための対策などについて交通事故事案に精通した弁護士が解説します。
目次
むちうちの後遺症とは?

むちうちの後遺症とは、これ以上治療を続けても症状が改善しない「症状固定」のあとも、首の痛みや痺れが残っている状態をいいます。
完治しない状態「症状固定」の定義
症状固定とは、事故による症状が残っているものの、医学的にみて改善が見込めなくなってしまった状態のことをいいます。
症状固定は、医学的観点から判断されるため、主治医の意見が重要となります。
症状固定に至った後、残存している症状が後遺障害に該当するかどうかを判断してもらうために自賠責保険に後遺障害申請を行います。
むちうちの「後遺障害」とは何が違う?
むちうちは、頚椎捻挫や腰椎捻挫などを総称したもので、交通事故による衝撃により、首が鞭(むち)のようにしなることによって生じる症状のことです。
後遺障害とは、事故により残っている症状が、後遺障害等級に該当する障害のことをいいます。
むちうちの症状も、後遺障害等級に該当すれば、後遺障害と評価されることになります。
むちうちの症状は、14級9号に該当する可能性があります(稀ですが12級13号も可能性はあります)。
むちうちの後遺症の主な症状|首の痛みから気圧による不調まで

代表的な症状リスト
むちうちの症状としては、以下のものがあげられます。
- 首の痛み
- 背中の痛み
- 上肢のしびれ
- 頭痛
- 耳鳴り
- めまい
- 吐き気
- 耳鳴り
むちうちは天候や気圧の変化でも痛みが出る?
むちうちは、気圧の変化で痛みが出ることがあります。
耳の奥にある内耳(ないじ)が脳の気圧の変化を伝え、脳が混乱して自律神経を乱し、痛みが出てくることがあります。
また、気圧の変化による血管が膨張、収縮、血行が悪くなったりすることで痛みが出ることもあります。
むちうちの後遺症は治らない?10年・20年・30年後も続く?
むちうちの多くは3ヶ月程度で治癒します。
しかし、人によっては症状が慢性化し数年経過しても症状が残る人もいます。
10年・20年・30年後も症状が続く方は、非常に稀とは考えられますが、そういったケースも否定はできません。
なお、むちうちで6ヶ月以上、継続して治療をしても治癒せず、症状が残る場合には、後遺障害等級に認定される可能性がでてきます。
こうした場合には、自賠責保険に後遺障害申請をしてみることが重要です。
むちうちで後遺障害に認定される重要性|損害賠償額が大きく変わる
交通事故において後遺障害と認定された場合、原則として、①後遺障害慰謝料、②逸失利益を請求することができます。
一方で、後遺障害が認定されなかった場合、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することは大変難しくなります。
後遺障害慰謝料や逸失利益は、認定される後遺障害等級によっても異なりますが、基本的には認定されなかった場合と比べて、損害賠償額が大きく上昇します。
例えば、会社員の男性40歳の方で、年収が500万円の場合、後遺障害等級14級9号の場合と非該当の場合で以下の様な違いがあります。
| 認定等級 | 後遺障害慰謝料 | 逸失利益 |
|---|---|---|
| 14級9号 | 110万円 (裁判基準) |
約114万円 (労働能力喪失期間5年で計算) |
| 非該当 | 0円 | 0円 |
上記の場合、後遺障害に認定されるかどうかで、200万円以上の差額が生じます。
後遺障害が認定されるかどうかは、損害賠償額に大きく影響するため、非常に重要なものといえます。
後遺障害の認定について、詳しく知りたい場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談されることをおススメします。
後遺障害の等級認定にデメリットはない
後遺障害の認定にデメリットはありません。
治療が終了した段階で症状が残っていれば、積極的に後遺障害の申請を行いましょう。
また、交通事故の後遺障害の申請には、「事前認定」と「被害者請求」があります。
「被害者請求」とは、被害者が主体となって行う手続きで、後遺障害認定手続きに必要な書類は、被害者自身が収集する必要があります。
「事前認定」とは、加害者側の任意保険会社が主体となって行う手続きで、後遺障害認定手続きに必要な書類は、基本的には加害者側の任意保険会社が収集します。
「事前認定」については、保険会社が後遺障害の申請を行うため、実際に提出された書類を被害者側で十分に吟味できない可能性があります。
また、被害者にとって、積極的に有利な書類を提出できないことがあります。
そのため、事前認定を行う場合については、注意が必要です。
むちうちの後遺障害認定が難しい4つの理由
むちうちで後遺障害認定を受けるのは簡単ではありません。
その理由としては、以下の4つが考えられます。
- ① 症状の証明が難しい
- ② 治療を早期に終了してしまう
- ③ 事故が原因であるかの証明が難しい
- ④ 症状が比較的軽いことが多い
①症状の証明が難しい
骨折していれば、レントゲンで客観的に証明できますが、むちうちは画像には映りません。
そのため、痛みなど症状の原因を直接的に証明することができないのです。
自覚症状のみで、それを裏付けすることが難しいため、むちうちの後遺障害認定は難しいのです。
②治療を早期に終了してしまう
むちうちの場合、症状が残っていても、早期に治療を終了してしまうことが多々あります。
被害者自身が安易に終了してしまうこともありますが、保険会社が治療の終了を促すことで早期に治療を終えることが多いです。
むちうちで認定の可能性のある14級9号は、6ヶ月以上は治療を継続しないと認定は難しいです。
3ヶ月、4ヶ月程度の治療では、後遺障害認定を受けるのは難しいのです。
③事故が原因であるかの証明が難しい
特に事故が軽微な場合には、後遺障害が残るほどの衝撃が体に加わったのか疑われることがあります。
実際に、症状は残っていても、車の破損状況や事故態様などから、「今回の事故でそこまでの症状は残らない」と判断されたり、「他に原因があるのではないか」と疑われてしまうことがあります。
それを覆すような証拠を出すことは、むちうちの場合、難しいため、後遺障害認定も難しいことが多いのです。
④症状が比較的軽いことが多い
むちうちの場合、最終的に残った症状が比較的軽傷であることも多いです。
例えば、「天気が悪いときは痛い」「長時間、仕事をしていると痛くなる」といったように、症状が発生するのに何か条件がある場合です。
こうした場合には、「常時」症状があるわけではないので、後遺障害認定が難しいケースが多いです。
むちうちの後遺障害等級|14級と12級の認定基準の違い
むちうちの後遺障害等級としては、ほとんどの場合、後遺障害等級14級9号、または12級13号に分類されます。
| 後遺障害等級14級9号 | 「局部に神経症状を残すもの」 |
| 後遺障害等級12級13号 | 「局部に頑固な神経症状を残すもの」 |

14級9号:医学的に説明できれば認められる
14級9号の場合は、事故によって症状が生じたことが、医学的に「説明可能」であれば認められます。
14級9号の認定については、通院期間、症状の連続性・一貫性、事故の態様などが重要となってきます。
後遺障害等級14級について、詳しくは以下をご覧ください。
12級13号:医学的に証明が必要
一方で、12級13号の場合には、神経症状が残っていることが医学的に説明できるだけでは足りず、「医学的に証明」できる必要があります。
「医学的に証明」するには、レントゲンやCT、MRIなどの画像所見、神経学的検査の結果、症状の一貫性が重要となってきます。
例えば、首の椎間板などの異常が画像上明確に判断でき、その異常が神経学的検査の結果と整合的であり、症状の一貫性が認められるような場合には、12級13号が認定される可能性があります。
しかし、むちうちの場合、レントゲンやMRI等で交通事故が原因であると明確にいえる異常所見が認められることは稀です。
首や腰の椎間板の変性は、日頃の活動あるいは加齢によっても生じるため、交通事故が原因と断定することは難しいのです。
したがって、むちうちで12級13号の認定を得ることは容易ではありません。
後遺障害等級12級について、詳しくは以下をご覧ください。
後遺障害の申請手続き|被害者請求を推奨する理由
事前認定と被害者請求の違いとは?
後遺障害申請の方法には、被害者請求、事前請求の2つの方法があります。
被害者請求は被害者側、事前認定は加害者側(任意保険会社)が被害者に代わって申請を行うことになります。
それぞれのメリット、デメリットは下表のとおりです。
| 申請方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 事前認定 |
|
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| 被害者請求 |
|
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なぜ被害者請求が有利なのか?
事前認定の場合、保険会社は、必須書類は必ず提出してくれます。
しかし、認定に有利となる証拠を探して提出してくれるということはありません。
この点、被害者請求であれば、必須書類だけでなく、事案に応じて認定に有利になると思われる証拠を追加して提出することができます。
例えば、以下のような書類が考えられます。
- 車の見積書
- 車の破損状況が分かる写真
- 実況見分調書
- カルテ
- 画像鑑定の報告書
- 医療照会をした書面
- 医師の意見書 など
被害者請求であれば、事案に応じて上記のような資料の提出もできるため、適切な認定を受けることが期待できるのです。
弁護士に依頼すれば手間は解消される
被害者請求のデメリットは、自分で必要な資料を収集する手間がかかることです。
また、被害者自身で何が有利な証拠となるのか判断することは難しいです。
もっとも、弁護士に依頼した場合には、こうした作業を弁護士が行ってくれますので、このデメリットは解消できます。
弁護士費用特約がある場合には、弁護士費用を負担することなく弁護士に依頼することができるので、費用面でも安心です(費用は、事務所により異なることがありますので事前に確認することをお勧めします。)。
認定率を上げる対策!むちうち後遺障害認定の7つのポイント

①交通事故の初期の段階からレントゲンやMRI検査を受けましょう
交通事故の初期の段階から、レントゲン写真やMRI画像などの検査を受けることが重要になります。
交通事故から数ヶ月以上経過した段階で、レントゲン写真やMRI画像で異常が見つかったとしても、交通事故とは別の原因で生じたものだという疑いが生じます。
また、医学的な治療という観点から必要な検査と、後遺障害の認定を得るために必要な検査とは異なる場合があります。
つまり、医師は、ケガの治療に主眼をおいて必要な検査をしますが、後遺障害の立証という観点からすると、そうした検査だけでは不十分な場合があるのです。
したがって、必要な検査について不安がある場合には、交通事故に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
②主治医に症状を具体的に一貫して伝えましょう
症状をしっかりと主治医に伝え、カルテに記載してもらいましょう。
特に、むちうちの場合、画像所見がないことが多いため、普段から症状をしっかり伝える必要があります。
また、後遺障害の有無の判定については、症状固定時の症状だけでなく、通院期間中における経過状況も見られるため、症状をしっかりと伝えることが重要となります。
③6ヶ月以上は通院が必要
むちうちの場合、画像で客観的に証明することは困難なので、諸事情を総合考慮して判断されます。
その中でも重要な考慮要素は通院期間です。
むちうちで14級9号に認定されるには、最低でも6ヶ月以上の通院が必要と考えられます。
これは、何か明確な基準としてあるわけではありませんが、経験上、6ヶ月を経過していないと認定は難しいケースが多いです。
④過不足のない後遺障害診断書を書いてもらう
後遺障害の審査は、後遺障害診断書の内容にそって審査されます。
つまり、後遺障害診断書に記載のないことは基本的に審査されません。
したがって、自分の症状が漏れることなくきちんと記載されているかを十分に確認する必要があります。
記載漏れが多い項目の例としては、可動域検査の結果の記載が漏れていることが多いように思います。
後遺障害診断書に、可動域検査の結果が記載されていない場合には、それらの後遺障害の審査すらされないため十分注意しなければなりません。
⑤等級に応じた客観的で的確な証拠を準備する
症状固定時に残ってしまった症状に応じて、的確な証拠を集める必要があります。
例えば、12級13号の場合には、画像の異常所見が必須となるので、画像を提出することはもちろんのこと、必要に応じて画像に関する報告書や医師の意見書、画像鑑定報告書などの提出も検討することになります。
このように、想定される後遺障害の内容を踏まえて、必要となる検査や資料を提出することが大切です。
⑥認定されなかった場合は異議申し立てを検討する
最初の後遺障害申請で認定されなかった場合でも諦める必要はありません。
納得がいかない場合には、自賠責保険に異議申し立てをすることができます。
異議申し立てがされた場合には、もう一度、自賠責保険が後遺障害の有無について審査してくれます。
異議申し立てにあたっては、認定されなかった理由を踏まえて、新たに証拠を提出し、その証拠に基づき、後遺障害等級に該当することを主張することが重要です。
⑦交通事故に詳しい弁護士に相談・依頼を検討しましょう
適切な後遺障害認定が期待できる
弁護士が後遺障害申請をする場合には、後遺障害申請にあたって必須の書類だけでなく、認定に有利となる証拠も添付して申請します。
例えば、医療照会の結果や医師の意見書、画像鑑定書なども提出することがあります。
12級の認定を受けるには、症状の存在を医学的証明しなければならないので、こうした医学的な資料が重要なのです。
そのため、交通事故に詳しい弁護士に被害者請求を依頼することで、適切な後遺障害認定が期待できるのです。
賠償額の増額が期待できる
仮に後遺障害が認定されたとしても、相手側の保険会社は、自賠責基準に少し上乗せした程度の慰謝料額を提示してくることが多いです。
弁護士が入ることによって、弁護士基準に近い慰謝料額を請求することができ、賠償額の増額が期待できます。
弁護士費用特約の活用
弁護士費用特約とは、交通事故に遭った場合に相手方との交渉や裁判等を弁護士に依頼する際の費用を保険会社が被害者の方に代わって支払うという保険です。
つまり、被害者の方は、自己負担なく交通事故に対する対応を弁護士に依頼することができるということです(なお、保険金額には 300万円の上限金が定められていることがほとんどです。)。
弁護士費用特約は、自動車保険を契約している契約者(被保険者)のみだけではなく、家族や同乗者も使用することができます。
弁護士費用特約について、詳しくは以下をご覧ください。
後遺障害の認定のよくあるQ&A

むちうちの後遺症は何年くらい続きますか?
多くのケースで、むちうちは3ヶ月程度で治癒すると考えられています。したがって、何年も症状が続くのは、かなり稀なケースと言えます。

むちうちの後遺症が数年後も残っていたら?
むちうちの後遺症が数年後も残っている場合、まだ後遺障害申請をしていなければ、申請をされるべきです。数年間も継続して治療をしている場合には、後遺障害が認定される可能性があります。

むちうちの後遺症は首の痛みだけで認定されますか?
むちうちの主な症状は、首の痛みです。もちろん、首の痛みだけでも後遺障害に認定される可能性はあります。
まとめ
- むちうちとは、頚椎捻挫や腰椎捻挫などを総称したもので、交通事故による衝撃により、首が鞭(むち)のようにしなることによって生じる症状のことである。
- 交通事故において後遺障害と認定された場合、原則として、①後遺障害慰謝料、②逸失利益を請求することができる。
- 交通事故の後遺障害の申請には、「事前認定」と「被害者請求」がある。
- 後遺障害が認定されなかった場合、事前認定の場合は相手方の任意保険会社、被害者請求の場合は自賠責保険会社に対して、異議申立てを行う。
- 異議申立てや紛争処理機構への申立てを利用しても、後遺障害が認定されなかった場合、最終手段として訴訟提起があげられる。
当事務所には交通事故や労災案件に注力する弁護士で構成される人身障害部があり、苦しむ方々を強力にサポートしています。
LINEなどによる全国対応も行っていますので、むちうちによる後遺症でお困りの方はお気軽にご相談ください。













