交通事故の慰謝料はいくらもらえる?|解決事例をもとにした実例集

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

交通事故慰謝料を5つの事例で解説

事例1:死亡事故で3700万円を獲得した事例

事案の概要

独身男性が、深夜に道路を横断中に自動車に轢かれ、緊急搬送されたものの亡くなってしまった事故です。

独身男性の場合、死亡慰謝料は2000万円 〜 2500万円ですが、この事案では約2800万円が認められました。

当事例の詳しい解説についてはこちらをご覧ください。

増額の理由

保険会社は、当初、死亡慰謝料は約2000万円、過失割合70%(被害者の過失)の賠償の提示でした。

これに対して、弁護士から遺族の精神的苦痛を十分に勘案すべきであること、自動車側にスピード違反があることなどを主張し交渉を継続しました。

その結果、死亡慰謝料は約2800万円、過失割合は50%で解決することができました。

 

事例2:むちうちで14級9号の認定、弁護士の交渉で160万円増額した事例

事案の概要

追突事故により、首を負傷し14級9号の認定を受けました。

保険会社からの提示は210万円でしたが、弁護士が交渉した結果、約370万円で解決することができました。

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増額の理由

保険会社の提案は、損害のいずれの項目も低い水準での賠償提案となっていました。

特に後遺障害の部分は、弁護士基準の半分にも満たない金額でした。

弁護士により弁護士基準で交渉した結果、約160万円を増額することができました。

 

事例3:圧迫骨折による変形障害の後遺症で1000万円の補償を得た事例

事案の概要

青信号を歩行中に自動車に衝突され腰を圧迫骨折し、11級7号に認定されました。

弁護士が保険会社と交渉した結果、当初の提示額から約400万円増額することができた事案です。

当事例の詳しい解説についてはこちらをご覧ください。

増額の理由

骨の変形障害は、骨が変形することで認定される後遺障害であり逸失利益が認められにくい傾向にあります。

この点、弁護士において、変形だけでなく痛みも残存していることなどを主張立証し、逸失利益を弁護士基準で認めさせ400万円を増額した事案です。

 

事例4:バイク事故で鎖骨骨折、後遺症や傷害慰謝料含め770万円を獲得した事例

事案の概要

被害者は、車の交差点での事故で、鎖骨を骨折されました。

当初の後遺障害申請では、後遺障害には認定されませんでしたが、異議申立てにより12級5号の変形障害が認定されました。

その結果、後遺障害部分を含めて賠償を回収することができました。

当事例の詳しい解説についてはこちらをご覧ください。

増額の理由

後遺障害が認定されなければ、後遺障害慰謝料、逸失利益を請求することができません。

このケースでは異議申立てにより後遺障害が認定されたため、賠償額が大きく増額することができました。

 

事例5:高次脳機能障害で5級認定され1000万円以上増額した事例

事案の概要

被害者は、夜間に道路を横断していたところ、自動車に衝突され脳を損傷し高次脳機能障害で5級2号に認定されました。

弁護士に交渉を依頼することで、後遺障害慰謝料が2倍になり、過失割合も有利に変更できたため、合計約1000万円増額することができた事案です。

当事例の詳しい解説についてはこちらをご覧ください。

増額の理由

この件では、保険会社の提示の中で明らかに後遺障害慰謝料が不当な事案でした。

弁護士が弁護士基準で計算し、過失割合についても実況見分調書などから主張をした結果、約1000万円を増額することができました。

合わせて読みたい
高次脳機能障害への賠償

 

 

慰謝料増額のポイント

正しく慰謝料を計算する

慰謝料の算定基準(自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準)

慰謝料の算定基準は、3つあります。

自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準の3つです。

自賠責保険基準は、自賠責保険に請求した場合に用いられる基準で最も低い基準です。

具体的な計算方法は、以下の計算式で計算します。

自賠責保険基準の計算式

対象日数 × 4300円 = 慰謝料金額

対象日数は、実通院日数の2倍の日数と通院期間の日数の少ない方が対象となります。

例えば、実通院日数45日で通院期間120日の場合

45日 × 2 = 90日 < 120日

となるため、90日が対象日数となり、38万7000円が慰謝料金額となります。

90日 × 4300円 = 38万7000円

任意保険基準は、各保険会社が独自に用いている基準であり公表されていません。一般的には、自賠責保険基準よりも少し高い基準です。

弁護士基準は、弁護士が交渉の際に用いる基準です。

裁判になった場合に裁判所が用いる基準でもあるため、裁判基準ともいわれており、最も高い基準です。

 

弁護士基準の慰謝料計算(傷害慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料)

傷害慰謝料

弁護士基準は、通称「赤い本」(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編))に記載されている基準に基づいて慰謝料を計算します。

傷害慰謝料の計算にあたっては表は2つあります。

別表1は、骨折・脱臼など画像(レントゲン、CT、MRI等)に異常所見が見られる重症なケースで使用する表です。

別表2は、捻挫(むちうち)、打撲など軽症のケースに使用する表になります。

【別表1】

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326
13月 158 187 213 238 262 282 300 316
14月 162 189 215 240 264 284 302
15月 164 191 217 242 266 286

引用元:赤い本 別表Ⅰ 入通院慰謝料基準|日弁連交通事故相談センター

【別表2】

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200
13月 120 137 152 162 173 181 189 195
14月 121 138 153 163 174 182 190
15月 122 139 154 164 175 183

引用元:赤い本 別表Ⅱ 入通院慰謝料基準|日弁連交通事故相談センター

傷害慰謝料は、入院期間と通院期間から算出します。

もっとも、通院期間に比べて通院頻度が少なすぎる場合には、通院頻度が修正されることがあります。

重症のケース(骨折や脱臼がある場合)では、実通院日数の3.5倍、軽症のケース(捻挫や打撲など)では、実通院日数の3倍の日数を通院期間として考えることになります。

計算方法について具体例に基づき説明します。

計算例①

具体例

傷病名:頚椎捻挫(むちうち)

入院0日、通院50日、治療期間90日の場合

このケースでは、通院頻度は十分なので、通院期間が修正されることはなく、90日の通院期間に基づいて計算することになります。

表の1ヶ月は30日で計算します。

したがって、90日は3ヶ月で計算することになります。

入院0日、通院3ヶ月なので、表の一番左の列の「3月」の行に記載のある「53」万円が慰謝料の金額となります。

このように、入院0日のケースでは、一番左の縦列と該当する月数の横列の交わる数字が慰謝料金額となります。

 


計算例②

具体例

傷病名:鎖骨骨折

入院90日、通院70日、治療期間240日

このケースでも入通院日数は十分なので保険会社から通院期間の修正を主張されることはないでしょう。

このケースでは、入院期間と通院期間を分けて考えます。

入院期間は90日なので3ヶ月、通院期間は150日(治療期間240日から入院期間90日を除いた日数)なので5ヶ月です。

したがって、表の縦軸の「入院」の「3月」の列と、「通院」の「5月」の行の交わる「204」万円が慰謝料の金額となります。

 

後遺障害慰謝料

弁護士基準の後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて慰謝料の金額が決まっています。

具体的な金額は下表のとおりです。

1級 2級 3級 4級 5級 6級 7級
2800 2370 1990 1670 1400 1180 1000
8級 9級 10級 11級 12級 13級 14級
830 690 550 420 290 180 110

(単位:万円)

死亡慰謝料

弁護士基準の死亡慰謝料は、被害者の立場によって金額が変わります。

一家の支柱 2800万円
母親、配偶者 2500万円
その他 2000万 〜 2500万円

その他には、独身の男女、子ども、幼児、高齢者を含んでいます。

 

請求できる費目を知る

保険会社が漏らすことなく適切な損害項目を設定して賠償の提示をしてくれるとは限りません。

請求項目が漏れていることもあります。

適切な賠償額を支払ってもらうためには、請求漏れをなくすことが必要です。

慰謝料(傷害慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料)

慰謝料に関しては、上記したとおり、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3つがあります。

 

休業損害

休業損害は、交通事故によって仕事を休んだことで減収してしまうことに対する補償です。

事故による通院のために有給を取得した場合にも休業損害を請求することができます。

また、専業主婦は毎月の給料はありませんが、家事に支障が出ている場合には、その分の補償として主婦休を請求することができます。

 

入院雑費

事故により入院した場合には、様々な雑費がかかります。

1日の入院につき1500円(弁護士基準)の雑費を請求することができます。

自賠責保険基準では、1100円です。

 

通院交通費

通院に要した交通費を請求することができます。

自家用車を利用した場合には、1キロメートルにつき15円です。

公共交通機関を利用した場合には、その実費を請求できます。

タクシーに関しては、必要性がある範囲では認められますが、争いになる場合がありますので、事前に保険会社と交渉した上で利用されることをお勧めします。

 

文書料

後遺障害に認定された場合の後遺障害診断書作成費用など、文書料を請求することができます。

 

付添看護費用、付添通院費用

幼児など入院するにあたって付き添いが必要な場合には、付き添い看護費用が認められます。

また、通院に付き添いが必要な場合には通院付添費用も認められます。

 

逸失利益

逸失利益は、後遺障害があることで働きづらくなり、収入が減ってしまうことに対する補償であり、以下の計算式で計算します。

計算式
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

逸失利益は、損害項目の中でも最も高額になりうるものであり、非常に重要な損害項目です。

計算方法も複雑になりがちなので、計算するにあたっては、専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

 

将来介護費用

後遺障害が重篤であり、将来においても介護が必要となる場合には、将来介護費用を請求することができます。

 

将来雑費、将来介護用品費用

後遺障害が重篤であるために、将来において、オムツや介護用品などを支出する蓋然性がある場合には、将来雑費、将来介護用品費用を請求することができます。

治療を自分の判断で中断してしまうと、中断した以降の治療費が認めてもらえなくなり、慰謝料の算定期間も短くなり、結果として適切な補償を受けることができなくなる可能性があります。

したがって、交通事故にあってけがをした場合には、速やかに病院を受診し、医師の指示に従って、通院することをお勧めします。

 

事故直後から症状固定まで継続して治療を行う

適切な慰謝料を支払ってもらうには、医師の指示に従って、しっかりと通院することが大切です。

治療を自分の判断で中断してしまうと、中断した以降の治療費が認めてもらえなくなり、慰謝料の算定期間も短くなり、結果として適切な補償を受けることができなくなる可能性があります。

したがって、交通事故にあってけがをした場合には、速やかに病院を受診し、医師の指示に従って、通院することをお勧めします。

 

後遺障害等級認定の申請をする

後遺障害を認定するのは自賠責保険です。

認定に関して争いになれば、最終的には裁判所が決めることになりますが、多くの場合は自賠責保険が認定に基づいて損害計算されています。

従って、後遺障害の認定を受けるには、自賠責保険に後遺障害申請を行わなければなりません

事前認定と被害者請求の違い

後遺障害の申請は2種類あり、事前認定と被害者請求の方法があります。

事前認定の方法は、保険会社が後遺障害申請する方法です。

この方法の場合、被害者は後遺障害診断書を保険会社に提出すれば、その他に特に作業することはないため手続きの負担は少ないです。

他方で、いかなる資料が提出されているかは不透明な部分はあります。

被害者請求は、被害者側で後遺障害の申請をする方法です。

この方法の場合、被害者は様々な資料を集める必要があるので、労力がかかります。

しかし、弁護士に依頼した場合には、弁護士が資料の収集をするため、労力は大きく軽減できます。

また、被害者請求の場合、認定に有利な資料を自由に添付することができます。

従って、後遺障害の認定の精度が上がることが期待できます。

 

弁護士に相談する

適切な賠償の支払いを受けるには、正確な情報を得る必要があります。

現在ではインターネット上で様々な情報を仕入れることができますが、個別の事案によっては一般的な場合と異なる判断が必要になる場合もあります

交通事故の賠償で不安や悩みがある場合には、まず専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

専門の弁護士に相談すれば、被害者の状況にあったアドバイスをもらうことができるでしょう。

また、弁護士費用特約に加入している場合には、弁護士費用を保険会社に支払ってもらうことができるため、弁護士に依頼されることをお勧めします。

弁護士費用特約の上限額は300万円ですが、弁護士報酬が300万円を超える事案は、後遺障害が重い案件であり、弁護士費用特約がなくても弁護士に依頼したほうがいい案件になります。

弁護士費用特約は、適用範囲も広く、家族が加入していれば使用できる場合がありますので、被害者ご自身が加入していなくても家族が加入されていないか確認されてください。

弁護士費用特約を使用できないと思って相談に来られた方が、実は使用することができたということはよくあることです。

弁護士費用や回収見込額など詳しく知りたい方は、専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

 

慰謝料


 
賠償金の計算方法



なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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