後遺障害診断書の記載内容を徹底解説|書式のダウンロード
後遺障害診断書は、後遺症が残った場合に、医師に症状や検査結果を記入してもらう重要な書類です。
これは自由形式の診断書ではなく、保険申請の際に使用する所定の書式が決まっており、必ずその様式で提出する必要があります。
後遺障害認定の審査の対象は、後遺障害診断書に記載されている症状に限られ、症状の記載漏れがあると、その症状は審査の対象外となってしまいます。
そのため、医師に依頼する際には、必要な症状がもれなく書かれているか、見合った検査が行われているかを事前に確認することが非常に重要です。
通常は、保険会社に申請の意思を伝えれば診断書の書式を送付してもらえますが、病院によっては所定様式を備えている場合もあります。
また、お急ぎの場合は、弊所ホームページから診断書様式をダウンロードすることも可能です。
本記事では、後遺障害診断書のもらい方、書き方・記載例のポイント、提出時の注意点などをわかりやすく解説しています。
後遺障害申請をお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
後遺障害診断書とは?
診断書の内容がそのまま審査対象になるため、後遺障害の申請においては必ず提出が求められます。
後遺障害診断書は誰に作成してもらう?
交通事故の後遺障害診断書の作成は医師法(第19条第2項、第22条)によって医師のみが作成できます。
整骨院の先生は、柔道整復師という国家資格を保有されていますが、後遺障害診断書を作成することはできないのです。
したがって、整骨院メインで治療を継続する場合には、定期的に病院にも通院して、スムーズに後遺障害診断書を作成してもらえるようコミュニケーションをとっておくべきでしょう。
後遺障害診断書を作成する時期と期間の目安
作成する時期
後遺障害診断書は、症状固定(しょうじょうこてい)と呼ばれる状態になった後に作成します。
症状固定とは、治療を続けても症状がこれ以上よくならないと判断される状態のことです。
一般的には、事故から6ヶ月程度は治療を継続したうえで症状固定と判断されることが多く、それよりも早い時期に作成した場合は、後遺障害として認定されにくい傾向にあります。
ただし、骨折による変形や手指の喪失など、明らかな後遺症がある場合は、3〜4ヶ月ほどの治療期間でも認定されることがありますが、これはあくまで例外です。
作成にかかる期間
診断書の作成にかかる期間は病院によって異なります。
早ければ数日で作成してもらえることもありますが、1ヶ月ほどかかるケースもあります。
どのくらいで完成するか気になる場合は、依頼時に医師へ直接確認することをおすすめします。
後遺障害診断書の作成にかかかる料金
実費
後遺障害診断書の作成料も病院によって異なります。
作成費用は、大体5000円〜1万円ですが、1万円程度の病院が多いかと思います。
ただ、高額の病院では、3万円という病院もあるようです。
上記したように、後遺障害診断書の作成費用は、後遺障害が認定された場合には、保険会社や加害者に作成費用を請求することができます。
しかし、後遺障害認定がされなかった場合には、交通事故とは関係のない不要な費用となり、保険会社や加害者に請求することはできません。
弁護士に依頼する場合の料金
後遺障害の申請を弁護士に依頼している場合には、状況によって弁護士から医師に後遺障害診断書の作成依頼をすることもあります。
弁護士事務所によって異なりますが、後遺障害診断書の作成依頼のための追加の弁護士費用は発生しない事務所が多いでしょう。
後遺障害診断書はなぜ重要なのか
後遺障害の申請を行うにあたっては、必ず後遺障害診断書が必要となります。
後遺障害等級の審査は、後遺障害診断書に記載されている事項について審査されるため、審査の対象としてほしいことは全て記載しておく必要があります。
後遺障害診断書に記載されていない事柄は、他の診断書に記載されていても審査の対象とはなりませんので、後遺障害診断書の記載内容はとても重要です。
後遺障害等級に認定された場合位は、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求することができます。
後遺障害慰謝料は等級によって金額が定められており、一番低い等級の14級の場合には110万円(裁判基準)です。
逸失利益とは、後遺障害が残ってしまったことで働きづらくなり減収してしまうことに対する補償です。
逸失利益は、以下の計算式で計算されます
このように、後遺障害に認定された場合には、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求することができ、賠償金額が高額になります。
後遺障害診断書の記載内容次第で、等級も変わり賠償額も大きく変わることもあるので、後遺障害診断書はとても重要なのです。
後遺障害診断書のもらい方は2通り
後遺障害診断書は、医師に記入してもらう所定の様式が決まっており、自由な書式で作成することはできません。
診断書の書式を入手する方法は、主に以下の2通りです。
- 保険会社から送付してもらう
- インターネットで書式をダウンロードする
保険会社から送付してもらう
後遺障害の申請を保険会社に伝えると、必要な診断書の様式を送ってもらえるのが一般的です。
その様式を医師に持参し、記入を依頼する流れになります。
また、病院によっては後遺障害診断書の書式をあらかじめ備えている場合もあります。
通っている病院に書式があるかどうか、不明な場合は一度確認してみるとよいでしょう。
インターネットで書式をダウンロードする
お急ぎの方や、あらかじめ用意しておきたい方は、インターネットから書式をダウンロードすることができます。
印刷して医師に渡せば、スムーズに記入を依頼できるケースもあります。
なお、保険会社によって書式が異なる場合があるため、使用する書式が申請先に対応しているかどうかを事前にご確認ください。
弊所での後遺障害診断書のダウンロードが可能です
弊所ホームページでは、後遺障害診断書の所定書式を無料でダウンロードいただけます。
後遺障害診断書作成してもらう際のポイント
医師に自覚症状を明確に伝える
後遺障害診断書には、下記で説明するとおり、「自覚症状」を記載する欄があります。
この記載欄には、自分の症状を漏らすことなく記載してもらう必要があります。
例えば、「首が痛い」という症状が漏れていた場合、首の痛みについては後遺障害の審査の対象にはなりません。
後遺障害診断書の作成を医師にお願いする際には、自覚症状を記載したメモを一緒に医師に渡すなど、自分の症状を明確に伝える必要があります。
また、顔や体に傷跡が残っている場合にも後遺障害診断書に記載してもらう必要があります。
必要な検査を実施し記載してもらう
骨折や脱臼をした場合には、関節の可動域が制限されることがありますが、可動域の制限も後遺障害の対象となります。
したがって、可動域制限が生じている場合には、可動域測定を行い、後遺障害診断書に記載してもらわなければなりません。記載されていない場合には、等級の対象になりません。
また、聴覚、嗅覚、視覚の後遺障害の場合には、特殊な検査をする必要がありますので、こうした検査も実施した上で、後遺障害の診断書に記載する必要があります。
後遺障害診断書の記載内容と重視されるポイント
①被害者の基本情報
冒頭には、被害者の氏名、生年月日、性別、住所、職業の記載欄があります。
後遺障害の認定にあたって重要というわけではありませんが、被害者を特定する事項になりますので、間違いがないか確認しましょう。
②受傷日時
交通事故に遭った日を記入してもらいます。
事故日に誤りがあると訂正を求められますので、事故日と相違ないか確認しましょう。
③症状固定日
症状固定日は、治療費・休業損害を請求できる期間、入通院慰謝料の金額に関わってくるため非常に重要です。
症状固定日は、医師の判断で記入することになります。
医師が適切な症状固定日を記入してくれるように、症状の経過など回復具合をきちんと伝えておくことが大切です。
④入院期間、通院期間
後遺障害診断書を作成する医療機関において治療を受けた期間が記入されます。
他の医療機関へ入院または通院していた場合、入院期間、治療期間については各病院の診断書で確認します。
⑤傷病名
受傷した怪我の名前が記載されます。
記載に漏れがないか確認するようにしましょう。
⑥自覚症状
自覚症状の記載は重要です。
痛みや痺れがあるといった症状について記載してもらいます。
記載がない場合には審査してもらえませんので十分に注意が必要です(他の記載欄に記載があれば審査してもらえますが、基本的に自覚症状は自覚症状の記載欄に記載します)。
例えば、「首が痛い」症状があったとしても、後遺障害診断書に記載されていなければ、「首が痛い」ことは後遺障害の審査の対象にはならないのです。
⑦既存障害
事故以前に存在する障害で、事故による傷病の発症や治療内容、治療期間等に影響をする病名が記入されます。
⑧各部位の後遺障害の内容
障害が残っている部位について、記載してもらいます。
レントゲンやCT、MRIなどで異常な所見(骨がきれいにくっついていない等)があれば、記載してもらいます。
また、関節の可動域が制限されている場合には必ず可動域検査をしてもらい、その結果を記入してもらう必要があります。
可動域検査の結果が漏れていると、可動域が制限されていることは審査の対象とならないため注意が必要です。
⑨障害内容の増悪・緩解の見通し
今後、障害が悪くなるのか、同じ症状が変わらず続くのか、症状が軽くなるなどが記入されます。
医師が後遺障害診断書を書いてくれない時の対処法
後遺症が残っていないと言われた場合
医師としては、後遺症はないと考え後遺障害診断書は作成できないと言われることがあります。
しかし、相当期間治療しても現に痛みや痺れなどが残っている場合には、後遺障害申請をしたほう良いです。
したがって、現に残っている症状をありのまま記載してくれるだけでよいことや、事故事案における後遺障害の重要性などを説明して医師にお願いすべきでしょう。
どうしても作成してくれない場合には、事故が原因で通院した別の病院の医師に相談してみることも検討します。
1つの病院にしか通院していなかった場合には、別の病院を受診して一定期間通院した上で後遺障害診断書の作成をお願いすることも考えられますが、事故直後からの経過を診ていないので作成を断られることが多いでしょう。
この方法を取ろうとする場合には、通院を開始する前に一定期間通院後に後遺障害診断書を作成してくれるか確認したほうがいいでしょう。
症状固定に至っていないと言われた場合
後遺障害診断書は症状固定に至っていなければ作成することはできません。
その場合には、医師が症状固定と判断するまで治療を継続する必要があります。
後遺障害診断書の作成や後遺障害申請に弁護士が関わるメリット
後遺障害診断書の作成サポート
後遺障害診断書の難しいところの一つに、医師の職務内容との矛盾があります。
すなわち、医師は患者の訴えている症状を軽減させる、つまり「治す」のが仕事です。
そのため、「治す」ことに反して、「治らない」= 後遺障害が残っているという記載をするのは、ためらいを感じてしまうのです。
また、医師は後遺障害の認定基準のことについては十分に把握していないため、後遺障害診断書を作成するにあたって、検査が実施されていなかったり、記載漏れがあることがあります。
したがって、専門家である弁護士が、必要な検査を行っているか、記載内容は被害者の方の症状に合致しているかといった観点からサポートを行う必要があるのです。
有利な証拠を加えて申請できる
弁護士が、後遺障害の申請をする場合には、被害者請求という方法で後遺障害申請を行います。
被害者請求のメリットは、後遺障害申請に必要な書類に加えて、認定に有利となる証拠を追加して申請できる点にあります。
弁護士において、認定にあたって有利となる証拠を収集し、それらを添付して後遺障害申請することで、適切な認定がなされる精度を上げることができます。
異議申立てにも対応できる
仮に、後遺障害の申請で非該当(何も等級に該当しない)という結果になった場合、異議申立てすることで、再度、後遺障害の審査をしてもらうことが出来ます。
異議申立てにあたっては、追加で提出する証拠を検討・収集し、その証拠に基づいて、認定結果が不当であることを具体的に主張しなければなりません。
弁護士は、こうした異議申立てのサポートも行うことができます。
後遺障害診断書に関するよくあるQ&A
整骨院だけだと後遺障害診断書はもらえないの?

後遺障害診断書は、医師のみが作成できる書類であり、整骨院の柔道整復師には作成権限がありません。
事故直後に一度だけ病院で診察を受け、その後ずっと整骨院に通っている場合、医師は症状の経過を把握できず、診断書の作成を断られる可能性があります。
整骨院をメインに治療する場合でも、定期的に医師の診察も受けることが重要です。
転院したばかりでも、診断書を書いてもらえますか?

新しい病院の医師が、患者の症状や経過を十分に把握していない場合、後遺障害診断書の作成を断るケースがあります。
転院する前に、「診断書を作成してもらえるか」を医師に事前確認することをおすすめします。
まだ症状固定していませんが、診断書は作ってもらえますか?

症状固定(しょうじょうこてい)とは、これ以上治療しても回復が見込めない状態をいいます。
医師が「まだ改善の余地がある」と判断している段階では、後遺障害診断書を作成することはできません。
この場合は、まず治療を継続し、医師が症状固定と判断した後に診断書の依頼を行いましょう。
まとめ
後遺障害に認定されるかどうかで賠償額は大きく変わってきます。
後遺障害診断書は後遺障害認定において最も重要な証拠の一つですから、その作成にあたっては、専門家のアドバイスを受けながら進められることをお勧めします。
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