高次脳機能障害は治るのか?治った事例と後遺障害認定

監修者:弁護士 鈴木啓太 弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士


高次脳機能障害とは、交通事故や労災事故などで頭部に外傷を負ったことで、認知障害、行動障害、人格変化などが起きる障害です。

外見からは症状が分かりにくいため、周囲の理解を得られず、ご本人はもちろん、支えるご家族も「治るのだろうか」という不安や孤独を抱えがちです。

現代医学において脳の神経細胞そのものの完全な「完治」は困難とされていますが、早期の適切なリハビリや環境調整によって、症状を大幅に改善させ、社会復帰を果たすことは十分に可能です。

事故で高次脳機能障害を負った場合には、十分な補償を受けられるように適切な手続きを行うことが重要となります。

この記事では、高次脳機能障害の具体的な症状や、リハビリによる回復の可能性、後遺障害等級認定の手続き、そして適正な賠償金を獲得するためのポイントなどについて、弁護士がわかりやすく解説していきます。

「高次脳機能障害は治るのか」と不安な方へ

交通事故や労災事故などによる頭部への強い衝撃、あるいは脳血管障害といった病気によって脳が損傷を受けると、身体的な麻痺とは異なる「認知や行動、感情の障害」が現れることがあります。

これが「高次脳機能障害」です。

この障害の大きな特徴は、「外見からは障害があるように見えない」という点にあります。

手足は自由に動き、一見すると健康そうに見えるため、周囲の人間から「怠けている」、「わがままになった」などと誤解されやすく、これが患者本人とご家族をさらに苦しめる要因となっています。

 

高次脳機能障害とは?主な症状をチェック

高次脳機能障害の症状は、脳の損傷した部位(前頭葉、側頭葉など)や範囲によって多種多様な形で現れます。

主な症状は以下の4つに分類されます。

高次脳機能障害とは?主な症状をチェック

 

記憶障害

記憶障害とは、目の前で起きた出来事や新しい知識を脳に留め、必要なときに思い出すという一連の機能が損なわれる障害です。

多くの場合、事故前の古い記憶は保たれていますが、事故以後の新しい出来事を覚えることが著しく困難になります。

具体的な症状例
  • ついさっき聞いたことや、人と約束した内容をすぐに忘れてしまう
  • 物の置き場所を忘れてしまい、常に何かを探している
  • すでに同じ質問をして回答を得ているにもかかわらず、何度も同じ質問を繰り返す
  • 薬を飲んだことや食事を摂ったこと自体を忘れてしまう
  • 嘘をつく意図はないのに、記憶の抜け落ちを埋めるために事実と異なる話(作話)をしてしまう

 

注意障害

注意障害とは、特定の物事に意識を集中させたり、その集中を維持したり、必要に応じて意識の対象を切り替えたりする能力が低下する状態を指します。

「気が散りやすく、落ち着きがなくなる」のが典型的な兆候です。

具体的な症状例
  • 周囲のわずかな物音や視覚的情報に気を取られ、作業に集中できない
  • ケアレスミスや見落とし、物忘れが極端に増える
  • 一つの作業を長く続けることができず、すぐに疲れて投げ出してしまう
  • テレビを見ながら会話をするなど、2つ以上の作業を同時に並行して行うと混乱する
  • 周囲への警戒や待機する能力が落ち、突発的な出来事に対して機敏に反応できない

 

遂行障害

遂行機能障害とは、自分で目標を定め、計画を立てて物事を効率よく実行していく「段取り」の能力が損なわれる障害です。

日常生活の単純な動作は問題なくこなせるため、家庭内では気づかれにくく、復職や復学など社会生活に戻った段階で問題が表面化しやすいという特徴があります。

具体的な症状例
  • 物事の優先順位をつけられず、行き当たりばったりの行動をしてしまう
  • 指示を出してもらえないと、次に何をすべきか分からず自発的に動けない
  • 予定外のトラブルや突発的な状況変化が起きると、臨機応変に対応できずフリーズする
  • 約束の時間や締め切りに間に合わない、時間の管理が全くできない
  • 要領よく物事を伝えることができなくなり、話が非常に回りくどくなる

 

社会的行動障害

社会的行動障害とは、自分の行動が周囲にどのような影響を与えるかを客観的に捉える能力が低下し、感情や欲求のコントロールが効かなくなる障害です。

ご家族が「事故を境に性格がガラリと変わってしまった」、「わがままになった」と最も強く感じるのは、この社会的行動障害が原因です。

具体的な症状例
  • 感情のブレーキが利かなくなり、些細なことでイライラし、大声を上げたり暴力を振るったりする
  • 他人の気持ちを推し量ることができず、自己中心的で幼稚な言動が目立つ
  • 我慢することが苦手になり、欲しいものを際限なく買ったりギャンブルにのめり込んだりする
  • 意欲や気力が著しく低下し、一日中ベッドで寝てばかりいるなど自発的な活動をしなくなる
  • 職場や社会のルール、マナー、場の空気といったものを理解して守ることができない

ご家族が「本人のわがまま」や「反抗的な態度」と捉えてしまいがちなこれらの行動は、すべて脳の損傷という「病気によって引き起こされている症状」です。

ご家族だけで抱え込まず、この障害の特性を正しく理解し、適切な社会的・法的支援へと繋げていくことが非常に重要となります。

 

完治は難しい?「治る・治らない」の真実

交通事故や労災事故で損傷してしまった脳の神経細胞そのものを、完全に元の状態に戻すことは現代医学をもってしても不可能です。

そのため、医学的に厳密な意味での「完治(事故前の状態に100%戻ること)」は、残念ながら非常に難しいと言わざるを得ません。

しかし、ここで決して絶望しないでいただきたいのは、「完治は難しくても、症状を大幅に改善させ、日常生活や社会生活に適応していくことは十分に可能である」という点です。

人間の脳には、一部が傷ついても他の残された正常な領域がその役割を補おうとする「可塑性(かそせい)」という驚くべき性質が備わっています。

発症や受傷からの経過時間、損傷の部位や程度、ご本人の年齢などによって回復の度合いには個人差がありますが、適切な治療と専門的なリハビリテーションを継続することで、低下してしまった脳機能をボトムアップさせることができます。

さらに、リハビリの本質は「脳を元通りにすること」だけではありません。

たとえ記憶力や注意力に障害が残ったとしても、スマートフォンのアラームやメモ帳を活用して予定を管理する、ミスを防ぐための行動手順をマニュアル化するといった「代替手段の獲得(補償手段の獲得)」の訓練を行うことで、ご本人の自立度は大きく向上します。

高次脳機能障害の回復をより確かなものにするためには、「早期発見」と「早期の適切なリハビリ介入」、そして何よりも「ご家族や周囲の正しい理解と環境調整」という多角的なアプローチが欠かせません。

専門機関の手を借りながら、焦らず段階的にリハビリを進めていくことで、生活の質を大きく改善し、自立した生活や社会復帰・復学といった未来への道を切り拓いていくことができるのです。

 

 

高次脳機能障害の治った事例・期間とリハビリの限界

回復のピークと期間の目安を事例で分析

高次脳機能障害における脳機能の回復は、一律ではなく一定の曲線を描いて進みます。

医学的には、事故や病気の発症から「半年〜1年程度」が最も自然回復の勢いが強く、リハビリの効果も著しく現れやすい期間とされています。

たとえば、一般的な経過をふまえた架空の事例として、事故直後は会話が全く成り立たず、一日中ベッドで横になってばかりいた(社会的行動障害の意欲低下)患者のケースを見てみましょう。

受傷から3か月ほど集中して理学療法や言語聴覚療法などのリハビリを重ねることで、脳の神経ネットワークが代替回路を作り出し(脳の可塑性)、徐々に自分から声をかけるようになり、簡単な身の回りの動作ができるようになるといった変化が見られました。

この時期は注意障害なども比較的改善しやすく、周囲の環境を整えることで目に見えて生活が安定していきます。

しかし、受傷から半年が経過する頃には、その急激な改善のスピードは徐々に落ち着きを見せ始めます。

さらに1年が経過すると自然回復のピークは過ぎ、そこから先は「脳機能そのものが元通りに治っていく」というよりも、「残された機能をどう活かすか」という緩やかな適応のフェーズへと移行します。

記憶障害などは回復が非常にゆっくりであるため、1年が経過した段階でも「さっき言ったことを忘れる」といった後遺症が残ることは珍しくありません。

このように、一定の期間を過ぎると機能回復には限界が訪れます。

もちろん、1年を過ぎたからといって一切の変化がなくなるわけではありませんが、受傷後1年前後が、その後の人生における「障害との付き合い方」を見極める大きな転換期となります。

 

症状固定とは?これ以上治らないと診断されたら

「症状固定(しょうじょうこてい)」とは、「これ以上治療を続けても、効果が期待できない状態」を指します。

事故前の健康な体に戻る「治癒(完治)」とは異なり、障害が「これ以上良くも悪くもない状態で固まった」と医師が判断した場合、「症状固定」という診断が下されます。

高次脳機能障害の場合、脳の複雑な機能や傷害の重篤性を慎重に見極める必要があるため、少なくとも受傷から1年以上は経過した段階で症状固定と判断される傾向にあります。

「これ以上治らない」と医師から告げられることは、ご家族にとって肉親の障害を決定づけられるような、非常に辛い瞬間だと思います。

しかし、交通事故において「症状固定」とは治療の終わりを意味するだけではなく、「正当な賠償金を得るための法的責任を追及するためのスタートライン」であるととらえてください。

症状固定を迎えることで初めて、加害者側に請求できる損害の性質が変わります。

症状固定日までに発生した「治療費」や「入通院慰謝料」はここで一度確定し、固定日以降に発生する生活への支障や介護の負担は、「後遺障害(こういしょうがい)」などの賠償金として請求していくことになるのです。

適切なタイミングで正しく「症状固定」の診断を受けることが、のちに被害者とご家族を守る経済的基盤(後遺障害等級認定)へと繋がっていきます。

なお、以下の記事では、症状固定の概要や時期、症状固定と賠償金の関係、症状固定後に必要となる手続きなどについて詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にされてください。

 

 

治らない(後遺症が残る)場合にすべき「後遺障害等級認定」

高次脳機能障害で認定される後遺障害等級とは

適切な治療や懸命なリハビリを続けても、認知障害や社会的行動障害などの後遺症が残ってしまった場合、被害者のこれからの生活を守るために「後遺障害等級認定」という手続きを行う必要があります。

これは、事故によって残った後遺症が「自賠責保険の定める基準のどの等級に該当するか」を審査・認定してもらう制度です。

適切な等級認定を受けることは、単なる形式的な手続きではなく、これまでの治療費とは別に、将来の生活費や介護費用に充てるための賠償金を獲得するための不可欠なステップとなります。

高次脳機能障害で認定される可能性のある主な後遺障害等級は、もっとも重い1級から9級まで以下の表のように分類されています。

 

高次脳機能障害の後遺障害等級一覧
後遺障害等級 後遺障害の内容 補足的な考え方
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 身体機能は残存しているが、高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 著しい判断能力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。

身体的動作には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや監視を欠かすことができないもの

3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。

また、声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。

しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの

5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。

このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの

7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業能力などに問題があるもの

高次脳機能障害は、脳の損傷という目に見えない部位の障害であるため、身体麻痺などのように外見で判断することができません。

そのため、後遺障害等級の認定においては、主に、認知障害、行動障害、人格変化などの高次脳機能障害の症状が出ていることを考慮して判断されることになります。

また、1級と2級を分ける基準が「常に」介護が必要か「随時(必要なとき)」か、また2級と3級の境目は日常生活の範囲が「自宅内に限定されているか」といった、ご家族の生活実感に直結する極めて繊細な違いによって判断されることになります。

 

等級によって慰謝料・賠償金はいくら変わる?

認定される後遺障害等級によって、被害者とご家族が受け取れる最終的な賠償金額が数百万円〜数千万円単位で変わってくるという事実を、正しく認識しておく必要があります。

交通事故で後遺障害を負った場合には、主に「後遺障害慰謝料」と、障害のために将来得られなくなった収入を補償する「後遺障害逸失利益(いっしつりえき)」を受け取ることができます。

例えば、年収500万円の40歳男性が症状固定を迎えたケースを想定してみましょう。

もし最も軽度な「9級」に認定された場合、裁判基準での慰謝料(690万円)と逸失利益(約3,207万円)を合わせた目安は約3,897万円となります。

しかし、これが就労不能とされる「3級」に認定されれば、労働能力喪失率が100%として計算されるため、賠償額は一気に1億円を超える規模へと跳ね上がります。

さらに、日常生活において家族やプロの介護を必要とする「1級」や「2級」に認定された場合、賠償金には「将来介護費用」という極めて重要な項目が加算されます。

自宅で親族が介護を行う場合であっても、1日あたり8,000円前後を基準に、被害者様の平均余命までの期間(ライプニッツ係数を用いた一括計算)で算出されるため、これだけで5,000万円以上の補償が認められるケースがあります。

これに加え、車椅子生活に対応するための「自宅改装費用」や「車両購入費用」なども請求の対象となります。

 

 

適正な賠償金を得るために弁護士へ相談するメリット

適正な賠償金を得るために弁護士へ相談するメリット

主治医と連携し、適切な診断書を作成できる

適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、主治医が作成する「後遺障害診断書」が重要となります。

ここで、主治医はケガや病気を治す「治療のプロ」であっても、自賠責保険の複雑な認定基準を満たす「後遺障害診断書を作成するプロ」ではないという点を理解しておかなければなりません。

医師が多忙を極める医療の現場では、日常生活の支障や認知障害の細かな症状が診断書に網羅されず、記載漏れが生じてしまうケースは少なくありません。

弁護士が介入した場合、主治医と緊密に連携を図り、適切な等級認定を得るために必要な追加の検査の実施を提案します。

さらに、「自覚症状」や「他覚症状」の欄に不足している記載がないか、認定基準を意識した専門的視点で入念にチェックします。

また、高次脳機能障害の審査において不可欠とされる「日常生活報告書」の作成についても、弁護士がご家族に丁寧なヒアリングを行い、記載すべきポイントを的確にアドバイスします。

 

複雑な等級認定の手続きを任せ、家族の負担を軽減

突然の事故によって始まった介護や看病、度重なる病院への付き添いにより、ご家族は心身ともに大きな負担を感じているはずです。

その精神的・肉体的な負担に加え、保険会社からの度重なる連絡や、難解な書類の収集・手続きを行う必要があります。

後遺障害の申請方法には、相手方の保険会社に手続きを丸投げする「事前認定」と、被害者側で主導して申請を行う「被害者請求」があります。

適切な等級を勝ち取るためには、被害者側に有利な証拠を自ら吟味して提出できる「被害者請求」を選ぶべきですが、これには膨大な書類の準備や整理が必要です。

弁護士に依頼をすれば、これら一切の煩雑な手続きをすべて一任することができます。

日常生活報告書や神経系統の障害に関する医学的意見、頭部外傷後の意識障害についての所見といった高次脳機能障害特有の専門書類の精査から提出まで、弁護士が窓口となって一手に引き受けます。

加害者側や保険会社との緊密なやり取りから解放されることで、ご家族は余計なストレスに悩まされることなく、大切な家族のサポートやご自身の生活の建て直しに専念することができるようになります。

 

慰謝料が「裁判基準」になり大幅な増額が見込める

交通事故の慰謝料の算出には、大きく分けて「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「裁判基準(弁護士基準)」という3つの異なる基準が存在します。

加害者側の保険会社が提示してくる金額は、自社の支出を抑えるために低く設定されていることがほとんどです。

しかし、弁護士が被害者様の代理人として交渉に立つことで、過去の裁判例をベースにした最も高額な「裁判基準(弁護士基準)」での請求が可能となります。

高次脳機能障害のように認定される等級が重い事案では、どの基準を用いるかによって、最終的な獲得金額が数倍、金額にして数千万円から1億円以上も変わることが実情です。

弁護士は、過去の膨大な判例や明確な法理的根拠をもって主張し、本来受け取るべき適正な賠償金を請求していきます。

高次脳機能障害を抱えたこれからの長い人生において、経済的な安定はご家族の安心に直結します。

不安を抱えたまま示談書にサインをしてしまう前に、交通事故の法的解決実績が豊富な当事務所の無料相談へお気軽にお問い合わせください。

 

 

高次脳機能障害についてのQ&A

高次脳機能障害になると寿命は短くなりますか?

高次脳機能障害を抱える方は、障害のない健常者と比較して平均寿命(平均余命)が10年から20年程度短くなる傾向にあることが報告されています。

ただし、これは「高次脳機能障害そのものが直接的に命を縮める」というよりも、障害の原因となった脳挫傷や脳出血、脳卒中といった元々の重篤な脳損傷による身体的影響や、認知・注意力の低下に伴う不慮の事故のリスク、体調管理の難しさといった二次的な要因が背景にあると考えられています。

このようなデータはご家族にとってショックな数字かもしれませんが、だからこそ、将来にわたる被害者の健康維持や介護の体制を整えるための資金(将来介護費用など)を、適切な後遺障害賠償金として加害者側から獲得しておくことが重要となるのです。

 

高次脳機能障害で「奇跡的に完治した」ケースはありますか?

受傷前の状態に100%戻るという意味での「完治」や「奇跡的な完全復活」を遂げた事例は、残念ながら確認されていません。

しかし、完全に「治る」ことは難しくても、適切な治療と根気強いリハビリテーションを早期から継続することで、症状が「劇的に改善した」というケースは数多く存在します。

これは、傷ついた部位の周囲にある正常な脳細胞が、リハビリの刺激によって新たな神経回路を作り出し、失われた機能を補い合う「脳の可塑性(かそせい)」という働きによるものです。

また、リハビリを通じてメモ帳やスマートフォンのアラーム機能を使いこなすといった「代償手段(補償手段)」を身につけることで、記憶障害や注意障害が残っていても、自立して社会復帰や就労を果たしている事例は決して珍しくありません。

 

本人に自覚症状がない場合、家族はどうすればいいですか?

高次脳機能障害では、脳の認知や判断を司る領域が損傷しているため、本人は「いつも通りにできている」、「何もおかしくない」と思い込んでしまい、周囲の指摘に対して怒り出してしまうことも少なくありません。
本人に自覚がない以上、異変を察知できるのは身近で見守るご家族だけです。

まずは、事故前と比べて「怒りっぽくなった」、「約束を忘れる」、「段取りが組めない」といったわずかな変化や日常生活でのトラブルを、日付とともに細かくメモや日記に記録しておいてください。

この記録は、のちに医師へ実態を伝えるための重要な資料となり、後遺障害申請における「日常生活報告書」の確固たる証拠になります。

また、交通事故による外傷性高次脳機能障害であることを法的に立証するためには、事故後速やかにMRIなどの頭部画像検査を受け、脳の器質的損傷(脳挫傷やびまん性軸索損傷など)の証拠を残しておくことが不可欠です。

 

高次脳機能障害9級の慰謝料はいくらですか?

高次脳機能障害で後遺障害等級「9級」に認定された場合の後遺障害慰謝料は、適用される算定基準によって以下のように金額が大きく異なります。
  • 自賠責保険基準:249万円
  • 任意保険基準:約400万円〜500万円
  • 裁判基準(弁護士基準):690万円

ご覧のように、弁護士が交渉を代理する「裁判基準」を適用するだけで、慰謝料の額は自賠責基準の2.5倍以上、保険会社提示の金額からも200万円程度の増額が見込めます。

 

 

まとめ

高次脳機能障害は、記憶や感情のコントロールといった「目に見えない領域」に支障が出るため、ご家族だけで介護やリハビリの負担を抱え込んでしまいがちです。

医学的な意味での完治が難しくとも、適切な代替手段の獲得や周囲のサポート環境を整えることで、生活の質は劇的に向上させることができます。

そして、これからの長い未来を経済的に支えるためには、妥協のない「後遺障害等級認定」と、最も高額な「裁判基準」による適正な賠償金の確保が不可欠です。

高次脳機能障害にお悩みの方やご家族の方は、後遺障害に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。

デイライトでは、交通事故を専門とし、後遺障害に詳しい弁護士がチームで被害者のサポートを全力で行っており、多くの被害者の相談に対応してきた実績もあります。

オンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

 

 

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