高次脳機能障害の等級認定の基準

この記事でわかること

  • 高次脳機能障害の等級認定基準
  • 高次脳機能障害の症状例
  • 高次脳機能障害の等級認定のポイント
  • 高次脳機能障害の後遺障害申請書類

 

 

高次脳機能障害の認定基準

高次脳機能障害について、労災保険の基準に準じますが、自賠責保険も独自に認定基準の目安を作成しています。

それが以下の表のとおりです。

等級 認定基準 補足的な考え方 後遺障害慰謝料(裁判基準)
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 身体機能は残存しているが、高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの 2800万円
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 著しい判断能力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体的動作には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや監視を欠かすことができないもの 2370万円
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また、声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの 1990万円
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの 1400万円
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの 1000万円
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業能力などに問題があるもの 690万円

参照:労災補償 障害認定必携

1級と2級の違いは、「常に」介護が必要といえるか、「随時」介護で足りるかという点にあります。

また、2級と3級では、補足的な考え方も含めて考えると、生活範囲がほぼ自宅や施設にとどまっているかどうかによって異なるといえます。

 

 

高次脳機能障害の症状例

高次脳機能障害の症状としては、認知障害、行動障害、人格障害などがあります。

認知障害の例
  • 過去に体験した記憶が思い出せなくなる
  • 新しく体験したことを記憶できなくる
  • 注意力が散漫になる
  • 物事に集中できなくなる
  • 計画的に行動できなくなる
行動障害の例
  • 周囲の状況に合わせた適切な行動ができない
  • 同時に複数のものごとを処理することができない
  • 話がまわりくどくなる
  • 本をよむことができない
  • 職場や社会のマナー、ルールが守れない
  • 危険を予測・察知して、それを回避するような行動がとれない
  • 衝動的に行動するなど、自分の行動を抑制できない
人格障害の例
  • 自発的に行動することができない
  • 物事に対するやる気がなくなる
  • 自己中心的になる
  • 怒りっぽくなる
  • 気が短くなり暴言を吐くことがある
  • 言動や行動が子どもっぽくなる
  • お金の管理ができなくなる
  • こだわりが強くなる

 

 

高次脳機能障害の検査

高次脳機能障害が疑われる場合には、交通事故で受傷した直後に行われたMRIやCT等の画像を見て、脳に損傷がないかを確認します。

さらに、認知障害、行動障害、人格障害等の症状について、様々な神経心理検査を実施して、高次脳機能障害であるかどうか判断されます。

高次脳機能障害の診断は、交通事故により脳を損傷してから、一定期間経過した後に診断されます。

したがって、交通事故後に被害者に認知障害や行動障害、人格障害の症状が見受けられる場合には、治療を受けていた脳神経外科や整形外科に早めに受診されることをお勧めします。

 

 

高次脳機能障害により後遺障害が認定されるためのポイント

高次脳機能障害として後遺障害に認定されるためには、以下の3点を証明する必要があります。

脳損傷が確認できること
事故後に意識障害があること
認知障害、行動障害、人格変化の症状があること

①脳損傷が確認できること

脳損傷の存在は、CTやMRI画像検査によって証明します。

脳損傷が認められる場合の傷病名としては、外傷性くも膜下出血、急性硬膜下血腫、脳挫傷、びまん性軸索損傷などがあります。

②事故後に意識障害があること

高次脳機能障害は、意識を消失するような頭部外傷を負った場合に発症しやすいとされています。

事故後に意識を失ったということは、脳に何らかの損害が及んだのではないかと考えられるからです。

意識障害の程度の基準としては、JCS(ジャパンコーマスケール)、GCS(グラスゴーコーマスケール)が使用されます。

JCSは、以下のようなレベルの区分けがされています。

0 刺激しないでも覚醒している状態
0 意識清明
Ⅰ―1 だいたい清明であるが、今ひとつはっきりしない
Ⅰ―2 見当識障害がある
Ⅰ―3 自分の名前、生年月日が言えない
刺激で覚醒するが、刺激をやめると眠り込む状態
Ⅱ―10 普通の呼びかけで容易に開眼する
Ⅱ―20 大きな声または体を揺さぶることにより開眼する
Ⅱ―30 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すことにより開眼する
刺激しても覚醒しない状態
Ⅲ―100 痛み刺激に対し、払いのける動作をする
Ⅲ―200 痛み刺激に対し、少し手足を動かしたり、顔をしかめたりする
Ⅲ―300 痛み刺激に反応しない

GCSは、以下の点数を合算して意識障害の程度を測ります。

E eye opening 開眼
4点 自発的に開眼
3点 呼びかけにより開眼
2点 痛み刺激により開眼
1点 痛み刺激でも開眼しない
V best verbal response 最良言語機能
5点 見当識あり
4点 混乱した会話
3点 不適当な発語
2点 理解不明の音声
1点 発語なし
M best motor response 最良運動反応
6点 命令に応じる
5点 疼痛部位を認識する
4点 痛み刺激から逃避する
3点 痛み刺激に対して屈曲運動を示す
2点 痛み刺激に対して伸展運動を示す
1点 痛み刺激に対して反応なし

事故後に意識障害があったことは、「頭部外傷後の意識障害についての所見」という題名の書面を医師に作成してもらうことで証明します。

③認知障害、行動障害、人格変化の症状があること

認知障害、行動障害、人格変化の症状の存在については、神経心理学的検査や家族、友人、同僚などによる報告書によって証明します。

どの程度の症状が残存しているかによって、等級の程度(1〜9級)が変わります。

家族、友人、同僚などによる報告書(陳述書)については、具体的なエピソードに基づいて、日常生活上でどのような支障が生じているか、事故前後で被害者にどのような変化が生じているかを詳細に記載する必要があります。

学生であれば、学校の担任や部活動の顧問の教師に事故前後の様子の変化を聞き取り、報告書(陳述書)を提出することも検討すべきです。

また、学校の通知表や、仕事の業務実績・評価などにより、事故前後で悪化していることが分かる資料があれば提出します。

 

 

認定のために必要な書類

交通事故による高次脳機能障害について、自賠責保険の調査においては、主に以下の書類が必要になります。

  • 後遺障害診断書
  • 治療経過の診断書、明細書
  • カルテ(必要に応じて提出)
  • 頭部、脳の検査の画像(CTやMRI)
  • 日常生活状況報告書
  • 神経系統の障害に関する医学的意見
  • 頭部外傷後の意識障害についての所見

高次脳機能障害以外の案件では、後遺障害診断書と治療経過の診断書、明細書、検査画像があれば、基本的には審査が行えますが、高次脳機能障害に関する事案については、カルテによる詳細な検討が必要です。

また、通常の案件にはない、日常生活状況報告書などの書類を準備する必要があります。

他にも、介護手帳やその申請の書類、学校の通知表なども資料として提出することがあります。

このように、高次脳機能障害の審査にはとても専門性が要求されます。

したがって、交通事故の被害者の方やそのご家族だけで手続を進めるのは非常に難しいものです。

 

 

具体的な認定手続

自賠責保険は、高次脳機能障害の認定について、先ほどの認定基準にしたがって、審査を行っていますが、交通事故による高次脳機能障害の事案として、そもそも審査対象とする案件について、以下のとおり定めています。

A 後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められる(診療医が高次脳機能障害または脳の器質的損傷の診断を行っている)場合

全件高次脳機能障害に関する調査を実施の上で、自賠責保険審査会において審査を行う

具体的には、主治医の作成する後遺障害診断書に、「くも膜下出血」、「脳挫傷」、「びまん性軸索損傷」といった脳の外傷の診断がなされ、それに基づく自覚症状が記載されている場合です。

この場合には、すべての事案で高次脳機能障害の判断が必要な事案として処理されます。

B 後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められない(診療医が高次脳機能障害または脳の器質的損傷の診断を行っていない)場合

以下の①〜⑤の条件に該当する場合には、見落とされている可能性があるので慎重に調査を行う

①初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、高次脳機能障害、脳挫傷(後遺症)、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷の診断がなされている症例

②初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、認知・行動・情緒障害を示唆する具体的な症状、あるいは失調性歩行、痙性片麻痺など高次脳機能障害に伴いやすい神経症状が認められる症例(具体的には、知能低下、思考・判断能力低下、記憶障害、記銘障害、見当識障害、注意力低下、発動性低下、抑制低下、自発性低下、気力低下、衝動性、易怒性、自己中心性)

③経過の診断書において、初診時の頭部画像所見として頭蓋内病変が記述されている症例

④初診時に頭部外傷の診断があり、初診病院の経過の診断書において、当初の意識障害(半昏睡〜昏睡で開眼・応答しない状態:JCSが3〜2桁、GCSが12点以下)が少なくとも6時間以上、もしくは、備忘あるいは軽度意識障害(JCSが1桁、GCSが13〜14点)が少なくとも1週間以上続いていることが確認できる症例

⑤その他、脳外傷による高次脳機能障害が疑われる症例

このようにB案件と呼ばれる案件では、高次脳機能障害が医師の中でも見落とされやすい症状であることを踏まえて、後遺障害診断書がない事案でも治療経過などから高次脳機能障害が疑われる事案であれば、調査を行うとされています。

 

 

まとめ

高次脳機能障害は、通常の後遺障害申請とは異なる書類を提出する必要があり、適切な等級認定を受けるには入念な準備が必要です。

高次脳機能障害の後遺障害申請をされるにあたっては、専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

 

 

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