高次脳機能障害の慰謝料の相場とは?弁護士がわかりやすく解説


高次脳機能障害の慰謝料相場は、障害の程度に応じて690万円から2800万円となります。この他に逸失利益などの賠償金を請求することができると考えられます。

このページでは、交通事故などの人身事故にくわしい弁護士が賠償金を決定する基準、高次脳機能障害の場合に請求できる金額などをわかりやすく解説しています。

また、素早く概算の賠償金額を調べたいという方のために、自動計算ツールも掲載しています。

ぜひご参考になさってください。

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、交通事故や労災事故などで頭部に外傷を負ったことで、認知障害、行動障害、人格変化などが起きる障害です。

高次脳機能障害は、脳の内部の問題であり、外観上は健康に見えます。

そのため、他人から見ると、外観上いたって健康そうな人が社会的な行動をとっていないように見え誤解されることがあります。

また、本人に障害の存在について自覚がないこともあるため、ご家族が大変な思いをされることもあります。

 

 

賠償を決定する際の基準

他の交通事故の案件と同じく、高次脳機能障害に対する賠償基準としては、3つのものがあります。

自賠責保険の基準

赤い本この自賠責保険の基準は、強制保険という性質の自賠責保険が最低限の補償を行うために画一的に基準を定めているものです。

そのため、治療費や休業損害といった傷害の限度額としては、120万円という上限があります。

また、後遺障害についても、等級に応じて限度額が決まっております。つまり、この限度額に慰謝料も逸失利益も含まれているということになります。

高次脳機能障害の後遺障害等級に応じて定められている限度額は以下のとおりです。

等級 認定基準 自賠責保険の支払限度額
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 4000万円
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 5000万円
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 2119万円
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1574万円
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1051万円
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 616万円

 

弁護士上記のとおり、自賠責保険の基準に基づく賠償は最低限の補償という側面があるため、金額自体は他の基準に比べて低いです。

ただし、自賠責保険の基準の特徴として、被害者の過失が10%や20%の過失であれば、減額されないという点があります。これは自賠責保険が被害者救済のための制度であることに由来しています。

具体的には、後遺障害の部分については、以下の割合の過失が認定された場合に、支払額が減額されます。

過失割合 減額率
70%〜80%未満 20%
80%〜90%未満 30%
90%以上 50%

 

任意保険会社の基準

自動車保険任意保険会社の基準は、各自動車保険会社が会社の内部の基準として用意している基準のことです。これはあくまで保険会社の内部基準なので、ホームページなどで公表されているものではありません。

実際の示談交渉の際には、各賠償項目を説明する書面において、「弊社基準」と記載されていたり、「弊社としてお支払いできる金額は左記のとおりです」のように記載されていたりします。この「弊社基準」というのがまさに任意保険会社の基準ということになります。

また、示談交渉においては、「弊社基準よりも◯◯様の件は、◯万円(◯%)増額させていただいております。」という記載がなされているケースもあります。一見すると、通常よりも増額してもらっていると考えてしまいますが、この金額が裁判所の基準からすると低額にとどまっているということもあります。

そのため、ご自身の賠償額がどの基準で算出されているか、それは妥当なものかを十分に確認した上で示談を進める必要があります。

 

裁判所の基準

裁判所この裁判所の基準は、その名のとおり、裁判所が賠償を検討する際に用いている基準のことです。

自賠責保険の基準と任意保険会社の基準に比べると、裁判所の基準によるのが、一番賠償額が高くなるのが通常です。ただし、この裁判所の基準による賠償は、被害者がご自分で示談交渉をなされてもできないのが現状です。

任意保険会社は弁護士が代理人として示談交渉に入らない限り、裁判所の基準を前提とした賠償額を補償してはくれません。弁護士がサポートする事案でも「裁判基準の◯%で」という交渉がなされる場合がほとんどです。

したがって、裁判所の基準を前提とした適切な賠償を得るためには、交通事故を専門的に取り扱う弁護士の力が絶対に必要なのです。

この点に関し、デイライト法律事務所で交通事故のご相談に対応している弁護士は、専門チームとして人身障害部に所属して日々交通事故に関する研鑽を積んでおり、2016年12月〜2017年11月までの1年間に博多と小倉の両オフィスで329件の交通事故に関するご相談をお受けしております。

高次脳機能障害でお困りの方は、福岡で交通事故を専門的に取り扱うデイライト法律事務所にお気軽にご相談ください。

 

 

高次脳機能障害特有の賠償項目

高次脳機能障害として後遺症が残存した場合、特有の賠償項目としては、

  • 後遺障害慰謝料、近親者慰謝料
  • 後遺障害逸失利益
  • 将来介護費
  • 自宅改装費

といった項目が問題となります。以下、順に解説いたします。

 

後遺障害慰謝料、近親者慰謝料

高次脳機能障害による後遺障害が認定されると、後遺障害に対する慰謝料を請求することができます。各等級に応じた裁判基準の目安は以下のとおりです。

等級 認定基準 裁判所の基準の慰謝料(目安)
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 2800万円
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 2370万円
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 1990万円
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1400万円
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1000万円
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 690万円

 

例えば、9級の自賠責保険の支払限度額は 616万円ですが、この金額は慰謝料と逸失利益込みの金額になります。他方で、裁判所の基準では、慰謝料だけで 690万円が目安であり、自賠責保険の基準と裁判所の基準が大きく異なっていることが理解していただけると思います。

家族また、1級や2級といった極めて重い後遺障害が脳外傷による高次脳機能障害で残ってしまった場合には、被害者の方のご両親やお子さま、ご兄弟にも固有の慰謝料が認められることがあります。この慰謝料のことを近親者慰謝料といいます。

近親者慰謝料については、被害者が置かれた家族構成や治療中の家族の生活状況の変化を考慮して決定します。

任意保険会社は、この近親者慰謝料については、弁護士が介入しない案件では被害者のご家族に提示することはそれほど多くありません。こうしたご家族の苦しみを少しでも補償してもらうためには、弁護士がきちんと事情を保険会社に伝えて、示談交渉を行っていくことが必要になります。

 

後遺障害逸失利益

逸失利益とは、後遺障害が残ったことによって、将来的な収入が得られなくなる、あるいは減少することに対して、補償をする項目です。具体的な計算方法としては、以下の計算式を用います。

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対するライプニッツ係数

弁護士基礎収入は、交通事故以前の現実収入をもとにするのが原則です。学生や専業主婦の方の場合には、賃金センサスを利用して、基礎収入を決定します。

学生の場合は、男女の合計、全学歴、全年齢の平均を用いるのが通常です。この額は最新の統計(平成29年12月時点)である平成27年で 489万2300円となっています。また、主婦の方は、女性の全学歴、全年齢の平均を用いるケースが多いです。平成27年の数値は 372万7100円となっています。

労働能力喪失率は、残っている後遺障害により、具体的に何パーセントほど労働能力を失ったといえるかで決定します。したがって、本来的には個別具体的な判断が必要となりますが、各等級に応じた一応の目安は以下のとおり、定められています。

等級 認定基準 労働能力喪失率の目安(%)
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 100%
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 100%
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 100%
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 79%
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 56%
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 35%

参照:別表Ⅰ 労働能力喪失率表|労働省労働基準局長通達(昭和32年7月2日基発第551号)
計算労働能力喪失期間については、原則として症状固定の年齢から就労可能年数とされる67歳までの年数によって決定します。例えば、症状固定の年齢が40歳だった場合には、労働能力喪失期間は67歳 − 40歳 = 27年となります。

ただし、示談交渉の場面においては、27年後の収入減少に対する補償を今受け取るという関係で修正が必要になります。なぜなら、今受け取る 100万円と27年後に受け取る 100万円では、額面上は同じであっても、今の 100万円の方が先に受け取れる点でメリットがあるからです。

そこで用いられている係数をライプニッツ係数といいます。27年のライプニッツ係数は14.6430です。

 

弁護士具体的に計算をしてみます。

年収が 500万円の40歳男性が交通事故により1級の後遺障害が認定されたとすると、後遺障害逸失利益の額としては、以下の金額となります。

500万円 × 100% × 14.6430 = 7321万5000円

同じく年収 500万円の40歳男性が交通事故により9級の後遺障害が認定されたとすると以下の金額となります。

500万円 × 35% × 14.6430 = 2562万5250円

先ほどの慰謝料とあわせると

1級の事案(最初の事例)は、1億121万5000円

9級の事案(下の事例)は、3252万5250円となります。

あくまで目安とはいえ、自賠責保険の基準との差がどれだけ大きいかがお分かりいただけると思います。

この差を埋めるためには、やはり交通事故に専門特化した弁護士の力が必要です。

 

将来介護費

高次脳機能障害により1級や2級といった重度の後遺障害が認定されている場合、認定基準にも「介護を要するもの」とあるように、将来的な介護費用の補償が問題となります。

この問題は親族による介護か介護施設に預けて介護するかで状況が変わってきます。

まず、親族介護の場合には、1日当たり 8000円を目安としています。ただし、具体的な介護の状況によって増減があるとされています。

弁護士他方で、介護施設に預ける職業介護の場合には、利用料の実績からその実額分が損害として認定されます。

基本的には、逸失利益と同じく将来的な費用を先に受け取るという関係で、平均余命までの年数のライプニッツ係数をかけて金額を算出します。

例えば、40歳の男性が1級の後遺障害が認定されて、自宅で家族が介護をしていくと仮定すると、将来介護費としては、以下の金額が補償の目安となります。

8000円 × 365日 × 17.2944(41年のライプニッツ係数)= 5049万9648円

こうした将来介護費は、交通事故により高次脳機能障害になってしまった被害者を支えるご家族にとって、非常に大事な補償になります。したがって、適切な補償をしてもらう必要があり、デイライト法律事務所の交通事故を専門とする弁護士はご家族のためにもしっかりとサポートをさせていただきます。

 

自宅改装費

車椅子に乗る小学生の画像自宅での介護を選択した場合、自宅の階段をスロープにしたり、手すりを取り付けたり、段差をなくしてバリアフリーにしたりする必要があります。

高次脳機能障害による後遺障害が重篤な1級や2級の事案では、こうした自宅改装費も請求することを検討しなければなりません。他にも車椅子用の自動車の購入費用といった項目についても補償を求める必要があります。
 

 

交通事故で脳に障害が残ってしまったら弁護士へご相談ください

弁護士鈴木啓太以上のとおり、交通事故による高次脳機能障害が残ってしまった場合の補償問題はとても難しい問題が数多くあります。そのため、適切な賠償額を保険会社から補償してもらうためには、被害者やそのご家族だけの力では到底困難です。

この点に関し、デイライト法律事務所で交通事故のご相談に対応している弁護士は、専門チームとして人身障害部に所属し、日々交通事故に関する研鑽を積んでおり、2016年12月〜2017年11月までの1年間に博多と小倉の両オフィスで329件の交通事故に関するご相談をお受けしております。

高次脳機能障害でお困りの方は、福岡で交通事故を専門的に取り扱うデイライト法律事務所にお気軽にご相談ください。ご相談の予約はこちらをご覧ください。

 

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