遺留分の計算方法|弁護士がわかりやすく解説【自動計算機付】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

遺留分(いりゅうぶん)とは、亡くなった方の遺した財産(相続財産)のうち、一定の相続人に、最低限確保されている持分割合のことをいいます。

そのため、遺留分を主張できる相続人の方にとっては、とても重要な権利といえます。

しかし、遺留分は計算が複雑でわかりにくいです。

そこで、相続問題にくわしい弁護士が遺留分の計算方法について、できるだけ噛み砕いてわかりやすく解説します。

また、簡単に遺留分の金額を知りたいという方のために、自動計算機も掲載しています。

ぜひ参考になさってください。

遺留分とは

遺留分(いりゅうぶん)とは、被相続人(亡くなった方のこと)の相続財産について、一定の割合の相続財産を一定の相続人に残すための制度を言います。

遺留分は、遺言や生前贈与で一部の人に多くの遺産が譲られてしまった場合に、これを取り戻すために使われるものです。

すなわち、遺留分は、相続人(遺留分権利者)の正当な権利を確保するための重要な制度と言えます。

 

 

遺留分をシミュレーターで簡単に計算

このページでは、遺留分の計算方法について、できるだけわかりやすく解説しています。

計算方法について、くわしく知りたいという方は、このページを最後まで御覧ください。

計算方法よりも、遺留分の概算額を素早く確認したいという方は、下記のシミュレーターをご活用ください。

遺留分は、遺言や生前贈与で一部の人に多くの遺産が譲られてしまった場合に、これを取り戻すために使われるものです。

すなわち、遺留分は、相続人(遺留分権利者)の正当な権利を確保するための重要な制度と言えます。

 

 

遺留分の割合

遺留分の額は、上記の自動計算機を使用すれば、概算を算出することが可能です。

しかし、自動計算機は簡易迅速に遺留分の額を算定するものであって正確ではありません。

ホームページをご覧の方の中には、「より正確に相手に請求できる金額を知りたい」と考えている方もいらっしゃるはずです。

そこで、ここでは、具体的に相手に請求できる金額を算出するための知識を解説いたします。

遺留分の具体的な計算はとても複雑で理解が難しいかもしれませんが、具体例を用いてできるだけわかりやすく解説いたします。

遺留分の正確な金額を知るための第1歩として、まず、各相続人の遺留分の割合を知る必要があります。

この遺留分の割合についてですが、法律の条文を読むととても複雑で理解が難しいかと思います。

そこで、早見表をご紹介いたします。 ご自身のケースに当てはめていただくと、遺留分の割合を知ることができます。

 

遺留分の割合早見表

相続人 個別的遺留分(各々の遺留分)
配偶者 子供※ 親※ 兄弟姉妹
①配偶者のみ 2分の1
②子供のみ 2分の1
③親(いない場合は祖父母)のみ 3分の1
④配偶者と子供 4分の1 4分の1
⑤配偶者と親 3分の1 6分の1
⑥配偶者と兄弟姉妹 2分の1 なし

※子供や親が複数人の場合はその人数で割ったものが個別的遺留分(以下では単に「遺留分」といいます。)となります。

親がいない場合は祖父母、祖父母がいない場合は曾祖父母が相続人となります。

 

【具体例】


①相続人が「配偶者のみ」の場合
配偶者のみの場合

遺留分は2分の1となります(早見表の①を参照)。

  

②相続人が「子供のみ」の場合
子供のみの場合

相続人が「子供のみ」の場合 遺留分は2分の1(早見表の②を参照)

子供が複数の場合、その頭数で割ったものが1人あたりの遺留分となります。

例:子供が3人の場合

→子供1人の遺留分は6分の1となります。

計算式:2分の1 ÷ 3(子供の人数)= 6分の1

  

③相続人が「親のみ」の場合
親のみの場合

相続人が「親のみ」 遺留分は3分の1(早見表の③を参照)

親が複数の場合、その頭数で割ったものが1人あたりの遺留分となります。

例:両親ともご健在の場合(親が2人)

→親1人の遺留分は6分の1となります。

計算式:3分の1 ÷ 2(親の人数)= 6分の1


④相続人が「配偶者と子供」の場合
配偶者と子供の場合

■配偶者の遺留分

相続人が「配偶者と子供」の場合、配偶者の遺留分は4分の1となります(早見表の④の「配偶者」の欄を参照)。

■子供の遺留分

相続人が「配偶者と子供」の場合、子供の遺留分は4分の1となります(早見表の④の「子供」の欄を参照)。

子供が複数の場合、その頭数で割ったものが1人あたりの遺留分となります。

例:子供が3人の場合

→子供1人の遺留分は12分の1となります。

計算式:4分の1 ÷ 3(子供の人数)= 12分の1

 

⑤相続人が「配偶者と親」の場合
配偶者と親の場合

■配偶者の遺留分

相続人が「配偶者と親」の場合、配偶者の遺留分は3分の1となります(早見表の⑤の「配偶者」の欄を参照)。

■親の遺留分

相続人が「配偶者と親」の場合、親の遺留分は6分の1となります(早見表の⑤の「親」の欄を参照)。

親が複数の場合、その頭数で割ったものが1人あたりの遺留分となります。

例:両親ともご健在の場合(親が2人)

→親1人の遺留分は12分の1となります。

計算式:計算式 6分の1 ÷ 2(親の人数)= 12分の1

  

⑥相続人が「配偶者と兄弟姉妹」の場合
配偶者と兄弟姉妹の場合

■配偶者の遺留分

相続人が「配偶者と兄弟姉妹」の場合、配偶者の遺留分は2分の1となります(早見表の⑥の「配偶者」の欄を参照)。

■兄弟姉妹の遺留分

相続人が「配偶者と兄弟姉妹」の場合、兄弟姉妹の遺留分はありません(早見表の⑥の「兄弟姉妹」の欄を参照)。

※兄弟姉妹には遺留分がありません。

これは、兄弟姉妹は通常、配偶者・子供・親と比較して、被相続人から遠い存在であるため遺留分を認める必要がないと考えられているからです。

 

なお、遺留分の割合は、法律上、次の計算式によって算出するとされています。

個別的遺留分の割合 = 総体的遺留分の割合 × 法定相続分の割合

しかし、この計算式は素人の方にはわかりにくいため、ここでは上記の早見表を使って確認する方法をご紹介しています。

上記の計算式(総体的遺留分と法定相続分)の解説について、ご興味がある方は次のページに詳しく解説していますのでご覧になってみてください。

 

 

遺留分の計算方法

遺留分の金額は、次の計算式によって算出します。

遺留分額 =(遺留分算定の基礎となる財産額)×(遺留分の割合)

上記の計算のうち、「遺留分の割合」については、上記で解説したとおりです。

遺留分の金額を正確に計算するためには、「遺留分算定の基礎となる財産額」を算出しなければなりません。

 

 

遺留分算定の基礎となる財産額とは

遺留分算定の基礎となる財産額について、法律は、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額」と規定しています(民法1043条1項)。

引用元:民法|電子政府の窓口

したがって、計算式は次のとおりとなります。

遺留分算定の基礎となる財産額の算定式

遺留分算定の基礎となる財産額 =(被相続人が相続開始の時において有した財産の価額)+(贈与財産の価額)-(相続債務の全額)

贈与財産を加算する理由は、もし、加算しないこととすると、被相続人が死亡する直前に所有財産のほとんどを他人に贈与した場合、遺留分制度の目的が達成できなくなるからです。

また、相続債務を控除する理由は、遺留分制度は相続人が現実に取得する価額を基礎として、遺留分権利者に一定割合を確保する制度であるという理解に基づきます。

 

相続開始時の財産について

条件付権利・存続期間の不確定な権利はどうなる?

条件付権利や存続期間の不確定な権利であっても、遺留分算定の基礎となる財産に含まれますが、その具体的な価額については、家裁が選任した鑑定人の評価に従って定められます(民法1043条2項)。

 

贈与財産についての注意点

遺留分算定の基礎となる財産額の計算において、算入される贈与財産については、贈与の対象者が誰であったかによって時期が限定されています。

贈与の対象者 算入する内容
相続人以外の者に対する贈与 原則として、相続開始前の1年間にされたものに限る
例外:当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前より過去にされたものであっても算入
相続人に対する贈与 特別受益※に該当する贈与で、かつ、原則として、相続開始前の10年間にされたものに限る
例外:当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、10年前より過去にされたものであっても算入

※特別受益について、詳しくはこちらのページをご覧ください。

 

ポイント

従来、相続人に対する特別受益については、時期の制限がなく、原則として、遺留分算定の基礎となる財産にすべて加算していました。

しかし、相続法の改正によって、原則として、相続開始前の10年間になされた贈与に限定されることとなりました(2019年7月1日施行)。

「損害を加えることを知って」とはどのような場合?

遺留分を侵害する認識があればよく、損害を与えるという加害の意図や誰が遺留分権利者であるかを知っている必要まではないと考えられます。
しかし、被相続人が財産の大部分を第三者に贈与しても、どの程度寿命があるかわからないのが通常です。
贈与の時点で遺留分を侵害していても、その後、財産が増加するだろうと考えている場合もあります。
したがって、判例上、遺留分を侵害する認識については、贈与時だけではなく、将来も遺留分の侵害が続くと予見していたことが必要とされています(大判昭和11.6.17)
この要件を満たすのは、高齢で所得が低い被相続人が財産の大部分を贈与したなどの限定された事例であると考えられます。

負担付贈与

負担付贈与の場合、贈与財産の価額は、その価額から負担の価額を控除した額として算入します(民法1045条1項)。
※負担付贈与とは、贈与に受贈者の負担が伴うものです。
例えば、1000万円の不動産を贈与する代わりに、残ローンの 200万円を負担させる契約をいいます。
この場合、算入する贈与額は 800万円となります。
1000万円 - 200万円 = 800万円

不相当な対価でなされた有償行為

不相当な対価でなされた有償行為とは、一応対価はもらっているので、贈与ではないものの、その対価が不適切な場合をいいます。
例えば、2000万円の不動産を100万円で売却する場合です。
このような不相当な行為について、法律は、「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす」と規定しています(民法1045条2項)。

贈与契約が1年以上前の場合はどうなる?

例えば、相続人以外の者との贈与契約を相続開始の2年前に締結したが、贈与契約を履行したのは相続開始の1年以内の場合、当該贈与財産を算入すべきかという相談があります。
この場合、贈与契約に着目すれば、相続開始の1年より前なので、算入する必要がないことになるからです。
他方、実際に贈与したのは、相続開始の半年前なので、算入する必要があります。
時期の基準となるのは「履行時」ではなく「契約締結時」です。
したがって、算入する必要はありません。

 

控除される債務についての注意点

遺留分の基礎となる財産額から控除される相続債務とは、被相続人が負っていた借金などをいいます。

税金や罰金なども相続債務となります。

 

被相続人が保証となっていた場合はどうなる?

保証債務については、原則として、控除すべき相続債務に含まれないと考えられます。
通常は主債務者が債務を履行するので、控除する必要はないといえるからです。
もっとも、主債務者の支払能力がなく、求償権の行使による填補の実効性がないような場合、控除すべきと考えられます。

 

 

遺留分侵害額の算定方法

各遺留分権利者の遺留分の金額は、上記の計算式によって算出できます。

しかし、実際に請求できる金額(これを「遺留分侵害額」といいます。)は、遺留分の金額と同一ではありません。

遺留分侵害額は、次の計算式によって算出することになります。

遺留分侵害額 = 遺留分額 -(遺贈又は特別受益の価額)-(遺留分権利者が相続によって得た財産額:寄与分による修正は考慮しない)+(遺留分権利者承継債務の額)

この遺留分侵害額の計算方法について、くわしくは下記のページで解説しています。

ぜひ、ご参考にされてください。


遺留分侵害額の請求方法や手順については下記のページをご覧ください

 

 

まとめ


以上、遺留分の計算方法について、くわしく解説いたしましたがいかがだったでしょうか?

遺留分の計算では、まず、遺留分の割合を確認すること、そして、遺留分算定の基礎となる財産額を算出することが必要です。

しかし、具体的に請求できる額は遺留分の金額と同一ではなく個別に計算しなければなりません。

できるだけ理解していただきやすいように具体例を用いて、噛み砕いて解説いたしましたが、それでも素人の方には複雑でわかりにくいかと思います。

また、遺留分が問題となる事案は、請求しても、相手が素直に応じてくれないことが予想されます。

そのため、相続問題に詳しい弁護士へご相談されることをお勧めいたします。

当事務所には相続問題に注力する弁護士や税理士で構成される相続対策チームがあり、相続問題でお困りの方を強力にサポートしています。

遠方の方でも、LINEなどのオンラインを活用した相談を受け付けていますので、遺留分でお困りの方はお気軽にご相談ください。

この記事が遺留分でお悩みの方のお役に立てれば幸いです。

 

 

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