むちうち治療とは?事故時の注意点やポイントを解説

執筆者:弁護士 西崎侃 (弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士)

むちうち治療とは、交通事故が原因で、首がむちのように揺さぶられることで首に痛み・しびれ等が生じた場合に、その痛み・しびれ等の治療をすることをいいます。

むちうちになってしまった場合、これまで当たり前のようにできていた日常生活が不便になったり、不快感を覚えたりすることが増えるため、適切な治療場所で適切な治療を受けることが重要になってきます。

この記事では、むちうち治療の治療場所・治療方法や適切な治療期間、治療終了後に請求できる賠償金などについて詳しく解説しておりますので、交通事故でむちうちになってしまった被害者のお役に立てれば幸いです。

むちうちの治療とは

むちうちとは、交通事故による衝突によって、首がむちのように揺さぶられることで首に痛みが生じることをいいます。

むちうちは、「頚椎捻挫(けいついねんざ)」、「頚椎挫傷(けいついざしょう)」、「外傷性頸部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)」、「外傷性頭部打撲(がいしょうせいとうぶだぼく)」などと診断されます。

 

むちうちはどこで治すのが正解?

むちうちは、整形外科(病院)で治療されることをおすすめいたします。

むちうちの治療先としては、次の2つが考えられます。

  1. ① 整形外科(病院)で治療する。
  2. ② 整骨院・接骨院で治療する。

①整形外科(病院)で治療する場合と、②整骨院・接骨院で治療する場合を比較すると以下のようになります。

メリット デメリット
①整形外科(病院)で治療 ・医師免許をもった医師による適切な診察・診断を受けることができる。
・相手方保険会社から治療の打ち切りの連絡がきた場合に、主治医の見解を主張することができる。
・後遺障害診断書を作成してもらうことができる
・仕事等で病院の空いている時間に通院することが難しいことがある。
②整骨院・接骨院で治療 ・仕事終わりの時間でも空いているところも多く、通いやすい。
・施術がマッサージ・電気療法等なので、ケガの痛みが治ることがある。
・施術費用を相手方保険会社または加害者から支払ってもらえない可能性がある。
・後遺障害の認定で不利に評価されることがある

なお、整骨院に通院される場合には、いくつか注意していただく点があります。

詳しくは以下の記事で解説しておりますので、興味がある方はご確認ください。

 

むちうちの治療方法

むちうちの治療方法としては、次のようなものが考えられます。

  • リハビリ(電気治療、温熱療法、牽引療法、リラクセーションなど)
  • 湿布、内服薬などの投薬
  • 神経ブロック注射

車両が事故の衝撃で転倒するほどの大きな事故の場合を除き、交通事故によってむちうちとなってしまった場合、通常は手術の必要はなく、適切な継続的治療とむちうち箇所を安静にすることで症状が改善していきます。

 

むちうち治療の平均期間

むちうち治療の期間は、平均して約3ヶ月ほどになることが多いです。

しかし、ケースによっては、約1〜2ヶ月ほどの治療期間になるものもあれば、約6ヶ月ほどの治療期間またはそれ以上の治療期間になるものもあります。

このように、むちうち治療の期間はケースバイケースとなっています。

では、むちうち治療の期間の妥当性はどのようにして判断するのでしょうか。

むちうち治療の妥当な期間を判断するにあたっては、次のような事情を考慮します。

  • 車両の衝突による事故の場合、車両の損傷部位、損傷の程度、修理費用金額
  • 事故状況
  • 事故時の被害者の体勢
  • 治療の内容、通院頻度、症状の程度
  • 主治医の見解(医学的判断) など

そのため、このような事情を踏まえ、相手方保険会社から妥当でない治療期間を提示された場合には、安易に承諾しないようにしましょう。

 

 

むちうちの治療の打ち切り

むちうちの治療が打ちきりになる期間

打ちきりとは、加害者側の保険会社が、治療費の支払いを一方的に打ち切ることをいいます。

前述のように、むちうちの治療期間は、約1〜2ヶ月ほどの場合もあれば、約6ヶ月ほどの場合もあります。

例えば、むちうちの妥当な治療期間が、事故日から3ヶ月であった場合には、事故日から3ヶ月後に打ち切りとなります。

他方、車両の損傷の程度や事故状況、主治医の見解などを踏まえて、むちうちの妥当な治療期間が、事故日から1年であった場合には、事故日から1年後に打ち切りとなります。

むちうちで約1年間、打ち切りにならずに治療を継続できた事例もございますので、ご確認されたい方は、下記の記事をご覧ください。

 

打ち切りにならない方法はある?

前述のとおり、同じ「むちうち」という傷病名であっても、その痛みの程度等は事案によって異なります。

そのため、相手方保険会社からむちうち治療の打ち切りの連絡がきた場合には、適切な治療期間まで打ち切りにならないように交渉を行うことが重要です。

そこで、打ち切りにならないためには、事故状況、症状の程度、治療状況、主治医の見解などを具体的、かつ、説得的に主張していくことになります

例えば、赤信号等で停止していた被害者の車両の後方から、スピードを出した状態の加害者車両が衝突してきたため、被害者の車両が前方に数センチ動いたという事故状況の場合、次のような主張をすることが考えられます。

  • 被害者の車両の後方から衝突してきていることから、被害者としては、衝突直前に身構えることができず、むちうちによる痛みの程度が大きいことが予想される。
  • 加害者車両がスピードを出した状態で被害者車両に衝突してきていることから、被害者の身体に加わる衝撃は強かったことが予想される。
  • 加害者車両の衝突によって、被害者車両が前方に数センチ動いていることから、停止していた車両が動くほど衝突の衝撃が強かったことが予想される。

また、1週間に1〜2回など定期的に整形外科(病院)に通院されていた被害者の場合、主治医の先生から協力を得られる可能性もあります。

例えば、むちうち箇所を定期的に診察・診断してきた主治医が、まだ現状では治療を打ち切る段階ではないとの見解を持っている場合には、有力な証拠となります。

なぜなら、適切な治療期間の判断にあたっては、医学的判断が不可欠だからです。

そのため、不適切な治療期間で打ち切りとならないためにも、整形外科(病院)には定期的に通院するようにしましょう

 

 

交通事故時の5つのポイント

むちうちの治療費を請求する

むちうちの病院の治療費については、加害者本人または相手方保険会社に請求することができます。

整骨院や接骨院の治療費についても、次のような場合には、加害者本人または相手方保険会社に請求することができます。

  • むちうちの症状により整骨院や接骨院での施術が有効、かつ、相当な場合
  • 整骨院や接骨院で施術を受けることについて医師の指示がある場合

また、事故当初から、保険会社が整骨院や接骨院での施術を認めている場合には、スムーズに整骨院や接骨院で施術を受けることができます

裁判になった場合には一転して争われることがあります。

争われるケースとしては、整形外科には月1回ほどしか行っておらず、整骨院中心の治療を行っている場合や整骨院に毎日行って施術を受けている場合などが考えられます。

 

むちうちの慰謝料等の賠償金を請求する

交通事故によって、被害者がむちうちになってしまった場合、請求することができる賠償金には次のようなものがあります。

※以下では、あくまでも代表的な項目だけ挙げております。実際に請求することができる賠償金の項目は事案によって異なりますのでご注意ください。

  1. ① 治療費
  2. ② 慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)
  3. ③ 休業損害
  4. ④ 通院交通費
  5. ⑤ 後遺障害逸失利益

①治療費

治療費とは、事故が原因でケガをした場合に、そのケガの治療のために必要な費用のことをいいます。

通常、加害者が任意保険に加入しており、かつ、被害者の過失が小さい場合(例えば、過失割合が90:10や80:20の被害者側である場合)には、加害者が加入している保険会社が、病院に対して、治療費を支払ってくれるため、被害者が窓口で治療費を支払う必要はありません

加害者が加入している保険会社が病院に対してすでに治療費を支払っている場合、治療終了後に、賠償金の1つとして治療費を請求すると、二重に賠償金を受け取ることになるため、治療費分の賠償金を受け取ることはできません。

②慰謝料

慰謝料には、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2種類があります。

「入通院慰謝料」とは、交通事故によってむちうちになってしまった場合に、入通院日数や入通院期間に応じた精神的苦痛を賠償金とした慰謝料のことをいいます。

「後遺障害慰謝料」とは、交通事故によってむちうちになってしまった場合に、半年以上治療を継続したものの、痛みやしびれがまだ残っているため、後遺障害に認定されたときに請求できる慰謝料のことをいいます。

むちうちになってしまった場合の慰謝料について、詳しくは以下の記事で解説しておりますので、ご参照ください。

③休業損害

休業損害とは、交通事故でむちうちになってしまったため、入通院や療養するために仕事を休まざるを得なかった場合に、仕事を休んだことで減給した分を賠償金として請求できるものとなります。

休業損害は、交通事故が原因で仕事を休んだ場合に請求できるものですが、「仕事を休んだ場合」には、欠勤した場合だけでなく、有給休暇を使用して休んだ場合も含まれます

また、休業損害は、仕事を休んだことで減給した分を請求できるため、会社の役員など会社から報酬として固定給を支給されている被害者は、休業損害を請求できない場合が多いです。

休業損害は会社員、個人事業主、主婦(主夫)の方の場合で請求できるか否かや具体的な計算方法などが異なってきますので、詳しくは下記の記事をご確認ください。

④通院交通費

通院交通費とは、交通事故が原因でむちうちになり、むちうちを治療するために通院した際にかかった交通費のことをいいます。

通院交通費は、自家用車の場合、1キロメートル15円、公共交通機関の場合、実際に支出した実費を請求できます。

⑤後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、交通事故によってむちうちとなり、後遺障害に認定された場合に、むちうちにならなければ通常通り働けていたが、むちうちになったことで働きづらくなったことによる減収分を補償するものです。

後遺障害逸失利益は、次の計算方法で計算します。

後遺障害逸失利益
= 1年あたりの基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

「基礎収入」は、原則として、事故前年度の収入をベースにします。

「労働能力喪失率」は、後遺障害の等級(1級~14級)ごとに決まっていますが、むちうちの場合、5%になることが多いでしょう。

「ライプニッツ係数」は、労働能力の喪失期間に応じて決まっていますが、むちうちの場合、4.5797になることが多いでしょう。

 

事故日から遅くとも1週間以内に整形外科(病院)に行く

事故日から期間が空いてしまうと、病院や加害者側の保険会社が、被害者の症状を的確に把握することができなくなります。

そのため、事故日から期間が空いてから通院すると、加害者側の保険会社が適切な慰謝料の支払いをしてくれない可能性がでてきます。

また、事故日から2週間通院しなかったり、前回の通院日から2週間~1ヶ月通院しなかったりすると、最終的に獲得できる慰謝料が減額される可能性が高まってしまいます。

そのため、事故日から遅くとも1週間以内に整形外科(病院)に行くようにしましょう

事案によっては、事故日から1週間経過した場合でも、保険会社から治療費の支払いを拒否される可能性があります。

 

後遺障害認定のために診断書の作成に注意

交通事故でむちうちとなってしまい、後遺障害に認定してもらうためには、後遺障害診断書を主治医の先生に書いてもらう必要があります

後遺障害診断書を作成してもらう際には、次のような注意すべき点があります。

後遺障害診断書の「自覚症状」欄には、痛み・しびれがあるかどうかだけ記載してもらう

次の2つの記載例を比べると、下の記載例のようなかたちで後遺障害診断書の「自覚症状」欄に記載してもらうことをおすすめいたします。

【 記載例 】
× 「天気が悪くなったときに、首が痛む」
× 「物を取ろうとすると、首がしびれる」

〇 「首の痛み」
〇 「首のしびれ」

すなわち、上の記載例のかたちで後遺障害診断書の「自覚症状」欄に記載されると、「天気がいいときは首の痛みがないのではないか。」、「日常生活の中では首のしびれがないのではないか」という判断をされる可能性があります。

大前提として、嘘の記載をしてもらうことは絶対にできませんが、後遺障害診断書を作成してもらう際には、端的に「〇〇の痛み」「〇〇のしびれ」などと記載してもらうようにしましょう

事故当初から診察・診断していない主治医の先生の場合、後遺障害診断書を作成してくれないケースもある

例えば、事故日から3ヶ月はA病院に通院したが、事故日から3か月後からはB病院に通院したという場合、B病院の主治医の先生が後遺障害診断書を作成してくれないケースがあります。

なぜなら、B病院の主治医の先生としては、事故当初の被害者の症状等を診察・診断していないため、事故日から後遺障害診断書の作成時点までの症状の経過を把握していないからです。

そのため、仕事の都合や病院までの距離の関係で、通院先の病院を変更される場合には、早めに変更するようにしましょう。

後遺障害診断書の概要や注意すべき点について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。

 

交通事故にくわしい弁護士へ相談する

交通事故によってむちうちとなった場合、加害者側の保険会社が事故日から2~3ヶ月程度で治療の終了を提示してくることがあります。

しかし、むちうちとなった場合の適切な治療期間はケースバイケースになります。

また、加害者側の保険会社が提示してきた慰謝料が適切なものか、今回の事故で後遺障害の申請をすることができるかなど、疑問・不安に思うことも多いと思います。

交通事故にくわしい弁護士であれば、このような疑問・不安にお答えすることができます。

また、交通事故にくわしい弁護士に依頼された場合、被害者にあった交通事故に応じた適切な治療期間となるように加害者側の保険会社と交渉をしたり、適切な慰謝料を獲得するために交渉したりいたします

さらに、事故日から早い段階でご相談いただくことで、早期に対応することが可能となります。

そのため、少しでも疑問・不安がある方は、早い段階で交通事故にくわしい弁護士に相談するようにしましょう。

 

 

まとめ

以上、むちうち治療について、むちうち治療時の注意点や治療場所・治療方法、治療終了後の賠償金などについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか。

むちうちを治療する場所としては、大きく分けて整形外科(病院)と整骨院があり、それぞれメリット・デメリットがありますので、それを踏まえて、治療先を選択しましょう。

また、交通事故が原因でむちうちとなった場合、むちうち治療の治療期間は、事故の状況や事故時の被害者の体勢などによって異なってきます。

加害者側の保険会社は、むちうちの交通事故の場合、形式的に2~3ヶ月くらいで治療の打ち切りを提示してくることがありますが、治療の打ち切りは医学的判断が不可欠なので、主治医の先生の意見が尊重されるべきです。

そのため、加害者側の保険会社が治療の打ち切りを提示してきたとしても、まだむちうちによる痛みが残っている場合には、安易に合意しないようにしましょう。

当法律事務所には、交通事故の案件を多数扱う人身傷害部の弁護士が在籍しており、それぞれの弁護士が相談から示談まですべて対応いたします。

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