遺産分割協議書の作成方法と提出先【弁護士解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


目次

遺産分割協議書とは

遺産分割とは、被相続人(亡くなった方)の遺産について、個々の遺産の権利者を確定させるための手続をいい、遺産分割協議書は、その合意内容が記された書面のことをいいます。

法律上、法定相続分というものがありますが、遺産について、誰が、何を承継するかは決まっていません。

そこで、遺産について、誰が何を取得するかを確定させる必要があります。

もっとも、遺産には、現金や預貯金のほか、不動産、貴金属等の動産、株式、ゴルフ会員権など様々なものがあります。

これらについて、遺産分割協議書にどのように記載すればいいか、相続専門の弁護士でないと難しいと思われます。

また、適切な内容の遺産分割協議書を作成しておかないと、後々トラブルとなる可能性もあります。

ここでは、遺産分割協議書の具体的な作成方法について、素人の方にもわかりやすく解説いたします。

ぜひ、ご参考にされてください。

 

 

遺産分割協議書が必要な場合とは?

遺産分割協議書は、相続が発生した場合、多くのケースで必要になります。※

※遺産分割協議書は、法律上、作成が義務付けられているわけではありません。

しかし、遺産分割協議書を作成しておくことで、遺産をスムーズに取得し、また、トラブルを回避できることがあります。

根拠条文
(遺産の分割の協議又は審判等)
第907条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

引用元:民法|e−GOV法令検索

以下のフローチャートは、遺産分割協議書の必要性(作成を検討すべき場合)を判定するためのものです。

ご自身の場合に当てはめてみてください。

 

相続人が一人しかいない

上記のように、遺産分割協議書が明確に不要と言えるのは、相続人が一人しかいない場合があげられます。

遺産分割協議書は、相続人が複数の場合に作成するものですから、もし、相続人が一人しかいないのであれば、作成することができませんし、作成の必要性もありません。

ただし、相続人が本当に一人なのかを調査する必要があります。

すなわち、被相続人に隠し子がいるケースがあります。

そのため、戸籍を取り寄せて相続人を確定する必要があります。

 

遺言書がある場合

遺言書があったとしても、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、遺産分割協議ができないわけではありません(民法907条1項)。

遺言者の意思に反する可能性はありますが、遺産に関して相続人全員で遺言書の内容と異なる合意をすることは可能です。

また、遺言書があったとしても、記載内容から誰がどの遺産を取得するか明確ではない場合があります。

このような場合、遺言書の内容を踏まえつつ、別に遺産分割協議を行うことが必要となります。

 

遺言書が有効でない場合

一応、遺言書らしきものがあったとしても、その有効性が問題となるケースは多いです。

例えば、自筆証書遺言は、法定の要件が厳しいため、方式の不備で無効となる可能性があります。

そのため、このよう場合、遺言書の有効性を争いながら、遺産分割協議を並行的に進めていくことケースもあります。

したがって、遺言書があったとしても、遺産分割協議ができないと断定せずに、その有効性について、相続問題に詳しい弁護士へ相談されると良いでしょう。

このように、遺産分割協議書が「明確に不要」というケースは、意外と少ないと思われます。

遺産分割協議書作成の必要性については、相続に詳しい弁護士へご相談されることをお勧めいたします。

 

遺産分割協議書作成はどんな場面で役立つ?

では、遺産分割協議書はどのような場面で特に役立つのでしょうか。

ここでは、遺産分割協議書の有用性について、具体的なイメージを持ってもらうために、典型的なケースをご紹介いたします。

  1. ① トラブルを防止したいとき
  2. ② 預貯金がある場合
  3. ③ 法的相続分と異なる割合で遺産分割を行うとき
  4. ④ 不動産がある場合
  5. ⑤ 自動車がある場合
  6. ⑥ 相続税を申告するとき

トラブルを防止したいとき

被相続人がお亡くなりになられたあと、遺産を調査し、誰がどの遺産を取得するかを決めることになります。

このとき、書面ではなく、口頭だけで合意を行うケースが見受けられます。

前述の通り、法律上、遺産分割協議書の作成が義務付けられているわけではないため、口頭での合意も違法ではありません。

しかし、口頭だけだと、後々「言った言わない」のトラブルに発展するおそれがあります。

また、遺産分割協議は、被相続人の遺産の権利義務を確定する重要な手続きです。

遺産としてどのようなものがあるかを関係者全員が把握し、誰がどの遺産を取得するかを理解し、皆が納得した上で合意することで、円満な親族関係を実現できます。

したがって、遺産分割協議書の作成は、トラブルの防止に役に立ちます。

 

預貯金がある場合

預貯金は、不動産などの財産と異なり、現金と同様に分割が容易に思えます。

しかし、最高裁判所は、預貯金について、「相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」との判断を示しています(最高裁平成28年12月19日決定)。

したがって、預貯金の相続人は、単独で銀行に対して払い戻しを請求することはできません。

遺産分割協議書を銀行に示すことで、払い戻しを請求することができます。

なお、銀行実務上は、遺産分割協議書がなくても、相続人全員が銀行所定の用紙に記載すれば、払い戻しに応じることが多いです。

しかし、金融機関の数が多い場合、その都度、相続人全員が用紙に記載するよりも、遺産分割協議書を作成した方が負担が少なくなると考えられます。

 

法定相続分と異なる割合で遺産分割を行うとき

各相続人が相続する財産の割合(相続分)については、民法に規定があり、これを法定相続分といいます。

法定相続分と異なる割合で遺産を分割する場合、そのときは問題が表面化していなくても、「実は納得していなかった」という相続人がいるかも知れません。

したがって、後々トラブルになる可能性が懸念されます。

そのため、法定相続分のとおりに遺産を分けない場合、特に遺産分割協議書の作成を検討すべきでしょう。

合わせて読みたい
相続とは

 

不動産がある場合

遺産に不動産がある場合、遺産分割協議書の作成を検討しましょう。

なお、不動産については、法定相続分のとおりに登記する場合、遺産分割協議書の提出は不要です。

しかし、不動産を複数の相続人で共有するのは基本的にはお勧めできません。

この場合、不動産の利害関係者が多くなり、将来、処分するときなどにトラブルの可能性があるからです。

したがって、誰か特定の方が不動産を取得する方法をお勧めいたします。

 

自動車がある場合

遺産に自動車がある場合、不動産とは異なり、所定の用紙に相続人全員が署名することで名義変更が可能となります。

しかし、遺産分割協議書があった方が手続がスムーズに行くケースが多いと考えられます。

したがって、遺産分割協議書の作成を検討した方がよいでしょう。

 

相続税を申告するとき

相続税を申告しなければならないケースでは、多くの場合に遺産分割協議書の作成を求められます。

なお、相続税には後述する「基礎控除」というものがあり、遺産額が大きい場合にのみ課税されます。

したがって、基礎控除を超える可能性があるケースでは、遺産分割協議書の作成を検討しましょう。

なお、当事務所では、相続税の課税について、ホームページ上に自動計算しミューターを掲載しており、無料で調査することが可能です。

相続税についてお調べになりたい方はぜひご活用ください。

 

 

遺産分割協議書を作成できるのは誰?

遺産分割協議は、前述の通り、相続人が複数名いる場合に遺産の分け方について話し合い、皆が納得して合意するという手続です。

したがって、遺産分割協議書を作成する際、その当事者(遺産分割協議書に署名をする方)は、相続人となります。

もっとも、遺産分割協議書は遺産に関する権利義務を確定するものであり、適切な内容とするためには相続法に関する専門知識やノウハウが重要となります。

そのため、遺産分割協議書の案分については、相続法に詳しい弁護士に依頼して作成してもらうという方もいらっしゃいます。

また、他の相続人と争いになっている場合、弁護士が代理人となって相手方と交渉し、遺産分割協議をまとめることがあります。

この場合、その弁護士が代理人として、依頼者に代わって遺産分割協議書に署名(通常は記名・押印)することがあります。

 

自分で作成できる?

遺産分割協議書を作成するに際して、ひな形があれば具体的なイメージがわきやすいと思います。

したがって、これから遺産分割を行う方は、まずはひな形をご覧になることをお勧めいたします。

しかし、遺産分割協議書は、被相続人の遺産をめぐる権利関係を確定されるために作成するものであり、法的な書面となります。

もし、内容に不備があると、遺産分割が無効となったり、無効とまではならなくても、後々トラブルになる可能性があります。

そのため、後記のひな形は、あくまで参考程度のとどめてください。

実際に遺産分割協議書を作成する場合は、相続問題に詳しい弁護士へ相談されることを強くお勧めいたします。

 

 

弁護士以外の者が作成できる?

相続問題をサポートする業者は、弁護士の他にも、行政書士、司法書士、税理士、その他各種団体などが存在します。

素人の方は、そもそもどこに相談したらよいかを迷われると思います。

弁護士の職務は、法律相談・交渉・調停手続、訴訟対応、遺言書や協議書作成などの法律事務全般であり(弁護士法第3条)、相続に関するすべての法律問題に対応できます。

これに対して、弁護士でない者が法律事務を扱うのは、法律で原則として禁止されています。

これは、弁護士以外の者が法律事務に関与すると、間違った対応や詐欺的な行為等により深刻な事態に陥る可能性があるからです。

したがって、遺産分割協議書の作成や交渉を依頼されるのであれば、相続法に詳しい弁護士へ依頼されるべきでしょう。

 

 

遺産分割協議書の提出先

遺産分割協議書は、どういった状況で必要になるのでしょうか?主な提出先をみてみましょう。

 

不動産の名義変更を行うときに法務局へ提出

不動産を相続したら、被相続人から相続人へと「名義変更(相続登記)」をしなければなりません。

その際、法務局へ遺産分割協議書を提出し、誰が不動産を相続したのかを明らかにする必要があります。

 

預金の解約払い戻しを行うときに金融機関へ提出

預金を相続したら、解約払い戻しや預金口座の名義変更をしなければなりません。

このとき、金融機関へ遺産分割協議書を示して誰が預金を相続したのかを証明する必要があります。

 

株式の名義変更を行うときに証券会社や株式発行会社へ提出

上場株式を相続するときには、証券会社へ遺産分割協議書を示して誰が株式を相続したのか明らかにしなければなりません。

非上場株式を相続する場合には、株式発行会社へ遺産分割協議書を示して自分が株式を相続した事実を証明します。

 

相続税申告の際に税務署へ提出

相続税を申告するとき、遺産分割協議によって法定相続分以外の割合で遺産を相続するなら、税務署へ遺産分割協議書を提出しなければなりません。

遺産分割協議が未了の状態では配偶者控除や小規模宅地の特例などの減税措置も適用されないので注意しましょう。

 

 

遺産分割協議書を作成する手順、流れ

相続が開始した後、遺産分割協議書はどのような流れで作成すればよいのでしょうか?

以下で遺産分割協議書を作成する場合の一般的な手順や流れをご説明します。

 

 

遺言書を探す

人が亡くなったら、まずは「遺言書」が遺されていないか確認しましょう。

遺言書によって遺産相続方法が指定されていたら、基本的には遺言書に従って遺産分割すべきだからです。

有効な遺言書によってすべての遺産の分け方が指定されている場合、遺産分割協議を行う必要はありません。

遺言書の探し方は以下の通りです。

 

自筆証書遺言

自筆証書遺言は自宅などで被相続人が自分で保管している場合と「法務局」へ預けられている場合があります。

自宅などで保管されているものについては、自宅内や金融機関の貸金庫などを確認してみましょう。

法務局に預けられている場合、被相続人の死亡届を提出すると指定された相続人のもとへ通知が届くケースが多数です。

通知が来ない場合には法務局で「遺言書保管事実証明書」の発行を申請しましょう。

そうすれば保管されているかどうかがわかります。

自筆証書遺言が保管されている可能性のある法務局は「遺言者の住所地」「遺言者の本籍地」「不動産の所在地」のいずれかになるので、上記の法務局へ証明書を申請してみてください。

 

公正証書遺言

公正証書遺言の場合には、公証役場で「検索」できます。

公正証書遺言が保管されている場合には検索によって開示されるので、一度お近くの公証役場へ行って検索手続きをしてみてください。

 

秘密証書遺言

秘密証書遺言は被相続人が自宅で保管しているか金融機関の貸金庫に預けられているケースが多数です。

 

相続人調査

遺言書がない場合やすべての遺産分割方法が指定されていない場合には、相続人全員が参加して遺産分割協議をしなければなりません。

漏れが生じないように「相続人調査」を行いましょう。

 

相続人調査の方法

相続人を調べるときには、基本的に被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類を集める必要があります。

戸籍謄本をみると、被相続人の結婚離婚歴や養子縁組の履歴、認知した子どもの有無などを確認できるからです。

代襲相続が発生する場合や親、祖父母、兄弟姉妹、甥姪などが相続人となる場合には、被相続人以外の人(代襲相続される子どもや親など)の戸籍謄本が必要となるケースもあります。

戸籍謄本は「本籍地のある役場」へ申請して取得しなければなりません。

お近くであれば役所へ行けば、その場で発行してもらえます。

遠方の場合には「郵送」申請が便利でお勧めです。郵送する場合には「定額小為替」と「身分証明書」「相続を証明する書類」と申請書、返信用の切手を同封し、役所へ送りましょう。

 

相続財産調査

遺産分割協議の前提として「相続財産調査」も行わねばなりません。

どのような遺産があるかわからないと遺産分割の話し合いができないからです。

預貯金、不動産、株式、動産など漏れがないようにしっかり調べましょう。

預貯金については金融機関で「残高証明書」や「取引履歴」を取得すれば調べられます。

不動産については法務局で全部事項証明書を取得したり、役所で「名寄帳」の写しを申請したりするとよいでしょう。

株式や投資信託などの金融資産については預託している証券会社に問い合わせてみてください。

 

遺産分割協議を行う

相続人と相続財産が明らかになったら、相続人全員が参加して遺産分割協議を行います。

遺産分割協議を進めるときには、必ずしも一堂に会する必要はありません。

電話やメール、LINEなどでやり取りをしながら進めることも可能です。

全員が合意しないと遺産分割が成立しないので、相手の立場も考えながら譲れるところは譲り合いながら話し合いを進めましょう。

ただし「自分がすべての遺産を相続する」など無理な主張をする相続人がいて納得できないなら無理に妥協する必要はありません。

 

遺産分割協議書を作成する

話し合いによって相続人全員が遺産分割方法について合意したら、「遺産分割協議書」を作成しましょう。

手順としては、まずは誰か1人が原案を作成し、他の相続人に確認してもらうとよいでしょう。

内容に納得すれば全員がそれぞれ署名押印して遺産分割協議書を完成させます。

ただし遺産分割協議書に間違いがあると、不動産の相続登記などを受け付けてもらえない可能性があります。

自分たちだけでは確実に正しいものを作成できる自信を持ちにくいなら、弁護士にチェックを依頼するようお勧めします。

 

相続人の居住地が遠方の場合の遺産分割協議書作成方法

相続人が全国各地に散らばっている場合、一つの場所に集まって署名押印するのは大変です。

この場合には、遺産分割協議書を郵送でまわしあって順番に署名押印していくとよいでしょう。

 

遺産分割協議証明書について

相続登記に使う書面が必要な場合には、「遺産分割協議証明書」といってそれぞれの相続人が単独で遺産分割方法に合意した事実を証明する文書を作成するケースもあります。

遺産分割協議書は全員が署名押印しなければならないので郵送による署名押印に時間がかかりますが、遺産分割協議証明書であればそれぞれの相続人が単独の署名押印によって作成できるので、手間や時間を節約できるメリットがあります。

 

 

遺産分割協議書は実際どんなもの?

遺産分割協議書に必要な記載事項

遺産分割協議書の目的は、後日、相続人間のトラブル(紛争)を未然に防止することです。

したがって、記載事項としては、通常、①被相続人を特定するための情報、②遺産の分け方、③相続人全員がその遺産の分け方に納得(合意)していること、④日付、⑤相続人全員の署名押印(又は記名・押印)※が必要となります。

※相続人全員の署名押印(又は記名・押印)
遺産分割協議書が真正であることを証明するためには、法律上、署名又は押印でも可能となります。
しかし、日本では、署名に加えて、押印されることが慣例上多いため、トラブル防止のためには、署名に加えて押印(実印が望ましい。)もあったほうが良いでしょう。
なお、記名とは、印字されている文字のことです(パソコンなどで作成してプリントアウトする場合など。)。

根拠条文
(文書の成立)
第228条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
(略)
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

引用元:民事訴訟法|e−GOV法令検索

 

遺産分割協議書の具体例を示します。

遺産分割協議書のサンプル

 

不動産を分けたい場合の書き方

不動産を相続する場合には、相続される不動産を特定しなければなりません。

したがって、「不動産全部事項証明書」の「表題部」を引き写して記載しましょう。

不動産を分けるときの詳しい説明はこちらをご覧ください。

 

預貯金を分けたい場合の書き方

預貯金を相続するときには、金融機関名、支店名、口座の種類、口座番号を記載して特定するのが通常です。

 

預貯金を分けるときの詳しい説明はこちらをご覧ください。

 

 

遺産分割協議書の作成で注意が必要なケースとパターン別の対処方法

遺産分割協議書を作成する際、以下のような場合には一般的なケースと異なる対応が必要となります。

以下では特に注意が必要なパターンと対処方法を解説します。

 

相続人が海外居住

相続人にアメリカやヨーロッパ、東南アジアなどの海外居住の人が含まれている場合、「実印」を用意できない可能性があります。

日本から住民登録を抹消していると、実印の印鑑登録ができないからです。

遺産分割協議書には基本的に実印による押印が必要なので、このままでは遺産分割協議書を作成できません。

海外居住の相続人がいる場合には、在外公館で「サイン証明書」を発行してもらう必要があります。

まずは海外居住の相続人へ遺産分割協議書案を送付し、それを持参して居住国の領事館へ行ってもらいましょう。

領事の面前で本人が署名押印すると、サイン証明書を発行してもらえます。

サイン証明書は印鑑登録証明書の代わりになるので、不動産の名義変更などの諸手続きに利用できます。

 

相続人が未成年

未成年の子どもが相続人になる場合にも注意が必要です。

未成年者は1人で有効な法律行為ができないので、代理人が遺産分割協議書に署名押印しなければなりません。

通常の場合であれば、親権者が法定代理人となります。

しかし親権者も共同相続人となる場合、親権者は子どもを代理できません。

親権者と子どもの利害が対立してしまうからです。

たとえば母と子どもが共同相続人になる場合に母親に子どもを代理させると、母親が自分の取得分を増やして子どもの分を減らしてしまう可能性が懸念されるでしょう。

そこで親と子どもが両方とも相続人になる場合には、子どものために「特別代理人」を選任しなければなりません。

特別代理人は、家庭裁判所へ申請して選任してもらいます。

一般的にはおじやおばなどの「法定相続人になっていない親族」を候補者に立てて選任してもらうケースが多いでしょう。

子どもが自分で署名押印した遺産分割協議書や、親が自分と子どもの分の両方の署名押印した遺産分割協議書は無効になるので注意してください。

 

相続人が認知症、成年被後見人

相続人が重度の認知症の場合、相続人自身が署名押印した遺産分割協議書が無効になってしまう可能性があります。

遺産分割協議に参加するには、最低限の意思能力が必要となるからです。

認知症が進行して判断能力が失われると自分では遺産分割協議に参加できなくなってしまいます。

相続人に重度な認知症の人が含まれる場合には、家庭裁判所で「成年後見人」を選任しましょう。

成年後見人は、判断能力の低下した人のために財産管理したり身上監護方法を決定したりする人です。

親族を成年後見人候補者に立てることもできるので、共同相続人以外の人を候補者にするとよいでしょう。

ただし成年後見人になった場合、遺産分割協議が終わっても任務を解かれるわけではありません。

本人が意思能力を回復するか死亡するまで財産管理を続けなければならず、定期的に家庭裁判所への報告も行う義務も課されます。

負担になる可能性があるので、成年後見人を選任する際には慎重に判断しましょう。

弁護士を成年後見人候補者に立てることもできるので、親族に適当な人がいない場合には検討してみてください。

 

相続人と連絡をとれない、行方不明

相続人の中に「行方不明」の人がいる場合にも注意が必要です。

遺産分割協議には相続人が全員参加しなければならないので、1人でも連絡を取れない人がいたら成立させられません。

この場合、単に「連絡を取れない(無視されている)」だけなのか、本当に行方がわからないのかによって対応が異なります。

 

単に連絡を取れない場合の対処方法

単に連絡を取れないだけであれば、家庭裁判所で「遺産分割調停」を申し立てましょう。

調停をすれば家庭裁判所から本人へ呼出状を送付してもらい、話し合いを行えます。

相手がどうしても出頭しない場合には「審判」によって遺産分割方法を指定してもらえる可能性があります。

 

行方不明の場合の対処方法

相続人が住所地に居住しておらず「行方不明」の場合には、家庭裁判所へ申請して「不在者財産管理人」を選任しなければなりません。

不在者財産管理人とは、行方不明者の財産を代わりに管理する人です。

不在者財産管理人が選任されると、その人を交えて遺産分割協議を進められます。

相続人が行方不明になった後7年以上が経過していれば、失踪宣告を申し立てて死亡扱いにしてもらえる可能性もあります。

どちらの対応がベターかは状況によっても異なるので、迷ったときには弁護士までご相談ください。

 

 

遺産分割協議書を作成する期限

遺産分割協議書の作成には期限がもうけられているのでしょうか?

法律上、遺産分割協議書の作成そのものに対する期限はありません。

しかし以下のような相続手続きに期限があるので、遺産分割協議書もその期限内に作成するようお勧めします。

 

相続税の申告

相続税は「相続開始後10ヶ月以内」に申告納税しなければなりません。

相続税申告までに遺産分割協議が成立していないと、配偶者控除や小規模宅地の特例などの適用を受けられず、税額が上がってしまう可能性があります。

相続税が発生するケースでは、できる限り相続開始後10ヶ月以内に遺産分割協議書を作成するのがよいでしょう。

 

相続登記

令和3年現在において、相続登記は義務ではありません。しかし不動産登記法の改正により、数年以内に相続登記が義務化される予定です。

基本的には「不動産の取得を知った後3年以内」に相続登記しなければなりません。

そこで遺産分割協議もできる限りその期間内に終えておくのが望ましいといえるでしょう。

また義務化前の現時点においても、相続登記をしないリスクがあります。

まず第三者によって権利を奪われてしまうリスクが高くなりますし、権利関係がわかりづらくなって混乱が生じやすくなるデメリットもあるでしょう。

遺産分割協議の成立前にいったん「共有登記」することも可能ですが、そうすると遺産分割協議が成立したときに再度登記が必要になって二度手間となってしまいます。

相続登記をスムーズに終えるためにも、できるだけ遺産分割協議は早めに成立させるのがよいでしょう。

 

 

遺産分割協議書は公正証書にすべき?

遺産分割協議書を公正証書にする義務はありませんが、公正証書を作成すると以下のようなメリットがあります。

まず文書としての信用性が高くなり「無効」と主張されるリスクが低下します。

原本が公証役場で保管されるので、変造や紛失などのリスクも低減されるでしょう。

ただし公正証書を作成するには費用がかかりますし、相続人全員が公証役場へ行かねばならないなどの手間もかかります。

メリット デメリット
  • 「無効」と主張されるリスクが低下する
  • 変造や紛失などのリスクも低減する
  • 費用がかかる
  • 相続人全員が公証役場へ行かねばならない

弁護士が代理で公正証書を作成することもできるので、関心がありましたらご相談ください。

 

 

遺産分割協議書の作成を弁護士に依頼するメリット

遺産分割協議書の作成を弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。

 

間違いのない遺産分割協議書を作成できる

遺産分割協議書には、正しく表記しないと相続登記などの重要な手続きができなくなってしまいます。

弁護士が作成すると間違いのない遺産分割協議書を作成できるので、後にやり直しになるリスクがほとんどなくなり、メリットがあるといえるでしょう。

 

手間を省ける

相続人さまが自分たちだけで一から遺産分割協議書を作成するには大変な手間となるものです。

弁護士が遺産分割協議書を作成すると、自分たちで文章を考える必要はありません。

相続人全員から署名押印を集める作業なども弁護士が行うので、大幅に手間を削減できるメリットもあります。

 

もめそうな場合でも意見を調整しやすくなる

遺産分割協議を成立させるには、相続人全員が合意しなければなりません。

1人でも反対する人がいたり意見が対立してしまったりすると、遺産分割協議書を作成するところまで進められず、相続登記などもできません。

そんなときでも弁護士がいれば、もめている当事者を説得して意見をまとめやすくなるものです。

弁護士は「代理人」として交渉する権限を持つほとんど唯一の法律資格者で、もめごとを解決するサポート力を有しています。

いったん遺産相続でもめてしまうと裁判所での「遺産分割調停」や「審判」となり、数年以上もの間、遺産分割トラブルに膨大な時間と労力を割く結果になりかねません。

少しでも不穏な空気を感じたら、お早めに弁護士へご相談ください。

弁護士法人デイライトでは、遺産分割協議書の作成をはじめとして相続手続き全般に関するリーガルサポートを提供しています。

遺言書の確認、相続人や相続財産の調査、遺産分割協議の進行や遺産分割協議書の作成、他士業と提携して相続登記や相続税申告までワンストップで解決いたします。

遺産分割協議書を作成したいときやその他相続手続きでお悩みを抱えた場合には、お気軽にご相談ください。

 

まとめ

以上、遺産分割協議書の作成方法や提出先等について、具体的な記載要領をもとに、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

遺産分割協議書は、多くのケースで作成を検討すべきです。

しかし、遺産分割協議書は対象となる遺産の種類や内容によって記載内容が異なります。

また、遺産分割協議書の記載内容に問題があると、遺産分割協議が無効になったり、将来トラブルに発展する可能性もあります。

このように遺言書作成は、専門家ではなければ判断が難しいため、作成を検討するに際しては、相続専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

この記事が遺産分割協議書作成を検討されている方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 

 
なぜ遺産相続のトラブルは弁護士に依頼すべき?

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