
親の死後に、兄弟と法律上の縁(親族関係)を切ることはできません。
そのため、「縁を切る」「一切関わらない」といった絶縁宣言をしても、遺産相続などの親族関係にまつわる問題が完全になくなることはありません。
特に、遺産相続の場面では兄弟間のトラブルが生じやすく、一度トラブルになると深刻化・長期化する傾向にあります。
そのため、兄弟間の相続トラブルは「起きてから対処する」のではなく、できる限り生前から対策を講じることが重要です。
この記事では、親の死後に兄弟と縁を切ることができるのかを法律的な観点から解説したうえで、実際に起こりやすいトラブル事例、相続問題を回避するための事前対策、トラブル発生後の対処法などについて、相続問題に強い弁護士の視点から詳しく解説します。
「兄弟との関係に悩んでいる」「相続で揉めたくない」という方は、ぜひ最後までご覧ください。
親の死後に兄弟と縁を切ることができる?

兄弟と法的に縁を切ることはできない
日本の法律には、兄弟との親族関係を消滅させる制度はありません。
そのため、親の死後に兄弟と法的に縁を切ることはできません。
そもそも親族関係とは?
「親族」の範囲は、民法で次のように定められています(民法第725条)。
- ① 六親等内の血族
- ② 配偶者(妻・夫)
- ③ 三親等内の姻族(配偶者の血族・血族の配偶者)
兄弟は二親等の血族であり、「六親等内の血族」に含まれます。
親族関係にある場合には、相続や扶養(経済的に援助することです。)などの権利・義務が発生します。
親族について詳しくは下記ページをご覧ください。
兄弟との親族関係を解消することはできない
兄弟との法律上の親族関係を解消することはできません。
例えば、配偶者であれば「離婚届」、養親子であれば「離縁届」、姻族であれば「姻族関係終了届」によって、法律上の関係を終了させられる場合があります(民法第728条、729条、763条、770条など)。
これに対して、実の兄弟のような自然血族(生物学上の血のつながった血族のことをいいます。)については、その関係自体を消滅させる制度は存在しません。
事実上の関係断絶しかできない
兄弟間で「今後は一切関わらない」「絶縁する」などと宣言することがありますが、それはあくまでも事実上の関係断絶にとどまります。
具体的には、次のような状態を指して「絶縁」ということが多いです。
- 相手に自分の連絡先を知らせない
- 相手の連絡先を削除する
- 電話・メール・SNSを遮断する
- 親族付き合いを一切しない
- 相続や金銭のやり取りをしない
このように、「事実上関わらない」という意味での絶縁です。
繰り返しになりますが、兄弟との法律上の親族関係がなくなることはありません。
つまり、絶縁を宣言したとしても、兄弟との血縁関係を終了させたり、戸籍上の兄弟関係を終了させたりすることはできません。
したがって、親族関係に基づく法律上の権利・義務が発生した場合には、強制的に兄弟との関わりが発生する可能性があります。
その典型例が相続です。
相続の場面では兄弟との関わりが発生しうる
兄弟と事実上の関係断絶(絶縁)をした場合でも、法律上の相続権まで消えるわけではありません。
そのため、相続が発生した場合には連絡を取らなければならない可能性があります。
兄弟との相続が問題となるケースには、次の2パターンがあります。
- パターン1:親が亡くなって、他の兄弟とともに親の遺産を相続するケース
- パターン2:配偶者や子どものいない兄弟が亡くなって、他の兄弟とともに亡くなった兄弟の遺産を相続するケース
親の死後に起こり得る兄弟とのトラブル事例
親が亡くなると、親の遺産について相続が開始します。
親が兄弟間の調整役を担っていた場合には、親がいなくなることによって兄弟間で長年蓄積していた不満や感情が一気に噴き出し、相続トラブルになるケースが少なくありません。
兄弟間の相続トラブルは単なるお金の問題ではなく、背景に複雑な感情が存在することがほとんどです。
そのため、一度トラブルになると長期化・深刻化する傾向にあります。
遺産分割協議でのトラブル
兄弟間のトラブルで最も多いのが、遺産の分け方をめぐって揉めるケースです。
親が遺言書を残していない場合には、遺産分割協議(相続人全員の話し合いで遺産の分け方を決める手続きです。)を行う必要があります。
遺産分割協議においては、兄弟それぞれの希望や考え方の違いから意見が対立し、揉める傾向にあります。
不動産の分割について揉める
親の遺産に不動産(自宅や土地など)が含まれる場合には、その分け方をめぐって兄弟間で揉めることがあります。
不動産は物理的に分けることができず、平等に分けるのが難しいためです。
以下のような点について兄弟間で意見が対立するケースが多いです。
- 誰が相続するか
- 実家を売って換金するか
- 一部の兄弟が不動産を取得する場合、いくらの代償金を支払うか
例えば、自宅(実家)の相続に関して、親と同居していた兄弟が「自分が実家を相続して今後も住み続ける」と主張し、これに対して他の兄弟が「売却して金銭を分けるべき」と主張して対立するケースなどがあります。
代償金の支払いをめぐって揉める
特定の兄弟が自宅などの不動産を取得し、その代わりに他の兄弟に対して金銭(代償金)を支払うこととする場合(このような遺産の分け方を「代償分割」といいます。)には、代償金の支払いをめぐってトラブルになることがあります。
具体的には、「代償金の額はいくらが適切か」「代償金が支払われない」などをめぐって意見が対立することが多いです。
代償分割について詳しくは下記ページをご覧ください。
一部の兄弟が多くの取り分を主張して揉める
一部の兄弟がより多くの遺産の取り分を主張してトラブルになるケースです。
典型的には、「自分は長男だから多くの遺産をもらう権利がある」といった主張がなされるケースがあげられます。
現在の民法では、原則として子どもの法定相続分は平等であり、「長男だから」という理由で多くの遺産の取り分が認められることはありません。
しかし、このように法的な根拠のない主張が行われることは少なくありません。
親の介護負担をめぐって揉める(寄与分の主張)
親の介護の負担が一部の兄弟に偏っていた場合には、介護を担っていた兄弟から「寄与分(きよぶん)」の主張が行われ、揉めることがあります。
「寄与分」とは、被相続人(亡くなった方のことです。)の財産維持・増加に特別な貢献をした相続人について、より多くの遺産の取り分を認める制度です。
例えば、長女だけが親と同居して長年無償で介護を行っており、他の兄弟はほとんど介護に関与していなかった場合、長女から他の兄弟に対して「介護で貢献した分、遺産の取り分を増やしてほしい」といった寄与分の主張がなされることがあります。
これに対して、他の兄弟からは「それほど大きな負担ではなかった」といった反論がなされ、意見の対立が生じることがあります。
寄与分について詳しくは下記ページをご覧ください。
親から生前に受けた援助をめぐって揉める(特別受益の主張)
特定の兄弟だけが親の生前に多額の援助を受けていた場合には、他の兄弟から「特別受益(とくべつじゅえき)」の主張が行われ、揉めることがあります。
「特別受益」とは、一部の相続人が被相続人から特別な利益を受けていた場合に、相続時にその分を考慮して調整する制度です。
例えば、長男だけが親からマイホームの購入資金を援助してもらったというケースにおいて、他の兄弟から「長男の遺産の取り分を少なくしないと不公平だ」といった特別受益の主張がなされることがあります。
特別受益の主張がされた場合には、「何が特別受益にあたるのか」をめぐって意見が対立し、深刻な争いに発展することがあります。
特別受益について詳しくは下記ページをご覧ください。
兄弟の配偶者が口出しして揉める
兄弟の配偶者が遺産分割に関して意見を述べることで、当事者間の感情的対立が強まるケースもあります。
話し合いに参加する人の数が増えるほど利害の対立が起きやすくなり、話し合いはまとまりにくくなります。
兄弟の配偶者が被相続人の介護等を行っていた場合には、その貢献に報いてほしいという主張(例えば「特別寄与料」の請求など)がなされる場合もあります。
特別寄与料についてくわしくは下記ページをご覧ください。
財産の使い込みや財産隠しの疑いがある
親と同居していた兄弟が親の財産を管理している場合には、使い込みの疑いや財産管理への不信感が生まれてトラブルになるケースも多く見られます。
特に多いのは、預貯金の引き出しや無断解約、株式や投資信託の名義変更・売却などをめぐってトラブルになるケースです。
特に、親の口座から多額の出金がある場合や、特定の兄弟が親の通帳やキャッシュカードを管理していた場合などには、他の兄弟が「勝手に引き出していたのではないか」、「財産を隠しているのではないか」という不信感を持ち、トラブルになることがあります。
連絡の取れない兄弟がいる
絶縁している兄弟がいる場合など、一部の兄弟と連絡を取れず遺産分割協議を進められないというケースです。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。
遺産分割協議自体には「いつまでに行わなければならない」という法律上の期限はありません。
しかし、相続手続きの中には相続税の申告のように期限の定められているものがあり、また、手続きをする前提として、遺産分割協議が完了していることが必要とされる場合があります。
知られていなかった兄弟の存在が発覚する
遺産分割協議が終わった後に、知られていなかった異母兄弟や異父兄弟・養子・認知した非嫡出子などの存在が発覚し、遺産分割協議のやり直しが必要になることがあります。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、一人でも欠けていた場合にはやり直しをする必要があります。
兄弟間の遺産分割について詳しくは下記ページをご覧ください。
遺言書をめぐるトラブル
親が遺言書を残している場合には、遺言書をめぐって兄弟間でトラブルになることがあります。
特に問題になりやすいのが、「長男に全財産を相続させる」、「介護してくれた長女に多くの財産を相続させる」「次男には財産を渡さない」などの偏った内容の遺言書が作成されている場合です。
このような場合には、以下のようなトラブルが発生しやすい傾向にあります。
遺留分(いりゅうぶん)をめぐって揉める
偏った内容の遺言書は、一部の兄弟の遺留分を侵害する場合があります。
遺留分とは、相続人のうち被相続人の配偶者・子ども・直系尊属(父母、祖父母等)に対して法律上保障される遺産の最低限の取り分のことです。
遺留分は遺言書によっても奪うことはできません。
例えば、「長男に全財産を相続させる」という内容の遺言書がある場合、他の兄弟は一切遺産を受け取れないことになるため遺留分を侵害されてしまいます。
遺留分を侵害された兄弟は、侵害の原因になっている長男に対して金銭の支払いを求めることができます(遺留分侵害額の請求)。
このように、偏った内容の遺言書は遺留分をめぐるトラブルにつながることがあります。
遺留分について詳しくは下記ページをご覧ください。
遺言書の有効・無効をめぐって揉める
また、偏った内容の遺言書については、「一部の兄弟が親に無理やり書かせたのではないか」「偽造されたのではないか」「親は認知症だったのではないか」といった疑いを持たれ、遺言書の有効・無効をめぐって争いになることがあります。
遺言書の有効性を争う場合について詳しくは下記ページをご覧ください。
兄弟との相続問題を回避するために【事前の対策】

この項目では、兄弟間の相続問題を回避するための事前の対策について解説します。
遺言書を作成しておく
遺言書の作成は、遺産分割協議をめぐるトラブルの回避に有効です。
遺言書が作成されている場合には、基本的に遺言書に従って遺産を分けることになります。
そのため、遺産分割協議を行う必要がなくなります。
ただし、遺言書の作成方法によってはかえってトラブルになる可能性があるため、注意が必要です。
以下では、遺言書の作成によってトラブルを回避するためのポイントについて解説します。
公正証書遺言がおすすめ
遺言書には大きく、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類がありますが、相続トラブル予防の観点では「公正証書遺言」がおすすめです。
公正証書遺言は「公証人」が作成に関与し、原本が公証役場で保管されます。
そのため、方式の不備や偽造・変造、認知症等を理由として遺言書が無効になるリスクが低いというメリットがあります。
公正証書遺言について詳しくは下記ページをご覧ください。
遺産の分割方法を明確にする
遺言書を作成する際には、それぞれの遺産を誰にどのように取得させるのかについて、明確に記載することが大切です。
曖昧な記載がある場合、その記載の解釈をめぐって兄弟間で対立する可能性があります。
特に、不動産などの公平に分けるのが難しい財産については、その分け方をめぐってトラブルになりやすい傾向にあります。
このような財産については分割方法を慎重に検討した上で、できるだけ具体的・明確に記載することが大切です。
財産目録を作成して添付する
遺言書には財産目録を作成して添付することを強くおすすめします。
「財産目録」とは、自分が持っている財産の内容や所在、評価額などを一覧にまとめたものをいいます。
不動産や預貯金(支店・口座ごと)、有価証券(株式・投資信託・債券等)などのプラスの財産のほか、借金や保証債務などのマイナスの財産も含めて、すべての財産を洗い出します。
財産目録によって財産状況を整理・透明化することができるため、財産の把握漏れを防ぐことができます。
また、一部の兄弟による使い込みの防止にもつながります。
財産目録について詳しくは下記ページをご覧ください。
遺留分に配慮する
すでに解説したように、偏った内容の遺言書は遺留分をめぐるトラブルや遺言書の有効・無効をめぐるトラブルにつながることがあります。
そのため、少なくとも遺留分を侵害しない内容の遺言書を作成することが大切です。
代償金の支払いについて明記する
遺言書で不動産(自宅等)の代償分割を選択する場合には、代償金の支払いについて以下のような内容を具体的に記載することをおすすめします。
- 代償金の具体的な金額
- 代償金の支払方法(一括払い・分割払いなど)
- 代償金の支払期日
- 金額の根拠(付言事項)
遺言書に「付言事項」を記載する
遺言書に付言事項(ふげんじこう)を記載することで、兄弟間のトラブル回避につながる場合があります。
付言事項とは、「なぜ財産をそのように分けるのか」といった理由など、家族への思いや感謝、財産分けの理由などを伝えることを目的として記載された部分のことをいいます。
付言事項に法的効力はないため、これだけで争いを完全に防げるわけではありません。
しかし、付言事項を記載することで納得感が高まり兄弟間の感情的な対立の緩和につながることがあります。
例えば、次のような内容を付言事項として記載します。
- 「長女には長年同居して介護をしてくれた感謝があるため、自宅を相続させる」
- 「長男を事業の後継者とするため、事業に関連する財産はすべて取得させる」
- 「兄弟で争わず協力してほしい」
遺言書の書き方について詳しくは下記ページをご覧ください。
生前に家族全員で遺産相続に関する話し合いをする
親が生きているうちに家族全員で遺産相続に関する話し合いをしておくことも、兄弟間のトラブル防止に有効です。
遺言書だけでは真意が伝わらない場合や誤解が生じる場合もあります。
生前に話し合いをする場合には、その場で意図を説明することができるため、誤解に基づくトラブル
を防ぐことができます。
具体的には、以下のような内容について話し合っておくことをおすすめします。
- 財産の全容
- 財産の分け方に関する希望、理由など
- 介護負担について(介護方針、役割分担、費用負担、相続における配慮など)
- 異父兄弟・異母兄弟・養子・認知した非嫡出子(隠し子)の存在など
介護の記録を残しておく
一部の兄弟が親の介護を担当する場合には、介護の記録(日記など)を残しておくことをおすすめします。
介護を担当していない兄弟にとっては、具体的にどのような介護が行われたのかを想像することが難しく、介護の負担を軽く見積もってしまうことがあります。
日々の介護の記録を残しておくことによって、他の兄弟への説明が容易になり、話し合いをスムーズに進められる可能性が高まります。
生前贈与(援助)の記録を残しておく
親が一部の兄弟への援助を行った場合には、後々のトラブルにつながるリスクが高くなります。
親から一部の兄弟に対する援助を行う場合には、誰に対して、どのような目的で、どのような(いくらの)援助をしたのか、の記録を残しておくことで後のトラブル予防につながる場合があります。
記録を残しておくことで、以下のような点を明確にすることができます。
- 贈与だったのか、貸付だったのか
- いくら分の援助を行ったのか
- 相続時に考慮する前提だったのか
一部の兄弟への援助(贈与)をする場合には、贈与契約書を作成するのがおすすめです。
相続人調査をする
相続が開始したら、できるだけ早い段階で相続人調査を行います。
相続人調査は基本的に、被相続人の生まれてから亡くなるまでの連続するすべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本を取得して行います。
異母兄弟・異父兄弟・養子・認知した非嫡出子がいる場合などには相続人調査が複雑になり、把握漏れが生じるリスクがあります。
相続人調査について少しでも疑問や不安がある場合には、相続に強い弁護士などの専門家に依頼することを強くおすすめします。
相続人調査について詳しくは下記ページをご覧ください。
戸籍の附票で最新の住所を確認
所在不明の兄弟の住所を調べるためには、その兄弟の戸籍の附票(ふひょう)を取得するのが一般的です。
「戸籍の附票」とは、戸籍の原本と一緒に保管されている書類で、戸籍に記載されている人の住所の移り変わりが記録されています。
戸籍の附票に記載されている直近の住所に手紙を送付することによって連絡を取れる場合があります。
所在不明の場合の対応
兄弟が戸籍の附票に記載されている最新の住所に実際住んでいない場合や、どうしても連絡先や住所を特定できない場合もあります。
そのような場合には、所在不明の兄弟について家庭裁判所に「不在者の財産管理人」の選任の申立てを行う必要があります。
その上で、選任された不在者の財産管理人との間で遺産分割協議を行うことになります。
相続人が行方不明の場合の遺産分割協議について詳しくは下記ページをご覧ください。
相続に強い弁護士に相続対策を相談する
兄弟間の関係が良好でない場合や、紛争につながるリスクが少しでもある場合には、生前から相続に強い弁護士に相続対策を相談しておくことを強くおすすめします。
どのような対策が有効かはそれぞれの状況によって大きく異なります。
相続に強い弁護士であれば、相続人調査、相続財産調査、遺言書の作成、遺留分対策、生前贈与、遺産分割協議の進め方、相続放棄、相続トラブル対策など、相続全般に関するサポートを行うことができます。
兄弟間の相続トラブルは一度発生してしまうと深刻化・長期化する傾向にあります。
少しでも疑問や不安がある場合には、事前に相続に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
兄弟との相続問題を解決するために【事後の対処法】
ここでは、万一兄弟間の相続トラブルが発生してしまった場合の対処法について解説します。
財産の状況を確認する
相続トラブルが発生した場合には、まずは財産の状況を正確に把握することが大切です。
可能であれば財産目録を作成するのがおすすめです。
取引履歴を確認する
特に、一部の兄弟による使い込み等が疑われる場合には、預貯金等の取引履歴(通帳履歴や取引明細等)を取得して、不自然な入出金がないかを確認します。
使い込み等の疑いが濃厚な場合には、取引履歴等の客観的な証拠をもとに、兄弟間で話し合いを行います。
親の介護費用や生活費として必要だった、という可能性もあるため、証拠不十分のまま相手を強く非難すると、対立が激化する危険があります。
そのため、まずは事実関係を冷静に調査することが大切です。
状況によっては、弁護士への相談も検討しましょう。
遺産の使い込みが発覚した場合の対処法について詳しくは下記ページをご覧ください。
遺産分割協議への対処法
冷静な話し合いを試みる
遺産分割協議で揉めた場合、まずは冷静な話し合いによる解決を試みることが大切です。
兄弟間の相続トラブルでは、感情的な対立が発生しやすいという特徴があります。
特に、昔から兄弟間の仲が悪かった場合や、親からの愛情に差別があった場合、介護負担に偏りがある場合、兄弟間で金銭感覚が大きく異なる場合などには、感情的な対立が深刻化する傾向にあります。
感情的なLINE・メール・電話等での応酬は避け、できるだけ客観的な証拠・事実に基づく冷静な話し合いを心がけることが大切です。
弁護士に交渉の代理を依頼する
兄弟同士が直接顔を合わせて話し合うことによって事態が悪化するケースもあります。
このようなケースでは、相続に強い弁護士に交渉の代理を依頼することで解決が早まる場合があります。
弁護士が間に入ることによって兄弟間で直接会話をする必要がなくなるため、感情的な対立が発生しにくくなります。
また、弁護士は法的な観点から客観的な事実や証拠をもとに話し合いを行うため、冷静な話し合いによる解決の可能性が高まります。
弁護士費用はかかりますが、裁判所の調停や審判よりも短期間で解決できる可能性があります。
また、調停や審判の段階で弁護士に依頼するよりも結果的に費用を抑えられるケースも少なくありません。
調停・審判を利用する
兄弟間での話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の調停(遺産分割調停)を利用することができます。
調停は、調停委員が間に入って当事者の合意による解決をめざす手続きです。
調停には、当事者が直接顔を合わせる必要がないため感情的対立を和らげやすい、法的な観点から論点を整理してもらえる、などのメリットがあります。
調停が成立しない場合には、最終的に家庭裁判所が判断を下す「審判」に進みます。
審判では、財産内容や寄与分、特別受益などを踏まえて、裁判所が具体的な分割方法を決定します。
調停・審判を利用する場合、一般的に、解決までに半年〜2年前後の時間を要するといわれています。
そのため、できるだけ話し合いでの早期解決を目指すのがおすすめです。
遺産分割調停について詳しくは下記ページをご覧ください。
相続放棄を検討する
「兄弟間の相続トラブルに一切関わりたくない」という場合には、相続放棄を検討するのも一案です。
相続放棄とは、プラスの財産・マイナスの財産を含め一切の財産の相続を辞退することをいいます。
相続放棄をすると、最初から相続人でなかったことになります(民法第939条)。
その結果、遺産分割協議に参加する必要もなくなるため、他の兄弟との関わりを大幅に減らすことができます。
相続放棄をするためには、「自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に家庭裁判所で手続きをする必要があります。
この期間を過ぎると原則として相続放棄をすることができなくなるため、注意が必要です。
なお、相続放棄は相続開始後にのみ行うことができ、相続開始前に行うことはできません。
相続放棄について詳しくは下記ページをご覧ください。
相続に詳しい弁護士に相談する
兄弟との相続トラブルが発生してしまった場合には、できるだけ早い段階で相続に詳しい弁護士に相談することを強くおすすめします。
相続に強い弁護士であれば、兄弟間の相続トラブルの早期解決に向けて、それぞれの状況に応じた適切なアドバイスをすることが可能です。
また、弁護士が当事者の間に入ることで、法的整理が進みやすい、感情的対立を抑えやすい、一部の兄弟による不当な要求を防ぎやすい、などのメリットがあります。
また、早期から相談しておくことで、調停や審判に移行した場合にもスムーズに対応することができます。
兄弟と絶縁するための相談先

遺産の問題については相続問題に強い弁護士
兄弟との絶縁に関して遺産相続が絡む場合、相談先として最も適切なのは相続問題に強い弁護士です。
遺産相続に関するトラブル全般に対応できる専門家は、基本的に弁護士のみです。
兄弟と絶縁する場合にはトラブルになるリスクが高いため、弁護士に相談するのが安心です。
また、相続問題は高度の専門知識と経験を必要とする分野なので、弁護士の中でも「相続問題に強い」弁護士に相談することが大切です。
遺産相続問題を弁護士に相談すべき理由は下記ページをご覧ください。
兄弟からの嫌がらせについては警察
兄弟から執拗な嫌がらせや脅迫などの犯罪にあたる可能性がある行為を受けている場合には、最寄りの警察署や交番に相談しましょう。
親の死後の兄弟トラブルについてのQ&A
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親の死後に「家族じまい」はできますか?
「家族じまい」は造語であり、法律上の制度ではありません。
一般的には、家族や親族との関係を事実上縮小・終了させること(絶縁)を意味します。
具体的な行動としては、連絡を取らない、親族付き合いをやめる、家族の遺産を相続しない、などの行動があげられます。
事実上このような行動をすることは可能です。
ただし、すでに解説してきたように、兄弟との法的な親族関係を消滅させることはできません。
そのため、親や兄弟が亡くなった場合には相続が発生することがあります。
このような場合に「関わりたくない」という理由だけで相続問題を放置すると、さらに問題が複雑化してしまうリスクがあります。
「遺産はいらないので、相続問題に一切関わりたくない」という場合には、相続放棄を検討することをおすすめします。
相続放棄をするためには、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。
「面倒くさい」という理由で放置してしまうと、相続放棄をすることができなくなってしまうため、注意が必要です。
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兄弟との絶縁状に公正証書は必要ですか?
まず、「絶縁状」とは一般に、「今後一切関わらない」といった意志を記載した文書のことをいいます。
「絶縁状」に法的な効力はありません。
したがって、絶縁状を作成することによって法律上の兄弟関係が消滅したり、相続権がなくなったり、戸籍が分かれたり、といった効果が発生することはありません。
また、「公正証書」とは、法律の専門家である公証人が、当事者からの依頼によって作成する文書のことをいいます。
絶縁状を公正証書で作成したからといって、法的効力が発生することはありません。
そのため、通常は絶縁状を公正証書で作成する必要性は高くないといえます。
むしろ、感情的な内容の絶縁状を送ることによって相手を刺激し、兄弟間の対立を激化させるリスクもあります。
ただし、兄弟から執拗な嫌がらせや金銭の無心などを受けている場合には、「どうしても関係を断絶するという意志を伝えたい」という方もいらっしゃるかもしれません。
このような場合には、弁護士名義で絶縁状(通知書)を送付するという方法があります。
この場合でも絶縁状自体に法的な効力はありませんが、適法な形で相手に本気であることを伝えられるというメリットがあります。
まとめ
- 日本の法律上、兄弟との関係を法的に消滅させる制度はありません。
そのため、「絶縁」を宣言しても、それはあくまで事実上の関係断絶を意味するにすぎず、遺産相続などの親族関係にまつわる問題を完全になくすことはできません。 - 特に、親が亡くなった場合にはその遺産相続をめぐって兄弟間の対立が発生し、トラブルに発展することがあります。
- 兄弟間の相続トラブルを防ぐための事前の対策としては、遺言書の作成や財産の整理、生前の話し合い、記録の作成、相続人調査などが有効です。
- 兄弟間の相続トラブルが発生してしまった場合には、まずは話し合いによる解決を試みます。
当事者の話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所の調停や審判を利用することになります。 - 「他の兄弟との相続には一切関わりたくない」という場合には、相続放棄をするという方法もあります。
- 兄弟間の相続トラブルは、一度感情的対立が深刻化すると、解決までに数年単位の時間を要するケースも少なくありません。
兄弟間の相続トラブルに関する不安や悩みがある場合には、できるだけ早い段階で相続に強い弁護士に相談することをおすすめします。
相続に強い弁護士であれば、個々の状況に応じた対策・対処法について、適切なアドバイスをすることができます。 - 当事務所では、相続に強い弁護士で組織する相続対策専門チームを設置しています。
兄弟との絶縁や相続トラブルに関するご相談をはじめ、遺言書の作成、遺産分割協議、相続放棄、相続税の申告・節税対策など、相続全般に関するご相談に対応することができますので、ぜひお気軽にご相談ください。







