肺挫傷とは?弁護士が後遺症のポイントについて解説

執筆者:弁護士 重永尚亮 (弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士)

肺挫傷とは、外部からの衝撃によって、肺の組織が傷ついてしまい、腫れや出血が発生してしまった状態をいいます。

交通事故のような大きな衝撃が加わる状況で、胸を強打した場合、肺挫傷(はいざしょう)が発生する可能性があります。

治療により肺が完治したとしても、息苦しさ等の症状が残ってしまう場合があり、症状の程度によっては後遺障害に認定される可能性があります。

以下では、肺挫傷の後遺障害認定のポイントや適切な賠償を獲得するためのポイントを解説していますので、ご参考にされてください。

肺挫傷とは

肺挫傷とは、胸を強く打つなどの外部からの衝撃によって、肺の組織が傷ついてしまい、腫れや出血が発生してしまった状態をいいます。

例えば、車の運転をしている時に、後ろから追突された衝撃でハンドルに胸を強打した結果、肺が傷ついてしまった場合が考えられます。

さらに、肺の表面が傷つき、傷ついた部分から空気や血液が漏れ出た場合は、肺裂傷と呼ばれます。

したがって、肺挫傷とは、肺裂傷には至らないものの、肺が傷ついた場合をいいます。

肺挫傷が疑われた時に通院すべき病院は呼吸器内科です。

肺挫傷の有無は以下の方法によって確認します。

まず、体に表れている症状を確認します。

具体的には、呼吸困難、頻呼吸、血痰の有無、皮膚の色の観察によるチアノーゼの有無によって判断されます。

次に、胸部の聴診や血圧測定、動脈血ガス分析による低酸素血症の確認、胸部レントゲン撮影、胸部CTスキャン等の画像診断によっても検査されます。

なお、肺挫傷は段階を追って発生することもあるため、何度かレントゲン撮影を行う必要がある場合があります。

 

 

肺挫傷の症状と日常生活への影響

肺挫傷の症状

肺挫傷の症状は一般的に以下のものが挙げられます。

  • 呼吸困難
    呼吸困難とは、息切れや息苦しさを感じる状態をいいます。
  • 頻呼吸(ひんこきゅう)
    呼吸は、無意識な状況で規則正しく1分間に約12から20回行われます。
    一方、頻呼吸は、1分間に25回以上の呼吸が行われる状態をいいます。

    引用元:一般社団法人日本呼吸器学会

  • 血痰
    肺挫傷によって肺内部に出血した血が気道に流れ出て、痰に血が混じっている状態をいいます。
  • チアノーゼ
    チアノーゼとは、皮膚や粘膜が青紫色に変化した状態をいいます。
    原因としては、毛細血管内血液の還元ヘモグロビン濃度が5g/dl以上になっていることによります。
    還元ヘモグロビンとは、酸素と結合していないヘモグロビンのことを指します。
    つまり、還元ヘモグロビンの量が多くなるということは血液中の酸素の量が少なくなっていることを意味します。

    引用元:日本小児循環器学会

肺挫傷が軽度の場合

肺挫傷が軽度の場合は、ほとんどの場合が無症状です。

したがって、本人が気づかないうちに治ってしまいます。

 

肺挫傷が重度の場合

一方、肺挫傷が重度の場合は、命に関わる危険な状態です。

具体的には、低酸素血症による意識障害や低血圧が起こります。

加えて、肺の損傷によって、肺の中の空気が漏れることで肺空内に空気が溜まってしまう肺気胸になることもあります。

他にも肋骨骨折や血胸を伴う場合もあります。

肺挫傷が重度な場合のメカニズムは以下の通りです。

肺挫傷が重度な場合のメカニズムは

肺挫傷の入院期間

既にご説明しました通り、肺挫傷には軽度なものから重度なものまで幅広いです。

重度な場合の中でもグラデーションがあります。

したがって、肺挫傷の入院期間は症状の程度によって個別に決まります。

 

肺挫傷の治療期間

肺挫傷の治療方法は、主に横になって安静にすることです。

呼吸困難の場合は、酸素吸入を実施することもあります。

重症の場合は、気管に管を通して気道を確保して人工呼吸装置を取り付けるといった治療が行われます。

肺挫傷の治療期間についても症状の程度によって異なります。

症状が軽度な場合は、通常、1週間ほどで自然に回復します。

 

 

肺挫傷の原因

肺挫傷は、胸を強く打つなどの外部からの衝撃が原因です。

外部からの肺間質に直接圧力が加わって出血が発生する場合と、外部からの圧力によって肺内部の圧力が高まることによって出血する場合があります。

後者の場合は、肺内部の肺胞や毛細血管といった組織が内部圧力の上昇によって破裂し、出血が生じます。

肺挫傷

外部からの圧力の主な原因としては、交通事故です。

他にも、建築作業中に、資材の間に挟まれて胸を圧迫されるといった労災事故によっても発生する可能性もあります。

 

 

肺挫傷の後遺障害認定

肺挫傷の場合に認定される可能性がある後遺障害は以下の通りです。

別表第1

後遺障害等級 症状
別表第1 1級2号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
別表第1 2級2号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

 

別表第2

後遺障害等級 症状
3級4号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級3号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級5号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級11号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
11級10号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
13級11号 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

 

 

肺挫傷の検査方法

上記で解説した後遺障害等級のいずれに該当するかは、下記の検査方法の結果をもって判断されます。

検査方法 検査内容
①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査 血液中の酸素と炭酸ガスの圧力を測定する検査
②スパイロメトリー検査 呼吸により肺から出入りする空気量を測定する検査
③運動負荷試験 運動をすることで心肺機能に負荷をかけ、運動中及び運動前後の状態から有酸素能力等を測定する検査

 

①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による判定

【動脈血酸素分圧が50Torr以下のもの】

呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの 別表第1 1級2号
呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの 別表第1 2級2号
上記いずれにも該当しない場合 3級4号

【動脈血炭酸ガス分圧が50Torrを超え60Torr以下のもの】

動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲(37Torr以上43Torr)にないもので、かつ、呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの 別表第1 1級2号
動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもので、かつ、呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの 別表第1 2級2号
動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもので、上記2つに当たらないもの 3級4号
上記いずれにも該当しない場合 5級3号

【動脈血炭酸ガス分圧が60Torrを超え70Torr以下のもの】

動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもの 7級5号
上記に該当しないもの 9級11号

【動脈血炭酸ガス分圧が70Torrを超えるもの】

動脈血炭酸ガス分圧が限界値にないもの 11級10号

 

②スパイロメトリーの結果及び呼吸困難の程度による判定

【%1秒量が35以下又は%肺活量が40以下であるもの】

高度の呼吸困難が認められ、かつ、呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの 別表第1 1級2号
高度の呼吸困難が認められ、かつ、呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの 別表第1 2級2号
高度の呼吸困難が認められ、上記に該当しないもの 3級4号
中等度の呼吸困難が認められるもの 7級5号
軽度の呼吸困難が認められるもの 11級10号
  • 高度の呼吸困難とは、呼吸困難のため、連続して概ね100m以上歩けないものをいう
  • 中等度の呼吸困難とは、呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同様に歩けないが、自分の ペースでなら1km程度の歩行が可能であるもの
  • 軽度の呼吸困難とは、呼吸困難のため、健常者と同様には階段の昇降ができないもの

【%1秒量が35を超え55以下又は%肺活量が40を超え60以下であるもの】

高度又は中等度の呼吸困難が認められるもの 7級5号
軽度の呼吸困難が認められるもの 11級10号

【%1秒量が55を超え70以下又は%肺活量が60を超え80以下であるもの】

高度、中程度または軽度の呼吸困難が認められるもの 11級10号

 

③運動負荷試験の結果による判定

運動負荷試験とは、運動中の心拍応答や心電図を測定することで、どの程度の運動強度まで運動を行うことができるかを観察する試験です。

具体的には、運動耐容能(人がどれくらいまでの運動に耐えられるかの限界値)、全身持久力、有酸素能力を測ります。

運動負荷試験には以下の種類があります。

  • 自転車エルゴメータ
  • トレッドミル

自転車エルゴメータとは、別名エアロバイクといいます。

ジムを利用された経験のある方は一度は見かけたことがあるかもしれません。

自転車こぎ運動をすることで上記能力を測定します。

トレッドミルについてもジムに設置されている運動器具です。

回転するベルトの上を歩くまたは走ることで上記能力を測定します。

運動負荷試験の結果によって以下の後遺障害等級が認定される可能性があります。

①②による判定では障害等級に該当しないものの、呼吸機能の低下により呼吸困難が認められ、運動負荷試験の結果から明らかに呼吸機能に障害があると認められるもの 11級の9号

 

 

肺挫傷の慰謝料などの賠償金

肺挫傷が後遺障害として認定された場合、等級に応じて以下の後遺障害慰謝料が支払われます。

また、後遺障害が認定された場合、認定された等級に応じて後遺障害逸失利益が認められる可能性があります。

後遺障害逸失利益の計算方法の詳細につきましては下記のページをご覧ください。

別表第1
後遺障害等級 自賠責基準 裁判基準
別表第1 1級2号 1600万円 2800万円
別表第1 2級2号 1163万円 2370万円

 

別表第2
後遺障害等級 自賠責基準 裁判基準
3級4号 829万円 1990万円
5級3号 599万円 1400万円
7級5号 409万円 1000万円
9級11号 245万円 690万円
11級10号 135万円 420万円
13級11号 57万円 180万円

 

 

肺挫傷で適切な賠償金を得る6つのポイント

肺挫傷で適切な賠償金を得る6つのポイント

①肺挫傷が発見できる検査を行う

肺挫傷の症状は呼吸困難といった目にみえる症状だけでは肺挫傷が原因であるかをはっきりと判断することはできません。

レントゲンやCT撮影を行うことで画像上、肺挫傷が発生していることを確認することができます。

交通事故等によって胸を強く打ったことによって息苦しさや胸の痛みが生じた場合は、呼吸内科を受診して上記検査を実施してもらいましょう。

②継続的に通院すること

肺挫傷が発生した場合、治療のために継続的に病院に通院することはお身体のためにも必要不可欠です。

そのほかにも、継続的に通院することは保険会社から支払われる慰謝料にも大きく影響します。

交通事故に遭った場合の慰謝料の算定方法は、入通院期間をもとに算定します。

したがって、通院期間が長いほど慰謝料が増額します。

なお、全体の通院期間が長期に渡ったとしても、実際に通院した日数が月に1、2回程度にとどまる場合には、全体の通院期間が慰謝料の算定基準とはならず、実際に通院した日数を3倍にした期間が通院期間としてみなされる場合があります。

慰謝料の算定方法についての詳細は交通事故専門の弁護士にご相談ください。

 

③後遺障害を適切に認定してもらう

交通事故等によって肺挫傷が発生した場合、既にご説明した後遺障害が残ってしまう可能性があります。

もっとも、被害者の方々が残ってしまった症状を後遺障害として申請しなければ後遺障害慰謝料をもらうことができません。

そこで、残ってしまった症状に応じた適切な後遺障害を認定してもらう必要があります。

また、等級に応じて後遺障害慰謝料が決まっていることから、認定される等級によってもらえる後遺障害慰謝料の金額は大きく変わります。

そのため、被害者の方々に残った症状を適切に反映した後遺障害等級を認定してもらう必要があります。

後遺障害が認定された場合の補償内容については下記のページをご覧ください。

 

④適切な賠償金の金額を算定する

加害者側が提案する示談の内容は、本来被害者の方々に支払うべき金額よりも低額で提示されている可能性があります。

このように知らず知らずのうちに損をする結果になってしまうことがあるのです。

示談内容のうち、慰謝料その他の賠償金については、自賠責基準・任意保険の基準・弁護士基準裁判基準の3つがあり、裁判基準で算出された金額が最も高い傾向にあります。

この裁判基準で計算してもらうためには、弁護士にご依頼いただく必要があります。

そこで、加害者側の保険会社と示談をする際は、適切な賠償金が提示されているかを弁護士に確認することをお勧めします。

 

⑤加害者側が提示する示談内容は専門家に確認してもらう

加害者側の示談内容でサインをしてしまうと後になって金額に納得がいかないと思ったとしても取り消すことができなくなります。

上記④でご説明した通り、加害者側の保険会社が提示する金額が本来払うべき金額よりも低額となっている可能性があります。

そこで、被害者の方々が損をしないためにも適切な賠償金を獲得するためにも弁護士に相談すると良いでしょう。

交通事故の示談をスムーズに行う方法については以下のページをご覧ください。

 

⑥後遺障害に詳しい弁護士に早い段階で相談する

後遺障害申請は、治療がある程度進んでこれ以上治療をしたとしても症状が改善しない状態になった段階(専門用語で「症状固定」といいます。)で行われます。

そして、後遺障害の申請には症状固定になるまでの診断書の記載や通院頻度も重視されます。

そこで、後遺障害に詳しい弁護士に早い段階で相談することで、適切に現在の症状を診断書上に記載や通院頻度についてのアドバイスを行うことができます。

このように、後遺障害に詳しい弁護士に早い段階で相談することで、もし症状が残ってしまった場合、適切な後遺障害を認定してもらえる可能性が高まります。

交通事故を弁護士に依頼するメリットについては下記のページをご覧ください。

 

まとめ

交通事故等によって肺挫傷となった場合、治療を行ったとしても後遺障害が残ってしまう可能性があります。

後遺障害が残ってしまった場合は、適切な後遺障害慰謝料を取得することがせめてもの救いとなるのです。

当法律事務所は人身障害部を設置しており、交通事故を専門とする弁護士が所属しております。

被害者の方が加入している保険会社において、弁護士費用特約を付けられている場合は、特殊な場合を除き弁護士費用は実質0円でご依頼いただけます。

LINE等のオンラインや電話相談を活用して全国対応も行っていますので、後遺障害診断書でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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