半月板損傷による後遺症のポイント|弁護士が解説

執筆者:弁護士 木曽賢也 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

半月板損傷(はんげつばんそんしょう)とは、膝(ひざ)にある半月板という組織に強い力が加わることによって、割れたり、ひびがはいったりして傷ついてしまうケガのことをいいます。

半月板損傷は後遺症が残ってしまうこともあるため、適切に対処しなければならないケガです。

本記事では、交通事故や労災で半月板損傷のケガをされた方向けに、弁護士が後遺症(後遺障害)や、賠償金について解説いたします。

半月板損傷のケガをしてしまい、賠償金などでお困りの方はぜひご覧ください。

半月板損傷とは

半月板損傷(はんげつばんそんしょう)とは、膝(ひざ)にある半月板という組織に強い力が加わることによって、半月板が割れたり、ひびがはいったりして傷ついてしまうケガのことをいいます。

半月板とは

半月板とは、膝にある大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)の間にある「C」と似た形をした軟骨の組織です。

半月板は、関節の動きを滑らかにし、クッションのような役割を果たしている部位で、内側半月板と外側半月板があります。

半月板のイメージ図

 

半月板損傷の検査は?

MRI検査

MRIは強い磁石と電磁波を用いて、身体の状態を撮影する検査方法です。

MRIは、体を断面図で見ることができ、レントゲンやCTでは見えにくい軟部組織をみることができます。

半月板損傷は、レントゲンでは分からないため、MRIで精密検査をする必要があるのです。

マクマレー・テスト

マクマレー・テスト
仰向けで膝を最大限曲げ、膝から足首にかけての部分に回旋ストレスを加えながら膝を伸ばしていきます。

半月板に異常があれば、激痛や膝から異常音が発生します。

グリンディング・テスト

グリンディング・テスト
うつぶせの状態で膝を90度に曲げ、踵(かかと)を下に押しつけながら回します。

半月板に異常があれば、強い痛みが生じます。

 

 

半月板損傷の症状と日常生活への影響

半月板損傷の症状としては、膝に痛みがあったり、膝が腫れたり、膝が動かしにくくなるといったものです。

日常生活への影響については、階段の昇り降りやしゃがみこみ動作などの運動時に生じ痛みが生じます。

ひどい場合には、ロッキングといって膝が動かない状態になることもあります。

半月板の治療

半月板損傷の治療にあたっては、以下の方法があります。

  1. ① 関節内に直接ステロイドを注入する薬物療法や痛み止めや消炎鎮痛剤などの内服
  2. ② リハビリなどの保存的治療を行う
  3. ③ 手術をする

特に、半月板の損傷がひどく、断裂しているような場合には、当該部分を手術により切除することがあります。

 

半月板の手術後に後遺症が出るケースも

手術で断裂部分を切除した後に、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)を発症するケースがあります。

変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨の質が低下し、歩いた時などに膝に痛みが生じる病気です。

手術後にも痛みが残っている場合には、変形性膝関節症を発症している可能性がありますので、すぐに病院で検査してもらいましょう。

 

半月板損傷のリハビリはどれくらい?

半月板損傷のリハビリ期間は、症状の重さ、手術をするかどうか等によって異なりますが、概ね3〜6ヶ月程度と考えられます。

リハビリ期間について、詳しくは主治医に確認した方が無難です。

 

半月板損傷で仕事ができないことがある?

半月板損傷で仕事ができないかどうかはケースバイケースです。

特に、膝に負担がかかる仕事については、制限をする必要があるケースもあります。

仕事をしてよいかどうかについては、主治医に確認するようにしましょう。

 

 

半月板損傷の原因

半月板損傷は、膝に強い圧力がかかった場合に発症しやすいです。

具体的には、バイク事故、労災、スポーツなどで膝に負荷がかかった状態で膝をひねったりするときなどに半月板を損傷してしまいます。

 

 

半月板損傷の後遺障害認定の特徴と注意点

半月板損傷の場合、以下の後遺障害等級の認定が得られる可能性があります。

機能障害(可動域制限)

機能障害とは、関節の動く範囲が怪我によって狭くなってしまう障害です。

等級 後遺障害の内容
8級7号 「1下肢の3大関節の中の1関節の用を廃したもの」

→健側と比べ、患側の可動域が10%以下に制限

10級11号 「1下肢の3大関節の中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」

→健側と比べ、患側の可動域が1/2以下に制限

12級7号 「1下肢の3大関節の中の1関節の機能に障害を残すもの」

→健側と比べ、患側の可動域が3/4以下に制限

「健側」とはケガをしていない方の膝関節で、「患側」とはケガをしている方の膝関節のことをいいます。

 

神経障害

神経障害とは、痛みやしびれ等の神経症状が残ってしまう障害です。

等級 後遺障害の内容
12級13号 「局部に頑固な神経症状を残すもの」

→他覚的所見(MRI等の画像所見)があり、神経症状の存在が医学的に証明できることが必要

14級9号 「局部に神経症状を残すもの」

→諸事情(事故規模、治療経過、各種検査等)から神経症状の存在が医学的に説明できることが必要

 

 

半月板損傷の慰謝料などの賠償金

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、ケガをして入院や通院をした場合に発生する精神的苦痛に対する賠償金のことです。

入通院慰謝料には3つの基準があります。

自賠責保険基準、任意保険会社基準、裁判基準(弁護士基準や赤い本基準とも呼ばれています)です。

任意保険会社基準は、それぞれの保険会社ごとに定められている基準で、公表はされていないので、事前に把握することは困難です。

自賠責保険基準

自賠責保険基準は、交通事故の賠償における最低限の基準です。

自賠責保険基準の計算式は、4300円(2020年3月31日以前の事故の場合は4200円)×【治療期間】or【(入院日数+実通院日数)× 2 】のいずれか少ない方となります。

具体例  治療期間190日、入院日数20日、退院後の実通院日数60日の場合

例えば、治療期間(治療を開始してから終わった日までの日数)が190日、入院日数が20日、退院後の実通院日数が60日の例を想定します。

治療期間190日
(入院日数 + 実通院日数)× 2 =(20日 + 60日)× 2 = 160日

少ない方は160日なので、こちらを乗じることになります。

よって、4300円 × 160日 = 68万8000円となります。

 

弁護士基準

入院通院慰謝料は、骨折・脱臼など重症を負った場合に使う表と軽症(むちうち、打撲など)の場合に使用する表の2種類の基準があります。

半月板損傷の場合は、基本的に、下記の「重症(骨折・脱臼など)の場合」という方の表を用います。

重症(骨折・脱臼など)の場合

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326
13月 158 187 213 238 262 282 300 316
14月 162 189 215 240 264 284 302
15月 164 191 217 242 266 286

 

具体例 入院30日、通院150日の場合

上記表は、1ヶ月を30日と考えて使用します。

つまり、入院30日は1月、通院150日は5月として考えます。

入院1月の縦列と通院5月の横列の交わる「141」、つまり、141万円が入通院慰謝料となります。

今回のケースの自賠責保険基準(68万8000円)と裁判基準(135万3333円)を比較すると、その差は約2倍にもなります。

基本的に裁判基準が最も高額な基準となります。

 

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことにより生じる精神的苦痛に対する賠償金のことです。

後遺障害慰謝料は、基本的に後遺障害等級が認定された場合に発生する慰謝料のことです。

後遺障害慰謝料の自賠責基準と弁護士基準の比較は、以下のとおりです。

後遺障害等級 自賠責基準 裁判基準
8級 331万円 830万円
10級 190万円 550万円
12級 94万円 290万円
14級 32万円 110万円

 

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、将来の労働に影響を与える分の賠償金のことです。

後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出します。

計算式 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数

 

 

半月板損傷で適切な賠償金を得る3つのポイント


半月板損傷で適切な賠償金を得る3つのポイント

病院で適切な検査を受けること

事故後、早い段階でMRI検査を受けることが大切です。

半月板損傷は、加齢により傷つきやすくなり、事故以外でも損傷する可能性があります。

したがって、事故から時間が経過してから半月板損傷が見つかった場合、保険会社から事故以外の原因で損傷したのではないかと疑われる可能性があるのです。

 

適切な後遺障害診断書を作成する

後遺障害診断書とは、自賠責保険に後遺障害申請する際に必要な書類の一つで、被害者に残存している後遺障害の内容を記載した診断書のことをいいます。

後遺障害診断書では、画像所見などの他覚的所見、被害者の自覚症状、可動域制限があれば健側と患側の可動域などが記載されます。

何級の後遺障害等級が認定されるかは、この後遺障害診断書の内容が重視される傾向があるので、適切な後遺障害診断書を作成する必要があります。

後遺障害診断書の内容に誤りがあったり、記載が不足している場合は、医師に修正や加筆をしてもらいましょう。

 

弁護士に相談する

半月板損傷は、一般的に弁護士が代理人として活動するかどうかで賠償金の額が大きく変わる可能性が高いです。

まず、適切な後遺障害等級が認定されるために、申請にどのような資料を提出すべきかをしっかり吟味されるべきですが、この点について専門家である弁護士が熟知しています。

また、弁護士であれば、慰謝料などについて、最も高額となる裁判基準で請求します。

さらに、弁護士であれば、交渉段階で折り合いがつかなければ、適切な賠償金獲得に向けて裁判を提起することもできます。

このように、弁護士に依頼するメリットは被害者にとってたくさんありますので、まずはご相談してみてください。

 

 

半月板損傷の解決事例

当事務所で扱った半月板損傷の事例は、以下のとおりです。

半月板損傷で12級に認定され裁判基準以上の賠償で解決した事例

受傷部位 左膝内側半月板断裂、左上腕骨骨頭骨折、頸部捻挫、腰部捻挫など

等級 12級13号

損害項目 裁判基準 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 約174万円 約1220万円
後遺障害逸失利益 259万円(喪失率14%、喪失期間10年)
後遺障害慰謝料 290万円
休業損害 304万円(事故日から症状固定時の全期間)
結果 約1027万円 合計 約1220万円

弁護士は、後遺障害診断書作成にあたって、診断書や診療報酬明細を取り寄せた上で、医師が作成した後遺障害診断書をチェックし、一部修正を依頼するなどして資料を揃え、後遺障害の申請を行いました。

結果は、左膝痛の症状について12級13号、右膝痛・頸部痛・腰部痛の3点については14級9号が認められ、併合12級の認定を受けることができました。

 

交通事故直後に弁護士に依頼し、12級7号の後遺症が認定された事例

受傷部位 膝(左膝外側半月板損傷、左膝内側側副靭帯断裂)

等級 12級7号(左膝の機能障害)

損害項目 弁護士によるサポート結果
入院雑費 11万1000円(裁判基準)
休業損害 約130万円
傷害慰謝料 165万円
後遺障害慰謝料 290万円(12級、裁判基準)
後遺障害逸失利益 490万円(賃金センサス × 14% × 13年(平均余命の2分の1、裁判基準)
過失相殺 20%→10%
結果 924万円(自賠責保険含む)

内側側副靭帯を断裂したことによる膝関節の不安定性があるとされ、後遺障害診断書に明確にその旨を記載してもらいました。

そして、事故後の画像なども病院から取得して、弁護士が相手方の自賠責保険へ後遺障害の申請を行いました(被害者請求)。

その結果、膝関節の不安定性について、固定具が常時必要ではないものの、靭帯の断裂という器質的な変化が原因で生じたものと評価され、膝関節の機能障害として12級7号の後遺障害が認定されました。

 

まとめ

  • 半月板損傷とは、膝にある半月板という組織に強い力が加わることによって、割れたり、ひびがはいったりして傷ついてしまうケガのことをいう。
  • 半月板損傷の症状としては、膝に痛みがあったり、膝が腫れたり、膝が動かしにくくなるといったもの。
  • 半月板損傷は、バイク事故、労災、スポーツなどで膝に強い圧力がかかった場合に発症しやすい。
  • 半月板損傷の認定可能性がある後遺障害等級としては、機能障害であれば8級7号・10級11号・12級7号、神経障害であれば12級13号、14級9号である。
  • 半月板損傷の賠償金には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益などがある。
  • 半月板損傷で適切な賠償金を得る3つのポイントは、①病院で適切な検査を受けること、②適切な後遺障害診断書を作成すること、③弁護士に相談することである。

これまでご紹介してきたとおり、半月板損傷のケガの適切な賠償金を得るためには、後遺障害についての理解や裁判基準で請求することがとても大事です。

被害者が損をしないためには、専門家である弁護士を頼るのが一番かと思います。

当事務所は、交通事故や労災などを専門的に扱うチームがあり、数々の解決実績があります。

なお、当事務所は、ご来所相談以外にも、電話相談、各種オンライン相談に対応し、地域を問わずご相談を承っております。

半月板損傷でお困りの方は、ぜひ一度当事務所にお問い合わせください。

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